すみません。今回で真と春のとおかしな二人を終わらそうと思いましたが、とりあえず書けてる切りのいい所まで投稿することにいたしました。
何時もより少々短めです。
派手に電飾を施された戦国時代風の城の敷地で、私と花村さんは、悪代官風の中年男性と対峙し、多量のシャドウに囲まれる。
かなりピンチだわ。
でも……
「お待ちなさい!そこの貴方!」
城壁の上から人影が現れ、城の天守閣中層でふんぞり返る悪代官風の中年男性に指さす。
この声に、この口上は……。
「誰だ!貴様は!!」
悪代官風の中年男性は花村さん流で言うところのお約束の言葉を返す。
「美少女怪盗と申します!」
つばの大きな帽子に中世ヨーロッパ貴族の女性軽装衣装をまとった美少女怪盗を名乗るノワールはポージングを決めていた。
「ええ!?あれって春ちゃんだよな、妙にはっちゃけてるけど、コスプレに美少女で怪盗ってどういう事!?」
花村さんは困惑した表情で私に問いかける。
春…その設定、今も通すのね。
一応春はまだ19歳だからギリギリ少女を名乗れるのだけど、流石にそれは恥ずかしいわ。
春は普段はお淑やかに見えるけど、本当は結構自由奔放で、お嬢様育ちのちょっと常識ズレを起こして、こんな感じなのよね。
でも、春の突然の参上にも少々驚かされたのだけど、私は春の隣の存在に目を奪われていた。
「すべての女性のナイト!プリチークマモン参上クマ~!」
赤と青と白のトリコロールカラーの丸っぽい、とても変な着ぐるみが短めの手足を振り回し春に合わせながらポージングを決めてる。
何?あれは何なの?
表情はコロコロ変わるし、着ぐるみにしては動きが機敏過ぎるわ。
「は、花村さん…アレは何ですか?どう見ても着ぐるみに見えるんですけど……」
私の脳内のキャパシティーを大幅に超えるその存在に、しばらく茫然とするしかできなかった。
「あれは……説明はちょっと難しいんだけどクマだ」
花村さんは何故か遠い目をしながらそう説明してくれたのだけど……
「え?クマ?」
熊?動物の?とても熊に見えないわ……どちらかというと、タヌキか某ネコ型ロボットの方が近いかしら。
クマ?もしかして熊田さんという事かしら?
ええ!?
どういうことなの?
という事は、熊田さんも私や春の様に異世界に入って敵に認識されると、変身すると言う事かしら?
でもあれは斜め上に行きすぎよ。
私達のはちょっと過激なコスチュームに変身するだけだけど、あの存在はもはや熊田さんの原形をとどめていないわ。
身長も低いし、体格も全く別ものよ。
しかも、あのなんて言うのかしら、配色から姿恰好から全部が一言で言えば変。
『怪盗だと?まさか、貴様はあれを盗みに来たのか?ぐははははっ!妙な格好をした女と、タヌキに何ができる』
少々茫然としていた私は、悪代官風の中年男性の大きな声でハッと正気を取り戻す。
悪代官風の中年男性は春達の格好を見て、いかにもそれらしい高笑いをしていたけど、怪盗と聞いて一瞬動揺していたのを見逃さない。
きっとなにか隠してる。
怪盗としての勘が私にそう訴えかける。
「ムキーッ!クマのこのクマ毛はどう見てもクマクマ!!このプリチーさを分かっとらんとね!嘆かわしいクマ!!」
熊田さんと思わしき着ぐるみは短い手足を振り回して、タヌキ呼ばわれされて怒ってた。
熊田さん、ごめんなさい。
私もタヌキだと……
「私は美少女怪盗と申します。自治会長さん!貴方のお宝を盗みに来ました!」
ノワールこと春は、悪代官風の中年男性の言葉等聞いていないかのように、再び名乗りを上げる。
でも春、さらっと凄い事を口走ったわ。
あの悪代官風の中年男性の事を自治会長さんって……という事はあの小さなお社に、趣味悪い装飾を施した人よね。
この認知世界のような異世界を作り出した元凶という事?
しかも、春はこの自治会長のお宝を盗むと言っていたわ。
自治会長の歪んだ心の元凶を把握して、その核であるお宝が何なのかを調べて把握したと言う事かしら?
