この国の女王であるミレリアさんと青髪ツインテール美少女のメルティがやってきた。やっと戻ってきたと思ったら、彼女達が告げられたのは私には想定外のことだった。
シルトヴェルトが国境を越えて攻めてきた? いやいや、そんなはずはない。だって、そこまで善行は積み上げていないし、食料問題も解決していない。それにシルトヴェルトに向かってもいない。
「なんで、なんで……」
「おい、アリス。戦争は起きないんじゃなかったか?」
「そっ、そのはずです。国外に知らせると言っても、あくまで脅しでなにもしていませんよ!」
「それでしたら簡単です。あの場には我が国の者以外にも居たのですよ。その人達が国外に伝えました」
「ああ、確かに演説かましてたな。大通りで」
「あっ、あぁぁっ、私の、アリスのせいですか!」
「だろうな」
「そうよ! 貴方のせいで戦争が起こったのよ!」
「貴様等のせいだ! 大人しく消されておけば!」
「お前等は黙れ」
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい。これから霊亀や鳳凰、応竜や麒麟といった連中が控えているのに戦争が起きたら戦力がかなり減ってしまう。私の計画通りに進めば問題はないけれど、うまく行く可能性なんて低すぎる。ただでさえ弓の勇者を再起不能にしてしまたかも知れないのに……ごめんなさい。ごめんなさい。
「どうやら、戦争は起こすつもりがなかったようですね。もう少し周りの事を考えて発言はしてほしかったのですが……子供ですから仕方ありませんね」
「ご、ごめんなさい」
「さて、勇者様方。まずは謝罪をさせてください。我が夫と娘が大変ご迷惑をお掛けしました。謹んでお悔やみ申し上げます」
「お父様と姉上がごめんなさい!」
「こやつらに頭を下げる必要など──へぶっ!?」
二人が頭を下げて謝ってくる中、魔法で王様が氷漬けにされた。流石は女王陛下。メルロマルクを導く人だけはある。政治的なことはこの人に任せれば大概はなんとかなる。
「で、お詫びされても困るんだが?」
「わかっております。ですが、その前に戦争を止めることの方が先決です。ご理解いただけないでしょうか?」
「わかった。アリスもいいよな?」
「もちろんです。女王陛下がお戻りになられたら、全面的にお任せします」
「信頼度半端ないな」
「そこまで信頼して頂けるのは嬉しいのですが……」
「お母様だから当然よ!」
「メルティ、アリス様。現状でメルロマルクが戦争をせずに回避する方法がございます。それはなんでしょうか? シルトヴェルトが先行していますが、後方にこの世界の最大国家であるフォーブレイも出兵の準備を行っております」
女王陛下が私とメルティ王女に聞いてくる。これは私のせいだし、しっかりと考えて答えよう。まずはシロを呼び戻して、頭を撫でてあげながら考える。
まず、攻めてきたのはシルトヴェルトの連中。その背後にフォーブレイが居るけれど、これはまあいい。彼等は盾の勇者を助けるためということで侵攻してきている。これは恐らく、信仰の対象である盾の勇者だから。だが、一部の者達はこれ幸いとして攻めてきているはず。なら、やることは簡単。
「大義名分を消せばいいのよね?」
「そうです」
メルティの言う通り、大義名分である尚文おにーさんが彼等の前に立って宣言すればいい。一部の者達は拒否するだろうけれど、大多数の者達は信者でしかない。だから、尚文おにーさんの言う事は聞いてくれる。もっとも、偽物扱いをされる可能性があるから、ある程度は戦う必要があるかもしれない。ただ、今の事態から考えてそう簡単にことは運ばない。
「でも、それだけじゃ弱いです」
「え?」
「シルトヴェルトだけならそれでいいです。でも、それ以外の国の軍も集まってきているんですよね?」
「そうです。シルトヴェルトを中心にした連合軍です」
「最大国家であるフォーブレイなら、シルトヴェルトのかわりもできるな」
「そういうことですね。では、そのことを踏まえて解決する方法はあるでしょうか?」
女王陛下はメルティの後ろに回り、肩に手を乗せる。これでわかった。私が考えていたことと同じだ。メルロマルクを残し、如何に私達にとって都合よくするかという方法。フォーブレイはできない。あそこには裏切り者である勇者を騙る波の尖兵タクトやフォーブレイの国王である豚さんもいる。彼は敵ではないかもしれないが、問題はタクトの方。奴はグリフォンや竜帝と呼ばれる強力なドラゴン、様々なモンスターを連れている。それにすでに爪と槌の勇者は殺されている。そんなところに行くつもりはない。
