アリス
「なにこれぇええええええええぇぇぇぇっ!?」
目が覚めたら身体が縮んでいて、物凄く可愛らしい人形のような女の子になっていた。それもウェーブのかかった綺麗な金糸のような髪の毛が肩の少し下まである。瞳は水色のような碧眼で、とっても可愛らしい少女だ。服装は昨日、着ていた通りの姿でズボンや下着が落ちて裸にぶかぶかのYシャツになっていた。
鏡の前で頬っぺたを触ってみると、鏡の中の少女も同じように頬っぺたを触っている。すべすべてモチモチな柔らかい感触をしている。手も身長も小さく、身長はだいたい110㎝くらいだろう。
元々は男性だったというのにこの変わりよう。ありえない。というか、服装がやばい。
「声も高いし、息子も無い。完全ニ女ノ子ジャナイデスカ……」
口から可愛らしい高い声がでてくる。怖くなって身体を抱きしめながら座り込んでしまう。そんな状況で少し落ち着いてから、部屋を見渡してみると……俺が居た自室じゃない。何時の間にか拉致されて性転換までさせられてしまったようだ。
この状況で考えられるのはエロ同人みたいにやばいことをされるぐらいしか思いつかない。
と、とりあええず部屋の中を確認してみよう。アニメや漫画で拉致されて性転換されるなんてよくあることだし、うん。クトゥルフ神話TRPGの動画とかで見ているし、なんとかなると思いたい。
そんな訳で部屋の中を見渡してみる。まずこの部屋は寝室のようで、俺がさっきまで寝ていたベッドがある。ベッドの上は基本的なシーツと枕、布団、大きな本が置かれている。いや、この本はかなり怪しい。他にはテーブルと椅子があり、テーブルの上には水差しとコップが置かれていた。それと外に続くであろう木製の扉がある。
「まずこの部屋で怪しいのはこの本だよね……」
ベッドにあったのは昨日、古本屋で買った大きな本だ。それを自室で眠りながら読んでいた。いたはずだ。
「あれ? 俺は誰だ? 名前や家族は? え? え? なにも、思い出せない……なんで、なんでっ! 記憶が消されてるっ! 嘘っ、そんな……」
頭を抱えて座り込んで、嘆いていると恐怖と悲しさ、不安から涙が溢れてくる。
どれだけ思い出そうとしても無理だった。泣いても誰もやってこない。原因となっていそうな大きな本を確認してみる。本の題名は『Grimoire of Alice』。表紙に黒い汚れがあり、緑色の表紙を汚している。左右に「」マークと文字は金色で描かれている。
英語を普通に読むと、グリモワール・オブ・アリス。直訳するとアリスの魔導書。この本の持ち主か、書いた人がアリスなのだろう。詳しく見てみると、表紙の黒い汚れは変色した赤黒い血のように感じる。
不気味に感じて慌てて手を離して別の部屋に逃げる。木製の扉が開こうとドアノブを回す。けれど鍵がかかっているのか、動かない。部屋の中に鍵があるかもしれないし、探してみる。
でも、見付からない。ベッドの下とか、水を全部飲んでお腹が痛くなっても、その下に鍵なんかない。そもそも鍵穴もないので別の物かもしれない。そうなると怪しいのはやっぱり、この不気味な大きな本に違いない。
試しに持ってみるけれど、重みなんてない。片手で持ってみたけれど、全然大丈夫。本を手に持った状態でドアノブを回して引っ張ってみると、普通に開いた。どうやら、この魔導書がないと開かない仕掛けみたいだ。
