一角獣の導き   作:metallic

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一発ネタで続きません


一角獣の導き

古びた電灯が幾度と明滅を繰り返す薄暗い港の倉庫街。

湿り気を帯びて微かな不快感を与えるその場所に、織斑一夏は両手両足を縛られた状態で監禁されていた。

拉致誘拐。

姉である織斑千冬が現在出場をしているインフィニット・ストラトスと呼ばれる兵器を使ったスポーツ大会の応援の為に彼が異国の地をおとずれ、いざ会場に向かおうとしている時にその魔手は少年を捕えた。

中学生という多感な時期、なにかと見栄や意地を張りたくなる時頃とは言えども目の前には自分よりも遥かに屈強な男が複数人、そしてリーダー格である女がおり、ちっぽけな意地は恐怖に上塗りされる。

声も出ない。猿轡をされた口内ではガチガチと奥歯が鳴り、自分が震えているのだと気付かされる。

自分を囲んでいる者達の懐には薄暗くても存在を確認できる黒光りする拳銃があり、それは容易く自分の命を奪う事が出来る代物だと理解出来る。

 

(くっそぉ……)

 

悔しさに瞳が震えた。

姉の少しでも助けになる為にといざ現地へと足を運んでみれば、足を引っ張る様な無様を曝してしまう自分。

自分を捕えた者達の目的は先程盗み聞いた限りでは織斑千冬の決勝戦出場辞退。

これが相手国の謀略か、或いはそれとはまったく別の、あの〝篠ノ之束〟謹製のIS『暮桜』が目的なのか。

少し考えれば至る事が出来る要因にも一夏は辿り付けなかった。

それは何も彼が頭が悪いという事ではなく、極限状態に追い詰められてまともに思考する事が出来ないだけである。

当然の事だ。

例え周囲に天才や秀才、いや人の枠から外れた頭脳を持ち得る天災や天賦の才とも言えるほどの武力を持つ存在が居ようとも、彼自身は何処にでもいる中学生の男子。

それも争乱からは程遠い、平和な島国生まれの少年がいきなりこの様な事態に見舞われてまともに動けと言う報が土台無茶な話である。

ただ彼が希い望んでいる事は相反しているが二つ。

一つは誰しもが抱くであろう人間心理としては当然な生存本能。死にたくない。助けて欲しいという一点。

そしてもう一つは、自分の事は気にせずに姉は試合に出場して優勝をして欲しい。或いは、この事が姉にバレテはいけないという人間としては壊れた願望だ。

 

自身の事よりも他者を優先する。

それは美徳でもあれば称賛される事であるが、行き過ぎればただの破滅願望の持ち主だ。

まして、自分の命が掛かっている場であるなら尚更の事である。

 

「なにっ!? どういう事だ。織斑千冬が決勝戦に出場しているだと!?」

「はい。確かに間違いありません。映像も加工されたものではなく本物だと」

「馬鹿な……。弟を勾引かした事は知らせたのか!」

「確かに知らせました。ですが……!」

「くっ、このままでは計画が全て丸潰れになってしまう!」

 

スーツの懐から明らかに武器とは思えない銀光りするネックレスを振り被る。

ヒステリック気味に叫ぶ女を宥めようと男達が慌てて声を上げる。

 

「落ち着いて下さい、隊長。まだこの少年には可能性があります。危険性と天秤に掛けても始末するのは早計です」

「そうだな、済まない。……女のヒステリックは己事と言えど始末に負えない。矢張り貴様等を麾下に加えて正解だ」

 

部下と思われる男たちの諫言に一度大きく深呼吸をして昂ぶった思考を冷やす。

それが却って一夏には恐ろしく思えた。

中学生に上がった一夏には昨今の風潮、女尊男卑の影響を如実に受けた女性が増加しつつある。

男である事を理由に、無関係な相手をまるで奴隷の様に扱う悪女。それを傍から見た事さえある。

だからこそ、

だからこそ、自身の悪性を理解して制御する術を持っているこの女は危険だと。

そこまで深く考える事は出来ずとも、言い知れぬ恐ろしさを一夏は感じ取った。

 

「……仕方ない。このまま此処に居てもいずれ何処ぞの軍に嗅ぎつけられる。一旦場所を変えるぞ」

「ハッ」

 

男達に指示を出していた女がゆっくりと一夏に近付いてくる。

 

「悪いが暫くの間私達に付き合って貰おう。お前の中に宿る『織斑』の可能性を我々は測りかねるのでな」

(織斑の、可能性……?)

