第38話
安心できる我が家に戻り、アリスお母さんに抱きしめながらゆっくりまったりとする。癒されていると、目に入るのは空を飛ぶ上海達。そこで重要なことを思い出した。
「お、お母さん……あ、アリスの上海と蓬莱は……」
「ちゃんと預かって修理しておいたわよ。後でちゃんと起こしてあげなさい」
「ありがとう!」
やっと上海と蓬莱に合える。後で思いっきり可愛がってあげよう。それよりも今は皆を紹介しよう。
「アリスお母さん、この子達は……」
「教えてくれる?」
「うん。えっとね、狐耳の子がクオン。奴隷として売られていたところを助けた、になるのかな?」
「ん。違う。買ってもらった」
「それもなんか違うかも。譲ってもらったってことになるのかな?」
アリスお母さんに撫でられながら、世界のことも含めて説明していく。すると呆れられた。
「もしかして、本当に魔理沙の子供じゃないかしら……」
「ち、違うよ?」
「そうよね。うん。それでそっちの子は?」
「この子はメタグロスのルクス。クオンを除いた子達はモンスターで、本当の姿は別にあるの」
「そうなのね。メタグロスは確か、ポケモンなのよね?」
「うん。この子、ジュカとルクスがポケモン。二人はマザーとメルク達の子供だよ。こっちにいるんだよね?」
「あの子達なら、迷いの森の近くに作った牧場に居るから、そこに行けば会えるわよ。後で行ってみましょう」
「うん。それでね……」
二人の進化したことなど、色々と話していく。シロについても説明すると、アリスお母さんは何かを考えているみたい。
「白蛇ね。まあ、どちらにせよ、マリスのことをよろしくね」
「……了解……」
「ん」
「お任せください」
「さて、次は私ね。私はアリス・マーガトロイド。一応、この子の母親よ」
「アリス?」
「……マスターと……同じ名前……」
「不思議。魂も似ている。同一人物……? 違う、アリスの身体、色々と混じってる」
「魂がわかるの?」
「わかる」
「ジュカは怨霊が中に入っている人形ですからね」
「そうなのね……こっちに来てくれるかしら?」
「いい?」
「おいで」
「ん」
ジュカを呼び寄せ、ぬいぐるみの、ジュペッタの姿になってもらう。アリスお母さんはジュカの身体を持ち上げてしっかりと調べていく。
「作りが色々と甘いけど……付喪神とはまた違うし、言う通り中身に怨霊を入れているのね。こういうアプローチもありかしら……でも、使い勝手は悪くなりそうね。怨霊だと特にね」
「ジュカは良い子だよね?」
「ん、良い子」
「普通ならありえないのだけれど、ポケモンというのは……いえ、違うわね。卵から育てたから言う事をきくのかしら? まあ、どちらでもいいわ。それよりもアリス」
「なに?」
「臭うから、お風呂に入りましょう。貴女達も入った方がいいでしょうけど……」
「後で洗ってもらう」
「それがいい」
「はい。決まり。もうすぐ魔理沙も帰ってくるでしょうから、少し待っていてちょうだい」
四人がこくこくと頷くと、アリスは抱き上げられてそのままお風呂に連れていかれた。そこでお母さんに全身を洗われる。背中から身体の隅々まで綺麗にされ、一緒の湯船で……ってっ、アリスは何をしているっ! 現状を正確に把握すると、すぐに顔や身体が真っ赤になってくる。
「ちっ」
「舌打ちっ!?」
「あら、気が付いたみたいね。残念」
アリスお母さんは上海が持ってきたバスタオルを身体に巻いて外に外にでていく。そういえば、お風呂では常に先に入ってアリスの背後から洗われていたので、裸は見ていない。残念なような、よかったような不思議な感覚だ。いや、それよりも、あのままいけば完全に女の子になっていた気がする。最後の最後で安全な居場所に帰ってこれたと思ったところで、抱きしめられて温もりを感じて油断した。安心しきって子供らしく泣いて慰めてもらった上に甘やかされて……あのままいけば泥沼に嵌ったはずだ。
