アリスと不思議な世界達   作:ヴィヴィオ

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第17話

 

 

 さて、タツベイを捕まえるのだけれど、どうしようかな。私が今居るのはウラウラ島のマリエシティ。タツベイが居るのはメレメレ島の三番道路だったかな。確か、ゲームで三番目の道路でひたすらタツベイに仲間を呼ばせてボーマンダの超低レベルを捕まえた覚えがある。

 ゲームだと低レベルだからボーマンダは捕まえられた。でも、現実となると進化前の子供が居るのだから、親のボーマンダ、高レベルがいても何もおかしくない。むしろ居るだろう。空の破壊者、ボーマンダに勝てるはずはないので逃げるしかない。こちらには時速100キロを出せるメタングのメルクが居る。移動でもメルクを頼るつもりだ。ここからメレメレ島まで結構な距離はあるし。まあ、出たとこ勝負というわけで行ってみよう。

 

「ご飯、食べ終えた?」

 

 ポケモン達が返事をしたので、餌入れを回収してしっかりと水場で綺麗に洗って返す。ポケモンセンターが無料だとはいえ、食器類は自分で持ち込んだ奴に料理を入れてもらうか、レンタルしないといけない。無料で宿と食事を提供しているからこそ、片付けなどは自分でしないといけない感じかな。

 洗い物を終えたら、上海と蓬莱に服だった布で綺麗に拭いてもらい、トランクケースに片付ける。

 

「皆の食器も用意しないといけないね」

「ホラーイ」

「メタァ!」

「クギャ」

 

 ポケモンも人形達も頷いたので、後で買いに行こう。でもまずはメルクとマザー以外のポケモン達を仕舞う。

 

「ダンバル達と戻って」

 

 蓬莱と上海にも手伝ってもらいながら、モンスターボールから赤い光線を出してポケモン達をモンスターボールの中にいれる。この中は快適らしいけれど、一体どうなっているのかわからない謎技術だ。

 

「上海と蓬莱は私の護衛。マザーはその、良ければクッションになって……」

 

 私が言うと、マザーがもう仕方がないなぁという感じになってしまった。でも、仕方がないと思う。メタングの上って鋼で平らだし、冷えると思う。そうなるとお腹やお尻が痛くなる。こっ、こればっかりは仕方ない。

 

「ライドポケモン用の装備も用意しなきゃね」

「クガァ」

「はい、行きましょう」

 

 人形とポケモン達を連れてジョーイさんと看護師をしているタブンネに挨拶をする。

 

「お世話になりました。また来ます」

「はい。お気をつけて。それと珍しいポケモンを連れていると、それを狙ってくる人も居ますから、気をつけてくださいね」

「はい。もちろんです」

 

 まあ、私の容姿に油断しているところを魔法で殺っちゃえば楽なんだよね。一番楽なのは魅了してから自首させること。次点で奇襲。こっちが精神的には辛いけど、私の情報が漏れることはないのでお勧め。人としてはどうかとは思うけどね。超絶可愛い天使のアリス様の身体を狙うのだから、極刑は致し方無い。自分のことを言っているようで、ナルシストみたいだけど、実際にアリスお母さんに殺されるだろうから相手を殺るのは間違っていない。本当にアリスは可愛いからね。

 ちなみに襲われる確率は八割くらいだと思う。チンピラだとスカル団。それ以外だとロケット団とか、銀河団とか、ガチでやばい連中がいっぱいいる。それとカイオーガとグラードンを手に入れるためにアクア団かマグマ団、どちらかに所属しようと思っている。内部から情報を収集し、どこかでダイゴさんと渡りをつけて情報を流す。

 私は紅色の玉と藍色の玉を強奪するついでに連中の資金を根こそぎ奪って、内部から重要施設を破壊する。特に潜水艦に乗る時に私だけで乗っていければ最高だ。流石に海底に向かう能力は私にはないし。でも、海底洞窟で戦う方が戦いやすいんだけどね。

 

「よし、それじゃあメルク、お願い」

「ぐがぁ!」

 

 メルクが身体を地面に着ける。その上にマザーが乗って広がってくれるので、そこに更に私が乗る。すると下半身がマザーに包まれてしっかりと固定化された。上海と蓬莱は私の膝の上に仲良く座ってきたので大丈夫。

