白銀の百合   作:瀧音静

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毎回尊さで私を殺しに来ているみやち様に影響されたファン小説その2。

短編では無くしっかり連載物で一話を上げている辺り過去の自分は流石ですね(自画自賛)


或る休暇の朝

 普段ならば億劫で仕方が無い朝。

 しかし、今日はその目覚めの瞬間は昨日までのソレとは明らかに一線を画していました。

 一人用のベッドの上、同じく一人用の布団の中に居るのは、私と――私の上司に当たるターニャ・フォン・デグレチャフ少佐殿でした。

 狭い布団の中で、まだ少し肌寒い気温に触れぬようにと、私に身を寄せて縮こまりながら寝ているお姿は、普段の少佐からは想像が出来ないほどに年相応で、愛おしいものでした。

 私の胸の上、首のほんの下の位置で、安定した寝息を立てている小さくも大きなその存在を、思わず少しだけ抱きしめ、少佐の温もりを感じます。

 邪魔するなとでも言いたげな小さな呻き声の後、しかしそれでも起きなかった事で、少佐殿を軽く抱きしめることしばし。

 何やら温かいもので満たされたような胸を確認し、私はその温もりに名残惜しくも別れを告げます。

 少佐殿を起こさぬように慎重に気を遣いながら、静かに布団から抜け出して、私はコーヒーを淹れる準備をします。

 少佐殿より、

 

「ヴィーシャの淹れるコーヒーが一番うまい」

 

 と言って頂き、こうして毎朝目覚めの一杯を淹れるようになりました。

 少しでも少佐を満たしたくて……、愛情を込めたその一杯を少佐殿が起きると同時に提供するようになりました。

 大きな物音は少佐殿を起こしてしまう。と、最小限の音、動きのみでいつもと変わらぬ――いえ、いつも通り愛情値最大のコーヒーを淹れていきます。

 カップに注ぎ、湯気と共に香りが立ちこめてくる頃、寝室から物音が聞こえてきます。

 

「少佐殿、おはようございま――きゃっ!」

 

 まずはご挨拶を、と寝室に向かうと、ドアを開けた瞬間に少佐殿に抱きつかれてしまいました。

 

「少佐殿?」

「ん。……目が覚めると居ないという状況に戸惑いを覚えてな。頭ではそんなことは無いと理解しているのだが……」

 

 少佐殿がこれまで身を寄せていたのはいつ頭上に砲弾が降り注ぐか分からない戦地。

 夜が明ける度に仲間の数が減っていくような前線であれば、起きたら隣に居たはずの存在が居なくなっていたというのは、当たり前だったのでしょう。

 

「私は、ずっと少佐殿のお側に居ます」

「あぁ。理解している。が、こうしてヴィーシャの温もりを感じねば納得出来ないのだよ」

 

 私のおへその上辺りにグリグリと頭を擦りつけられ、甘えられます。

 見た目の歳相応な振る舞いに、思わず頬が緩んでしまいました。

 

「さて、満足した。……コーヒーを貰えるかな?」

「はい!」

 

 淹れ立てのコーヒーを手渡しし、少佐殿と同じタイミングでカップを口へ。

 

「ふぅ。……目覚めの一杯はこれに限る」

「少佐殿はお好きですよね。私は嫌いとは言いませんが苦いのはちょっと……」

「チョコに異様に反応したり、甘い物に飛びつく様を見ていれば予想できるさ」

 

 子供が背伸びでするソレではなく、本当にコーヒーを楽しむといった振る舞いで、香りを、味を、風味を楽しまれる少佐殿の表情は、中々に見る事が出来ない様な満足げな表情でした。

 

「さて、温もりと好物を与えられた随分とご機嫌な朝になったが、何かしたいことはあるかね?」

「はい?」

 

 まるでご褒美とでも言わんばかりの提案に、思わず素で返してしまいました。

 

「久々の休暇で、折角朝からゆっくり出来るのだ。ヴィーシャのやりたい事を二人でしようと思ってな……乗り気では無いか?」

「いえいえいえいえ、滅相もありません! ただ、あまりにも幸せすぎてと言うか……」

 

 一瞬だけ落ち込んだ表情を見せた少佐殿に、取り繕わずの本音を言うと――。

 

「――っ!!」

 

 顔を真っ赤にされ、固まる少佐殿。

 

「どうかなさいましたか?」

「自覚が無いのか!? ……まぁ、いい。好きなことを言い給え。ある程度ならば叶えてやる」

 

 何やら驚かれてしまいましたが、一体何か変なことを口走ってしまったでしょうか?

 とはいえ少佐殿と一緒にやりたいこと……。

 

「あ、そう言えば市場付近に何やら屋台が出来たらしく――」

「屋台?」

「はい! ポテトパンケーキにサワークリームとリンゴソースをかけた、珍しく甘い物とのことで少女達の間で話題とのことで……」

「それを食べたい、と?」

 

 少女達に人気であるならば、きっと少佐殿のお口にも合うはずです。

 何より、コーヒーとも調和するかと。

 

「はい! ……構いませんか?」

「まぁ、好きなことを言って見ろとしたのは私だ。ヴィーシャがそう望むなら、私としては別に却下するつもりは無いが?」

「では! 本日の朝食に買い食いを希望するであります!」

 

 流し目で私を見られる少佐殿にそう敬礼をして伝えれば、

 

「ヴィーシャ……いや、貴官はどうやら私の言いつけを忘れてしまったらしい」

 

 おもむろに私の方へと歩いてきて、テーブルへコーヒーを置くように促されます。

 促されたままカップをテーブルに置き、再度敬礼をして何を言われるかと内心ビクビクしていると――。

 

「二人の時は、軍に居るときのような振る舞いは禁止したはずだ。……もちろん、親しき仲にも礼儀は必要だが、流石に敬礼まではやり過ぎだな?」

 

 小さいお体のどこにそんな力があるのかと、ベッドに押され、組倒されて。

 

「たまに(しつけ)けねば忘れるというのなら、こうして定期的に躾けるが?」

 

 そう私の上で、意地悪な顔で言われた少佐殿は、小さくピンク色で、柔らかい物を私の唇に押しつけるのでありました。




すっかり沼に頭の先まで使っている私ですが、まだまだ深みがありそうで楽しみです。

事には及んで居らず、描写も曖昧。
つまりど健全な話ですね(白目)
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