ダイゴ
街に戻ると、そのタイミングで凄まじい衝撃が背後から来た。それに僕達は体勢を崩され、吹き飛ばされていく。すると、ボク以外の四人が複数のメタグロスによって掴まれて事無きを得た。そのメタグロス達は四天王の皆を地面に降ろしていく。視線を探せばトレーナーであろう小さな女の子がメタグロスに乗りながら、他のポケモンに色々と指示を出している。
大丈夫なのを確認したので、後ろを向くと……巨大なキノコのような雲が水平線の近くに出現していた。おそらく吹き飛ばされたのはその衝撃だろう。それによって襲い掛かってくる10メートルを超える津波は街を飲み込んでしまう。
「これは対処しないと駄目だな」
そう思った時、小さな女の子の傍らにいた空飛ぶピカチュウのぬいぐるみが、浮かび上がる。
「ミミたん、ブラックホールイクリプス!」
「きゅきゅ!」
不思議なポーズを取る女の子に合わせ、ミミたんと呼ばれたポケモンも同じポーズを取る。するとシャドーボールであろう黒い球体がポケモンから放たれ、大波に着弾すると海水を吸い取ってしまう。小さな波はサイコキネシスなどでしっかりと防いでいるようだ。
「おい、ダイゴ!」
「ああ」
遠くで戦いが行われているであろう戦場を見ると、キノコ雲が吹き飛ばされる。そのすぐ後に無数の雷などの閃光や炎の柱、水の柱が確認できた。またこちらに巨大な津波がこようとすると、次の瞬間には光の壁のような透明の壁が現れて津波を防いでしまう。
「結界は再展開されたみたいだから、今の内に休憩するよ~。船はしっかりと固定しておいてね」
小さな女の子はポケモンや人に指示を出している。その指示に従って、しっかりと固定していっている。他にもサファイア君がいて、彼女も避難誘導をしてくれていた。そちらは助かるが、今はあの女の子だ。おそらく、アリスという女の子の関係者だろう。
「ダイゴ、ポケモン協会から連絡よ」
「わかった」
電話に出ると、理事がでてきた。
『チャンピオン。今はどこにいる?』
「港です。カイオーガとグラードンの戦い場から一時的に戻ってきました」
『何故だ?』
「先客が居ました。例の伝説のポケモンを操る子供です」
『彼女か……もしや、彼女が復活させたのか?』
「それはわかりませんが、グラードンとカイオーガの思考を誘導できるようです。それで海の方に移動させたと言っていました。信じられませんが……」
『……おそらく、それは事実だろう。彼女の身体になにかマークのような物がでていなかったか?』
「両目にアルファとオメガのマークがでていました。知っているのですか?」
『それは紅色の宝珠と藍色の宝珠を取り込んでいる証だ』
「その紅色の宝珠と藍色の宝珠とは?」
『古代人が残したグラードンとカイオーガの制御装置だ』
「そのような物を彼女が何故……」
『保管していた場所から盗まれた。マグマ団とアクア団の名前でな。ただ、あくまでもそう犯行声明に書かれていただけで、実際にそうかはわからない。偽物も置かれていたが、フウとラン曰く、ジム戦に来ていたアリスという少女が怪しいようだ』
「では、彼女が……」
『いや、それがそうともいえない。彼女の写真を確認してもらったところ、別人らしい』
「変装の可能性は?」
『それもない。
別人か。だが、二人のアリスという少女が同じタイミングで同じ場所にいるなど、あり得るのだろうか? いや、ありえなくはないか。だが、それが二人共、ジムリーダーを倒すレベルだというのなら、話は別だろう。ましてや、二人共メタグロスを使っている。もしかして、この地方では珍しいが、他の地方ではそうでもないのだろうか?
