アセロラ達とキャッキャウフフなお風呂タイムを終えて、子供達と一緒に眠る。今回、エーテルハウスに連れて来たのは上海と蓬莱。それと作りかけの人形だけ。ファイヤーすら置いてきている。
それでも大丈夫だと思う。警備は過剰だと思われるぐらい設置してあるし、私の人形を操る程度の能力を使って人形に入ったゴースト達に警備計画を教え込んである。そのゴースト達を通じてメルクやマザー、全ポケモンに伝えてある。
「んー」
パチリと目が覚める。寝る必要はないのであんまり眠くならない。隣にいるアセロラや女の子達の顔をみると、しっかりと寝ている。暇だし、起きて魔法の勉強でもしようか。上海と蓬莱を動かして家事をしてもらいつつ、私は魔導書を開いて勉強していく。
膝の上に魔導書を置いて、人形にページを捲らせる。同時に別の人形でノートパソコンを立ち上げ、必要な物を注文する。基礎魔法を改良して武器にエンチャントできるようにしたい。後は錬金魔法で武器を作れるようにもしたいけど、流石にそんなのは載ってない。まあ、これは後で作るとしよう。魔力はレベル9になって潤沢になってきたが、まだまだ基礎知識が足りないしね。
赤ずきんを作るにあたって火の魔法は必須。狼を作るのは影の魔法でいいけど、これも作らないといけない。まずはやっぱり火の、炎の魔法。この世界で作れる可能があるのは炎の石。ポケモンが進化するアイテムだけれど、これを武器に加工すれば使えるかもしれない。いや、流石に武器は無理か。瞳ぐらいならできそうかな。
ああ、人形達の服も縫わないといけないし、時間がない。アリスお母さんは全部自分の手でやっていたけれど、人形達の力を借りた方がいいか。私には時間がないのだし。
トランクケースに糸を放ち、中で寝ている人形達を起こし、針仕事をしていく。でも、やっぱりまともな物が作れないので、子供達に上げる破れてもいい服を作って練習していく。そんな風に過ごしているとアセロラが起きてきた。
「また寝てないの?」
「眠くないしね」
「本当?」
「本当」
「何しているの?」
「皆の服を作ってるの。アセロラの服も作ってあげるよ」
「いいの?」
「いいよ。その代わり、私が居ない時にあそこを見てくれないかな?」
「何処か行くんだよね」
「うん。電話も通じなくなるからね」
「そっか。でも、戻ってくるよね?」
「もちろん」
生きていればだけどね。アセロラと話ながら、彼女に好きなデザインを聞きながら、一緒になって服を作っていく。こういうのも楽しい。そう思いながら二人で話し続けた。
朝、気がついたらアセロラが寝落ちしていて、周りをみると女の子達が起きていて、問題が発生していた。彼女達の周りにはあげたぬいぐるみが浮いていたのだ。
「何故に?」
「お人形さんだー」
「アリスお姉ちゃんと一緒~」
「え~?」
慌てていると、外から扉が開けられる。
「姉ちゃん、変なのが見えるようになった!」
「俺達も!」
え~なにこれ?
「どうしたの?」
「ねえねえ、なんか皆がおかしいんだけど……」
「ああ、うん。えっと……アリスがやってるんじゃないのよね?」
「やってないよ」
「そっか……じゃあ、アリスのせいだね! なんか、私の力も強くなってるし」
どうやら、アセロラの話では昨日のポケモンバトルで受けたシャドウボールの余波が影響しているらしい。それで霊力やら魔力やらで一時的にチャンネルが入れ替わったみたい。あそこは結界で魔力や怨念を集めて閉じ込めているので、霊感などが発達しやすいようだ。それと子供達は怖がるどころか、むしろ大喜びで受け入れて楽しそうにしている。
「アセロラお姉ちゃんと一緒~」
「やったー」
「これで見える~」
アセロラと一緒の物を見たり、感じたりしたいみたいだ。良い子達のようで何よりだと思う。ただ、アセロラは反対しているので説得は任せることにする。私はどっちでもいいしね。
「霊感ってあっても困るんだよ?」
「一人なら疎外感とか爪弾きとか、虐められたりするでしょうけど……」
「皆が一緒なら大丈夫!」
「そうだよー!」
「ん~」
「それにポケモンバトルとかに有利に働きますしね。テレパシーとかサイコキネシスとか、相手の思考を読むとか」
朝食を食べながら話していく。超能力って本当に便利。
「ポケモンバトルでそれは駄目だよ?」
「……試合は駄目か。野生ポケモンとか襲撃された時とかはいいと思うけどね」
「それはまあ、そうだね」
「まあ、力が欲しい人はあそこで過ごせばいいと思うよ? ただ、負の感情が多いから入り浸るのは問題かもしれないけど」
