34番道路に到着した私達はまず、育て屋さんのおばあさんとおじいさんに挨拶しに行く。一応、事前に連絡しておいたので大丈夫らしいし、こちらとしても都合がいい。
「こんにちは」
「おお、よく来たね。そちらがアリスちゃんかな」
「はい。よろしくお願いします」
「随分と大変な目にあったと聞いているよ。ゆっくりとしていくといい」
「ありがとうございます」
「おばあさんはどうしたんですか?」
「今、食事の用意をしているよ」
確かに日が落ちてすでに夕方といった感じなので、夕食の準備をしているのは納得だ。やはり、いくらドードリオで最短ルートを突き進んだとはいえ、ゲームと違って広さも段違いなので、それ相応の時間がかかった。
「まあ、立ち話もなんだ。お上がりなさい」
「「お邪魔します」」
二人でおじいさんに挨拶してから、靴を揃えて家の中に入る。この家は純和風建築で、お庭がとっても広い。庭の中には森や湖まであって、複数のポケモンが住んでいる。
「いらっしゃい。お茶を用意しました。これを飲んで、まずはお風呂に行ってきなさいな」
「手伝わなくていいんですか?」
「まずはお風呂よ。手伝うのなら、明日からお願いするわ」
「わかりました。いきましょう、アリスちゃん」
「お、お風呂?」
「うん。一緒に入ろう。洗ってあげるよ」
「ひ、一人で大丈夫です」
「駄目だよ。何があるかわからないし、覚えているかもわからないでしょ」
「うっ……」
確かに女の子の洗い方なんてわからない。でも、彼女はイエロー・デ・トキワグローブ。レッドさんの彼女(断定)なのだ。そんな彼女の裸を男である私が見るなど、あってはいけない――
「はい、こっちだよ」
「わわっ!? なっ、なになにっ、にゃんでっ!?」
「急がないと駄目だからね!」
イエローさんにお姫様抱っこされ、風呂場に運ばれていった。そこで降ろされて、彼女が服を脱いでいく。それを見てしまって顔を真っ赤にしていると、その隙に服を剥ぎ取られてこちらも素っ裸にされた。
「ほら、行くよ」
「まっ、待ってっ」
顔を真っ赤にしながら洗い場に連れていかれ、そこで身体を洗われていく。柔らかいタオルや素手で洗う感じで、マッサージまでしてくれてとっても気持ち良かった。でも、必死に目を瞑っていたので、自分で洗えないと思われてしまったようで、しっかりと教えられた。
「やっぱりまだまだ子供なんだね」
「うぅ、酷い。大丈夫、一人でも洗えるよ」
「じゃあ、ボクを洗って試してみてくれる?」
「そっ、それはお断りします」
「駄目だよ。ほら、アリス、お願い」
「アリスって呼び捨てですか?」
「駄目かな? アリスって妹みだいだし……ボク、妹が欲しかったんだ」
確かに同じ金髪で、身体の小さな私は妹扱いされてもおかしくはない。それに互いに不思議な力を持っているわけだし。それに色々と迷惑もかけてるし、罪悪感も半端ない。
「わ、わかりました……イエローさん」
「そこはお姉ちゃんがいいな~」
「い、イエローお姉ちゃん……」
「やった、妹ができた!」
後ろから抱き着いてきて首の横に顔を入れて頬っぺたをスリスリしてくる。気持ちいのでされるがままになる。
「かっ、身体、洗ってあげますから、交代です!」
「うん。お願いします」
イエローさんを座らせて、彼女の髪の毛と背中を洗っていく。私は前も洗われたけれど、流石に前は自分でやってもらう。レッドさんに殺されたらかなわないし。ピカのビリビリは嫌だ。
「髪の毛が長いから、自分で洗うのが大変なんだよね」
「でも、綺麗ですよ。れ……彼氏さんも喜ぶと思います」
「かっ、彼氏なんてまだいませんっ!」
「まだ、なんですね。ということは、好きな人はいるんですね」
「そっ、それは……」
両手の人差し指をくっつけて顔を真っ赤にするイエローさん。とっても可愛い。だから、応援してあげる。
「告白した方がいいですよ。イエローさん、お姉ちゃんが惚れる人ならライバルは多いでしょうし……」
「それは、確かに……カスミさんとか、絶対にレッドさんのこと好きだし……」
カスミ。ハナダシティのジムリーダー。水ポケモン使いで、アニメ版ではサトシと一緒に旅をしていた。水とドラゴンタイプのギャラドスやヒトデポケモンのスターミーとかを使う。水のエキスパート。アニメ版よりも大人でカッコイイ女性と少女の間といった感じの人。敵は強い。
「少なくとも、気持ちを言葉にして伝えないと逃げられちゃうかもしれませんよ」
「うっ……」
「そのレッドさんが他の人とくっついてもいいんですか?」
「や、やだっ」
「なら、告白しましょう。大丈夫です。お姉ちゃんなら、いけます」
「だ、大丈夫かな?」
「はい。どちらにせよ、意識することは確実ですから、後は攻めていけばいいんです」
「わ、わかった。頑張ってみる……って、アリスはそんなことわかるの?」
「本で知りました」
ジト目で見詰めてくるので、シャワーで頭を流して背中を洗ってあげる。それが終われば一緒に湯船に入る。もちろん、私は後ろを向いたままなので、互いに背中を預ける感じになる。
