アリスがボスマラソンをしている頃、王城では会議が行われていた。出席者はこの国の王であるオルトクレイ=メルロマルク32世とその娘であるマルティ=S=メルロマルク。そして、貴族や大臣達である。議題はアリスによって巻き起こされた問題だ。
「結論は決まってるでしょう! 不敬罪や騒乱罪で魔導書の勇者と名乗るあの小娘を捕まえて殺しなさい!」
マルティが叫ぶが、皆は暗い表情をしている。それも仕方がない。
「ですから、それはもうできません」
「なんでよ!」
「何度も説明している通り、今彼女や盾の悪魔を殺そうとすれば即座に反乱と戦争が起きます」
「滅ぼしてやればいいじゃない! こっちには勇者三人にお父様がいるのよ!」
「うむ。わしが直々に討ち滅ぼしてくれる」
「陛下がいたとしても無理です。現状、盾の勇者はどうにかなりますが、この二人が組まれた場合、王都の被害が計り知れないでしょう」
「被害なんかよりこっちの方が大事よ」
「彼女は戦略級魔法を使うのですよ? 王都の前の平原が陥没していることはお知らせした通りです。アレはもはや他の勇者とは違います。最初からそうでした」
「だが、討伐することは可能だろう?」
「ええ、可能です。ですが、その場合は民を殺すことになります」
「いいじゃない。平民なんてどうなろうが、後から増えてくるでしょう?」
「それ以前の問題です。平民を殺せば三人の勇者も敵になるでしょうし、勇者と戦うことになれば国境線に配備されたシルトヴェルトが攻めてきます」
「そちらの対処もせねばならぬか、忌々しい」
「それだけではありません。先の演説によって彼女は僅か一日足らずでこの世界の国々のことも把握しているようです」
「まことか?」
「はい。つけていた影の者が彼女の姿が消えたことを確認しています。おそらく転移魔法を使うのでしょう。そうなると他国に逃げられる可能性が高くなり、国々を扇動して攻めてくるでしょう。何せ我々はそこの王女様のせいで世界の敵をかくまっていると認識されます」
「なんですって!」
「事実がどうであろうと、他国がどう思うかです。陛下は女王陛下の指示を無視して四聖勇者の召喚を行いました。これによって我が国は他の国々から恨まれており、戦争する口実を探されている現状です。女王陛下が頑張られておられるでしょうが、それが台無しになされましたな。今回の件は致命的ですよ。相手はこれ幸いとして世界の敵を匿う我が国そのものを敵として連合軍で攻めてくるでしょう。なにせ、国を滅ぼせば四聖勇者を国々で分けても問題ないのですから」
「わしが居ても攻めてくると?」
「他の勇者を連れて来るでしょうね。魔導書の勇者によって疲弊させられていると考えるかもしれませんし」
「あなた……」
「後、最善策を言わせてもらうのなら、王女を処刑するしかないでしょう」
「ふざけるな!」
「そうよ!」
「では、奴隷にして権力を剥奪。盾の勇者達に引き渡せばなんとか大丈夫でしょう」
「そんなことはできぬ!」
「そうよ! 私は王女なのよ、それがなんで奴隷なんかにならないといけないのよ!」
「決まっています。貴女は嵌めようとして嵌められた。それだけでしょう。今までやってきたことが返ってきただけです」
「私は悪くないわ!」
「……そこまでか?」
「はい。今回の件が商人達から他国に伝わったのか、我が国の国境線に兵を集結させております。早急に対応せねば滅ぼされるでしょうな」
「少し考えさせてくれ」
「お父様!」
「はっ」
今回、アリスがやらかした件の影響はとても大きい。王都で民衆を味方につけたのがいけなかった。本人は脅しのつもりだったが、この国にも当然のように間者である影が入り込んでいる。その者達から国に情報が伝えられたのだ。ここ以外の国は四聖勇者を信仰する四聖教の国々が多い。また盾の勇者を信仰するの者達の国であり、メルロマルクの敵国であるシルトヴェルトは激怒し、他の国々を扇動して世界の敵を討とうと準備していた。
アリス、悪くないもん!