「うわぁ……最後のトラップが、文字通りの母性を発揮しているアリスお母さんとかない~」
口に出してから冷静になるために頭の先まで湯船に入って考え……慌ててでる。これ、一緒に入ってたお湯な訳で……考えないようにしよう。シャワーを浴びて出よう。
熱いお湯を浴びてから外に出ると、お母さんの上海と蓬莱が身体を綺麗に拭いてくれて、新しい服を着せてくれる。今回のは黒系のワンピースに白いエプロンで、魔理沙お母さんの恰好に似ている。サイズは私のだけれど。
着替え終えてから脱衣所を出ると、アリスお母さんの代わりに魔理沙お母さんがリビングに居た。隣にはクオン達がいる。でも、シロが居ない。
「よう、無事に戻れたようだな」
「なんとかなりました」
「ふむ。やっぱりアリスの計画は失敗したのか」
「ある意味で最大の敵でしたよ……」
「ま、帰還おめでとうと言っておくぜ」
「ありがとうございます。それで、アリスお母さんは?」
「不貞腐れて出掛けちまった」
「嘘。ちょっと知り合いの所にシロを連れていった」
「シロを?」
「ま、そのうち戻るだろうから気にするなよ。それより、話は聞いたぞ。魔導書を手に入れたって? 見せてくれよ」
「いいですけど、貸しませんよ。ここで読むのなら構いませんけど」
「ちぇ~」
魔理沙お母さんの貸すは、何時か返すだから基本的に帰ってこない可能性もある。まあ、一緒に住んでたら返してもらうのは簡単だけどね。
「とりあえず、これです」
ネクロノミコンから取り出して順番に並べていくと、魔理沙お母さんは手を出そうとして止めた。
「これは私にはまだ早そうだ。迂闊に開いたら死ぬ奴だろ」
「死にはしないですが、発狂する可能性はありますね」
「ならいいや。普通のはないのか?」
「上から出していっていますからね」
「ふむふむ……これなんかいいな。資質向上の魔導書か。よし、これにしよう」
「それ、レベルの概念があるところでしか役に立たないと思いますが……」
「ま、その辺は試行錯誤だな。レベルはなくても経験値はあるから大丈夫だと思う」
「ならいいですよ」
ネクロノミコンとかは直して、これからどうしようかと考えてみる。ご飯の時間はまだ早いし、お腹も空かないので問題ない。アリスの上海と蓬莱はお母さんから受け取るまではどうしようもない。
「どうしようか?」
「……マスター……」
「どうしたの?」
「……身体……洗って欲しい……」
服の裾を掴んできたルクスのお願いは確かに必要なことだった。まあ、浄化の魔法でいけるけど洗ってあげよう。
「クオンは外で洗うわけにはいかないし、ジュカと一緒に入っておいで」
「わかった」
「お風呂、嫌い」
「駄目だよ。連行して」
「ん」
クオンとジュカが上海と蓬莱に連れていかれたので、アリスはルクスと一緒に外に出る。外でデッキブラシを使って、メタグロスに戻ったルクスの身体を擦って綺麗にしていく。
「ああ、そうだ。異変の事はどうするんだ?」
「まだ力が足りません」
「そんなに急成長しているのにか? 魔力だって馬鹿みたいに上がってるだろ。それに魔導書だってあるんだ」
「まだ勝てませんから……」
「でも、移動制限があるから、面倒だろ」
「それはまあ……あ、そういえばファイヤーってどうなりました?」
「あの火の鳥か? アイツなら今日の夜に招待してるから、来ると思うぞ。紫の奴が宴会を開くって言ってたからな」
「ふむふむ」
「……マスター、そこ……」
「はいはい。ここですね」
魔理沙お母さんが外にあるハンモックで寝ながら魔導書を読んでいっている。ルクスの身体をお掃除して、痒い所をかいてあげる。水の魔法で綺麗にしていく。
「そういえば、牧場には行くんだよな?」
「マザーとメルク達と会いたいですし、いきますよ」
「そうか。でも、メルクは居なかったんじゃないかな……」
「え?」
「にとり達、河童が連れていったはずだ。カゲボウズ達ゴースト系は冥界に運ばれたし、ここに居るのはマザー達メタモンとタツベイくらいだな。ちなみに私のポケモンも居るぜ」
