やってきましたカンタイシティのポケモンセンター。上から見るとモンスターボールの形をしている特徴的な円形の建物。自動ドアを潜って中に入ると、広々としたエントランスになっており癒しの空間(?)が広がっている。とりあえず、ポケモントレーナーや研究者の人達がポケモン達と一緒に寛いでいるのは事実なのでいい。
「カンタイシティ、ポケモンセンターにようこそ。ポケモンの治療、またはご宿泊、お食事ですか?」
「ポケモンの治療をお願いします」
「かしこまりました」
定型文みたいなやり取りをしながら、沢山のモンスターボールとトレーナーカードを差し出してお願いする。
「それと飲み物だけ貰えますか?」
「大丈夫ですよ。こちらが券になります」
「ありがとうございます」
ポケモンを預けてから、併設されているレストランの方に移動する。紅茶を淹れてから席に座り、トランクケースから人形達を取り出す。どの子もボロボロで、修理が必要だ。むしろオーバーホールがいるレベル。流石にあの状況で突撃させたため少なくないダメージが入ったのだろう。
とりあえず、上海と蓬莱は流石はアリスお母さんが今持てる全ての技術で作ったとか言っていたような気がしないでもない子達。ダメージはそこまででもない。それでもパーツの摩耗や服は駄目になっているので予備パーツで修正する。他の人形達は総入れ替えだ。
整備道具を使って、上海と蓬莱の身体を交換していく。二体とも嬉しそうに両手を上げて喜んでいる。私は使ったパーツをメモ帳に書き出し、新しく作らないといけない人形のパーツとその材料を調べて購入リストを作っていく。人形作りってやっぱりお金がいる。どうにかして稼がないと……
「すまない。君がアリスちゃんかな?」
「だっ、誰ですか……」
声がした方を向くと、そこには褐色の肌にサングラス、半裸の上から白衣を羽織る独特のファッションセンスをした20代から30代前半と推定される男性がいた。
ここがアローラ地方でなければ変態扱いしても問題ない恰好だ。このアローラ地方は常夏の島なので温かいというより、むしろ熱い感じだ。なので水着姿のような恰好をしている人は少しは居ると思われる。
「ボクはククイ。ポケモンの研究をしている」
ククイ博士。彼はメレメレ島のハウオリシティの外れに研究所を構えている。研究所の外観はかなりボロボロだが、中はかなりの設備が整っており、地下室が研究スペースになっていたはず。その他ヨットも所有しているので、お金はあると思われる。
彼はポケモンの技についての研究に熱心であり、時には自らポケモンの技を受けることもあるというドMの可能性すらある人物である。
「その博士が何の御用でしょうか?」
「君、病院を抜け出しただろう」
「ポケモン達に治療が必要でしたから」
「そうか。それはいい。彼等も治療しようとしたのだが、そこのポケモン達が妨害してきてできなかったらしいんだよ」
ククイ博士が上海と蓬莱のことを指差して伝えてくれる。目覚めた時の様子から、トランクケースと私を死守してくれていたのだろう。ファイヤーが盗まれる可能性すらあったので、その方がいい。
「この子達が……よく頑張りました」
「シャンハーイ」「ホ、ホラーイ」
二体が手を挙げて喜んでいる。それを見てなんとも言えないような顔をするククイ博士。
「博士の目的は私が捕まえたポケモンですよね?」
「それもないとはいえないが、まず病院に戻ろうか。君はわかっていないかもしれないが、重症なんだ。それも命が関わるような……」
「それならもう治しました」
「え?」
「いやいや、そんなはず……」
「この通り、元気です」
腕を力んで見せる。必死に目を瞑って力こぶを作ろうとしたけれど、できない。
「いやいや、聞いた限り全身大火傷で、まともに動くことも望めないかもしれないと……」
「それであっていますよ。でも、治しましたから」
「そ、そんなことが可能なのか?」
「私、こう見えてもサイキッカーですから」