隣の部屋はリビングとダイニングが一緒になっているようで、キッチンもあるし冷蔵庫もある。ただし、成人用の大きさのようでこの身体にはとても大きい。寝室以外にも扉が三つほどある。一つは鋼鉄の扉で中に何があるかわからない。もう一つは洗濯機のある脱衣所で、お風呂場となっていた。最後の一つはトイレだ。これらを探索しても何も見つからなかった。普通に使えそうではあるし、カメラの類いも何も無かった。ただ、トイレットペーパーも予備はないので、する時は水で流してからタオルで拭くしかない。
とりあえず、次に食料を確認してみる。魔導書をテーブルに置いて冷蔵庫の中を確認してみるために手を伸ばして開けてみる。中にあるのはコンビニ弁当が八個だけあった。賞味期限がかなり怪しいけど、これしか見付からないので、二つを除いて全部を冷凍庫に移動させて冷凍する。これで賞味期限はある程度、気にしなくていい。幸い、この小さな身体なら、コンビニ弁当一つで一日が過ごせそうだし。後は水だけど、台としてテーブルにあった重い椅子を一生懸命に運んで、乗ってから水道水を流してみる。流れてきた水に指を突き入れてみると、ひんやりとする。
「冷たい」
少し水をコップに取って、口に含んでみる。確か、ピリッと痺れたらアウト。でも、なんともないので、この水は大丈夫だと思う。不安だから、一回沸騰させてから飲んだら安全か。
これで水は大丈夫だし、一応試してみよう。テーブルに魔導書を置いたまま、開けた状態にしたドアを潜ってみる。魔導書はどうなったか、不安に思って振り返ってテーブルの上を見てみる。テーブルの上には魔導書は無かった。
「え?」
ふと下を見ると、
「もう、怖いとか思ってられない……魔導書を読むしかない」
魔導書を開いてみる。この魔導書を読んだ記憶すら失っているので、本当に恐怖しかない。それでも最初のページを読んでみる。最初は意味の分からない文字で書かれていたけれど、しばらく見詰めていると読めるようになってきた。
1.
2.
3.
4.
この内容だと、前の所有者はお婆さんの姿をしていたお店の人だ。そういえば彼女は黄色い外套を着ていて、アリスで好きなキャラクターはいないかと聞いてきたな。なんていったっけ?
そうだ。東方のアリス・マーガトロイドと言ったはずだ。だが、この姿はアリスはアリスでも、どう見ても旧作のアリスだと思われる。あっ、もしかしたら東方のアリスとしか言っていなかったから旧作になったのか。つまり、この身体はロリスということになる。彼女の二つ名はWitch of Deathや魔法の国のアリス。まあ、便利ではあるしいいか。それに今更だ。この魔導書に書かれた通りなら、俺はすでにアリスになっていて、
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ネーム:
ベーシック:東方・旧アリス
アリスポイント:1
スキルポイント:3
アリス(東方旧作):《捨食》《捨虫》《魔力Lv.1》《人形操作Lv.1》《バリア(反射)Lv.1》
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こんな風に書かれている。これってつまり、俺自身は
まあ、東方と答えた俺は運がいい。何故ならアリスは東方の魔法使いで、魔法の国のアリスは捨食と捨虫を習得している。
捨食は食事を取らなくても魔力で補え、捨虫は身体の成長を止める魔法だ。つまり、魔力さえあれば食べなくてもいいし、成長もしない。不死ではないけれど不老である。いや、そもそも成長するのだろうか?