「そうなんですか?」
「ああ。にとりがモンスターボールの複製に成功したからな」
そういって、空中にボールを放り投げるお母さん。中からボーマンダがでてきた。パラセクトはもってこれてないし、仕方ないか。
「何故ボーマンダ?」
「私と戦ってたら、勝手に進化した。ちなみに翻訳魔法はパチュリーとさとりが協力して作ってる。まだ時間はかかるみたいだがな」
「そうなんですね……できたら教えてください」
「ああ、わかった」
ルクスがふにゃふにゃのように気持ち良さそうな声をだしている。次第に人の姿に戻ると、胸以外の大事な部分は隠れている状態のびしょ濡れ美少女が現れた。不思議そうにこちらを見詰めている瞳が、上目使いでまた可愛らしい。まあ、ルクスがぺたんと座ってるからだけどね。
「人の姿になるとか、不思議だよな」
「変身魔法を覚えているからですね。頑張ればそのボーマンダだってなれますよ」
「ん~人の姿になる必要があるのなら、勝手に覚えるだろ。言葉が通じるのなら、必要ないしな」
「……ルクスは……人になれて、嬉しい……マスターがいっぱい、かまってくれる、から……」
「そうかそうか。ないがしろにしたんだ?」
「そんなつもりはないんですが、モフモフを優先しました」
「モフモフか。クオンだったか、後で触らせてくれ」
「本人が良ければいいですよ」
蓬莱が持ってきたくれたタオルでルクスの頭を拭いていく。サラサラと綺麗な水色の髪の毛が太陽の光で輝いている。
「やりっ! んじゃ、異変について詰めるか。まず、紫の要望はポケモンを出すことだな。目玉になりそうなのはファイヤーとボーマンダか? その二体とマリスが戦うのでもいいが……弱いな」
「アリスも戦いますが、まだ弱いですね。やっぱりもっと強いのを持ってこないと……」
「あんまりやって幻想郷が壊れるのも困るって言ってたぞ……」
「大丈夫です。アリスの世界、固有結界に案内してからやるので幻想郷に影響はないです」
「そいつはまた豪勢なこったな。なら、その世界にポケモンをいっぱい放つとして……やっぱり数が足りないな」
「数ですか……やっぱり、向こうの世界から連れてくるしかないのか……」
「……マスター、インスタントダンジョン……?」
「インスタントダンジョン……ああ、可能性がありますね。モンスターボールを依代にして作ればいけるかも」
「そのインスタントダンジョンってなんだ?」
「インスタントダンジョンは……」
魔理沙お母さんに説明していくと、凄く乗り気になったので試してみよう。クオンとジュカが戻ってきたので、彼女達も連れて行ってみる。
「モンスターボールのインスタントダンジョン作成。完成」
「渦だな。これは確かに面白そうだ。やばくなったら即撤退だったか」
「はい。死んじゃいますからね」
「様子見でいいだろ」
「覗くだけです」
インスタントダンジョンの中に入ると、そこは三つの島だった。周りは広大な海が広がっている。島の中には無数のポケモン達が暮らしていて、それらが一斉にこちらを見詰めてくる。
相手はニドキングとニドクイン。その親子だろうニドランとニドリーノもいる。それらが一斉にこっちに向かってくる。
「マリス、やるぞ」
「はい。ルクスとクオンはアリスと前衛。ジュカはお母さんの護衛。お母さんは後方から火力攻撃でお願いします」
変身しながら伝えると、お母さん達も納得してくれた。さて、ニドキングと格闘バトルだ。そう思っていたのだけど、ニドキング達は必死の形相で逃げてきている。
「なにかおかしくないか?」
「みたいですね」
よくよく見ればみんなが逃げているし、その先を確認すると……どんどん凍ってきている。その凍っている場所には雷が放たれていた。
「あははは」
「どうした?」
「あれ、サンダーとフリーザーと言って、ファイヤーに近い存在です」
「んじゃ、捕まえてみるか。氷と雷、どっちがいい?」