「サイキッカー……確か、特殊な能力を持つ者達だったね」
「はい。自分の治療限定ですが、強い回復力を持っています。だからこそ、捕まえることができたのですが……」
「ポケモンの自己再生みたいな物か」
「そうです。その解釈で間違いありません。なっ、なんなら実演してみせましょうか……?」
痛みを想像してちょっと涙目になりながら伝える。
「いや、それには及ばないよ。でも、検査だけは受けた方がいいからね」
「検査ですか……」
検査と聞いて嫌な顔をする。私の遺伝子情報ってどうなっているんだろうか? 心は人のつもりだが、身体は魔法使いの物で、少なくとも三人のアリスが混ざっている。そんなDNAなんて……って、やばい。これはちょっと魅了の魔眼を人に使うのを解禁して、私の血液を処理しないといけないかもしれない。
「ホラーイ」
「え?」
「シャンハーイ」
「あ、ありがとう」
二人からなんとなく意思が伝わってくるし、身振り手振りで教えてくれた。それによると、採血とかはされていないようだし、着ていた服とかも全部回収済みとのこと。良かった。これから気をつけないと。ミュウツーみたいなの造られたら困るし。
「嫌かい?」
「はい。検査は遠慮しておきます。それで他にご用件はあるのでしょうか?」
「ああ、ある。君が捕まえたポケモンをボクに見せてくれないだろうか?」
「ポケモンですか……」
「もちろん、その子達を含めてね」
ククイ博士は蓬莱と上海も調べたいみたいだ。確かに人形が動くのなんてポケモンぐらいしか考えられないだろう。でも、調べたらこの子達はポケモンじゃないとわかるし、これはばらしても大丈夫だ。問題はファイヤーのことだ。これを教えるのは大丈夫だが、無料で教える訳にはいかない。
「代価はなんですか? 流石に無料というのは遠慮したいです」
「それはそうだね。ポケモン図鑑をあげよう」
「ポケモン図鑑……」
欲しいか欲しくないかと言われたら、欲しい。でも、今はお金の方が欲しい。
「図鑑は要りません。ですので、ファイヤーのデータでお金をください」
「お金か……」
「はい。人形作りにはお金がかかります。ああ、島でもいいですよ。捕まえたポケモン達を世話する場所が要りますから」
「島は流石に無理だなあ……」
「ですよね。というわけでファイヤーのデータは売らせて頂きます」
まあ、レッドさん達にすでにデータを取られているから、そこまでの値段にはならないはずだ。
「実物を見せてくれるかな?」
「構いませんよ」
「その子達に関してはどうだい?」
「この子達はポケモンじゃありませんよ」
「え、違うのかい?」
「はい。この子達は私の力で操作しているだけです。ポケモンのサイコキネシスと同じです」
上海と蓬莱が机の上でスカートを掴んでペコリとお辞儀をする。それにククイ博士は驚愕の表情をしている。
「だ、だが、この子達は君が気絶している間も動いていたのだが……」
「それはそうですよ。私が直接操らなくても、ある程度自動で動かせるようにしていますから」
「それ、ポケモンになってないかい?」
「……否定はできませんね。古代の人はマギアナとかレジギガスとかを生み出しているんですから」
「作り方に凄く興味があるが、一応はポケモンとして登録しておかないか?」
計画通りにすすめば、魔改造したジュペッタを登録することになる。でも、上海と蓬莱は登録しないようにしておこう。
「やはりお断りします。ファイヤーだけでお願いします」
「わかった。それでいいよ。それでファイヤーは?」
「今、治療してもらっています」
ジョーイさんの方に視線をやると、ジョーイさんの方にタブンネがモンスターボールが入った台を持ってくる。ジョーイさんはタブンネと合流してからこちらにやってきた。
「お預かりしたポケモンは皆さん、元気になりましたよ」
「ありがとうございます。バトルフィールド、借りていいですか?」
「構いませんよ」
「助かります。ククイ博士もいいですよね?」