はっ!? 何故か言わないといけなかった気がした。これはやっぱり、結構浸食されてアリスになりだしている気がする。怖い。凄く怖い。これ以上浸食を増やさないために頑張らないと。でも、正直、アリスの能力は色々と必要なんだけどな。うん、今はまだ大丈夫だ。きっと多分。自分が男だということをしっかりと意識しよう。
「シャー!」
「あ、終わった?」
「ガァ!」
シロは私にスリスリと顔を擦り付けてくる。ホワイトサーペントとして生まれたこの子は、ここで手に入れた蛇系の強化アイテムをひたすら与えて潜在能力を解放し、ステータスを補強してあるし、レベルも結構上がった。
「ジュカも食事、終わった?」
「かげ」
「そっか」
テントの外にあるテーブル。その上にあるケーキスタンドからケーキを取って皆に食べさせてあげる。これは私の魔力の塊でもあるので、使い魔契約をしているこの子達にとってはとてもいい物だ。それにここのボスの怨念をしっかりと食べたジュカも、口直しとして食べている。
「よし、帰ろう」
シロの強化アイテムはこれ以上は使えませんと表記がでるまで徹底的に強化した。それに目的の脱出アイテムも手に入ったので、ここに用はない。
王都に戻ると、前とは雰囲気がかわっていた。兵士はピリピリしているし、民からはビッチ姫の処罰を求める声があげられている。そんな中、私は外套を深く被って皆を魔導書の中に入れて街の中に入る。それから、宿をとってお風呂に入って汗を流す。今まで上海達に洗ってもらっていたけれど、今回は自分で洗う。
目を瞑りながらアリスの柔肌を洗い、ぷにぷにすべすべで変な気持ちになりつつ洗い終えたら、湯を張りながら皆を出して順番に洗っていく。気持ち良さそうに洗われるルクスとシロとは対照的にジュカは風呂だとわかったらすぐに逃げた。まあ、あの子の身体はぬいぐるみだから仕方ない。浄化魔法を使えばいいし……って、私もそれで洗えば良かった。
まあ、すぎた事はいい。綺麗に洗ってあげてから私は湯船に入る。するとシロも入ってきて、一緒に温まっていく。スベスベの肌が気持ちいいけど、身体に巻き付いてくるのは少し困った。ルクスは湯船の近くにいるので、背中を撫でてあげる。そんな風にしていると、ジュカが恐る恐る入ってきた。
「おいで。浄化の魔法を使うから、湯船に入らなくてもいいからね」
「カゲ」
浄化の魔法を使ってあげると、私の頭に乗ってきたのでそのままにさせてあげながら、これからの事を考える。次の波は問題ない。その次は確か、別世界から扇子の眷属器を持った人がやってきて大変なことになる。そして四霊だったかな。ああ、その前に三勇教を滅ぼさないといけないのか。ん~三勇教か、ああ、そうだ。あの武器、貰っちゃおう。でも、使われる前になんとかした方がいいよね。あーそうだ、いいことを思い付いちゃった♪
っと、いけないいけない。また嗜好まで変わってきている。でも、考えるのは楽しいし、やってみよ。とりあえず三つ目の波の直前だったか直後だったかまでは大丈夫なはず。それまで教会をしっかりと調べて準備すればいい。今は別の事をしよう。
まずは戦力を増やす。それも数が欲しい。尚文おにーさんみたいに奴隷や魔物を集めて鍛え、戦力にしないといけない。正直、この世界の兵士のレベルが低すぎるしね。しかし、そうなると土地がいるし、できれば容易く私の味方になってくれて裏切らないちょろい人が仲間になってくれた方がいい。そんな都合のいい人……居たや。
これでやる事は決まった。じゃあ、後は少し趣味に走りつつ、男性としての心も保つために可愛い女の子の奴隷を買おう。男を買ってメス堕ちさせられたら最悪だし、女の子ならまだましだ。後、傍に居させるのは小さい子かな。大きい人だと理性がやばいことになりそうだし、そっちの趣味の人だとマウント取られてこちらもメス堕ちさせられそう。あれ、考えれば考えるほど死亡フラグあり?
でも、やるしかないか。私なら、奴隷達を治療して恩義を感じさせて育てることができる。ただ、これにはお金の問題がある。うん、そうだ。パトロンを作ろう。
やることが決まったので、外に出て魔法で水分を飛ばして着替える。今日は白いワンピースに麦わら帽子にしよう。ルクスのピカピカな背中を見てもとっても似合っている。
「皆、出掛けるから魔導書の中で休んでいてね。危なくなったら呼ぶから」
皆の返事を聞いてから、魔導書に戻してから本を
トランクケースを持って……って、このトランクケースを持ってたらばれるか。置いていくのもなんだか嫌だし、まあいいか。
トランクケースを持って外に出て奴隷商のところにやってきた。来る途中は色んな人に見られたけれど気にしない。バリアは常時展開してるしね。
「こんにちは」
「おやおや、これはこれは……魔導書の勇者様ではありませんか! どうなさったのですかな?」
「奴隷を買いに来ました。それと色々とお願いがあります」
「お願い、ですかな? 勇者様には出来る限り格安で商品をお売りしておりますが……お願いとはなんですか?」
「儲け話しを持ってきました。乗る気はありますか?」
「ほほう、儲け話とな! ぜひ、ぜひともお教えください!」
「信じていますが、情報を漏らしたり、私や尚文おにーさんを騙したら……」
「それでしたら心配ありません! なんでしたら、例のお薬を飲んで嘘をつけなくしてもらっても構いませんです!」
「……わかりました。呪いをかけましょう」