 

ズキリ、とそんな小さな鈍い痛みが頭の片隅に起きた。

今ならタックルの一つでもして女を怯ませる事が出来たのだが、そんな事をした所で事態が好転する筈も無い。

銃によって脅されるまでも無く、自身から従順を示すようにゆっくりと少年は立ち上がった。

 

「ほう。立場は理解してるな。宜しい、賢しい子供は嫌いじゃない」

 

縄を手にしようと女が一夏に腕を伸ばそうとした次の瞬間、倉庫の中に轟音が響く。

突如として発生した肌を震わせるほどの巨大な爆発は強烈な風と熱を叩き込み、一夏の身体を吹き飛ばす。

女は爆発が発生した方向を睨み付けながらも一夏の様に吹き飛ばされるような事は無く、その場で堪えていた。

 

「くっ、なんだ!? 何が起きた!」

 

爆発音に掻き消されない様に大声を上げた女に対する返答はない。

代わりに聞こえて来たのは更なる爆音と誰と判別する事の出来ないが、男達の悲鳴――いや、最期の声。

 

「隊長、織斑一夏を連れて此処から離脱して下さい! 亡国です!」

「此処は私達が食い止めます。ですから!」

 

殿は自らが務めると煙の中から声を上げて己等を束ねる女へと告げる。

一夏には何が何だかまるで理解が出来ない。

突然攫われたと思えば命の危機に見舞われ、訳の分からぬままに更なる命の危機。

縋るでもなく、希望を何も映さない伽藍堂の様な眼差しを女へと向ければ、唇を強く噛み締めていた。

口角から一筋の赤黒い血を流して瞳に浮かんだ逡巡を直ぐに消し去り、荒々しく一夏を縛る縄を引き摺る。

 

「ぐっ!」

「走らないならば引き摺ってでも此処から出るぞ、小僧!」

 

女の華奢な身体とは思えない程の膂力で返答をする間も無く一夏は強引に引き摺られながら倉庫の中から去って行く。

倉庫街へと出ると同時に、自分が今まで捕まっていたであろう一角の倉庫が大きな音を立てて爆発と同時に崩れ去る。

遠からず警察やらISやらが駆けつけて来るだろう。

今は各国の威信を掛けた競技大会の開催中でテロに対する警戒は最大限に高まっており、そんな中でこの大規模な爆発。

衆目の意識は一気にこちらへと傾き、雁字搦めになる。

 

「……チッ」

 

逃げ場はない。

元々無謀な計画でもあったのだ、と女は心の中で愚痴る。

多大な犠牲を払いながらも行うべき価値はあった。それが無謀や無茶と呼ばれる類であったとしても。

それだけの危険性を『織斑』は『篠ノ之』と同じ様に秘めている。

だからこそ、既に絡め取る事の出来ない織斑千冬や、『亡国機業』なる組織に渡った織斑の血ではなく、まだ手の付けられていない弟を狙ったのだ。

その存在を消すか、或いは別の可能性に賭けるのか。

そしてその賭けは成立する云々の前に、始まる前に終わりを告げた。

だが此処で織斑一夏を始末した所で最早意味はない。いや、組織の篠ノ之束による壊滅が早まるだけだろう。

 

(それならば……)

 

爆発に呆然と立ち尽くしている織斑一夏に女は近付く。

警戒をする余裕すらも、抵抗する素振りすらも見せずに女の接近を許した一夏の両手両足を縛る縄を、脚に隠していたナイフで切り裂いた。

 

「え……?」

「最早私に生き残るという道はない。此処で奴等と争い朽ちるか、或いは国家権力に討たれるか」

 

忌々しげに火の上がる倉庫を睨み付ける女。

その倉庫の中からゆっくりと成人の男性よりも一回りか二回りほど大きい何かが重厚な足音を立てて現れる。

IS。

全身装甲という顔を隠したそれが姿を現し、言葉を発さずに巨大な銃口を一夏と女へ向けた。

 

 

「だが小僧、貴様は違う。勝手な言い分ではあるが、貴様には生きる権利と義務がある。

 目的を達する事が出来なかった以上、貴様には生存と言う選択肢しか残されていない」

「なっ、なんだよそれ! いきなり俺を攫ったのはアンタ達だろう!?」

 

その通りだな、と心内で苦笑してネックレスを取り出す。

 