「ふぅ、やっぱりお風呂はいいです」
「そうだね。そういえば、なんでメタモンなの?」
「メタモンを選んだ理由ですか?」
「うん。その、メタモンって特殊で初心者が選ぶには難しいと思うんだけど……」
ここまで色々としてくれているのだから、これからやることはしっかりと教えておいた方がいいかな。例えそれで嫌われても仕方がない。私にとって生き残ることが何よりも優先される。今はなりふり構わず行くと決めた。でも、これぐらいなら大丈夫だ。
「それは簡単です。メタモンの特徴は変身なのはわかりますよね?」
「はい。それは知っています」
「変身が使えるメタモンはどのポケモンとも子供が産めます」
「え?」
「その産まれてくるポケモンは親の潜在能力や特性、特殊な力を引継ぎます」
「そう、なんだ」
「つまり、厳選して最大値の6Vになったメタモンを作れば、後は道具を使って調整するだけです」
「そっ、そんなの駄目です!」
イエローさんが湯船から立ち上がって叫んでくる。彼女は優しいから、この方法を受け入れられないと思った。それでも、説明しないのは駄目だと思ったからした。
「ポケモンは道具じゃないんですよ!」
「道具とは思っていません。品種改良、サラブレッドを生み出すだけです」
「そ、それでも駄目です! ポケモンはパートナーで友達なんですよ!」
「わかっています。ですが、それはその前の前提があってこそです。弱い子を捕まえて鍛えて、結果的に殺してしまったらそれこそ駄目でしょう」
「それは……」
「私には時間がないんです」
「時間がない?」
「はい。イエローさんと違って、私はまだ弱いです。それに命を狙われています」
「い、命を……? でも、ヤナギさんは……」
確かにヤナギさんは捕まった。けれど、その配下やロケット団は別だ。彼等が私のことを知ったら、狙ってくると思う。
「それは頭がやられただけであって、配下は止まりません。だから、私は自分とパートナーとなるポケモンが死なないために厳選をします」
「っ!? どうしても、それをするっていうの?」
「します。これは絶対です」
「ボクがそんなことに協力できないって言っても?」
「はい。一人でも捕まえてきます」
「そんなこと、できると……」
「お姉ちゃん、イエローさんこそ、私の力を忘れましたか? 私は、戦う力を持っています。それはポケモン相手でも通用すると思います」
試してはいないけれど、たぶん勝てる。そもそも計画通りに進めば戦いにすらならない。
「なら、勝手にしてっ!」
「はい。させてもらいます」
イエローさんがお風呂から出ていってしまったので、そのまま湯船に頭の天辺まで浸かって頭を冷やす。少し熱くなってしまったけれど、6Vの600族を手放すことはできない。正直言って制限のない伝説ポケモンを相手にするのなら、6Vの600に努力値を厳選した上で、複数用意してようやく対抗できるレベルだ。なので、こればかりは仕方がないことだと思って、諦める。
お風呂から上がって、火の魔弾で髪の毛を乾かして水の魔弾で冷やす。ドライヤーの代わりにも使えるとか、とっても便利。お風呂から上がったら、服が綺麗に用意されていた。怒っていても用意してくれるとか、イエローさんはとっても良い子。そして、私はとっても悪い子。涙がでてくる。でも、仕方がない。
「お風呂、いただきました」
「どうしたんだい? 喧嘩をしたみたいだが……」
「見解の相違です。私はポケモンに何より強さを求めていますが、イエローさんは違うということで喧嘩になりました」
「なるほど。話はわかった。しかし、喧嘩は早めに解決した方がいいよ」
「それはわかっています。でも、こればかりは受け入れてもらうしかありません」
「そうか……まあ、まずは食事としよう」
「いえ、私は要りません。私が居たら空気が悪くなるでしょうし、少し散歩でもして時間をずらします。食べ物はありますから」
「わかった。そういうことなら、散策してポケモンをみてくるといい」
「ありがとうございます」
おじいさんに挨拶してから、モンスターボールを纏め、靴を履いて外に出る。そのまま育て屋さんの家から出て34番道路の草むらに入る。草むらといっても、森も近いので境界線なんてありはしない。ポケダンも自由に移動している。
でも、まずはメタモンを探す。でも、メタモンはそう簡単にはみつからないので、人海戦術ならぬポケモン海戦術です。
「私の言う事を聞きなさい」
目の前に現れたねずみポケモンのコラッタに魅了の魔眼を使って、魅了してメタモンを探させる。でてくるポケモン達を次々と魅了して、探させることによって手早く見つけ出す。
すぐにコラッタの鳴き声が聞こえたので、そちらに出向くと、確かにへんしんポケモンのメタモンがいた。それはすぐにコラッタへと変化するが、私が魅了の魔眼で元の姿に戻して命令する。
「仲間の、他のメタモンのところに案内して」