「この信じているといいながら、容赦なく縛ってくる慎重さと呪うことに一切の抵抗がない恐ろしさ。私、脱帽でございます!」
「私、魔導書の、魔導の勇者ですから。魔に通じる者ですよ?」
「なるほど、ごもっともですな。それでは、こちらで儲け話について、詳しく聞かせていただきましょう」
奥に案内され、座りながら説明していく。
「私は大規模な治療魔法が使えます。全状態異常を治療し、肉体の負傷を35%程度は治療できますので、怪我や病気をした奴隷を格安で他の奴隷商から買ってきてください」
「なるほど、不良債権として格安で引き取ってこちらで治療して販売するのですな!」
「はい。ただし、私にも欲しい奴隷がいます。それはこちらがもらいます」
「それはなんですかな?」
「フォックス種です」
「なるほど、かなり高いですが、死にかけなら安くなりますな」
「子供がいいです。女の子なら構いません」
「ふむふむ。確かに女性同士の方が安全ですし、世話をさせるのにもいいでしょうな」
「ただ、小さい時にレベルを上げると急に成長すると聞きました。それは困ります。どうか、小さいままでいさせられませんか?」
「小さいままがいいのですか?」
「私、大きい女の人は怖いので」
「なるほどなるほど。それでしたら、そういうお薬があるので与えればよろしいかと」
そういったことが設定できるのなら、いいかな。初めて知ったけれど。
「で、この奴隷達ですけど、問題ありそうなのは売っていいです。でも、問題ない人達、奴隷狩りとか攫われたり、借金を負わされて無理矢理奴隷にされた人達は売らないでください」
「それはどういうことですかな?」
「私が引き取って育てます。これからの波の戦いで戦力が要りますので、それに使わせてもらいます」
「ですが、それでは私は儲けられませんが……まさか、世界の為に出血を強いろと!? なんと素晴らしい!」
「違います。儲けは用意してあげます。私の能力はインスタントダンジョンを作成すること。つまり、そこから手に入るアイテムは私とあなたで独占して販売できる。その探索にも奴隷を使うから、鍛えられて一石二鳥」
「これは、なんと素晴らしいのでしょうか! 考えるだけで震えが止まりませんぞ!」
「でしょ? それで、内訳だけど、私と貴方で三割ずつもらう」
「残り四割はどうなさるので?」
「奴隷達の装備や食料、新たな奴隷の購入などにあてます。つまり、経費。私達の三割は純利益と考えてください」
「素晴らしいですぞ! ですが、私が三割は貰いすぎではないでしょうか?」
「私が土地を手に入れるまでは基本的な管理はそちらに任せるので、その分も含まれています。それとモンスターも同様に成長補正を与えられます。私はむしろそちらが専門ですよ。それと私が自ら手塩に掛けて育てた子達は売りません。ですが、そちらで用意したモンスターを連れてレベル上げをするのは問題ありません」
「なるほど。育て屋になってくださると」
「条件としては大切にしてくれる主であることですね。飼いきれなかったから捨てるとなれば、魔境となってしまいます。それなら私が引き取りますから」
「ふむふむ。でしたら、モンスターの買取もやりましょう。いやはや、可愛い顔に似合わずに悪いお人ですね」
「いえいえ、奴隷商さんほどではありませんよ」
「いえいえ、勇者様の方が……」
二人で笑い合ってから、契約書を交わす。ちなみに悪巧みだけど、悪い事なんてしていない。これは人助けも含んだれっきとした事業だ。どれも合法だしね。
「ああ、そうでした。知りたい情報が二つあります」
「なんでしょうか? なんでもお答え致しますぞ。あなたは私のパートナーですからな」
「まず、メルロマルク北部。そこの没落貴族である娘の居場所を早急に調べて欲しいんです。この国の領地貴族で畑が荒らされたり、色々と困っているはずです。それと違法な奴隷商、知っていたら教えて欲しいです」
「最優先ですかな?」
「最優先です。彼女を私は欲しています」
「奴隷になさるのですか?」
「奴隷にはしますが、強くするためです。本人の意思によりますね」
「なるほど。わかりました。して、もう一つはどうするつもりで?」
「私は勇者ですので、悪い事をしている人達はしっかりと懲らしめないといけないでしょう?」
「なるほど、なるほど。恐ろしい方ですな」
「これもこの世界を助けるためですから」
悪い人達に奴隷にされている人を助ける。これは間違いなく、いい仕事だ。ジュカのご飯の確保でもあるんだけどね。
「では、ご案内いたします」
「お願いします」
奴隷商さんと二人で楽しい楽しいお買い物だ。ちゃんと服装を変えて黄衣の外套まで着ていく。
王都に存在するスラム。そこの奥深くに存在する大きな奴隷市場。そこに私は連れられてこられた。男女区別なく、売られている。中には盗品だってある。
「ここがこの国最大の奴隷市場です。他にも盗品なども取り扱っております」
「取り締まりは?」
「貴族と癒着しておりますので、はい。その資金は三勇教にも流れており、彼等に助けを求めた人が返ってくることもたまにあります」
「マッチポンプですね」
「はい。ですので、どうぞお好きになさってください」
「なら、やっちゃいます」
犯罪者に容赦する必要はない。それにここは便利だ。まずは警備の兵士達に魅了の魔眼を使って支配下に置く。他の警備の人達を紹介させ、そいつらも支配下に置いて下から偉い人のところにどんどん進んでいく。