シルトヴェルトはシルトヴェルトで信仰されていることによって様々な鬱陶しいことが起こる。具体的には毒物を使った尚文おにーさんの近くにいる女の暗殺とか、尚文おにーさんを種馬にした後は殺そうとしたりといったことが起こる。なのでシルトヴェルトに行くのも駄目。あそこに行くとハクコの可愛いアトラちゃん達がちゃんと生活できないかもしれない。他には傭兵国も候補に上がるが、権力を手に入れるならメルロマルクが都合がいい。今なら腐敗を一掃はできないまでも綺麗にできるし。
「尚文おにーさん、さっきのお願い。まだ有効ですよね?」
「まあな」
「じゃあ、尚文おにーさんには彼女、メルティさんと結婚してこの国の王様になってください」
「「「「はぁっ!?」」」」
「なるほど」
私の提案に本人である二人と王様、マルティ、二人の勇者達が驚く。女王の方はなるほどとか言っているけれど、ニコニコと笑っている。
「ああ、裏切られるのが嫌なら、彼女を奴隷にしてもいいですよ。マルティの代わりに好き勝手に虐めてもいいですし」
「ひぃっ!? お、お母様!」
「いいですよ。なんなら私も奴隷になって支えましょう。メルティのことは子供さえ産んでくれれば好きになさってくださって構いませんから」
「ちょ!?」
「狂ったかミレリア!」
「いいえ、正気です。盾の勇者様がこの国の王となることで、シルトヴェルトは即座に軍を引いてくれるでしょう。いいえ、それどころか同盟としてフォーブレイの抑えにも加わっていただけます」
「な、なんで私なの! 姉上だって……」
「あ? こいつと結婚なんて絶対に嫌だな。お前とだってそうだ」
「「私だってお断りよ!」」
王女二人が怒っていますが、まあ残念ながら選択肢はありません。
「尚文おにーさんには彼女なら大丈夫ですよ。良い子ですし、姉とは全然違います」
「だが……」
「それによくよく考えてください。この国を、このクズの王様の前で好きなように作り変え、ましてや大事な娘を玩具にだってできるんですよ? これってとっても素晴らしい復讐になりませんか?」
「考え方が下衆だが、確かにいいな。しかし、妹にまで累を及ばせるのか?」
「この時代、連帯責任は当たり前ですよ。それに彼女にとっても得はあります。ですよね、女王様」
「え?」
「いいですか、まずこのままだと確実に我が国は滅びます。そうなるとおそらくシルトヴェルトとフォーブレイに統治されるでしょう。夫はシルトヴェルトの者達に殺されるでしょう。マルティはもちろんのこと、私やメルティはフォーブレイの王に差し出されるでしょう」
その言葉にメルティとマルティが顔を青くして震えだしていく。フォーブレイの王はこの国の王の13歳年上の兄だ。かなり醜悪な外見の持ち主で、メルティからは豚の化け物、女王からは肥え太った豚と内心思われている。女を快楽のために拷問するのが大好きで、フォーブレイの王に嫁ぐことが女貴族の処刑方法になっているのだ。暗躍や保身などその辺りはかなり優秀だ。それとマルティはこれ以上目に余る事を仕出かしたら嫁がせるつもりだったらしく、一万人目の玩具として歓迎しているし、四聖勇者の触媒を三勇教がすり替えて盗み取り、フォーブレイで召喚されるはずだったこともマルティかメルティを差し出すことで許してくれると話はついていた。当然、次期女王として優秀なメルティを残すので、マルティが差し出されることになる。
「いっ、いやっ! それだけは嫌よ!」
「あんなのに捧げられるなんて、死んだほうがましよ!」
「なんなんだ?」
「えっと、フォーブレイの王はですね……」
私は尚文おにーさんやこの場にいる人達に説明をしていく。それがただの結婚ではなく、犯されて殺されることもしっかりと。
「まじかよ……」
「うわぁ……」
「ないな」
勇者三人で驚いている中、周りをみるといつの間にか教皇の奴がルクスに押さえ込まれて気絶していた。彼の身体を確認してみると、結構な失血をしていた。まだ死なれると困るので、治療だけしておく。王様の方は女王陛下に任せればいい。
「というわけで、尚文おにーさんにはメルティ王女を貰ってもらいます。それとも、まさかこっちがいいですか?」
「絶対に御免だ。だが、お前、メルティだったか。お前はそれでいいのか?」
尚文おにーさんがメルティに聞きますが、これはすでに選択肢なんてないのだ。
「か、構わない……ううん、お願い。あんなの犯されて殺されるのなんて嫌なの……そ、それにこれは国の、国民のためでもあるし、うん。大丈夫」
「国民の為か」
「それが国民の血税で生きている貴族の、それも王族なら当然だもの」
「わ、私を選んで。そんなちんちくりんより私の方が……」
「はっ? 何言ってんだ。お前なんかを選ぶわけないだろ。地獄に堕ちろ」
