けものフレンズR Returning a favor 作:社畜狂戦士
……微睡みは不意に破られる。
反応したのは耳が先か。
それとも気配を捉えたが先か。
軋むドア、唸るような吹雪の叫びが小屋の中まで届いた後。
「ともえさん!しっかり、しっかりしてください!!」
「かっ、かかかかきかかっっこっほぉぉ……っ!!」
転がり込むようにやってきた騒音。
入り込んだ凍り付くような外気に目を開き。
身じろぎせず、夜目の利く視線だけで何者かを探る。
…ふたり。
元気な方と、そうでない方と。
見た目、臭い、気配。
そのどれもが知っているモノと違う事を確かめ。
「その気」になれば、狩れる。
すぐさまそう判断し、獣は再び目を閉じた。
…外は、吹雪。
ならば《よそもの》が避難所にやってくる事もある。
狩るのはたやすいが「やまのおきて」、なれば。
………。
無視して、寝る。
獣の出した結論はそれだった。
「だっだだだだだ、、だいっじょおぶぅ…!!」
「大丈夫じゃないですね!なにかさがしてきますから…!!」
がさがさ、ごそ。
…小屋の中を物色し始める音。
ぱたぱたと、小走りに動き回る足音。
「毛布ありました!とりあえずこれを…!!」
ごそごそ、…ごとん、ぎしっ。
重量感のある音とともに床が揺れ。
テーブルを横倒しにでもしたのだろうか。
じりじりと体温を奪うすきま風が遠くなる。
…混乱、してるのだろう。
あまりに騒々しいなら……
…いや、むしろ。
ここで《よそもの》に手を出す方が、「やまのおきて」に背くことになるか。
目を閉じたまま巡らせた思案。
騒音を拾う耳と、こめかみの辺りがぴくぴくする。
…無視、無視だ。
「い、いいいいいいいいぇいぬちゃ…ア、レ……!!」
「ど、どれです!?これですか!?」
ごとん、ごとん。
がらがらがら……
…積んであった何かが崩れる音と振動。
「こここ、こっこれで…っ!!」
がたごと、がさ、がさがさ。
がらがら、ごそ。
崩れた何かを使って何かをしてるであろう、音。
……獣は無視した。
「あ、あああ、ああああああ」
「ひろいます、わたしがひろいますから!!」
…何かを落としてしまったらしい。
それを元気な方が必死に取り繕おうとする声。
床に散らばった何かをかき集め。
「ともえさん……!!」
「う…くっ……!!」
…かり、かりかりかりかり、かり。
軽い何かをひっかこうとする、音。
「だ…め……、手……ふるえ、ちゃって…」
震える、声。
寒さか、絶望か。
…その両方か。
………獣は無視した。
無視、しようとした。
「い…ぇいぬちゃ……おね、が……!」
「え、ええええ!?や、やってみます、けど…!!」
恐怖に震える声。
未知への、でなく。
見知った恐ろしいモノへ挑む恐怖。
…そして、それが失敗を許されないことと理解しているゆえの、恐怖。
「と、ともえさん………う、ぅうう……!」
切羽詰まった声。
せめぎ合い、交錯するためらいと覚悟。
……う る さ い。
ゆらり、身を起こす。
冷え切った空気に、逃げていく体温。
血が冷え、研ぎ澄まされていく苛立ち。
…何だというのだ。
何だというのだ!
…獣は、非常に、不機嫌だった。
……じゃらり。