 ぺたんと女の子座りをしながら、メルクに指示を出す。

 

「発進! 目標、メレメレ島!」

 

 メルクが電磁浮遊で浮き上がり、高速移動で加速していく。風圧が凄いのですぐにバリアを展開する。反射するものは風圧と紫外線だけにして、他は通す。そうじゃないと磁力による移動すらできなくなってしまうし。

 

 

 

 

 時速100キロメートルで空を飛ぶと速い速い。すぐにウラウラ島からメレメレ島に移動できてしまった。ライドポケモン、本当に便利だ。

 メレメレ島はアローラ地方の北西に存在し、島の南西にアローラ地方最大の都市ハウオリシティがある。北にリリィタウンという小さな村があり、南にテンカラットヒル、北にメレメレのはなぞのの広がる山がある。守り神はカプ・コケコで、首長はハラ。キャプテンは今はどうかわからないけれどイリマという人。モデルはハワイ州のオアフ島。カプ・コケコにも使われているゴールデンイエローはオアフ島の公式カラーで、イリマは公式の花だ。島名の由来はハワイ語で黄色を意味しているので間違いなし。

 この島の三番道路にある橋の南側でタツベイが存在している。木の実の木があるのも特徴だ。

 

「あそこかな。降りてみて」

 

 メルクが降下してくれて、しっかりと場所を確認できた。木の実の木の近くには野生ポケモンがいて、食事をしている姿がみえる。アブリー、マンキー、ヤングース、タツベイ、マケンカニ。数はそれぞれ10体くらいいて、本当に運がいい。

 ここは空から奇襲しよう。……やってることは悪役だよね。よし、止めよう。

 普通に降りて着地する。気の弱いポケモン達はすぐに逃げだしていく。残ったのは好戦的なポケモンだけだ。なので、私は手持ちのポケモンを全部出す。ダンバル17体。メタング2体、メタモン六体。メタモンはキュウコンに変身させて怪しい光で混乱させる。そこにメタング達に突進させてダメージを与える。

 タツベイやマンキー、ヤングースはこちらに攻撃をしかけてくるが、メタングがメタルクローで対応していく。私はモンスターボールを投げて手早く戦闘不能にしたポケモン達を捕獲していく。

 タツベイ達が泣き出すと、何処からかタツベイ達が突撃してくる。その数55体。一気に仲間を呼んだようで、親まで来そうなレベルだ。

 

「後から来た者達を優先的に狙って。マザーやメタモン達はギャラドスに変化。破壊光線で一気に蹴散らして!」

 

 ギャラドスに変身した子達は口から破壊光線を出して纏めて処理する。耐えていても、そこにダンバル達が突進してくるので、吹き飛ばされて一体一体、メルクやメタングのメタルクローで処理されていく。

 そこを私が近付いて魅了し、モンスターボールに大人しく入らせる。捕獲に関しては本当に便利な能力だ。

 12体のタツベイとマンキー、ヤングース四体のポケモンを捕まえた。他にも転がっているタツベイをモンスターボールに収めようとしたら、残りが一斉に鳴いて遠くから咆哮が聞こえてくる。

 

「撤収準備。貴女達、私についてきたら強くしてボーマンダにしてあげる。くる?」

 

 残っている子達にも聞いてあげる。タツベイ達は地べたを這いずりながら、こちらにやってきて見詰めてくる。モンスターボールを差し出してあげると自ら入っていく。なんていうことはない。こちらの実力を示せばちゃんと仲間になってくれる。特に好戦的な子達はこれができるのでいい。ポケモンといえど野生動物のようなものなので、強いことはステータスになると思う。一部、残る子達はいるけど問題ない。その前に捕まえた子達もいるし。私はアニメの主人公のように甘くも優しくもない普通のポケモントレーナーだ。捕まえた後はしっかりと育てるつもりだし、無責任に捨てたりはしない。ちゃんと里親を探す。でも、それは捕まえる前は例外だ。

 

「さて、戻りますよ。ボーマンダと戦うのはきついし、にっげろー」

 

 モンスターボールをトランクケースに仕舞ってから、メルクの背中に飛び乗って逃げる。メルク達を捕まえる時と少ししか変わっていない。一日でそんなに強くなれるはずもないし。