「怪しいですね」
『ああ、そうだ。だが、証拠がない。あくまでもフウとランが感じたことでしかない。それに紅色の宝珠と藍色の宝珠に関して入手した方法をマグマ団のアジトを襲撃して手に入れたと言われたら、どうしようもない』
「理事は彼女達をどう見ますか?」
『それなんだが、なんとも判断が難しい。改めて調べると、マグマ団とアクア団の危険性について、彼女達は二年前から二度も忠告をしていた』
「二年前ですか」
『ああ。一度目は二年前。この当時は担当者が一切取り合わなかったそうだ。妄想や嘘だと断じて手ひどく言ったのだろう。次は少し前。本人達ではなく、図鑑所有者の子からの連絡ということで書類には残していた。だが、その図鑑所有者がいるのはカントー地方だったためにこちらまで連絡がくるのが後回しにされ、そのまま忘れられたようだ』
「それはなんと……」
『当然、その担当者は処断した。といっても、たいした罰にはならないが。一応でもいいから、こちらにしっかりと連絡を入れて欲しかった。まさか、情報が他の地方にあるなどとは思わなかったぞ。どちらにせよ、彼女達はポケモン協会を信じていない』
担当者からしたら子供の妄想やいたずらと思うのも仕方がない。だが、これは運が悪かったということで済ませられる被害じゃない。
「ポケモン協会が信じられないから、違法な手段やグレーな手段でも手を染めるか」
『その可能性もある。彼女達の目的があくまでもホウエン地方の救済なら、だ』
「それですが、目的はグラードンとカイオーガの捕獲。いえ、伝説のポケモンの捕獲らしいです」
『そちらの目的が本命か。対抗馬であるマグマ団とアクア団を私達に処理させようと思ったのか?』
「ないとは言えません。ただ、伝説のポケモンに対処するための戦力を保有しているのは確かでしょう」
『無数のメタグロスによる上空からの攻撃か』
「それ以外にも不思議な力をもっているみたいです。ナイフで腕を刺してもすぐに治りました。まるでポケモンの自己再生でしたよ」
『それが撤退した理由か?』
「食事などの準備をしていませんでしたし、彼女にここに居たら確実に死ぬから彼女が敗れた後の為に準備をしておけと言われましたよ。なので、お言葉に甘えて彼女が止めてくれている間に準備を整えさせてもらおうかと思っていたのですが……」
『先程の爆発か』
「あの場にいれば確実に死んだでしょう」
『うむ。こちらでも確認している。そちらの被害はどうだ?』
「彼女の仲間であろう女の子が防いでくれました」
『そうか。やはり、わからないな。一体何が目的なんだ?』
「両方でしょう。ホウエン地方を救いたい。だけど、
『そんなことがありえると?』
「相手は子供です。それに伝説のポケモンを捕まえることはポケモントレーナーなら誰もが夢見て憧れることでしょう。僕も子供の頃はそうでした」
『その為の準備を着々としてきて……その過程でアクア団とマグマ団について知り、知らせてきたが、ポケモン協会は対応しなかった。だから、自分たちで両方実行したと。ありえるな。どちらにせよ、まもなく上空に到着する。街を守ってくれている少女と一緒に来てくれ』
「わかりました」
被害を最小限に収めてくれている彼女の下に移動し、まずは話をする。といっても、女性の方がいいだろうから、フヨウに頼もう。
少しして説得が終わったようで、代わりに街を守ることで話がついた。彼女と一緒に空を飛んできたポケモン協会の本部である飛行船に搭乗し、周りを見渡すと各地のジムリーダーが集合していた。その中心にいるアフロの髪形をした身長の低い理事と話をする。
「よく来てくれた」
「理事、状況は?」
「君達が押さえてくれているお蔭で今のところ人的被害はない。ただ、経済的損失はあるが、これはグラードンとカイオーガが復活したせいだ。そのことについて知りたい。教えてくれないか?」
「条件次第?」
紫色の髪の毛をした女の子がそう言ってくる。ただでは教えてくれるつもりはないようだ。
「条件とは?」
「その前に自己紹介をした方がいいんじゃない? アタシは知ってるけど」
「知ってるな。ジム戦にきたし」
「アセロラも知ってるからいらないよ? そこの人達を知らないくらい?」
「なら、自己紹介をしよう」
自己紹介をしてから、彼女の言う条件を聞く。
「こちらが要求するのは伝説のポケモンの所持を認めることとグラードンとカイオーガの事に関する被害や損害はポケモン協会とかで補填すること、だって」
「それは……」
「子供があのような力を持つ伝説のポケモンを持つことは認められない」
「じゃあ、教えられないかな~」
「なっ!?」
「アセロラとしてはどっちでもいいし、教える理由もないしね~」
「これだけの事をしておいて!」
「アセロラ達は防ごうと頑張ったよ? 情報も沢山あげたよ? でも、ポケモン協会は動かなかったよね? だから、致命的な失敗を防ぐために必要な物は確保したんだよ。なんていうんだっけ。職務怠慢? 役立たず?」
クルクル回りながら楽しそうに毒を吐いてくる彼女。確かに彼女達のやったことは二つを除いて、なんの問題もないことだ。一つは父が被害届けを取り消したので問題ない。もう一つは紅色の宝珠と藍色の宝珠を奪ったことだが、こちらはグラードンとカイオーガを操ることができるとのことで、致命的な失敗にかかわる。マグマ団とアクア団の危険性と情報を伝え、彼等の妨害をしながら潜水艇を守る。だが、マグマ団に取られた人質を救助するために潜水艇の警備を少しの間、空けたことによりアクア団に奪われた。それに対してジムリーダーやポケモン協会、僕達は後手後手に回ってしまっている。子供が大怪我してから、ようやく動き出したくらいか。