「これは、魔眼ですか」
「魅了の魔眼ですよ」
「詐欺ですな」
「詐欺なんてしていません。アリスは嘘をついていません。私が言ったのは嘘かどうかを判別できると言って、水を渡して魅了の魔眼を使っただけです。嘘はついていませんし、騙してもいません。全て相手が勝手に勘違いしただけです」
「くっくっく、まことに、まことに素晴らしい! 私の大好きなお人だ!」
「あー男の人は遠慮します」
「いえ、そういう意味ではありませんから。ですが、辛辣ですな。っとついたようです」
奥にある豪華な部屋を魔弾で粉砕して中に入る。中に居た肥え太った男達は慌てている。魔導書からルクスを呼び出し、腕に掴ませる。
「な、なんだお前!」
「勇者です。貴方を捕まえに来ました」
「俺が捕まったところで、すぐに解放されるだけだ。むしろ、お前達の方が……」
「ああ、そういうのは結構です。貴方は罪を告白して、退場するだけですので。いえ、予定を変えましょう」
「何をする気ですかな?」
「この市場、まるまる貰って健全な方に変えるのはどうでしょうか?」
「いいですな」
「というわけで、生かしてはあげます。ただ、全財産はもらいますが」
「ふざけ……あ、あぁぁ……」
「いただけますか?」
「もちろんです! どうぞ差し上げます!」
「これはもう、魔王ですね」
オリジナルのロリアリスって魔界に住んでたから、魔王っていうのもあながち間違っていないんですよね。
「残念。勇者です」
「これは手厳しい!」
司法に委ねても今は女王陛下がいないのでろくなことにならないだろう。だから、全財産を頂いて奴隷にされた人達の買い戻しや自立支援をさせてもらおう。
「客はどうしますか?」
「魅了して犯罪行為があったら、そのままにして心を入れ替えさせて働いてもらいます。上の挿げ替えだけでは意味がないですから。女王陛下がお戻りになられたら、ちゃんとした人を派遣してもらいます。どうですか?」
「女王陛下を信頼なさっているのですね」
「あの人はおそらく大丈夫ですから」
この国の膿は排除してあげます。尚文おにーさんではなく、異邦人であるアリスが。尚文おにーさんにはできる限り幸せになってもらってハッピーエンドを迎えてもらいましょう。悪事をした人にはそれ相応の罰を。今回の私、アリスはこの国に関しては自重を捨てます。何故なら、私は私のために最悪、尚文おにーさん達を殺します。この世界のほとんどの生命を皆殺しにしたとしても、この世界の破滅を防ぐ。それが私に与えられた使命ですから。神々にはまだ、逆らえませんから仕方ないですよね。
「どうしましたか? 気分が悪そうですが……」
「頭が痛いだけです。こんなに魔眼を使ったことはないので……」
「なるほど。手続きはこちらにお任せください」
「お願いします」
私はソファーに座ってゆっくりする。その間にここの権利書や財産の譲渡など、全部奴隷商の人がやってくれた。表向きのれっきとした財産は私に譲ってもらって、裏の財産は彼等に持たせたままになった。彼等自身を奴隷にして監禁し、時が来るまで奴隷商に管理してもらう。
「さて、奴隷をもらっていきましょうか」
「ですな」
奴隷達を集め、マッドスィートケークで全員を治療する。皆が回復に喜ぶけれど、すぐに不安そうにしている。
「初めまして。私はアリス。魔導書の勇者です。此度、四聖勇者と共に召喚され、ここにやってきました。そして、皆さんを助けさせていただきました。ですが、残念ながらすぐに解放するわけにはいきません」
「な、なんでだ?」
「彼等は貴族と繋がっており、皆様が無罪だと、攫われて奴隷にされた立証できないからです。ですが、女王陛下がご帰還なさった時には事情を説明し、奴隷から解放してもらいましょう。例えそれが認められなかったとしても、私と盾の勇者で解放して皆様を自由にします」
「おお、勇者様……」
「さて、もちろんですが、犯罪をしていない方や仕方がなかった人のみです。それ以外の人は奴隷のままになります。これは諦めてください。次にこれからのことを説明します。現在この世界には波がやってきています。それに対抗するため、私と盾の勇者は戦力を欲しています。ですので、ここで提案があります。どうせこれから暇になりますし、一度奴隷になった皆さんがまた職をつけるのは大変でしょう。ですが、私達と一緒に戦ってくれるというのなら、貴方達が奴隷から解放されたとしても食べていける実力を与えます。これは任意なので嫌な人は断ってくださって結構です。よく考えてから判断してください」
彼等に伝えてから、亜人の人達が纏まっているところに移動する。
「亜人の方々は一部を除いて自由にしてください」
「い、一部ですか?」
「はい。私の世話役としてフォックス種の女の子を連れていかせてもらいます。私のお世話係や、友達ですね。ちゃんと鍛えますし、むしろ他の人よりも強くなれます」
「フォックス種限定ですか?」
「私が好きですからね。あの尻尾のモフモフ、最高じゃないですか!」
「あ、はい」
亜人の人達が呆れているけど気にしない。それに女の子限定の理由も伝える。だって、私が怖いし嫌なのだ。
「フォックス種というと……」
少しすると、押し出されてくるのは金髪と銀髪の二人の幼いフォックス種の子供。それと金髪の子の親であろう女性。どちらも美少女で、とても可愛らしい。けれど金髪の子の方は私を睨み付けてくる。銀髪の子の方は身体はまだボロボロで、無表情だ。