 しかし、思ったよりも時間が経ってない。これからのことを考えるとアレも居る。エーテルハウス、寒そうだし暖房役も確保しましょう。

 

「進路をアーカラ島にお願いします」

「ガッ」

 

 ヒノヤコマやファイアローとならまだ戦えるかもしれない。ボーマンダはこっちの防衛を平気で貫通する火力を持っているけれど、この二匹なら、どうにかできると思う。怪我してもいいから戦ってみるか。

 ただ、四倍の弱点である岩タイプの技って誰か持ってたっけ。誰も持ってない。それにメタングは弱点として炎がある。飛行は半減だけど。まあ、大丈夫か。土の弾幕を用意してもいいし、考えている方法もある。

 

「見付けたっ!」

 

 ファイアローは基本的に単独かつがいで行動しているため、仲間を呼ぶ心配もない。しかも色違いで全部が赤い。身体も凄く大きい。むしろ、なんか絶対ヤバい奴だ。

 全長は1メートルと低めだけど、全身が炎に包まれている。空を飛ぶと、その跡には火の道ができている。どう見てもやばい。というか、本当にファイアローなのか? 炎を身に纏って飛んでいるからファイアローだと思ったけれど――

 

 

 そ い つ と 目 が あ っ た

 

 

 ――やばい。そう思った瞬間、あちらは体勢を変えてこちらに身体を向け、尋常じゃない加速で突撃してきた。

 

「避けてっ!」

 

 メルクが磁力を使って一機に下がる。だけど、相手はもっと速かった。次元が違う。音を置き去りにして突撃してきたのだ。軽く横を通り過ぎるだけで吹き飛ばされ、燃やされかけた。メルクも私もバリアでどうにか防いだから大丈夫だったけれど、やばすぎる。

 

「っていうか、どう見てもファイアローじゃないっ!」

 

 すれ違った一瞬だけど、相手は文字通りの炎の鳥。伝説ポケモンから準伝説ポケモンへと格下げされたポケモン。

 

「確かに炎と鳥タイプのポケモンなんだけど、なんでここに居るのっ、ファイヤー!」

 

 相手は海面すれすれになると、水分を蒸発させながら更に加速していく。そのまま90度で上に上昇していく。高速移動にニトロチャージ、ゴットバードは最低でも使っているのだろうか、相手との速度が違い過ぎて話にならない。

 これはまずい。逃げることもできそうにない。勝ち筋はあるんだろうか? いや、生き残ることを優先に考えないといけない。まずは弾幕を展開して相手の動きを封じる。幸い、下は海だ。水はファイヤーの苦手とするところのはずなので、海面まで下がって弾幕を展開する。

 

「メルク、海面ギリギリまで降下っ! 最大速度! 海の中に入ってもいい!」

「がぁっ!」

 

 海面まで最大速度で地面に落ちる。浮きそうになる身体をメルクに掴ませ、私は空中に機雷に見立てて弾幕を配置してく。制空権を取られるのはまずい。でも、速さが違い過ぎて対応できないのだから仕方がない。

 マザー率いるメタモン達がファイヤーに変身させられればまた違うかもしれないが、変身できるかはわからない。それに変身しても対応されるかもしれない。それならまだ出さない。

 相手のファイヤーは空で停止、日本晴れを使ったみたいで周りが急激に晴れになって熱くなる。陽射しが強くなり、炎の技が1.5倍、水の技が0.5倍となった。これはまずい。こっちの威力が低くなりすぎる。

 

「メルクっ、雨乞い!」

「??」

 

 ちっ、覚えていないか。これはどうしよう。本当にまずくなってきた。そうこうしているうちに飛んできたので全力でバリアを展開する。ファイヤーはこちらの弾幕を羽をたたんで避けたり、炎の噴射で軌道を変えて避ける。全てを回避してこちらに来ながら口から数メートルはあろう炎の塊を放ってくる。それを電磁浮遊と高速移動で回避する。そして、ファイヤーが突っ込んでくる直前に移動してバリアに直撃させる。バリアは破壊されるけれど、それなりのダメージを反射する。それに加えて特攻でダメージを負ってくれてたらいいなぁ。