「ああ、構わないよ」
それから、タブンネに案内されてバトルフィールドに移動する。外にあるバトルフィールドでは他のトレーナーが戦っていたりもするが、空いている場所を探す。別に広い場所ならいいので、バトルフィールドじゃなくてもいいのだ。
「あそこにしよう」
ククイ博士が見つけた場所に移動し、そこでバリアを展開してからモンスターボールを投げる。
「出てきて、ファイヤー」
「ギャァァァッ!」
出て来たファイヤーは全身に炎を纏い、こちらを威嚇してくる。なんてことはなく、いきなり炎を放ってくる。
「うぉっ!」
「予想通りですよ」
バリアで防いでいる間にモンスターボールのスイッチで中に戻す。
「まあ、見ての通りです。ファイヤーは私に従いませんので、調べるのも命懸けです」
「これはまた……」
「まあ、無理もありません。博士は私が倒した方法を知っていますか?」
「いや、知らないが……」
「海に叩き落し、水中戦をしました」
「え?」
「ファイヤーにとってあの敗北は認められないのです。私は実力で勝ったのではなく、フィールド効果で勝ちましたからね」
「海に叩き落したのか。それは怒るな」
「それでも勝ちは勝ちです」
おそらく、準伝説ポケモンや伝説ポケモンはプライドも高いし、しっかりと一対一で倒さないといけないのだろう。面倒だ。
「確かにそうだが、これはデータなんて取れそうにないな。どうするつもりなんだい?」
「私の知り合いに預けて教育してもらい、私が使いたい時に借りるという感じにしようと思っています」
ファイヤーは火の鳥。だからこそ、彼女に預ける。不死にして炎を操る能力を持つ少女。八雲紫を通して、報酬としてファイヤーを渡せば手伝ってくれると思う。期待はできないけれど、大丈夫だろう。
「そうなんだね。だが、もったいないと思わないのかい?」
「思いません。私には使えませんから」
「そうなの?」
「だって、人形が燃えるじゃないですか! そんなのありえません!」
「あ、はい」
わかっていないククイ博士にたっぷりと言って聞かせる。人形の素晴らしさについて、70分ほど話したらもういいと言ってきた。後、80分くらいは話せそうだけど、仕事があるらしいので仕方がない。
「お金は渡せないが、ファイヤーを見せてくれたし、何かプレゼントしよう」
「それなら、変わらずの石が欲しいです」
「わかった。用意しよう」
「ありがとうございます」
これで後はファイアローかヒノヤコマを確保するだけでいいです。しかし、着実に孵化厳選の準備は整ってきています。
「そういえば治療費とかいくらでしょうか?」
「わからないから、病院には一番行かないといけないよ」
「はい。今から行ってみます」
「それがいいだろう」
ククイ博士と別れた後、私は病院に移動してから事情を説明し、たっぷりと怒られた。治療費用は結構な値段になってしまったけれど、ほぼ自力回復なので払えないレベルではない。ただ、手持ちがアレしかないのでお土産は沢山用意しないといけなくなった。まあ、ファイヤーを渡すので大丈夫なはず。それにほとんどのポケモンを渡すだろうし、手元に残すのは移動用としてメタングくらいか。八雲紫と相談しないといけないけれど、メルクとマザーは向こうに預けることになるだろうし。うん、ジュペッタを早く手に入れないと。
ファイヤーさんは扱えません。トレーナーレベルが足りません。少なくとも自力で通常バトルして勝たないといけません。
後、人形好きのアリスにとって燃やしそうなファイヤーはNG。今の所は。
ファイヤーさんは東方のあの方のパートナーになります。ちなみに彼女がトレーナーになった場合、ファイヤーさんは三倍ほど強くなります。プレイヤーの支援という名の炎増強されるからです。彼女が気になる人は東方、焼死しない人間で調べてみましょう。まあ、次の東方世界でだしますけどね。
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