「あー雷がいいですね。凍らされるときつい」
「あいよ。んじゃ、まずは先制といきますか。喰らえ、マスタースパークっ!!」
いきなり全力攻撃。お母さんが手に持っていたミニ八卦炉から発射される極大の光の奔流はビームのように突き進み、争っていた二体をまるごと飲み込んでいく。余波だけでニドキング達は吹き飛び、ごろごろと転がっている。流石に山は貫通していないけれど、これはチャンスなので近付いて起き上がる前にニドキングに乗って、殴って殴って殴りまくる。
ルクスもニドクインを同じようにコメットパンチとか冷凍パンチで無力化していく。ちびっ子たちはクオンとジュカで倒してモンスターボールに入れていく。ハードゴア・アリスなので残虐なのです。
「さて、このまま放置してもいいんですが、多分……ルギアがでてくるんですよね……」
「ルギア?」
「海の神と伝えられている一体ですね」
「欲しいか?」
「欲しいですが、無理です。神様に勝てますか?」
「できないのか?」
「まあ、できなくはないかもです」
「んじゃ、やってみるか」
「はい。小さな扉、くるくるお茶会、白黒マス目の虹色草原、お喋り双子の禅問答。でもでも、お気に入りはやっぱり一つ。全てを忘れる、名無しの森にご招待!」
まずは固有結界を展開する。名前を奪い、存在を消去してしまう固有結界、名無しの森。ここにまずはフリーザーとサンダーごとこの世界を書き換えて閉じ込める。
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァッ!」
ああ、やっぱりでてきた。マスタースパークを喰らってボロボロのサンダーとフリーザー。そして、森に変化していく海から出てくるのは高さが5メートルちょっとぐらいある巨大なポケモン。翼竜に近い全身は、激しい海流に適応するために丸みを帯び、全身が銀色の羽と称される白い羽毛に覆われていて、翼の先は水をかくのに適した手のような形になっている。
鋭い目元や背中、尻尾の先からは水中での姿勢制御用と思われる藍色のフィンが生えており、腹部はそれより少し薄い青色となっている。
海の神と伝えられる存在で、翼を軽く羽ばたいただけで民家を吹っ飛ばす程の力を持ち、力を込めて羽ばたくと40日嵐が続くとも、逆に荒れ狂う海を鎮めるとも云われている。
「あーこいつはやべえな」
お母さんが帽子の裾を深く被る。でも、大丈夫だと思う。だって、
「とりあえず、隠れながら攻撃して疲弊させます。だんだんと名前を失って存在が消えていきますから、そこまで逃げて逃げて、攻撃して弱ったところを捕まえます」
「ま、それしかないか」
「ただ弱らせる敵は出しておきましょう。来て、ジャバウォック!」
呼び出した巨大な怪物に命令させ、ルギア達を襲わせる。この世界は飛行禁止ではないけれど、上下反転の呪いをかけている。だから、空に飛んで行ったら地面に落ちていることになる。さて、ルギアVSサンダーVSフリーザーVSジャバウォック。横やりに私達がいるけど、どうなるかな? ちなみにジャバウォックは魔力がある限り無限復活する。そして、なにより全ステータスがEXランク相当。ただし255であるので、神様がそれ以上ならどうしようもない。ただ、制限が解除されている海の神様がその程度だとしたら、片腹痛い。
なんでこうなった。ルギアは判定クリティカルしたから出た。ルギアちゃん可哀想に。地形の有利が一切ない。ルギアの勝ち目は固有結界を壊さないとない! そして、固有結界を張っているのはハードゴア・アリス。でも、ルギアさん、エスパータイプなんだよねー。あと、このルギアさん、レベル80である。
サンダー57、フリーザー77。レベルの上でも負けているこの二匹に未来はあるのか!
ちなみに今回は空白になにもないです。
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