もうそこまで調べがついていたのね。凄いわ春。
という事は、この異世界は認知世界と同じで、そのお宝を実体化させて盗めば解決ということかしら。
『ぐぬぬぬぬ!!予は自治会長ではない!この世界の王だ!予の為の世界だ!!貴様らの様なふざけた輩にアレを渡しはせん!!者共!!あの不埒な輩をやってしまえ!!』
悪代官風の自治会長は怒りを露わにして警備員を模したシャドウ達に命令する。
春の偽物はサキュバスを模したシャドウに変化し、私達を囲む警備員に模したシャドウは次々と本性を現し化け物となって私達に襲い掛かる。
ノワールの春と着ぐるみの熊田さんは、城壁の上から私達の所に飛び降り合流。
「クマ!お前クマモンって、流行りに乗り過ぎなんだよ!あっちは一目で熊とわかるが、さっきの悪代官みたいにタヌキに間違えられるのが落ちだからな!?」
「陽介!酷いクマ!ゆるキャラ歴はクマの方が長いクマ、ジュネス公認で全国区にまで知れ渡ってるクマ!」
「全国に広まってねえし、誰も公認してねえっつうの!」
この着ぐるみ、本当に熊田さんみたいね。
そんな着ぐるみの熊田さんと花村さんは軽口を叩きながらも、戦闘態勢を整える。
「マコちゃんじゃなかったクイーン、良かった無事で」
「ノワールも無事のようね」
「やっぱりここは認知世界なのかしら?」
「似てるけど、違うかもしれない。異世界である事は確かだと思うのだけど」
春も私の後ろに立ち、攻撃の準備をしながら話かける。
「春ちゃんもペルソナ使いでコスプレ美少女って、しかも実はけっこう天然入ってる?」
「コスプレではないです。美少女怪盗です」
花村さんが言う通り、美少女怪盗と言い切れる春は相当天然が入ってると思うわ。
「わぉ!真ちゃんのその恰好は知ってるクマ!陽介が持ってるビデオにでてくる女王様見たいクマ!なんだかいけない世界に行っちゃいそうクマ~」
「好き好んでこの格好ではないので……」
「おい、クマ!何、人のコレクション勝手に見てるんだよ!って……わわっ!こんな所で暴露すんなよなクマ!後で覚えてろよ!」
熊田さんは私の姿を見て何故か着ぐるみの顔をほんのり赤らめ、花村さんは涙目でそんな熊田さんに怒鳴る。
女王様って、SMの人の事よね。かなみさんに散々言われたけど、やっぱりこの格好そう見えるのかな。
「それは置いといて、まあ、そんじゃ行きますか、ジライヤ!」
「クマもやる気満々ね!」
「はい、惑わせミラディ!」
「え、ええ、駆け抜けろ!ヨハンナ!」
花村さんの掛け声をきっかけに、襲い掛かって来るシャドウに一斉反撃を開始。
先ずは、春のペルソナ ミラディのスカートの中に隠していた重機関銃が火を噴く。
襲い掛かるシャドウをその重火力で一斉掃射。
春のペルソナミラディは西洋中世の舞踏会に参加する貴婦人のドレスを纏った様なペルソナ。
ミラディの豪華絢爛なスカートの中には重機関銃が何丁も仕込んであり、後方からの重火力の銃撃によるこんな一斉掃射が得意。
私と春が連携をとる場合は至ってシンプル。
私が前衛で近接攻撃を繰り出し、春が後衛からの重火力攻撃。
このパターンは怪盗団の中でも攻撃に特化した連携ね。
先程と同じように花村さんが私達にスクカジャ系(命中率・回避率アップ)のスキルを掛けてくださったようね。相手の動きが良く見えわ。
それと同時に力も漲って来るのを感じる。
これはタルカジャ系(攻撃力アップ)のスキル。
熊田さんのスキルなのかもしれないわ。
花村さんはクナイとペルソナで、空中から襲い来るシャドウを撃退。
変な着ぐるみ姿の熊田さんは……何処から出したのか分からないけど、ジュース缶やらプラモデルやら、ドラム缶やらをシャドウに投げつけている。
しかも、それらに触れたシャドウはダメージを受けてるみたい。
どういう原理なのかしら?