「それ、大丈夫じゃないよ!」
「いや、基本的にゴースト達の餌ですから、純粋なエネルギーしか残らないはず。一応、警戒はして体調の良い時だけにしてね。悩んでる時に来たら駄目だから」
「そうだね、うん。メンタルチェックはちゃんとするよ」
「それがいいかな」
アセロラとのお話が終わった後、子供達に服をあげて最終調整を行う。みんな嬉しそうに新しい服を着て見せびらかしている。フリルのついたワンピースを基本的にして、古着で刺繍や花を飾りを作った。男の子は動きやすいシャツと短パンでポケモンの絵を刺繍してある。
「アリス、お弁当を作ったから持っていくよ」
「ありがとう。一緒に行くの?」
「うん。ポケモンと遊びたいって言ってるから……本当、止めてもきかないから困っちゃう」
「あははは。勝手に行かれるよりはいいから……あ、ここの子達も連れていこうか」
「ここのポケモン達も連れていけばもっと楽しいかも」
アセロラ達とピクニック気分で工房に向かって歩いていく。
工房に戻ったら、数人の人が倒れていた。
侵入者
可愛らしい金髪の幼女が一人で住んでいて、レアなポケモンを持っているとの情報を得た。その上、その幼女はサイキッカーと呼ばれる超能力者のようで、金になる。だから、俺達はレアポケモンを手に入れ、色々と楽しんだ後は本人も含めて売り払ってやろうとやってきた。
「兄貴、ここがスーパーメガやす跡地です。情報では今、金持ちの餓鬼が一人で住んでるはずですぜ」
「よくやった。こっちの情報とも違っていない。確か、ここはゴーストポケモンが多いって聞いたが、処理したんだろうな……」
「そうでしょうな」
跡地のはずが、綺麗に片付けられていて、瓦礫は敷地の境界部分に積み上げられている。ここからこっそりと中を覗いたら建物には
「居るな。行くぞ」
「へい、兄貴」
手袋をしっかりと嵌め、ポケモンを呼び出す。まずはヘドロポケモンのベトベトンだ。ガスマスクを装着してから、毒ガスを放たせる。手下の奴等もベトベトンを出して、毒を吐かせていく。即効性の毒だが、死にはしないし確実に動きを封じることができる。
しばらくしてから建物の中に入る。毒はしっかりと効いているようで、ズバットなどのポケモンが倒れている。俺は手で指示を出してそいつらを袋に入れさせる。モンスターボールで捕まえたかったが、こいつらはすでにモンスターボールで捕らえられている奴のようで弾かれた。だから、一定期間外に出して待つかコイツのモンスターボールを手に入れないといけない。そんな時間はないのでこのまま進んでいく。
進んでいくと、扉があった。鍵がしっかりと掛かっているから、部下がアシッドボムで鍵を溶かしていく。溶かしてから扉を開き、中に入る。中の毒ガスの濃度はかなり低い。キノコポケモンであるパラセクトを呼び出し、毒ガスと一緒にキノコの胞子を放って室内にも充満させる。
「よし、いくぞ」
「「へい」」
中に入ると、まず見えたのは左右に置かれた棚に飾られている人形達。ライトで照らしてみると、まるで生きているかのようにみえるほど精巧な人形だ。
「兄貴、こいつは売れそうですぜ」
「ああ。後で回収するぞ」
「へい」
指示を出して部下に先に行かせる。ちゃんと退路も確保しているし、逃げる手段もしっかりと用意している。ここからは慎重に行かないといけない。灯りが灯っている場所に向かう。
その場所には誰もいない。灯りすらなかった。おかしい。確かに灯りがあったはずだ。
「おい、そっちはどうだ?」
「居ません。もしかして、逃げられましたか?」
「ありえん。ここは包囲しているはずだ。一応、連絡をしてみろ」
「へい……」
そう言って電話をかける部下を見てから、俺も探索する。すると後ろから肩を叩かれた。
「連絡がついたのか?」
「いえ、まだです」
「そうか。なら、邪魔をするな」
そう伝えたのにまた肩を叩かれる。いらつきながらもう一度声をかける。
「おい、繋がったのか?」
「駄目です! 繋がりやせ――」
「ん?」
声が途切れて振り返ると、そこには――
眼から血液を流し、真っ赤に染まった瞳でこちらを見詰める部下の姿だった。
――すぐに距離を取ろうとした瞬間、肩を叩かれる。
「っ!?」
急いで振り返ると、そこには誰もいなかった。先に送り込んだ部下もいつの間にか消えている。必死に探していると、奥に灯りがみえた。そこに金髪の幼い少女の姿が見え、俺は咄嗟に走ろうとした。そうしたらまた肩を叩かれる。振り返っても誰もいない。
「なっ、なんなんだこれっ!」
