けものフレンズR Returning a favor 作:社畜狂戦士
…ごこん。
地鳴りのように響く、何か大きな物が動く音。
しゅ、う……
次いで、閉じ込められていた何かが抜け出すような音が漏れ。
……目の前の岩肌が、なめらかにスライドしていく。
「………へ?」
言葉にしようとして、言葉にならなかったのか。
ともえの口から気の抜けた声が漏れ。
イエイヌはぽかんと口を開けてたまま固まっている。
岩肌にしか見えなかったそこに隠されていた、機械仕掛けの通路。
ラッキービーストとユキヒョウの持っていた四角。
その二つが揃って初めて姿を現す、パークに眠る秘密の一部。
「の?の?どうじゃあ?すごいじゃろこれ♪」
その反応を待っていた、とばかりにはしゃぐユキヒョウ。
「…本当は皆に見せたいんじゃがのう」
「機密事項ダカラ、ダメダヨ」
「……の?ラッキーはつれぬのー」
ラッキービーストに釘を刺され、すねたような口調でおどけて見せる。
「さ、この奥じゃ。休むにも話すにも都合がよいしの」
ちらり。
オコジョの方へ視線を送り。
「秘密というのは、理由があるから隠しておるのじゃ。
…ちと、早いかもしれぬが。こうなったからにはぬしにも動いてもらうぞ?オコジョよ」
「……はいっ!!」
「よい返事じゃ♪」
迷いなく、目を輝かせるオコジョにユキヒョウが笑う。
ゆきやまのふもと…じゃんぐるにいたゴリラやイリエワニ、ヒョウ達と似た間柄。
でも、ふたりの間の空気と距離感は、ゴリラ達とは違っていて。
長という役割を、ともえは少しだけ教えてもらったように感じた。
「誘導灯ノ点灯ヲ確認。ジャア、ツイテキテネ」
ひょい、と一番最初に動き出したのはラッキービースト。
先導に警戒する素振りもなく、するりと中へ入っていくユキヒョウ。
オコジョも遅れないように後を追い、ともえ達もおそるおそる後に続く。
…岩の上とも、さっきまで歩いていた半ば凍った雪の上とも違う、靴底の感触。
平らな……自然に出来た物とはまったく違う、無機質な平坦さ。
「やっぱり…慣れませんわ、ここ」
「歩きやすいんじゃがのー。…勝手が違いすぎるのも困りものじゃのう」
進行方向を示すように並ぶオレンジ色の光が、暗い通路の足元だけを照らし。
何気なく触れた壁はざらざらとした、土とも石とも違う質感。
ぼんやりと、闇に慣れたきた目がひろう通路の全容。
ごにんで歩いて、まだまだ余裕のある広さ。
みんなが荷物を抱えていたとしてもおそらく普通に通れるだろう、目的を持った機能性。
この通路が自然に出来たものでないと主張する、壁に埋め込まれた金属の枠組み。
それなりの距離の先、ぽっかりと口を開けている通路の出口がなんとか視認できる。
…暗闇の中、規則的にずらりと並ぶ金属の枠とオレンジの誘導灯。
そこを進む自分達は、まるで巨大な何かの喉を通り抜けようとしているようで。
理由も分からない不気味さが、ともえの口数を減らす。
―――その光景が、記憶のどこかを刺激するのか。
視界と脳裏にちらつくノイズ。
白昼夢とも幻覚ともつかない、正体不明の影が揺れる。
…分からない。
思い出せない。
でも、知っている。
あたしは、きっと……
「………ともえさん?」
「……う、ううん。なんでも、ないよ…」
……ここに、来たことがある。
気にかけてくれたイエイヌに、なんとか返事をして。
きゅっと。
何気ない素振りでイエイヌが手を取った。
「…もう少しですから。がんばりましょ、ともえさん」
つないだ手から伝わる体温。
不思議なほどに不安が薄らいでいく。
それ以上の追求をしないイエイヌの気遣いが、今のともえには嬉しくて。
「……うんっ」
出来るだけ元気な声で、ともえはそう返事をした。