「勇者様、子供となるとこの二人になります……」
「私は嫌! 私達を捕まえて酷いことをした人間なんかに仕えるなんて絶対に嫌! ましてやお母さんと離れるなんて……」
「こらっ、なんてことを言うの! も、申し訳ございません……」
「ソイツが行ったらいいじゃない! ソイツの、忌み子のせいで、私達は……」
「……わかった……私がご主人様の奴隷になる……」
こちらにやって来たボロボロの子。改めて見詰めると、彼女は顔や身体中に痛々しい拷問の跡が残っているし、尻尾も耳も斬られている。
「忌み子、ですか?」
「はい。この子は白狐と黒狐の間に生まれた子供です。黒弧は恨みによって狂った狐に悪魔が憑依してなる存在と言われています。この子は人間が面白がってその黒狐と白狐の間に産ませた子供です。そして、捨てられたようで村にやってきたので、私達は里から少し離れた場所に一人で住まわせてあげました。ですが……」
「この恩知らずが私達の里に施してあった結界を解いたのよ! それで人間共がやってきて!」
「本当なんですか?」
「解いた。お母さんを返してくれるっていってたから……」
「なるほど」
母親に会いたいが為に結界を解いたのか。なんていうか、里の人からしたらたまったものじゃないけど、彼女の年齢からしたら一人での生活はきついし、人肌が恋しくなるのもわかる。私もなるし。それに里の人が受け入れて里の中に住まわせていたら、人間と接触することもなかったのかもしれない。
「で、お母さんとは会えたんですか?」
「これ……」
それは舌の上にある小さな白い綺麗な石だった。彼女は口に入れてずっと守っていたみたいだ。
「それは……?」
「殺生石と言われるもので、強いフォックス種が死んだ時に力を結晶化させて次代に受け継がせる物です」
「つまり、死んでたと……」
「生きてた。でも、目の前で殺された」
話を聞くと、ラフタリアが売られた場所の貴族のところに連れていかれ、そこで拷問されて目の前で母親が殺されたみたい。本人も拷問されていたけれど、託された殺生石の力で耐えていたみたい。ただ、そのせいか表情は完全に死んでいて、ラフタリアと同じように飽きられて売られたのだろう。この国の貴族、ろくでもないのが多い。
「あの、この子では駄目ですよね? 尻尾もあれですし……」
「いえ、この子さえ良ければ貰っていきます。貴女は私と一緒にきてくれますか?」
「構わない。それで皆が助かるなら、使い捨ててくれてもいい」
「わかりました。では、徹底的に死ぬまで使い切ってあげます。あ、ただその石はもっててもいいですが、口には入れないように。食事がとれませんし、ペンダントか何かにしましょう」
欲しいけれど、流石に彼女から取るつもりはない。あれは彼女に残された母親からの唯一無二の形見なのだから。
「ん。待たせてくれるならなんでもいい」
「ふん」
「世話になった。さようなら」
「ええ、元気でね」
「勇者様にちゃんと尽くせよ」
「頑張る」
大人達は責任が自分達にもあることがわかっているようで、比較的優しい態度だ。ただ、子供達は睨み付け、彼女を恨んでいる。
「奴隷商さん」
「はいはい。その子の契約を書き換えるのですね」
「お願いします」
「お任せください」
「っ!?」
痛みに苦しそうにする中、無事に胸の中心に奴隷紋が刻まれた。
「あ、インクをください。それと貴方の血も。いえ、全員の血ももらいましょう。数滴でいいので」
「まあ、どうせこれから書き換えなくてはいけませんからな、問題はないでしょう」
「私はひたすら治療して情報を纏めますね」
「お願いします。ただ、服の手配などはしましょう」
「いえ、ここで適当に漁ります」
「盗品ですよ? 死んでいたら問題ないのですが……」
「流石に嫌ですね。新しい服を用意しましょう」
「かしこまりました」
目利きできる人に任せてしまおう。ただ、持ち主に返す必要がない物は使わせてもらう。これも世界の為。ドラクエの勇者みたいに!
さて、商品や備蓄されていたSP回復ポーションでスキルポイント、私でいう魔力を回復してひたすらマッドスィートケークを生み出していく。
「怪我をしている人、体調が悪い人から食べさせます。魔力がある限り、いくらでも作れますが、軽傷の人は譲ってあげてください。あなたはしっかりと食べるように。っと、名前はありますか?」
「前の名前はアイツにつけられた番号だからいらない。捨てるから、新しいご主人様につけて欲しい」
「じゃあ、そうですね」
ぱっとしたイメージは白と黒。でもシロはいるからクロ? でも、全体的に白というより銀色。シクロ? クシロ? クシロは名前として使えなくはないけどなんか駄目だ。狐、九尾、仙弧。く、く、く……あ、あれにしよう。
「貴女には私の名前の一つである、久遠寺アリスから、クオンという名前をあげます。どうでしょうか?」
「いいの? ご主人様からの名前を私なんかに……」
「なんかじゃありません。貴女にあげたいのです。久遠の時を共に過ごし、幸せにするという意味も込めてです」
「……」
重いかもしれませんが、この子って手放したら死んじゃいそうな気がする。それに暴走の危険があるなら、しっかりと面倒をみないといけない。
「ありがとう。嬉しい」
「それは良かったです」
「ん」