「我々とてグラードンとカイオーガの危険性は確認していた。だからこそ、第三の古代ポケモンを捕獲し、研究をしていたが……」
「第三の古代ポケモンとは?」
「レックウザと呼ばれるポケモンだ。だが、宝珠を作っている時に逃げられてしまった。センリ君、レックウザは……」
「見つけられていない」
「何をしていたんだ……」
「大切な息子のルビー君が大怪我して入院したからだよ~? つまり、ポケモン協会のせい?」
「ぐっ」
アセロラと名乗ったこの子は徹底的にこちらを責めるつもりのようだ。
「どうしたら協力してくれるの?」
「条件は伝えたよ。まあ、そもそも命懸けでポケモントレーナーが捕まえたポケモンを協会が奪い取るのは間違っていると思うけどね~」
「それは確かに……」
「だが、幼い子供に危険な伝説のポケモンを持たせるわけにもいかない。ただの喧嘩やポケモンバトルで伝説のポケモンを出されて地形が変わりましたではたまったものではない! むしろ、地形が変わるだけならまだましだ。街が滅びたら……」
「どちらの言い分も納得はできるが……」
「まあ、今はどうなってるかだ。どちらにせよ、彼女がやられた時の事を考えて準備しないといけないぞ」
「その通りだ。だが、二つだけは確認したい。一つはグラードンとカイオーガを復活させたのは君達か?」
「多分違うよ。今朝、アリスちゃんは物凄く驚いていたしね。服も着替えずに慌てて陸地から離れて殺し合えって命令してたし、急いで着替えて超特急で飛び出したから……こっちの計画だと、復活させることは復活させるけれど、もっと被害がでないように一体ずつ復活させて、移動させてから被害がすくない場所で戦わせるって言ってたから」
つまり、彼女達ではない誰かがグラードンとカイオーガを復活させた。おそらく、確認されていないアクア団だろう。
「緊急報告! モニターをみてください!」
全員がモニターを見ると、そこには煙が晴れて戦っている少女の姿がみえた。空飛ぶ人型の巨人がカイオーガとグラードンと戦っている。女の子は宙に浮かびながら、周りのぬいぐるみを浮かべている。カイオーガとグラードンが協力して彼女を攻撃しているようだ。
「あれ、計画と違う。弱ったところを襲い掛かるはずだったのに」
「悪辣……」
「だが、効率的ではある。人が伝説のポケモンに対抗するのに有用な戦術だ」
「しかし、何故その方法を捨てた?」
「たぶん、ダイゴさん達が行ったからじゃないかな。戻ってこられたら余計な被害がでるから、素早く決着をつけようと急いだんだと思うよ。あんなところに参加したら、命がいくつあっても足りないし、被害が増えちゃう」
「僕達のせいか……」
「気にするな。それよりも、常に上を取って戦っているな」
空の優位を捨てるつもりはないのだろう。冷静に状況を判断して攻撃を行い、防御もしっかりとしている。このまま行けば勝てるだろう。伝説のポケモンの数も彼女の方が多い。そう思っていたら──
「ちょっと待てっ!」
「こ、これはひどい……」
遥か上空から緑色をした蛇のようなポケモンが急降下してきて、彼女や巨人に激突して地面に激突させる。そのまま悠然と佇むその姿は空の王者を思わせる。
「レックウザ? いや、姿が違う!」
顎が幅広な刃状と化して大きく前に突き出した形となり、その顎や角からは元の黄色い模様が尾先まで剥がれたような長い髭が後ろに流れるように伸びていた。この髭から特殊な粒子を発生させているのか、気体の濃度や湿度をコントロールすることで天候を意のままに操る能力を持っているみたいで、天気がころころ変わって混沌とした状況になっている。
また、全身はエメラルドにも似た質感で輝く緑のような皮膚で、滑らかな光沢を放っているのがみてとれる。胴体部分も各部の羽が流線形となり、模様の丸があった部分は発光する龍玉の様な器官があった。額に紋様があり、それはデルタだ。
「なんだあれは……」
「もしかして、メガ進化?」
「メガ進化とはなんだ!」
「一時的な進化だよ。とっても強くなるの」
「というか、彼女の心配はしないの?」
「多分平気だよ?」
レックウザであろう存在が緑の槍みたいなのを無数に生み出し、雨の様に降らせる。それに対して、ルギアとホウオウが飛び上がり、対処していく。そんな中、腕や足が折れ、全身から血を流している彼女の姿がみえる。
「ひ、ひどい……」
「流石に大丈夫……?」
アセロラも不安そうだが、これはいよいよまずい。そう思っていたら、彼女が光って服装が黒いドレスのようになった。
「「「「はぁっ!?」」」」
次の瞬間。何事もなかったかのように腕や足は元に戻り、怪我の跡は血液だけだ。それからさらにありえないことが起こった。メイド服の少女が見たこともない巨大な白い石でできたイワークやハガネールみたいな姿となり、巨人と共にグラードンと戦いだす。女の子はたった一人でカイオーガに挑み、飲み込まれた。
アリス達が喰らった技はガリュウテンセイ。つまり、メガ進化したレックウザ。
レックウザさんが現れた理由は簡単。
レックウザ「人の庭で大気汚染してんじゃねえ!」
以上。
核兵器、駄目絶対。
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