 海面に到着したので、魔弾を海水を使って生成して上海と蓬莱と共に放っていく。それでも相手の熱量にまけて途中で蒸発していく。しかし、温度を下げることはできる。

 ただ、ファイヤーはこちらに向かって炎の渦を放ってきた。周りの海面が一気に炎に包まれて服が燃えて、肌が焼け爛れてくる。そんな中で突撃してくるファイヤーに向けて指示する

 

「メルク、サイコキネシス!」

 

 メルクのサイコキネシスでファイヤーの動きを阻害する。なんとか速度が落ち、そのタイミングに合わせてバリアを展開した。これで反射ダメージを与えようとしたら、口を開けてソーラービームを撃ってきた。日差しが強いのでチャージは即座に終わり、それが反射される。だが、ファイヤーは気にせず突撃してきて、避ける暇もなく身体に激突され、全身を焼かれていく感触がする。熱いと思ったら痛みに変わる。

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 激痛で叫び声を上げるなか、魔術刻印を総動員させて再生させる。焼かれると再生を繰り返す地獄だ。でも、()()()()()()()()()()()()。だから、激痛の中で歯を食いしばりながら、黄衣の外套を着ている部分で抱き着いて動きを止める。

 これが多分、最後のチャンス。だから、蓬莱と上海に想いを伝える。二体はちゃんと私の指示通りに私達を包んで一緒に海に突撃していく。下に居たメルクが離れて迂回し、上空に移動したら上から圧し掛かるようにして加速して私達を海に押し入れていく。どうやら、メルクも私の意思を受け取ってくれたようだ。流石はエスパータイプ。

 黄衣の外套の部分は燃えないし、熱くもならない。流石は神器。これさえあればファイヤーだってどうにかなるかもしれない。

 そのまま海面に激突し、海の中へと入っていく。当然、全力でファイヤーも抵抗して身体から炎を出していくが、こちらも放すつもりはない。周りが水泡に溢れて沸騰していく。

 だが、気にしない。黄衣の外套以外の場所に何度もバリアを展開しては壊され、再生して張り直すを繰り返す。酸素もなく、魔力もどんどん減っていく。

 

「「っ!」」

 

 上海と蓬莱が私の腰からモンスターボールを取り出して、中からメタモン達を出してくる。マザーがギャラドスにになり、一斉に背後からハイドロポンプを放ってファイヤーに当てていく。

 ファイヤーが身に纏う炎は海水をどんどん蒸発させていくが、海水が戻ってくる量の方が多い。

 口内や食道などが火傷して行く中、ファイヤーの炎がどんどん消えていく姿に嬉しくなってくる。私は激痛に苦しみながら、死にかけているが、相手もそれは同じ。流石に母なる海には勝てまい。

 余裕が少し生まれたので、我慢しながら空のモンスターボールをファイヤーに当てるが、入りもせずに弾かれてしまった。どうやら、まだ諦めないようだ。

 これで捕まえたかった。次第に意識が朦朧としてきているし、魔力ももう底をつきかけている。でも、こんなところで死んでいられない。必ず生きて帰る。私にはイエローさんやお母さん達が待っているのだから。それにアセロラも待ってくれているかもしれない。だから、諦めてなんてやらない。

 

 私に従えっ!

 

 意思を込めてファイヤーを見詰め、魅了の魔眼を使う。ファイヤーの返答は至近距離から光る嘴による攻撃だった。その一撃を受ければ死ぬ。そう思うような一撃だ。

 死ぬ。そう思った瞬間、上海が槍を持って突撃してくる。が、ファイヤーの翼で弾かれる。間髪入れずに、上海の後ろから迫っていていた蓬莱が彼女にとっての両刃の大剣でファイヤーを攻撃する。顔を打ち付けられ、軌道がそれた攻撃は私の顔のすぐ横を通っていった。その直後、水が一部弾け飛んだ。準伝説のくせに化け物すぎる。

 ほっとしながらもう一度モンスターボールを放つ。今度は入ってくれた。どうせでてくると思うので、次の準備をする。ギャラドス達に締め付けさせる。その上からメタングを出してサイコキネシスでボールを押さえつける。その間に急いで呼吸しに外に戻る。

 

「ぷふぁっ、息するだけでも痛い……しかも周りも熱いし……」

 