頭を撫でてあげるけれど、やっぱり切られた狐の耳が痛々しい。というか、他の人のは再生しているのにこの子のは再生してくれない。黒弧だったか、その血が聖なる力による再生を妨げているのかもしれない。欠損だって状態異常なのに回復しないなんておかしい。ひょっとしたら魔法や魔術などに関する抵抗が高いのかもしれない。こればかりは頑張って解決するしかないか。
「ほら、食べてください」
「ん、美味しい……けど、いいの?」
「かまいません。これからいっぱい働いてもらいます。基本的に最初は私の愛玩動物として扱います。次に勉強したて覚えたら従者です。戦闘もしてもらうことになりますが、いいですか? あと、ペットというのはこの国では仕方がないことだと思ってください。対外的な扱いです。もちろん、他に人がいないときは友達として接しますからね」
「大丈夫。しっかりと覚えるし、むしろペットがいい」
「わかりました」
ペットがいいということなので、そういう感じにしよう。ペットをどう扱うかは主人の自由なのだから、思いっきり可愛がってやる。奴隷契約以外にも使い魔契約をしてしまおう。
召喚したケーキスタンドを置き、食べさせていくと傷がみるみるうちに消えていく。しかし、やっぱり完全な再生には時間がかかる。
「クオン、今から魔法を使います。これは奴隷契約以外に私とクオンを繋ぐものですから受け入れてください」
「わかった。どうすればいい?」
「了承してくれるだけでいいです」
使い魔というより、どちらかというと式神だ。八雲紫が藍さんにしたのと同じ事ををこの子にもする。といっても、使い魔の術式を私なりに改造した奴だから、そこまで上手くいくかはわからない。これで私の魔術回路をコピーできたらいいんだが……。
「ん、わかった」
「では、儀式をしましょうか」
一応、トランクケースから魔導書を出して使い魔の項目を参照して、主人である私と繋げて色々とたしていく。ある意味ではFate/のサーヴァント契約に近しい感じかも知れない。絶対命令権は確保して、死んでも大丈夫なように死霊魔術と躁霊魔術、降霊術などクトゥルフ神話の魔術知識も使って、ついでにプロイキッシャーにも繋げてみる。魔法少女まどかマギカみたいに魂を引き抜いて、
急いで構築していた術式を破棄する。代わりに普通の使い魔契約にクトゥルフ神話の魔術と合わせて奴隷紋を利用して私の魂と繋げる。これで彼女の身体に私の魔力を流しつつ、ケーキでも食べさせればいい。
契約の儀式は無事に終わっったので、ケーキを食べさせてみる。これで再生してくれたらいいけれど……
「どう、ですか?」
「身体は大丈夫。ご主人様を感じられる。尻尾や耳はムズムズする。でも、それだけ……」
「成長させれば治癒するのではないでしょうか?」
「大きくなる?」
「く……私より身長を高くするのですか……」
「護衛にもなるなら、大事。後、高いところ取れない」
「妥協して少し成長してもらいましょう」
耳と尻尾がないなんて許せませんしね。これはそっち系の魔導書もいりますね。設定を弄って11歳から12歳くらいにしましょう。金色の瞳でこちらを不思議そうにしているけれど、持つ者にはわからないのです。
「まあ、いいです。いっぱい食べてくださいね」
「ん」
さて、魔力を大分使ったので少し休もう。とりあえずのやるべき事である治療は終わった。クオン以外の再生は終わっているし、クオンに関しても成長で回復させるか、エリキシルぐらいを取ってくるしかないかも。可愛いクオンのためなら頑張れる。
「お嬢様。そろそろ休まれますか?」
「いえ、やることがいっぱいありますからね。というか、非常に大切なことを忘れていました」
「なんでしょうか?」
「この子に座る場所を取り付ける馬具みたいなのが欲しいのです」
魔導書からルクスを呼び出してみせる。
「できれば二人乗り……いえ、大人一人と少女一人、幼女一人が乗れる感じでできますか?」
「可能だと思います。すこし用意に時間がかかります」
「そうですか。では、お願いします。それと炊き出しと衣服の配布。風呂で身体を洗うこと。食事前には手を洗う。これを徹底しておいてください。石鹸があればなおいいです」
「かしこまりました」
「お嬢様はどうしますか?」
「この子の採寸が終わり次第、一人で少し行くところがあるのです。ですから、クオンもここで待っていてください」
「一人で大丈夫?」
「戦闘はありませんから、多分大丈夫です。それに夜に紛れていきます」
「どこに行かれるのですか?」
「カルミラ島です」
「ふむ。カルミラ島でしたら……」
奴隷商が地図を出して教えてくれるので、そのルートをしっかりと覚える。ルクスで行けばかなり速くいけそうだ。私の狙いは例のアレだ。
「採寸が終わったようですね。はい、もう自由にしていいですぞ」
「早いですね」
「お褒め頂き恐悦至極でございます」
「では、少し行ってきます。できる限り早く戻るのでよろしくお願いしますね」
「お任せください。しっかりと買い付けも行っておきますよ」
「買い付け……ああ、そうでした。少し行く時間を遅らせます」
「おや?」
「カルミラ島でよく売れる物とこちらで売れる物を教えてください。どうせ行くのですから儲けましょう」
「商売人としては正しいですな! 少しでも利益を上げようとする行動に脱帽です、はい」
「嘘ですね。商人としては当然のことでしょう」
「本心ですぞ。まあ、カルミラ島は島国ですので、足りない物は内陸の物ですね。後はお酒とか、武器ですね。鉱石は駄目です」