「ゼロゼロキュウロクヨンナナ、アールエックスゼロ」

「はあっ!?」

「生き残りたければ可能性に懸けろ。自分の中に宿る自分自身に。お前が『織斑』なら見付け出せるだろうさ。

 人が、人類が辿り着く為に必要なパンドラの箱へと到る為の道標を」

「なんだよそれ!?」

 

続け様に不可解な事を一方的に告げる女へと詰め寄ろうとする一夏の身体を勢いよく蹴り上げ、そのまま港の湾内へと叩き込む。

衝撃に一瞬意識が飛びかけた一夏は身体の自由を奪われ、重みに逆らえずに海の中へと沈んで行く。

 

「…………」

「ふんっ、流石は目先の益体しか走らない禿鷹だな。未来すらも見据えない生き遅れの組織らしい行動だ」

 

女の身体が小さく光に包まれると、その姿は一変していた。

全身装甲という点では目の前のISと変わらないが、そこに人型と言う観念は存在しない。

重装備の戦車とでも言うかのようなフォルムは辛うじて人であるという認識を与えるにしか過ぎず、女性らしい凹凸の身体のラインなど欠片も無い。

 

「そんなだから組織は後退する。いつまでも下ばかり見続け、地に潜むからそうなる」

「……知っているか、弱い人間程良く吠えると言う」

 

初めて口を開いたISの搭乗者の声は男とも女とも、或いは子供とも老人とも取れぬ不快な音階で発生させられていた。

だがそんな侮蔑の言葉を女は嘲弄の笑みをマスクの下で浮かべて片腕に装着された大口径の砲身を向けた。

 

「生憎と自らが強いなどと謳う程自惚れてはいない。

 その自惚れこそが何時までも星の重力に魂を引かれた旧人類の考え方だ」

「狂信者共が」

「金と権力に縛られるより、思想に縛られる方が余程生き甲斐がある」

 

相容れぬ主張と相容れぬ存在理由。

裏社会で生きながらも決して迎合する事無く敵対し続けて来た組織に属するもの同士。

最早この場で語る事は無し、とばかりに互いに向けた砲身が臨界を示すように赤熱して光が解き放たれた。

 

 

 

 

声が聞こえた。

男の、それも壮年の男の声だった。

 

「人は動物とは違う、人の死は無碍であってはならない。

 なのに、我々大人は無益な血を流しすぎた。

 そればかりか地球を食い潰し、宇宙に捌け口を求めて来た。

 今こそ人は自らを律し、尊厳を取り戻さねばならない。

 内なる可能性を以て、人の人たる力と優しさを世界に示す。

 人間だけが神を持つ。

 今を越える力、可能性という内なる神を。

 恐れるな、自分の中の可能性を信じて、力を尽くせば道は自ずと開ける」

 

息も絶え絶えで、声の震えは緊張からでも恐怖からでも無く、肉体が限界を迎え掛けているのだ。

飛行機か、或いは何かの操縦席のようだった。

ぼやけた映像はまるでテレビの様に砂嵐を起こしている。

 

「此処まで来た。その気持ちが揺らがぬ自信はあるか……?」

 

問い掛けられた。

それは織斑一夏ではない。

この映像を見ている自分ではなく、彼が語りかけている者。

それは――

 

「自信とか覚悟なんて、ない。

 俺は彼女に必要とされたいだけなんです」

 

バナージ・リンクス。

同じ声だった。自分がいつも耳にしている、自分の喉から出ている声と同じ少年。

名前が何故か分かった。

似ても似つかない顔立ち、似ているのは声だけだというのに。

魂が繋がっている。

SF染みた、そんな訳のわからない確信が全身に広がった。

浮遊感と落下感の相反する二つに身を委ねながら薄れかけていた意識の中に、同じ声の少年の声が響く。

 

 

これはきっと、君に必要なものだ。

君がその世界で生きて行くのに必要な、自分の想いを徹す為の。

 

 

無意識に伸ばした手。

それを掴む、硬質な何か。

 

 

きっと遠い未来、或いは別の世界で在り得た可能性。

とても遠くて、とても近い存在。

似て非なる己。

生きる可能性があるのなら、伸ばした手を掴んだそれを手にするのだ。

 

 

「……ゆに、こーん……」

 

 

海中であるにも拘らず、呟かれたその言葉に呼応する様に織斑一夏を掴んだそれは歓喜に増えて彼の身体を包み込んだ。

目映く神々しき真白の煌めきは海中のみに留まらず、海面を貫いて火炎が迸る夜闇の港湾を照らした。

その光は一筋の光に集束され、曇天を貫き海中より飛び出して白亜の姿を世界に晒した。

 