 酸素を補給し、トランクケースから人形達とモンスターボールを取り出してからまた潜る。ファイヤーはすでにボールから抜け出して、水中で大暴れしていた。本当に出鱈目すぎる。

 仕方ないので、このまま捕まえにかかる。人形四体も合わせて五回だ。これでいい加減捕まって欲しい。だが、悉く出て来た。

 ファイヤーの身体全体が光っていく。そして、直後に高速回転して水や砂を掻きまわしていく。原始の力、暴風を使ったのだろう。水中でそんなことをやれば渦が発生して振り回される。

 メルク達に指示をしてサイコキネシスで押さえさせ、マザー達には噛みつかせる。歯をしっかりと食い込ませれば自分の力で更にダメージを増やしているだけだ。外れたら駄目だけれど、ギャラドスなら大丈夫だろう。

 そして、渦ということは上からなら接近せずにモンスターボールを当てられる。三回目の正直として投げたけれど、私のは外れた。その時、外れたモンスターボールを上海と蓬莱が二人でキャッチして飛んでいく。

 ファイヤーは口を開けてこちらに向く。その口の中には太陽の光が収束していく。バッと慌てて振り向けば私達の上には日本晴れの青空が広がり、太陽の光が降り注いでいる。渦によって水を飛ばされていたのが、バリアを展開していたせいで気付かなかった。

 このままじゃ上海と蓬莱が死んじゃう。それだけは絶対に嫌だ。だから、必死に考える。私にはそれぐらいしかない。今は魔力もほとんど無くて使えるのはバリアだけ。それも今展開しているものぐらいで……あ、そうか。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なら、反射すればいい!」

 

 太陽の光をバリアで反射する。ファイヤーよりも私が上に居て太陽に近いからこそできる方法。太陽の光を反射すれば何も見えなくなるけれど構わない。後は上海と蓬莱に任せればいいのだから。

 

「ホラーイ!」

 

 蓬莱の叫び声が聞こえ、ファイヤーの断末魔のような叫び声が木霊する。

 

「シャン、ハーイ!!」

「メタァァッ!」

「ガァッ!」

 

 そして、上海達の勝利の雄叫びのような声が聞こえてきたので、恐る恐るバリアを解除して視界を戻すと、海底まで見える渦の中心で光に包まれていくファイヤーの口の中に剣を突っ込んだ真っ赤なオーラを身に纏う蓬莱と、モンスターボールを口の中に突き入れて当てていた上海の姿があった。

 周りにはメタング達がいて、水中で砂嵐を使った後に暴風。これによって弾丸のようになった砂でボロボロになったポケモン達はみな、なんとか生きていた。

 

「勝った?」

「シャンハーイ!」「ホラーイ!」

 

 ファイヤーはモンスターボールの中に吸い込まれ、カチッという音がして出てくることはなかった。でてきた瞬間、蓬莱によって喉を突き刺されるという現状を考えれば当然かもしれない。

 

「と、とりあえず、ファイヤーゲット! って、皆急いで上がってきて!」

 

 ファイヤーが居なくなったことで暴風も解除されて海水が押し寄せてきている。私も慌てて下に行ってトランクケースを回収。モンスターボールに皆を戻してから上海と蓬莱と共に外に出る。

 間に合わない。戻ってきた海水に飲み込まれそうになったので上海と蓬莱をトランクケースに入れて必死に掴んで激流に身を任せる。魔力なんて枯渇寸前だから、これで死ぬかも知れない。そう思っていたら、赤いギャラドスがやってきて私を飲み込んだ。

 不安に思ってギュッとトランクケースを抱きしめていると、吐き出されて身体が打ち付けられる。

 

「ハーイ、アリスちゃん。数日ぶりね?」

「あ、どうも……助かりました……」

 

 相手はエリートトレーナーのお姉さん。しかも激おこぷんぷん状態。よく見れば他にも沢山のトレーナーがいた。

 

「アーカラ島付近の海上で爆発や炎の光線を見たという目撃証言が多数寄せられたの。相手は炎を纏った鳥で、見た事はないらしいのだけれど……どうなったの? こっちからじゃよく見えなかったのよ」

 

 私は無言で指でピースサインを作ってから、そのまま力が抜けて腕を船の甲板に落とす。

 

「それ、提出する気は?」

「……ない、です……これ、私の……」

「でしょうね。後で確認だけさせてね」

「……はい……」

 

