はぁ、エモエモのエモ。
というか凄く自然に書いてますけど、当たり前の様に同棲しているタニャヴィシャに草を禁じ得ない。
まぁ、結婚済みだし、多少はね?
いつもと変わらない日常で、いつもと変わらないはずの目覚めで、いつもと変わらない朝――の、筈だった。
十分な睡眠を取ったにもかかわらず、体に覚えるのは倦怠感。
そんな筈はと思って起き上がろうとすると、視界がぐにゃりと歪み、熱っぽさを自覚して布団へと逆戻り。
どうやらどれくらい振りか分からない風邪の様で、この体になって初めての病気ということで、さてどうしようかと思考する。
――が、熱のある頭ではまとまるはずもなく、仕方無く安静にしてるか。と大人しく目を瞑って寝ようとしたとき。
「あれ? 少佐殿、先ほど起きられませんでしたか?」
いつものように目覚めのコーヒーを淹れてくれていたヴィーシャが、物音を聞きつけ寝室に様子を見に来たらしい。
「あぁ、起きようと思ったんだがな。……どうやら風邪でもひいたらしい」
言葉を発して、自分が鼻声であることを確認し、認識が間違ってなかったことを理解する。
日頃から戦場に身を置き、ストレスも、不衛生も、疲労もあるような職場なのだ、今まで体調を崩さなかったことの方が奇跡と言えるだろう。
「大丈夫なんですか? 熱は?」
「こうして会話できるくらいには大丈夫だ。今日一日安静にしておけば治るだろうよ」
そう口にしていると、ヴィーシャが近づいてくる気配がした。
何かあるのかと目を開けてみるとそこには――――。
額同士を合わせて私の体温を計ろうと顔を近づけてくるヴィーシャの姿がっ!?
いきなりの光景に体は硬直。言葉も発せぬほどの動機と緊張を覚える私を余所に、鼻の頭が触れあいそうな程に顔を近づけ額を合わせ――――。
「少し熱っぽいようですね。風邪の時用の食事にしましょうか?」
等と尋ねてくる。
その前に額を離すのが先だ。
ただでさえ熱で頭が働いていないというのに、呼吸も体温も伝わってくる今の状況でまともに返答できるはずがないだろうに!
結果、私が取れる行動は、額同士が繋がっているからこそ伝わる程度の、些細な動きで肯定を知らせる頷きをするだけだった。
「では、そちらの準備をして参りますね」
ようやく額を離したかと思えば、そう言って足早に部屋を出て行くヴィーシャ。
全く、もう少し傍に…………。
ダメだ、病気の時というのはどうにも弱気になりすぎる。
如何に普段甘えられない人間が甘える機会だと言っても、私とヴィーシャは上司と部下だ。
そこに上司が部下に甘えるなど、あってはならないことだ。
結局、そのような悶々とした考えをしながら目を閉じていたせいもあり、しっかりヴィーシャが食事の用意を終えるまでに寝付けなくなってしまっていた。
*
「チキンスープか……」
「はい。様々な野菜から栄養が出ているので、風邪にはピッタリです。食べられますか?」
「僅かながら食欲はある。いただくよ」
鼻腔をくすぐる匂いは、どうやら私の胃に作用したらしい。
食事をするために上体を起こそうとして、ごく自然に、私の体の下にヴィーシャの腕が差し込まれる。
そのままゆっくりと上体を起こすのを手伝ってもらい、さらには背中に手を当てた状態でもう一本の腕を膝の下へと潜り込ませ、そのままベッドの縁まで私を寄せて、背を預けるし背を取らせてくれた。
「熱いかもしれませんので確かめながら――」
言われるよりも早くにスプーンでスープを掬い、小さく一口。
口の中にゆっくりと広がる優しい旨味を噛み締め、ゆっくりゆっくり、速くない速度で多くない量を味わって、ヴィーシャへと感謝の言葉を向ける。
「ありがとう」
「いえ、普段から少佐殿にはお世話になっているのですから、これくらいはさせて下さい。……他に、何か私に出来ることはありますか?」
喉元まで上がってきた、傍に居ろ。という言葉を何とか飲み込み、フイとそっぽを向いて、真っ当なことを言ってやった。
「では、薬を」
「了解しました! 他に何かございましたら、傍に付いておりますので何なりと申しつけ下さい」
そう言って、どうやら風邪薬を買いに向かったらしいヴィーシャが部屋から出るのを見送りつつ、私は盛大に緩んだこの頬を、絶対に誰にも見せないように体を滑らせ布団を被った。
――ほうら見ろ。私が言わずともヴィーシャは最初から私の傍に居る気だったではないか。
全く、よく出来た副官には困ったものだな……。
結構な数の高評価をいただいていて若干困惑しては居ますが、それだけタニャヴィシャ沼が知れ渡ってきていると勝手に認識しこっそり喜んでおります。
もっとタニャヴィシャを……。