「なんだ、あれは……?」

「……眠っていた、獣が起きた。それだけの事だ。後は可能性に全てを託す」

 

絶対防御という縛りもエネルギーを頼りにしている。

ISという機体が高熱によって熔解し、地肌と融着して四肢をもがれた女は血みどろの姿で笑った。

可能性の獣は渡った。

それが世界に災いを齎し破滅へと導くか、或いは変革を促して人々を新たなる繁栄へと導くか。

悔いが残るとするならば、それを仲間達と共に見届けられない事か、と脳裏を掠めた者達の顔を思い浮かべて女は呟く。

 

「コード、リミットアウト、オーバー……ドライブ」

「ッ! 自爆か!」

 

高熱を発して赤々しく禍々しい光る女の傍から飛び立ち、敵対をしていたISが空に舞う。

直後に港に響く爆発音を、ISは一瞥する事すらなく新たに海中から出現した白亜の機体から視線を逸らさない。

全身装甲の点は変わらないが、武装らしき武装が見当たらないのだ。

白亜の装甲に身を包み込み、頭長に一角のアンテナ。青白い光を上げる眼部。

 

「ISでは……ない?」

 

確証は何もないが、ISとは違う得体の知れない何かを感じ取っていた。

亡国機業のIS搭乗者は任務外の事に関して介入する気にはなれなかった。

元々、先程の組織よりも先んじて織斑一夏を誘拐し、織斑千冬の二大会連続優勝を防ぐ。

そして切札を増やすという事が目的でこそあったが、それらは全て阻まれてしまった。

ならば為せる事だけを為す、とばかりに自らの目的を邪魔した全てを破壊して蹂躙した。

この場にいる意義も理由も無い。速やかに離脱をしなければ軍が追い付いてくるだろう。

 

「……」

 

なれど目の前の白亜の所属不明の機体はその気がないのであろうかのように両腕の先から光りが纏まりサーベルの形状を取る。

 

「ビームサーベル、だと……!?」

 

今なおそれは創作の世界の武器だ。

粒子を集束し一つの形へと固定させる技術は愚か、それに用いる粒子さえも解明されていないのだ。

が、目の前の白亜の機体は両腕の先からトンファーの様に両腕にそれを展開する。

ISが人体に装着という形状を取り、更にそれに武装を重ねて行く構造である以上大きさは人体の一回り上か、或いは二回り上程度になる。

しかし目の前のそれは人体の一般的な全長を抜きん出ておらず、精々が二メートルあるかないかである。

だからこそ――ISを駆る女は怖気が走った。

それだけ小回りが利き、尚且つ未知の兵装を扱っている。

 

勝ち目はない。

撤退理由はそれだけで充分だ。

只でさえ数が限られているISコアを此処で失う訳にはいかない。

 

「分の悪い掛け程嫌いな物は無い!」

 

背中を見せる事無く後部のスラスターを噴射させて逃避行動へと移る。

しかしそんな彼女へと一角を持つ白亜の機体は詰め寄る様に動き出す。

 

「粋がるなよ、角付き!」

 

最優先にするべきは離脱。

彼女自身のプライドとしてはこのままオメオメと逃げる様に去るなど許されないが、現実はそうも言ってられない。

任務は帰還して初めて完遂になる。途中で撃墜されるなど以ての外。

先程の戦闘でもさして損傷をしておらずシールドエネルギーが減っていない中解き放たれる砲撃。

間隙を一切作らずに放たれるマシンガンの様な連続する砲撃を前に後方から迫る白亜の機体は――ISのセンサーから消えた。

 

「――は?」

 

思わず零れ落ちた呼気。

だが次の瞬間に背筋が凍る程の殺気が目の前に現れる。

 

「ッ!?」

 

言葉にも声にもならず、ただ音として漏れ出た息。

ISのセンサーなどではなく生物としての本能が察知したまま意識せずに両腕と両足の武装をパージして一気に後退する。

瞬間、交差する様に振り下ろされたビームサーベルがパージした武装を切り裂き空中で爆発が起こる。

 

(馬鹿なッ、いつ接近した!? いや、あれは移動なんて領域の速度じゃあ……!?)