頷く様な動作をしてメタモンが移動していくので、私も追っていく。森の奥深くに入り、メタモン達がたむろしている場所にやってこれた。そこには紫色のドロドロしたメタモンがいっぱいいる。だいたい十八匹かな。
「残念。色違いはいないか」
まあ、いい。何故なら、全部魅了して連鎖させるからだ。
「さあ、仲間を呼んでください」
十八体が一斉に仲間を呼んでくる。至る所からメタモンがでてきてちょっとホラーだ。所要時間二十分。
「やっちゃった」
正直言って、どれが連鎖した4Vかわからない。だって、いっぱいいるもん。仕方ないので徹底的に集めて集めて、この辺りに居る野生のメタモンを全てかき集めてみた。
所要時間三百六十分。つまり六時間もかかった。そして、集まった数は千八百二十体。その中で水色のメタモンがいた。問題は6Vから4Vのどれかというところだ。
しかし、ここからが問題だ。どうやって強さを判断しようか。図鑑なんて持ってない。でも、それはアローラに行ってからどうにかしよう。今できることとしては、選別だ。
「それじゃあ、後から来た順番にこっちに来て」
後から来た順番にやってきたメタモン達。続いてやるのは身体測定だ。メタモン達には身体測定をやってもらう。全員一緒に一斉でやってもらうので、条件は全ていっしょ。攻撃はバリアで反射して判断。防御は反射された攻撃を耐えることで判断。素早さは単純に技の出す速さなどなど。しっかりとやってもらう。
全ての計測に百十分ほどかかったが仕方がい。そして最高成績を叩き出してくれたメタモンをそれを一体ずつ捕獲する。特に色違いは優先して捕獲した。魅了してあるので、モンスターボールに簡単に入ってくれて楽ちん。本当に外道な所業である。
といっても、これで測る固定値は正直言って、わからない。レベルが違う可能性があるからだ。でも、一体だけ全種目を他のメタモンと圧倒的な差を出してクリアーした色違いのメタモンがいた。その子にはマザーの名前を与えておこう。
「みつけたぁぁぁぁぁぁっ!?」
「ひゃぁっ!?」
いきなり声が聞こえてビックリして飛び上がってしまう。慌てて後ろを見ると、そこには怒り心頭といった感じのイエローさんが、ドードリオに乗っていた。四百九十分、約九時間もかかってるし、それはバレるよね、うん。
「大丈夫っ!? 怪我とかしていませんかっ!」
「だ、大丈夫だけど……」
周りのメタモン達はこれ、どうしたらいいのって感じだ。そんなのをしらないといった感じで、イエローさんはドードリオから降りて私の身体をペタペタと触ってくる。
「ご飯の時から居なくなって、皆で探してたんですよ!」
「言った通り、探しに出ても大丈夫ですよ。この通り、目的のメタモンも捕まえましたし」
「……本当に? このメタモンは?」
「これは厳選した結果、必要ないと判断した子達です。あ、皆さんはもう帰っていいですよ」
手を振って別れを告げると、みんな大人しく帰っていく。いや、色違いの子達は残って、こっちにやってきた。
「一緒に行きたいって言ってるよ」
「そうなんですか?」
「色違いの子は野生じゃ、生きづらいから……」
「でしょうね。わかりました」
その子もゲットしてあげた。イエローさんや育て屋さんの夫婦にあげよう。いや、やっぱりアローラまでは連れていこう。正直言って、マザーが6Vかはわからないし。
「で、どうしてこんなことをしたのか、説明してくれないかな?」
「それはイエローさん、嫌がってたので私だけで……」
「それがどれだけ危険なことかわかってる? 確かに戦えるけど、それでも危険なことにはかわりないんだよ?」
「ごめんなさい」
「まったく。でも、ボクも言い過ぎたの。確かにアリスの境遇なら、力を求めても仕方ないし……」
「こちらこそごめんなさい」
「もういいよ。それよりも、産まれた子達はどうするの? これを聞かないで判断しちゃ駄目だからね」
「生まれた子達は里親に出すか、自衛ができるようになったら自然に返す予定です」
「それなら、まあいいかな」
イエローさんも納得してくれたので、帰るとしよう。
「でてきて、マザー」
モンスターボールを投げると、中から水色のメタモンがでてくる。
「マザー、ドードリオに変身」
ドードリオにメタモンが変身すると、色違いのドードリオとなった。それに乗って帰るとする。
「色違いのドドすけだね」
「この子はこの子でいいですよ」
「確かにそうですね」
二人でお話しながら育て屋さんに戻っていく。戻ったらおばあさん達に説教され、いっぱいご飯を食べさせられた。あと、メタモン達も庭に放して自由にさせた。
マザーの出現は01なのでクリティカル。絶対成功ということで、色違いの6Vだよ、やったね!
ただし、ここで約9時間、出るまで頑張ったのでその分タイムリミットが減らされます。
残り五日。
魅了の魔眼は弱いポケモンにしかききません。伝説級は絶対に無理。トレーナーと絆を結んでいるポケモンも無理です。野生で低レベルなら有効です。
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