「おまぇええええええぇぇぇぇっ!」
「諦めなさい。あなたが仕出かしたことです。大人しくフォーブレイに行きなさい」
「いえ、彼女はこちらでもらいます」
聖印であるブローチを握り、召喚の呪文を唱える。呼び出すのはハスター。願うのは女神と名乗る存在の欠片であるこいつを生贄にしてハスターの父親であるヨグ=ソトースへの仲介。ヨグ=ソトースへの代価は女神の力。ハスターの方で倒せるならそれでもいいけれど、無限とか平行世界とか、即死とか絶対命中とか平気で操ってくる存在だからね。
「なっ、なによこれっ! いやっ、いやぁぁぁっ! やめっ、やめなさいいいいいっ!」
私が作り出した魔法陣から無数の触手が現れて、マルティを飲み込んでいく。彼女が消え去った後にはカランッと音が響く。そこにはイスラム美術で使われる奇妙なアラベスク模様に表面が覆われた、長さが5インチ(12.7センチ)近くある大きな銀の鍵が落ちていた。私はそれを拾って魔導書に入れようとすると弾かれた。しかたないので鎖でペンダントとして首にかける。これは私にとって切り札となるだろう。ただし、開いたら最後。多分死ぬと思うし、まともなことはできないだろう。どちらにせよ、ヨグ=ソトースへの門を開く鍵が手に入った。
「これは普通に殺されるよりもとんでもないことになったな」
「貴様、マルティをどこにやった!」
「生贄にしました。そもそもアレは波の元凶の欠片ですから、この世界を救うために使わせてもらいます」
「構いません。ですが、フォーブレイをどうするかという問題があります」
「それなら私が交渉してきますので大丈夫ですよ」
「わかりました。それではこの人の処分ですが……」
「それなら、奴隷紋を入れて幽閉しておいてください」
「あとどうせなら名前も変えよう。クズにな」
「わかりました。手配しておきます」
「ミレリア!」
「五月蠅いですよ、クズ。さて、盾の勇者様はすぐにシルトヴェルトを止めに行ってほしいのですが、メルティ。あなたに奴隷紋を入れるので、それから一緒に行ってきてシルトヴェルトの連中に見せてやりなさい。それで相手側は納得するでしょう」
「わ、わかりました」
「入れる必要はあるのか?」
「あります。これは私達が裏切らずに盾の勇者様に隷属することを示すためですから」
「シルトヴェルトの説得に使えるということか。移動は……」
「私のルクスを使ってください。二人乗りができますからね」
「ああ、わかった」
その後は奴隷紋を仕込んで、二人の主人は尚文おにーさんで、クズの主人は女王陛下になった。女王陛下に権限が設定されているだけで、クズは尚文おにーさんのになるかもしれない。ちなみにメルティと女王陛下はほぼ制限を設けていない。
「メルティ、頼みますよ」
「はい。任せてください」
「大丈夫だと思いますが、やばくなったらポータルで戻ってきてください」
「そっちはどうするんだ?」
「私は勇者二人の説得と、もう一人の勇者の治療をします。なので戦争を止める方はお願いします。砦の前に立つと砦から攻撃される可能性があるので気をつけてください」
「わかった。行ってくる」
「ルクス、お願いね」
「……任せて……乗って」
「おう」
「お邪魔します」
ルクスに乗って飛んでいく二人を見送り、まずは教皇の捕縛から。こちらも奴隷印を入れて強制的に吐かせるらしい。この辺はもう女王陛下にお任せする。
「では、後は全部お任せします」
「そちらも勇者のことをお願いします」
「はい。というわけで、OHANASHIしましょう」
「それでしたら会議室を用意しますので、そちらでどうぞ」
「ありがとうございます」
解放された二人を連れて移動し、しっかりと話していくことにする。まず向かい合って座りながら話していく。どうせ信じてくれないだろう。
「まず、錬さんと元康さんには私達の強さの秘密を教えます。聖武器には強化方法が20個あります。これは四聖武器が一つにつき3個。八星武器が一つにつき1個あるからです。イレギュラーな私のを含まずにです」
「そんなのヘルプにはなかったぞ」
「ああ、間違いない」
「それはそうでしょう。まず、これは信頼してあると確信して行わなければできません。ですので、手っ取り早く、私が今から使う魔術を受け入れてください。それで使えるようになりますから」
「断る。そんなことは信じられない」
「俺も嫌だな」
「そうですか。元康さん。ここに天使さんから預かった卵があります。天使さんの育て方、知りたくありませんか?」
「なんだと! 本当か!」
「本当です。私のことを信じて、私達の味方になるのなら、天使さんことフィトリアも紹介しますし、その子供である卵も差し上げましょう」