 

あと数秒、いや、一秒にも満たない瞬間的な迷いがあれば自分は間違いなく斬り殺されていた。

ISの絶対防御すら意味がないと痛感してしまう程の圧倒的な出力、性能の差が如実にある事を女は理解する。

 

(逃げ切れるか……!?)

 

絶対的な差だ。

一体どんな人物が乗っているのかは定かではないが、機体性能もパイロットとしての資質も彼我の差は明らか。

思わず弱音が浮かび上がる中で、初めて白亜の機体の搭乗者が声を出す。

 

「なんでだ……? なんでアンタ達は簡単に人を傷付ける事が出来るんだ……?

 あの女だって、アイツ等だって生きていたんだぞ!」

「男の声。いや、あそこにいた男は連中を除いて……貴様、織斑一夏か!」

「答えろ! なんでそんな簡単に殺せるんだ!」

 

男が搭乗しているという驚愕はそれ程でもない。

目の前のこれがISとは違う別の何かである事は最早明らかで、女性しか乗れないISで無い以上男が乗っていても不思議ではない。

だが、先程海に叩き込まれた死に掛けの子供が何故こんな機体に乗っているのか。

事前に拉致誘拐する目的の対象である以上、身辺調査をしたがその中でこんな情報は何処にもなかった。

ましてこれだけの操縦技術があるなどと。

 

「何故だって? 決まっているだろう、邪魔だからさ。

 お坊ちゃん、此処は仲良しこよしのスポーツ競技じゃないのさ。

 世界の裏側、裏社会はいつだって殺して殺されてなんぼの世界なんだよ!」

「ふざけるな! そんな理由で人を殺して良い理由にはならない!」

「甘いな! 流石ジャパニーズ! 平和ボケしたガキにはお似合いの言葉だよ!

 けどねえ、アンタが今乗ってるそれだって殺す為の道具だろうが! ISなんかよりも余程のねえ!」

 

間近でその脅威を一瞬でも感じ取ったからこそ分かる。

ISは元来、宇宙進出用に作られたパワードスーツである以上、例えどれだけ後々に軍用に改良しようとも限界がある。

兵装は兎も角、中核を為すISコアが兵器としての武装を完璧には受け入れないのだから。

しかし目の前の機体は違う。

これは――兵器だ。戦い、生きる中で生まれた銃や戦車、戦闘機と同じ殺戮道具。

 

「違う、コイツは、ユニコーンは殺戮の為の力じゃない!

 間違った方向に進もうとしている世界をあるべき姿へと正す道標だ!」

「ハッ、毒電波でも拾ったかガキが! 女尊男卑、結構じゃないか!

 簡単に世相に流されて中身が無い馬鹿な女と、それに逆らう事の出来ない惰弱な男! それが人間の本性だ!」

「例えそうであっても、それだけが人間じゃない! 人と人は繋がり合う事で互いを理解し合える!」

「理想論だけ語った所でぇっ」

 

背部に装備された対艦刀で斬りかかる。

 

「中身が無きゃ意味がないよ! 失う事を知らない平和ボケした国に住んでるアンタが言った所で綺麗事さ!」

「応えてくれユニコーン! 俺がお前が託された理由を、お前を手にした理由を!

 それを世界に示す為に! お前が今の世界を破壊する為じゃなく、ISを根絶させる為のマシーンじゃない為に!」

 

その声に応える様に装甲の隙間から赤い光が放たれる。

 

「なんだっ!」

 

その輝きはより増して良き、腕部や脚部の装甲はスライドし、頭頂部にある一角が左右に割れる。

頭部も変化をし、更に背中にはバックパックらしきものが出現して僅かにその体躯を大きくさせた。

 

「こいつ……馬鹿なっ、こんなのはアニメ中の兵器だろうが!」

「行くぞっ、ユニコーン……ガンダム!」

 

その姿、その顔を女は知っていた。

日本が生んだロボットアニメの一つ。

ISにもその空想とも呼べる技術の一部が利用されている、人型の機動兵器。

モビルスーツ。その代名詞とも呼べるロボット――ガンダム。

 

今、可能性の獣が時代を超え、世界を越えて世界に問いかける。

 

 

 




と言う訳で、よくある中の人繋がりのネタです。
続きませんw
一応設定としては、最後の方の一夏は意識が混濁していて若干バナージの記憶やら何やらが流れ込んでいます。
良くある駄キャラ堕ちはならないように、なるべく名前の無い敵役にも含みを持たせて退場して貰いました。

久しぶりにクロスオーバー系書いてみたけどやっぱこっちの方が書き易いなあ。
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