落ち着け。落ち着くんだ。ここはゴーストポケモンが多いはず。だったら、原因はわかる。
「ウルガモスっ、見破れっ!」
出した虫ポケモンであるウルガモスに卵技の見破るをさせる。これで原因が判明するはずだ。ウルガモスが光り、周りに衝撃が走る。だが、何もでてこない。周りにあるのは精巧に作られた人形だけ。他には何もいない。
「くそっ」
他にも手持ちのポケモン、ニューラやマニューラを出して警戒させる。しかし、何もでてこない。嫌な汗をかくだけだ。
「クスクス」
何処からか沢山の笑い声が聞こえてくる。それなのに姿が見えない。燃やしてやりたいが、それをすると俺まで死ぬことになる。胞子や毒ガスが充満している室内では炎なんて使えない。
「ウルガモス、戻れ」
「クスクス、クスクス」
モンスターボールにウルガモスを戻し、笑い声が聞こえる中、奥に進んで女の子の所に向かう。灯りがついているところから、少女の影が見える。
そこにいるはずだと思って踏み込むと、誰もいない。蝋燭の灯りがついていて、壁一面に人形が飾られているだけで、他には机ぐらいしかない。当然、誰もいない。いや、蝋燭がある机の上に人形が飾られているぐらいだ。もしかしたら、さっきの影は人形の影だったのかもしれない。
「馬鹿な、動いていたぞ……そうか、ニューラ、人形に切り裂くだ!」
「ニャッ!」
ニューラが斬り裂こうと鋭い爪を振るった瞬間、人形は手に持っていた盾で爪を防ぐ。
「やはりか!」
ニューラに指示を出そうとした瞬間、嫌な予感がして後ろに飛ぶと、俺が居た場所に青い服を着た無数の人形が人形にとっては巨大な槍を持って突っ込んできていた。そいつらは空中に浮きながら、武器を構えている。ニューラの方をみれば、串刺しにされて空中に縫いつけられていた。
「クスクス」
「クスクス、クスクス」
「クヒヒヒヒヒッ」
「ミツカッタ」
「クスクス、アソビマショ」
「アリス、アリス、イッショニ、あ~そぼ?」
ニューラは痙攣し、槍を抜かれたのに宙に浮かんで虚ろな瞳にでこちらを見詰めてくる。意味がわからない。なんだ、なんなんだ。こいつらはいったいなんだ! こんなのがレアポケモンだというのか! 聞いていたのと違う!
「ニャっ」
マニューラが飛び上がり、俺の背後から何かを弾く音が聞こえる。振り返ると、赤い服を着た人形が包丁くらいの大きさの大剣を持って浮かんでいた。そいつらは明らかに殺す動きをしていた。
「なんで避けるの?」
「避けちゃ駄目でしょ?」
「抱きしめてよ」
「ふざけんなぁあぁああああぁぁぁぁっ!」
こちらに突撃してくるニューラをモンスターボールに戻そうとするが、できない。すぐに俺は逃げることにした。
「パラセクト、痺れ粉!」
「セク!」
ばら撒かせる痺れ粉に沿って走る。モンスターボールからウルガモスを呼び出し、背中にくっつかせて天井を飛んで突破する。予想通り、連中は下に向かって斬りかかっていた。突破したら、モンスターボールにマニューラとパラセクトを回収し、ベトベトンにはヘドロばくだんを放たせる。
必死に入口を目指すと、人影が見えた。それは部下の連中だった。そいつらは虚ろな瞳で身体中から血を流しながら、両手をふらふらとあげてこちらに向かってくる。
「あ、あにき、たすけてくだせえ。身体中が痛くて、身体が勝手に動いて……」
「痛い痛い、死にたくないっ、怖いっ、怖いいいいいっ!」
「いやだっ、いやだっ、血がっ、血が吸われてっ!」
中にはズバットやゴルバット達に群がられて血を吸われて青白い奴までいる。
「鬼さん、どちら~?」
「鬼さんはあそこ~」
振り返ると、無数の人形が飛んでいた。いや、前の方も同じだった。飾られていた大量の人形が宙に浮かび、武器を持っていたり、シャドウボールを放ってくる。
「あ、あにきっ!」
「はっ、離せっ! 俺だって死にたくないんだ! お前達はもう手遅れだっ!」
「そっ、そんなっ、兄貴いいいいいぃぃぃっ!」
上下からゴースト達が湧いてきて攻撃してくる。そんな中をボロボロになりながらもどうにか突破して外に出る。外には流石にあいつらはいない。
「赤い月ってなんだ!」
驚いていると、ウルガモスがそのまま必死に外にでようと瓦礫の塀を超える。
「へぶっ!?」
「がもっ!」
そのはずだったが、見えない壁にぶつかった。手で触っても出れない。恐怖にかられながら、必死に積み込んで逃げるために用意したトラックを見る。運転席座っている部下は倒れていた。それもトラックの天井がひしゃげていて、上から襲われたかのような状態だ。トラックの上に視線をやると、そこには部下の身体を持ちながら、複数の人形を乗せたメタングの姿があった。