いえ、そもそも認知世界なのだから原理とかは関係ないのかもしれないのだけど……。
「ペルクマ!キントキドウジ、でんしゃい!」
熊田さんがそう叫ぶと、真ん丸胴体にマントをたなびかせ極端に手足が短いペルソナが顕現される。
姿も熊田さんの着ぐるみ姿同様、そのペルソナの姿も変わってるのだけど、異様なのは掲げた手に持っている体より大きなミサイル。
それに変な格好だけど熊田さんもかなりのペルソナ使いだわ。
熊田さんと花村さんの連携もスムーズね。
私も春との連携で次々とシャドウを撃退していく。
周囲シャドウはあらかた撃退できたのだけど、城の天守閣の門からシャドウが次から次と現れこちらに向かってくる。
まだ、あんなにシャドウが……
「クマ、やっちまえ!」
「クマ、いっきまーす!クマ~!」
そのタイミングで花村さんの掛け声と共に熊田さんのペルソナは、城の天守閣から次から次に現れるシャドウの元へ飛んで行き、その手に持つ大きなミサイルを投げつけるというよりも、コンと叩きつける。
大きな爆発が起こり、周囲に爆風をまき散らす。
濛々と立ち込める砂埃が晴れると、地面に大穴が空き辺りのシャドウが一掃されていた。
「凄い……」
まるでメギドラオン……凄い威力だわ。
「クマさん可愛いだけでなくて強いんですね」
熊田さんの着ぐるみ姿が可愛いと言い切る春の感性は別にして、春も熊田さんの強さを実感してるようね。
「そんなに褒められるとくすぐったいクマ、はっ!これはモテ期到来クマ!?ナンパしていいクマ~?」
「それはお断りします」
「わ、私もお断りします」
熊田さんの突然のナンパにも春は動じることなく笑顔できっぱり断り、私もそんな春に習い断る。
「シクシク、しどいクマ~」
「クマ、お前、時と場合を選べよな」
そんな熊田さんに呆れる花村さん
「ぐぬぬぬぬぬっ!よくも貴様ら!!あれは渡さんぞ!!!!」
趣味の悪い城の中腹から様子を伺っていた悪代官風の自治会長は悪態をつきながら、天守閣の中へ姿を消すと同時に、天守閣の門が閉まろうとする。
「って、彼奴逃げるぞ!」
「自治会長さん、お待ちなさい!」
「あっ、門も閉まるわ」
「急ぐクマ~」
私達は急いで、閉まる門を駆け抜け天守閣の中へ入り、熊田さんの誘導に従ってとある一室に飛び込む。
「ふう、間に合った。……なんか城の中、見た目より広くないか?」
「ムムム、迷宮化してるクマね。」
「シャドウの反応は?」
「そこら中シャドウだらけクマ、ここも危ないクマ」
「はぁ、休憩も出来ないのかよ。」
花村さんは熊田さんの返事に、うんざりした表情をしていた。
「ノワールも熊田さんと一緒にこの異世界に?」
「最初は一人だったのだけど、可愛らしい恰好のクマさんが私を見つけてくれて、マコちゃんや花村さんの反応がこっちにあるからって、一緒にここまで。熊田さんもペルソナ使えるからびっくりしたわ。それに花村さんもペルソナ使いだなんて」
やっぱり。
熊田さんのペルソナは探査も出来る。
しかもあれ程の戦闘力まで持ってる。
探査と戦闘が両方可能なペルソナのようね。
かなみさんのペルソナの強力版といったところかしら。
「そういえばノワール、さっき悪代官の人を自治会長さんって、しかもお宝を盗むとか言ってたわね。もう、その自治会長さんのお宝を見つけたの?という事は、認知世界みたいにお宝を盗んで改心できるということかしら?」
「え?お宝は見つけてないわ。さっきの人は自治会長さんだったから、認知世界と同じみたいに宝を持っているのかなって、それでいつもの感じで言っただけよ」
なるほど、さっきの春の口上は認知世界と同じ感覚で口走ったと、特に真相が分かってるわけでは無いという事ね。
「新島さんと春ちゃん。ちょっといい?さっき春ちゃんが悪代官みたいな奴の事を自治会長って言ってたけど、あのお社に怪しげな電飾を施した人って事でいいんだよな」
花村さんは私達の話に入り、私達に質問をする。
「はい、本人ではないとは思います」
春がその質問に答える。
認知世界と同じであれば本人そのものでは無くて、本人の深層意識の集合体。
「春ちゃんどういう事?…新島さんとさっき見た春ちゃんの偽物と同じって事?」
「いえ、どう説明したらいいのか、その仮に認知世界と同じと仮定すれば、本人の心の偶像が認知世界に反映されて、欲望がそのまま形となって……」
私が花村さんに認知世界について説明しようとした矢先に、またシャドウが襲って来る。
「って、シャドウがまた来たっ!落ち着いて話ができないっつうの!さっき聞いたけど、とりあえずあの悪代官を何とかすればいいって事でいいんだよな」
「確証はないですが、今はそれしか。……ヨハンナ!」
私は曖昧な返事に留め、戦闘に入る。
認知世界に似ているけど、違うかもしれない。