「うぅ……」
「おい、騙されるなよ」
やっぱり信じてくれませんね。しかたないです。でも、ムカつくのでジュカをぷにぷにして紛らわせる。
「騙していませんよ。正直言って、貴方達はこのままだと弱すぎて、レベルが高いだけの役立たずになります。それは困るのですよ。ですから、梃入れさせていただきます」
「俺を騙そうとしてもそうはいかない。お前は怪しすぎる。なぜ波の事に詳しい? それはお前が波を起こしている黒幕だからじゃないか?」
「違いますが、似たような存在かもしれませんね。私は世界と世界を旅する旅人です。この世界には私と関係ある神様が修行として送り込んできました。最初の私がその神様です。神様はこの世界を修行の場にする代わりにこの世界を助けることを頼まれました。ですから、初めから知識を与えられています。ぶっちゃけて言うと、私は攻略本を持っているということなのですよ。お分かりいただけますか?」
「……ずるだろ」
「ずるい!」
「はい、ずるいですね。だから、貴方達にもあげます。尚文おにーさんはこの通りの方法で強くなりましたよ。あと一ついいますが、この世界はゲームではありません。攻略本とかいいましたが、確実ではありません」
「矛盾しているぞ」
「ふむ。もっとわかりやすく頼めるか?」
「わかりました。ゲームに例えると、これはデスゲームです。難易度はハードを越えたルナティック。そこら中に即死トラップが仕掛けられています」
「「っ!?」」
「このルナティックは狂った難易度という説明です。さて、先程世界のことを説明しましたね。なぜ全種類の強化をできるかといえば、アップデートされたからです。世界と世界が融合することで法則もまじりあいます。つまり、私と尚文おにーさんの武器は11段階追加でアップデートされた強さです。お二人のは1段階だけです。で、1世界しか知らない二人はボスもゲーム通りの強さと思いますか?」
「ま、まさか……」
「11回アップデートされたなら、強化されているということか……」
「その通りです。はっきり言って、レベルだけ上げても飾りです。レベルを下げることで資質を向上させてステータスを上げたりできますからね。このままじゃ本当に死にますよ。別にゲームだと思ってくれてもいいですが、ここは知っていることも適応されている未知のゲームだと思ってください。貴方達の知っているゲームが一作目だとしたら、これは12作目です。それも全部を合わせてリメイクされてデスゲームになった作品です。そして、敵には転生者や転移者といった波の尖兵もいます。まあ、私と似たような存在ですね。こいつらは敵から派遣されているので妨害してきます」
「やはりお前が敵の可能性があるじゃないか」
「まあ、否定はしません。私にとって私とアリスの大切な子達が生き残ることが最優先です。ですから、お二人が邪魔になったら殺して再召喚するかもしれません」
「やはり……」
「まあまあ、落ち着けって。アリスちゃん。まずは俺から試す。俺はアリスちゃんのことを信じるからな」
「いいんですか? マルティに騙されたばかりでしょう」
「ああ、構わない。俺は……君を信じる」
元康さんに教えましょう。
「わかりました。では、受け入れてくださいね」
「ああ、どんとこい!」
受け入れてくれているので、魅了の魔眼を使って自らかかってもらえた。これで私の言葉を信じる彼ができた。その信じた心で強化していってもらう。
「どうですか?」
「できた。本当にできたぞ、錬! ヘルプにも追加された!」
「嘘だろ。信じられない!」
「だったら、戦ってみてください」
「わかった」
インスタントダンジョンを作成してそこに放り込む。そこで二人で戦ってもらうと元康さんが圧勝した。でも、それでも認められなかったので、さらに強化して戦ってもらう。
「これで認めてくれますね?」
「わかった。俺も受け入れよう」
流石に受け入れたようなので、こちらも魅了して覚えてもらう。魅了の魔眼を解除しても一度ヘルプ項目にでているので問題ない。
「これが前提の敵がでますので、日々精進を怠らないでください。霊亀の封印を解くのはもっと駄目ですからね」
「わかった」
「ああ」
さて、しっかりと二人に言い聞かせて教え込んでいきます。
「このインスタントダンジョン、便利だな」
「まったくだ」
「さて、続いてお二人の問題を教えますね」
二人の弱点も伝えて強化していく。錬は駄目なところを任せるために育成を手伝ってもらう。元康さんも同じだ。そう、フィロリアルの育成を……
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