そいつは部下達を塵か何かのように捨てると、即座に移動してこちらに突っ込んで来る。
「逃げろっ!」
急いでウルガモスに指示をだして逃げる。メタングは地面から浮かび、滑るように高速で追ってくる。その上、乗っている人形達がシャドウボールを放ってくるので、こっちは反撃する暇もなく逃げに徹するしかない。
「がもっ!」
「止まる、な……」
ウルガモスが止まり、上を見ると……そこには絶望が広がっていた。ヒノヤコマやズバット、無数のゴースト達が色違いとノーマルのメタングに率いられて空を飛んでいる。背後を見れば室内の窓や扉から無数の人形達が飛び出してきて、建物からはゴースト達がでてきていた。
「あははは、なんだよ、なんだよこれっ! ふざけんなぁあぁああああぁぁぁぁっ! 殺す気満々じゃねえか! 上等だっ! ウルガモスっ、炎のう――」
指示を出そうとした瞬間、ズバットやゴルバットから無数の超音波が放たれる。声が出せない。そんな中、メタング達に光が集まっていく。破壊の光に黒い光達。それが放たれ、ウルガモスは混乱しながらも火炎放射で対抗するが、あっさり貫かれてダメージを負う。そのまま落下していくと、メタングが超音波の中、接近してきて俺とメタングを掴んでくる。これで落下死することはなかったが、何時殺されるのかわからない。そう思った瞬間、手足を折られた。
激痛に苛まれる中、後悔する。たった一人の小娘を相手にするだけの簡単な仕事だった。相手は一人だが、優秀なトレーナーと考えて数を揃えたはずだった。だが、相手は更に数を揃えて警備に充てていた。それもこちらの命など気にせず、死んだらそれまでだという恐ろしい考えでだ。とても小さな子供がする考えじゃない。
「鬼ごっこ、終わっちゃった」
「また遊ぼうね、アリス」
「おやすみなさい」
「えっと、ナニコレ?」
褒めて褒めてとやってきたポケモン達を可愛がりながら状況を確認していく。
「不審者みたいだね~警察よぼうか」
「いや、その前に救急車じゃないですか?」
「悪い人、たおしたの?」
「みたいですね……あ、すいません。警察と救急車をお願いします。」
「アリスお姉ちゃん、ケーキ食べていい?」
「ケーキ? いいですけど……って、なんでこんなにいっぱいあるの? 昨日、なくなってたはずなのに……」
不思議に思っていると、ケーキがどんどん自動的に作られていく。術式を調べると、どうやら魔力が溜まると勝手に作られていく仕組みみたい。そういえば、解除していなかった。ケーキスタンドがある限り、無限に湧いてくるみたいだ。ここはエネルギーがいっぱい集まってくるし、それで復活したのか。
「まあ、いいか」
「?」
「なんでもないよ。それより、この人達のポケモンだけど……治療しよう」
「そうだね。ポケモンは悪くないし……」
「再教育は必要だろうけど、ジュンサーさんにお願いして引き取りたいな。特にウルガモスとパラセクト」
「強いの?」
「強いよ」
やってきた警察と病院の人に全部任せて、ポケモンだけ引き取らせてもらうようにお願いした。ただ、ジュンサーさんにやり過ぎだと言われた。でも、一人だし、悪い人に捕まりたくないからって涙眼で訴えたら許してくれた。巡回も強化してくれるらしい。やったね。それに訴えられても私有地であり、危険で凶暴なポケモンを放しているので許可がない限り、入らないようにと警告文を出している。私の電話番号まで載せてあるので、大丈夫だ。侵入者に容赦はしない。私が命懸けで捕まえたファイヤーや人形達を狙ってくる悪い奴等に天誅を下すのに躊躇など微塵もない。
本当は通路から滲み出るようにゴースト達が襲ってくる。そんな展開にしようかと思ったけど、スーパー跡地に通路なんてない。なのでこんな形になりました。
あ~かいつ~き、あかいつき~こよいはだあれが~
という感じ。因みに赤い月は結界で流入してくるエネルギーのせい。効果はなし。そう見えるだけ。なぜこんな風にしたかというと、ルナティックな状況を再現してみようと思っただけ。
逃がしてメタングとのカーチェイスならぬポケチェイスとかもいいかと思ったけれど、そこまでする気力がなかった。
次は少し時間が空きます。別のもあげないとね。
最後に令和になっても平和でありますように。
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