 もう疲れたので眠る。この人はきっと信頼できると思うし。

 

 

 

 

 

 目が覚めたらアーカラ島の病院だと思う場所で眠っていた。身体中には包帯が巻かれていて、点滴も打たれている。服も病衣に変えられていて、口には酸素マスク。あの恥ずかしい場所に管が入れられている。どう考えても集中治療室です。ありがとうございました。

 

「痛っ」

 

 身体を動かそうとすると火傷や筋肉痛で凄い痛みが襲ってくる。意識してみると、魔力不足だったのと、魔術刻印が連続発動でオーバーヒートしてしまったみたいで発動していない。でも、これなら魔力を流せば元に戻るはずなので、大丈夫。苦しいからさっさと魔力を流して回復をはかる。

 周りに漂っている炎属性が強いマナを吸い込み、魔術刻印に流して身体を中から修復していく。肌も色々とやばいことになっていたのが、みるみる生まれたての綺麗な赤ちゃん肌に逆戻り。

 再生している間に周りを見渡してみると、トランクケースが近くに置かれていた。その上には上海と蓬莱が武装した状態で仁王立ちしており、その周りに他の人形達も円陣を組んで守っていた。

 

「おはよう」

「シャンハーイ!」

「ホ、ホラーイ!」

 

 二体は私に抱き着いてきて、身体を擦りつけてくるので撫でてあげる。嬉しそうにしながら甘えてくる二人は本当に可愛らしい。

 しばらく撫でていたら再生が完了したのか、身体が凄く楽になった。そうなると邪魔なので酸素マスクを取り外し、腕に取り付けられている点滴を上海と蓬莱に抜いてもらおうとして止めた。この子達は点滴が何かわかっていないだろうし、自分で抜こう。

 

「っ」

 

 ちょっと痛かったけど無事に抜けた。上海と蓬莱は心配そうにしてくるけれど、大丈夫だ。傷もすぐに修復が勝手に始まって綺麗になる。

 

「はい、もう大丈夫だよ」

 

 こくこくと頷く二人を見てから、最大の問題に入る。次に抜くのは尿を出すためのカテーテル。見るのは嫌なので慎重に引き抜くが、こちらは上海と蓬莱に頼もう。

 

「ゆ、ゆくりと引き抜いてね」

「ほ、ホラーイ」

「シャンハーイ」

「あっ、んっ、んんんっ!」

 

 二人に引き抜いてもらうとくぐもった変な声が勝手に出る。無事に抜けたカテーテルは綺麗なままで水滴なんて……ついていたけど気にせずしまう。食事は摂ってないけれど、水分は紅茶をとってたしね。点滴はどっちに分類されるかはわからない。

 恥ずかしかったけれど、一番の問題は大丈夫だったのでベッドから降りて立ち上がってみる。トランクケースを開けて着替えを取り出す。何時ものアリスの服はあるけれど、今は別の服にしよう。アリスお母さんが用意した凄く可愛らしい服ではなく、シンプルな白いワンピース。こちらもお母さんが用意しただけあってフリルがあしらわれているけど地味な部類になる。これを着るために病衣を脱いでいくと、下半身が凄い事になっていた。アレを履いていた。男としても、女としてもこれはアウトだ。下着も新しいのを用意して着替える。

 幸い、食事はしていないので汚れていない。アリスちゃんは魔法少女だから、アレはしなくていいのだ。言ってみたが、あながち間違いではない。アリスちゃんは魔法使いの少女だからな。

 

「どうでもいいか」

 

 ようやく、恥ずかしさも落ち着いてきたので思考を変える。まずはトランクケースを開けてモンスターボールを確認する。みんなちゃんとあるが、何個の空ボールは回収できていない。こればかりは仕方がない。ただ、皆がほぼ瀕死だったり、怪我をしていたりする。特に捕まえたファイヤーだ。確認するとちゃんと居てくれたのでほっとする。命を懸けて捕まえたのに、これで逃げられたり奪われたりしたら困る。

 しかし、これで次に行く場所が決まった。ポケモンセンターだ。回復をしないと話にならない。

 さて、行く場所も決まったので壁にかけられていた黄衣の外套を身に纏う。そこでふと思った。魔理沙お母さんが渡してくれた帽子も被れば完全に魔法少女じゃないだろうか。流石に恥ずかしいからいいか。