「了解しました。私は今回、運び屋になるので、そちらで集めてください。指定の場所と指定の値段で売ってきます。ですが、くれぐれも相場通りにお願いします。すぐに戻るので時間がありません」
「かしこまりました。しばしお待ちを」
聞いてみると、だいたい50分ぐらいかかるらしいので、私はクオンに風呂に入って身体を綺麗にするように言ってから、炊き出しをする。食料はいっぱいある。
檻を撤去して解体し、細かく切って窪みができるようにしてから洗浄の魔法で綺麗にする。続いて炎の魔弾で焼いて更に洗浄。ルクスとの共同作業。
続いて空中に水の魔弾で大きな水球を作る。そこに炎の魔弾を叩き込んで一気に温めて沸騰させる。続いてトランクケースから大量の蛇の死体を取り出して風の魔弾を刃に変えて皮をはがし、肉を斬り刻んでから水球に入れる。これでスープの完成。
私が仕出したことに気付いた人が次々と鍋を持ってくるとそこにスープを入れる。容れ物はさっきのでもいい。続いて壊した鉄格子を使って横に置いて、皮を剥いた蛇の肉を置く。塩胡椒でぱっと味付けしたら、しっかり火を通していく。
「蛇の肉ですかな」
「初級ダンジョンでボスマラソンしていたから、蛇の肉はいっぱいあるんです。せっかくだから食べさせてあげれば食費の節約になります」
「なるほど。しかし、魔法を料理に使うなど、考えたこともありませんでした」
「便利な力は使ってなんぼですよ」
「なるほど。確かにその通りです。あ、それと亜人は生肉でも大丈夫ですよ」
「……」
トランクケースからある程度の蛇肉を取り出して渡す。
「まだあるけどいります?」
「カルミラ島で売った方がいいかもしれませんな」
「知り合いの商人がいますから、紹介状を書きましょう」
「ありがとうございます」
「あの、私達自身で料理しますよ? その……」
「わかりました。料理は不慣れなので任せます」
明らかにほっとした奴隷の皆に任せる。人手はいっぱいあるし、これでいいだろう。しかし、暇になった。そうだ。武器屋のおじさんと洋裁屋の人に服を発注しておこう。巫女服にするか、それとも洋服にするか悩ましい。和服はまた今度でいいか。洋服にしよう。
「クオン、今から買い物に行きますよ」
「はい。わかりました」
「少し遅れるかもしれませんが、用意しておいてください。ルクス、ジュカ。手伝ってあげてください」
「ガァ!」
「カゲ」
これでよし。クオンの手を引いて奴隷市から出て、停まっているフィロリアルをお願いしてちょっと借りる。それに乗って武器屋のおじさんに会いにいく。
扉を開けて中に入ると、おじさんが暇そうにしていた。
「武器屋のおじさん、この子の武器と服屋を紹介してください」
「……その亜人の子はアレか? 奴隷か?」
「そうです。手に入れちゃいました」
「フォックス種か。高かったんじゃないか? というか、嬢ちゃんまで奴隷か」
「切られているから、わかりますよね」
「あー。悪い。それで、武器か。何を使わせるんだ?」
「クオンは何が良い?」
「槍がいいです」
「槍か」
「狩猟で使っていたので」
「こんな小さな子がか……まずはショートスピアからだな」
ショートスピアは私達からしたら普通の大きさになる。こちらは難なく振れたようなので、他にも試させよう。次は普通の槍も持たせてみる。少し重そうにしながらもちゃんと突いている。
「まあ、最初は見学だし、これでいいですね。どうせ後衛は私がいますし」
「スピードアタッカーだよな」
「そう。速さで突く」
「前衛が嬢ちゃんだけだとやばくないか?」
「私の手持ちに硬い鋼鉄の身体を持つモンスターがいます。その子が盾となってくれますので、クオンは遊撃ですね。他に二匹いますので大丈夫です」
「なるほど、それなら大丈夫か」
「はい。ありがとうございます。この子に服を買ってあげたいので」
「わかった。それとメインウェポンだけじゃなく、サブウェポンも買った方がいいな。鎧は邪魔になるかも知れないが、グローブとブーツは買ったほうがいい」
「わかりました。お願いします」
「任せな」
結局、ここでは魔鉄の槍と黒狼のグローブとブーツ、ベルトと鉈のようなナイフを二本購入した。これらは基本的に黒色で青色の紐が取り付けられている。
「服は洋裁屋に冒険者用の特殊な装備が売ってるからそれを買ってやれ。代金はまけて銀貨400枚でいいぞ」
「あ、お金はないです」
「おい」
「素材でお願いします」
トランクケースを置いて、中からダンジョンで取れた素材を大量に出していく。みるみるうちに溢れてきた。蛇の鱗や牙が沢山。後毒袋とかもある。
「毒袋はここじゃ無理だ。というか、どんだけ狩ってるんだよ」
「三千は超えていましたね」
「これ、ボスだろ?」
「ボスですね」
「あ、尚文おにーさんにいくらかあげてもいいですからね。多分、ここのダンジョンはいかないでしょうから」
「わかった。槍は持ち手を調整するから、先に服屋に行ってくるといい」
「はい」
紹介状と場所を教えてもらったのでそちらに向かう。そこで店に入ったら、店員の女の人に襲われた。
「ぜひ、服を作らせて!」
「わかりました。早速デザインを決めましょう。ブーツとグローブがこれなので、こんな感じで」