この書き方なら本体は魔導書なのだし、旧作アリス、ロリスとして成長するかどうかも不安だ。まあ、気にしていられない。というか、アリスなのに人形が無いというのはこれいかに。まあ容姿端麗、眉目秀麗で異性のみならず同性からの印象も良いのは間違いない。
アリスポイントというのはアリスを解放する力みたいで、触れてみると羽ペンが出てきて、新しいページになった。もしかしたら、これで俺が知っているアリスの内容を書けばいけるのかもしれない。一応、ロリスを触れてみると勝手にそのページになった。他のページには何も書かれていない。このことから、予想通り、新しく書けばいけるはず。
俺をここに監禁した相手が何を考えているのかはわからないが、せっかくこのような能力があるのだ、強いキャラの力を手に入れよう。というか、死なない為にもう一つのアリスを増やそうと思う。彼女は内臓がえぐられる様な大怪我を負っても再生することができるし、人形師として力は有る。
「久遠寺有珠」
声に出しながら新しいページに彼女、久遠寺有珠の名前を書く。しかし、何も起こらない。ただ、不思議なことに他に何を書けばいいのかわかってくる。彼女はTYPE-MOON発売のビジュアルノベルゲーム、魔法使いの夜の登場人物のひとり。
世界に五人だけいる魔法使いの蒼崎青子の友人にして共犯者。魔術における先生にして相棒。蒼崎橙子とは旧知の仲、青子とは一年の同居生活。基本的に人間嫌いで、青子とは立場上仕方なく関わりを持ったに過ぎないが、いつの間にか青子の唯一の友人になっていた。
細い手足と陽の光を知らぬ白い肌、憂いがちな趣きの、美しい人形のような少女で、人間的な表情が乏しく、魔術師としての生き方を絶対としている。日常生活はあくまで正体を隠して魔術を行うのが魔女としてのあり方だから続けているに過ぎない。古より伝わりし魔女としての教えと誇りが彼女にとっての絶対不可侵のルールであるため、人間らしさを臭わせる道徳や感情は不要としている。
生まれる前から魔女であることを義務付けられていたため、十六歳にして魔術師として完成している。童話をモチーフにした呪術、薬学を得意とするワンダーランド系の魔女。まさに彼女もアリスである。お城に自ら閉じ込められたお姫様。永遠の令嬢。最後の鳥。今の境遇的にもあっている。
能力はプロイキッシャーと魅了の魔眼。プロイキャッシャーは童話の怪物とも称される有珠の使い魔。略称はプロイ。童話をモチーフとしており、元となった伝承や童話に即した使用・発動条件があるものの、発動可能であるなら、あらゆる寓話、あらゆる不思議を許容する。それと全身には膨大な量の魔術刻印が刻まれており、その範囲は全身はおろか骨格、内臓にいたるまで。刻印がオートで治癒魔術を行使される。これが先程言った、生き残るための手段。ただ、非常に運動音痴なのが欠点だろう。
書き終えると、急激に眠くなってきて、意識が真っ暗に染まっていく。
目が覚めると、
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ネーム:
ベーシック:東方・旧アリス
アリスポイント:0
スキルポイント:3
アリス(東方旧作):《捨食》《捨虫》《魔力Lv.1》《人形を操作する程度の能力Lv.1》《バリア(反射)Lv.1》《弾幕Lv.1》
久遠寺有珠(魔法使いの夜):《魔術刻印Lv.1》《プロイキャッシャーLv.1(左目)》《魅了の魔眼Lv.1(左目)》《運動音痴Lv.9》
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ページに書かれているスキルに愕然とした。何故、運動音痴まで入っている。しかもレベル9という高さ。これはまずい。非常にまずい。しかも期待していた魔術刻印はレベル1だという。なにこれなにこれ、こんなの
って、私? 俺じゃなくて私? あれ、なんで私って言ってるんだ? これ、もしかして話し方もアリスに、女性になっていくのか!?
「おっ、私は男、男……女、いや、なにこれ、怖い、怖すぎる!」
恐怖からベッドで蹲ろうとして、慌てて立ち上がる。走ろうとすると、何も無いところでコケてゴロゴロと転がって思いっきり壁に激突した。その痛みのあまり、泣き出してしまう。運動音痴レベル9はかなりやばい。生死に直結する。バリアを使って動かないと死ぬかもしれない。
これは困るので何か対策が無いかと思って運動音痴の部分に触れてみる。するとスキルポイントを消費しますか? と聞かれたので押してみる。するとレベル8に下がった。デメリット系はスキルポイントで消せるみたいだ。ちょっとこれは死活問題なのでレベルを限界まで下げる。運動音痴がレベル6までなってくれた。これで死ぬほどではないけれど、なんとか運動はできるみたいだ。ただ、気をつけないとバランスが崩れて倒れそうになる。多分、自転車も乗れないし、水泳も駄目だろう。体育は一応参加できるレベルにはなった。久遠寺有珠はどうしようもないレベルなので仕方がない。
後、壁にぶつけて出来たたんこぶは魔術刻印さんがオートで消してくれた。なので怪我はない。これからどうなるか、とっても不安だ。
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