 

「行くよ」

「シャンハーイ」

「ホラーイ」

 

 二体が私の肩に座ったのを確認して扉を開けて廊下に出る。それから外に向けて移動していくと、看護師さん達がいるナースステーションに到着した。現実にはポケモンセンターだけでなく、ちゃんと人間用の病院もあって助かるね。ないと困るのだけれど。

 

「お世話になりました」

「あ、はい。お元気で」

 

 しっかりと挨拶をしてからエレベーターホールに向かうと、丁度やってきた。エレベーターからは白い帽子を被った男性が降りてきたので、軽く会釈だけして中に入ってボタンを押す。

 エレベーターで一階に降り、ふと会計がどうなっているのかと思ったが……今はポケモンセンターに行くことを優先しよう。後で支払いにくればいいだろう。あ、保険証とか持ってないけど、お金大丈夫かな?

 

 

 

 

 

 

「すいません、私はこういう者なのですが、海で保護されて担ぎ込まれた少女がいるって聞いたのですが……」

「はい、確かにいます。今も集中治療室で……」

「案内してもらえますか? 許可は取っていますから……」

「すいません、面会できる状況では……」

「いえ、彼女の傍にいる新種のポケモンについてなのですが……」

「駄目です」

「たっ、大変よっ! 259号室の患者さんが居ないわ!」

「まさかっ!」

「いや、私じゃないからね。今来たところだから」

「さ、探さないと! とても動ける状態じゃ……」

「特徴を教えてくれるかな? ボクの方でも探すよ」

「わ、わかりました。では……」

「あれ、その娘ってさっきエレベーターホールですれ違ったけど……」

「いや、そんな動ける怪我じゃないですよ。全身火傷にあばら骨が何本も折れていて……」

「じゃあ、もしかしてボクが見たのって……」

「ふふふふ」

「あははは」

「追ってください!」

「任された!」

 

 

 

 

 

 




アンケートの回答、アリスの知らせありがとうございます。大変助かっております。

 今回のダイス紹介となんでファイヤーさんがいるの? について説明します。
まず、ファイヤーさんがファイアローの代わりになった理由ですが、ダイス目が97.致命的な失敗です。はい、致命的。そこでファイアローさんの炎飛行から、同じタイプのファイヤーさんにでてきてもらいました。本当はクトゥグアにしようかと思ったのですが、これ、アーカラ島が終わるじゃん。
ということで、旅をして火山に立ち寄ったファイヤーさんです。
このファイヤーさん、伝説の鳥(笑い)なんてつけられるレベルじゃないです。個体値でクリティカルではないですが、スペシャル、14くらい出しました。なのでレベルも高レベル。実力も高い。致命失敗も合わせて技の掛け合わせくらいなんのその。
海に叩き込まれても海水を吹き飛ばすことすらできます。でも、所詮は神でもない伝説の鳥さん。神器である黄衣の外套を壊すことなんて無理です。飛行タイプが風の旧神であるハスター様のお力に勝てるはずがなし。壊せないので捕らえることができます。ここで行為判定にクリティカル。それまで悉くフィフティーフィフティーで失敗してたのに、ここで成功。そのまま海にドボン。ここからは出目勝負。五回までの捕獲チャンス、失敗したら死亡。クリティカルしないと捕まえられない。
一回目は一人、二回目は判定成功で人形を使ってモンスターボールを投げる回数、増やすも失敗。三回目にアリスが失敗して、上海と蓬莱がクリティカル。上海と蓬莱がファイヤーを手に入れました。

コロシソコネチャッタ

まあ、本番はグラードンとかだしね! どこまで激しくしようかなあ。今回はフィフティーフィフティーだから、八割失敗かなぁ? ファイヤーがいなければ1割。10以下じゃないと失敗するという鬼畜難易度。どこまで補正を上げられるかが勝負ですね。

オルフェンズのアリス開始時期およびルート

  • 火星でMAの登場から開始
  • ビスケットを助けるため、地球辺りから
  • 女神Aliceの名の下に人類管理ルート
  • マクギリスと一緒。ギャラルホルンルート
  • マクギリスの代わりにアリスになるルート

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