最近は投稿が出来ずにおりましたが、タニャヴィシャ生存報告もかねて短いタニャヴィシャを2話くっつけたタニャヴィシャ形で投稿させていただきます。
今年もまたよろしくお願いタニャヴィシャいたします。
せっかく二人で過ごしていたというのに、少佐殿は上層部に呼び出されて行ってしまわれた。
それがわがままだと自覚はあるし、上からの呼び出しを無視できないのも理解はしている。
けれども、納得は……いつまでも出来そうにない。
「もう少し一緒に居たかったな」
自然に口を出た、素直な気持ち。
少佐殿は、
「すぐ戻る」
と言っておられたが、それは気休め以外の何物でもないと、察している。
ふと、少佐殿が使っているクッションが目にはいった。
椅子に乗せ、ほんの少しだけ座高を高くしてくれるそのクッションは、椅子に座った少佐殿の高さを丁度良くしてくれる。
……私に抱き付く、私が抱き締める、丁度いい高さに。
「少佐殿……」
無意識に手が伸びる。
クッションを引き寄せ……抱き抱え。
胸に広がるくすぐったいような、甘いような、少佐の匂いをついつい嗅いでしまう。
「少佐殿…… 」
漏れるため息は熱く、粘く。
彼女の私物に自分の匂いを付けようと、額を擦り付けていると……。
「貴官は何をしているのだ?」
「ひゃいっ!?」
宣言通りに、すぐに戻ってきたターニャが扉のところからジト目で見られていた。
「こ、これは……その……」
「全く、すぐに戻ると言ったのに、我慢出来なかったのか?」
怒られる。そう思ったヴィーシャだが、ターニャは彼女の前まで歩き、そこから先の言葉は紡がない。
まるで、何かを待っているように。
「どうした? そのクッションで満足かね? 本体が目の前に居るのだぞ?」
抱き締めてくれないのか?
そう続いたターニャの言葉に、ヴィーシャは戸惑いながら。
「失礼します!!」
そう言って、小さな体を抱き締めた。
華奢で、背が低くて。
それでいて、大きな存在。
誇りである上司を抱き締め、そんな上司に頭を撫でられながら。
ヴィーシャは、幸せそうに頬を緩めるのだった。
※
「う……寒……」
目を覚まして……というよりは、それによって目を覚まされたという方が正しい。
それくらいに、今朝は冷え込んでいた。
それでも、私の隣で寝ておられる小さくも大きい存在は静かに胸を上下させておられて。
私が感じた寒気とは、どうやら無縁のご様子。
本来は二人で寝ることを意図していないシングルベッドなだけに、布団もギリギリ……とは言えず、私の半身は外の空気に晒されている。
けれど、その代わりに少佐殿は前述の通りに寒さは感じておられない。
ならば、私が寒い思いをしている価値があるというものだ。
好きな人の安眠の為ならば、少し寒いくらい安いもの。
そう割りきり、首だけをもたげて少佐殿の寝顔を覗き見る。
私だけにしか許されていない、無防備な可愛らしい寝顔を拝む権利。
それは、何物にも替えがたい。
ふと、ここまでぐっすり眠っておられるなら、と、魔が差した。
いや、魅力的な唇に吸い寄せられた。
フニュ。と、固さなど微塵も感じられず、柔らかさのみの質感が私の唇から伝わってきて。
直後、
「寝込みを襲うとは感心せんな」
鼻を摘ままれた。
「ひょっ!? ひょうさどの!?」
「もぞもぞと気配がすると思えば、目の前から目を瞑った貴官が迫ってくるではないか。避けるに避けられず受け入れたが、次はない」
そう言われ、ようやく私の鼻が解放された。
「も、申し訳ありません!! 魅力的な唇を見ていたらつい!」
「つい! ではない。……全く。次からは同意を求めろ。私が貴官を拒む筈がないだろうに……」
最後の方は小さくなり聞き取れなかったが、同意さえ取れればキスは許されるらしい。
「全く……最初は手を繋ぐくらいから……」
そう言って少佐殿が握られた手は、今まで外の空気に晒されていた方で。
「冷たっ!? なぜこんなに冷えているのだ!?」
非常に驚かれてしまった。
「そ、それは……」
言い淀むと、どうやら理解されたようで。
「はぁ……。全く。出来のいい部下であることは認めるがこの場合の正解はこうだろう?」
そう言って、私に抱き付かれる少佐殿。
少佐殿の髪から漂う匂いや、抱き締められた胸から伝わる鼓動が私の理性を溶かす。
横並びから抱き合う格好になり、生まれた余裕は二人の体を布団で覆い隠せるようになり。
抱き付いたままで、少佐殿は私の体ごと四分の一回転ほど回り。
「ふふ、これで私の好き放題だな」
私の体に覆い被さる体勢になり、不適な笑みを浮かべられ……。
「折角の休みだ。楽しませろよヴィーシャ」
と、先ほど寝ているときに私がした行為への仕返しをたっぷりと時間をかけて行われた。
私がした行為より、一歩先へ進んだ行為を。
タニャヴィシャは……いいぞ。