認知世界と同じだったら、悪代官の自治会長さんを会心させるために、お宝を盗まないと解決しない。でも、似ているだけで全く別物だったなら、鳴上さんと一番最初に解決した神社の時のように、奉られた神様が暴走し異世界を形成しているのだとしたら、その神様が抱えてる問題を解決しないといけない。あの電飾が施されたお社を通じてここに来たのなら、その可能性も高いわ。そうだとしても、今の状況だとこの世界がどういうふうに形成され、何なのかもわからない。一度この異世界から出た方が良いのだけど、脱出方法もわからないわ。あの悪代官の自治会長さんが何らかに関わってるのは確かだから、今は追わないと。
『助けて!』
また、あの少女の声が聞こえてくる。
しかも、その少女に近づきつつあるのか、その声が次第に大きくなってきてる。
「クマの怪しげセンサーも、恥かしんぼ悪代官からこの世界の歪みを感じるクマ。近くに美少女を探知したクマ!きっと恥かしんぼ悪代官に捕まってるクマ~!今、助けに行くクマよ~」
熊田さんもどうやらあの少女の助けを求める声が聞こえてるみたい。
熊田さんは叫びながら突撃し、シャドウを蹴散らしながら上階へと昇って行く。
「クマ!待てって!はぁ、そうするしかないんだけどな!ジライヤ!吹き飛ばせ!新島さん、春ちゃん今だ!クマの後に続け!」
花村さんはペルソナを軽快に操り、襲い来る周囲のシャドウを吹き飛ばし、私達に進む道を作ってくれる。
私達はシャドウ達を倒しつつ、城の天守閣最上階まで到着する。
『き、貴様ら!!!盗賊風情の分際で、わしの宝はやらん!!!!!』
多数のシャドウを従える悪代官の自治会長さんが鬼の形相で、私達を睨んでいた。
その自治会長さんの上には鳥かごの様な牢屋が天井から吊り下げられ、巫女装束姿の少女が捕まっていた。
『助けて』
やっぱりあの声はこの子の様ね。自治会長さんのお宝はこの子みたいね。何でこの子が?
でも、この子の頭には白い少々尖った耳が、それにフサフサの白い尻尾まで……。コスプレ?しかもキツネ風かしら?
とりあえずは、認知世界と同じだとしたら、この子を奪ってしまえば、解決なのかもしれない。
……あの頑丈そうな牢屋をどうやって?
「胸糞悪いっつうの。いい大人が女の子をこんな所に閉じ込めやがって」
「今、助けるクマよ~」
「自治会長さん、この美少女怪盗が悪事を見届けました。大人しく彼女を開放してください」
花村さんや熊田さん、春までやる気満々ね。
このシャドウを蹴散らして、あの子の元に行けば何とかなるかもしれない。
『こ奴は予が世界を収めるための、金の卵!誰にも渡しはせん!!渡しはせんぞぉぉぉ!!うううう……うぐっ、ごはっ!?』
悪代官の自治会長さんはそう叫んだあと、急に苦しみだす。
「クマ、お前なんかやった?」
「何もしてないクマよ。恥ずかしんぼ悪代官はきっと、自分の姿に恥ずかしくなったクマ」
花村さんは突然自治会長さんが苦しみだす姿に疑問顔で熊田さんに聞き、熊田さんは何故かそう結論づける。熊田さんのその恰好も結構も厳しいわ。でも、そう言われると私の恰好も現実世界ではかなり恥ずかしいわ。
「腹痛ですか?悪事を働いた罰です。罪を認め、彼女を開放し悔い改めなさい」
この格好のノワールは何時もノリノリね。
でも、この苦しみよう異様だわ。
まさか、ペルソナを覚醒させるとかはないわよね。
そもそも、本人そのものではなさそうだから、それは無いわね。
遂に自治会長さんは苦し気に蹲る。
それと同時に、体から黒いドロドロとした大量の液体が一気に噴き出し、津波のように周りのシャドウを飲み込み、私達にまで押し寄せてくる。
何、あれは?見ているだけで悍ましい感覚が……
「えっ?」
「きゃっ!?
「げっ、なんなんだ!?」
「クマーーー!?あれは絶対いけない何かクマっ!に……逃げるクマよ!!」
熊田さんはそう言って、何処から出したのか、三段重なった赤いブラウン管テレビを私たちの前に置く。
「みんな、早くテレビに入るクマ!!」
「クマっ!お前っ!脱出できたのかよ!?」
「テレビ?しかも昔の?」
「え?どういう事ですか?」
「いいからいいから!早く入るクマ!」
熊田さんはそう言って私達を後ろから押し、ブラウン管テレビの画面に押し込む。
私達は吸い込まれるようにテレビの中に落ち込み、激しい眩暈が襲い……次の瞬間……。
どこかに落ちた様に地面に尻もちをつく。
「痛っ…ここは?」
あの異界独特の空気感はなく、じめっと蒸し暑い東京の夏の空気感。
目の前にはあの電飾の施された小さなお社が……現実世界に戻ってきたの?
「新島さん?それに陽介とクマ?」
私はその声に顔を上げると、鳴上さんが驚いた顔で私達を見下ろしていた。
続きは近日中にと思ってます。