デザインは黒いチャイナドレスに水色の線を入れたような感じで腰まであり、左右をコートのように残して前の部分はばっさりと切る。下半身は白い短パンと黒いニーソックス。茶色いベルトを取り付けて腰にサブウェポンのナイフを配置。斬られた耳が痛々しいので、おしゃれとして耳の部分に飾り布を取り付ける。簡単に言えば肩から手首まで全て露出させ、絶対領域を確保して、スカートじゃないのでそれが全て曝されている。もちろん、脇も首元も見える。
「全体的に黒いけど、髪の毛とか尻尾が銀色だから大丈夫ね」
「はい」
「クール可愛い感じね。何か魔法付与はするのかしら?」
「付与はこちらでやっておきます」
「わかったわ。明後日くらいになるわ」
「わかりました。代金なんですが……他の服や布に付与するのでどうでしょうか?」
「付与? 何ができるの?」
「火、水、風、土。全属性できますよ」
「流石は勇者様。じゃあ、火でお願いしようかしら」
「火属性耐性でいいですよね?」
「ええ、それでお願い」
「すぐに終わらせます。それといくらか服を頂いてもいいですか? 料金は量を増やして頂ければいいので」
「わかりました」
用意された布にエンチャントを施していく。上海達の服を作るのに耐火性能や防刃などは必要だ。これはしっかりと覚えている。
「ご主人様、私のも付与してくれるのですか?」
「もちろんです。風を基本的に付与しますが、それだと火力不足になるかも知れない。だから火属性も付与するつもり。ピーキーになるけど使いこなせば強いから」
「大丈夫。フォックス種は火も得意」
「それはいい。使い方は後で教えるよ」
「ん」
「はい、確認できたわ。それじゃあ明後日にあいましょう」
「少しずれるかも知れないけれど、次の波までには来ます」
「ええ、いらっしゃい。頑張ってね」
「はい」
さて、服を受け取ったので次は魔法屋だ。ここでは簡単に魔法が覚えられる水晶玉を買って魔導書に吸収させる。すると予想通り、水晶の魔導書が手に入った。水晶玉の作り方はわかったので、よしとする。本当は魔法書も欲しいけれど、そこまではお金がないので諦める。
「ご主人様、そろそろ帰らないと」
「そうでしたね。戻りましょう」
戻った私はクオンを預けて護衛としてジュカを残し、ルクスに乗ってカルミラ島へと向かう。バリアを張ってから100キロで移動し、全速力で向かった。
カルミラ島を無事に発見したので、地上に降りて奴隷商に指示されたお店に商品を降ろしてお金を受け取る。その人にお願いして、肉を全て食堂に降ろしてもらう。他に海産物を集めてもらって、私はそのまま寝ずに海に潜る。
ルクスと共にバリアを張って海中を進み、よさそうな物は採取して真珠とかも回収していく。そうしていると、灯りの関係もあって9時間もかかって目的の建物を発見した。
私が探していたのはカルミラ島の近海に沈んでいる海底神殿。ここは忘れられた神殿であり、誰も管理していない。つまり、好きに使っても問題ない場所だ。
龍刻の砂時計もあるので、そこから少し砂を拝借する。魔導書に吸わせると転移の魔導書が解放された。効果はワープゲート。これが凄く欲しかった。それにこれを使えばランクアップが40レベルで可能。私はすでに人形師が43レベル。でも、これは認識されなかったみたいで、
調べてみたが金銀財宝はなかった。でも、もっと価値ある物があった。それは地図や残されていた古文書、そして武器だ。この神殿は1000年前から今までの間に沈んだ物なので、私が行きたい神殿の内部情報が書かれていた。古文書の方はわからなかった。読めないから魔導書に吸わせてやったら、魔法言語を習得できてしまった。ごめん、尚文おにーさん。もっとも、翻訳ではなく、直接転写されるので無茶苦茶痛かった。それと本の内容もしっかりとわかったので、古代魔法も習得できたし、四聖武器を複製する方法もわかった。
武器の方は四聖や七星の武器を複製しようと研究されていたようで、その実験データから試作品まで置かれている。それらを回収して私が完成させてあげよう。なに、この世界の技術でできなかったのなら、異世界の技術を使えばいいだけだ。私なら、アリスならできる。素材になる龍刻の砂ももっと回収しておこう。
結論から言って、この忘れられた神殿は極秘情報が転がっていた。おそらく、逃げる暇も処分する暇もなかったのだろう。それが私の収穫に繋がった。
もちろん、中には破損している本もあったが、大切な本や書類、アイテムには保管用の魔法がかけられていたし超美味しかった。
外に出てから、カルミラ島に戻って頼んでおいた物をもらい、ワープ先を増やすために移動する。まず、奴隷商から借りた地図をもとにいろんな国の龍刻の砂時計に登録しに行く。一日で行けたのは三つだけど、まあよかった。
結局、戻ったのは二日後で手に入れた海産物などは全部売り払うように頼んだ。その後、私はクオンを抱きしめて一週間ぶりに眠った。
「なに、アイツ。アレはドラゴンよりもっとやばい。とっても邪悪な気配がする。調べなきゃ……」
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本当は出すつもりがなかった奴隷のフォックス種。でも、仙弧さんみたせいで、あのもふっもふの誘惑に勝てなかったぁぁぁっ!
奴隷さん達はこれからの戦力増強。四霊戦で明らかに弱かったのを知っているから、事前事前の準備。
次回はロリラフタリアちゃんとボール遊び。楽しい楽しい幼女三人の遊ぶ姿。ただし、周りは――
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