え? 注文と違う? ちゃんと注意事項に「その日の気分で内容が異なる」って書いてあるでしょ?
もっと甘く? それとも酸っぱく? それとも……。
夢でありながら、夢だと自覚出来て見ている夢のことで。
自覚しているが故にその夢の中で好きに動き回る事が出来る。
あまりに現実離れしている夢よりは、何故だか身近な日常の夢の方が私の場合は起こりやすい。
日頃から戦場という非日常の中にいるからこそ、何気ない日常に違和感を覚えるのかもしれない。
「全く、少佐殿ったら――」
そんな事を呟きながら私に向かってスプーンを向け、『あーん』を強要してくるヴィーシャ。
夢の始まりはいつも唐突で、突拍子もないものばかりだが、流石にこの光景にはツッコミを入れたくなる。
が、残念な事にこの時はまだ夢だと自覚しておらず――。
「あーん……。いつも通り、うまい」
されるがままにあーんをし、入れられるままに頬張って感想を言う私。
照れた様に頬を染めるヴィーシャの反応は現実のソレと変わるものではなく、それが私に夢だと自覚させるのを遅らせたのだろう。
しかし、不意に視界に映った涎掛けが私の認識を覚醒させた。
――断固として『赤ちゃんプレイ』の趣味は無いし、なんならこの世界に転生させられたときに経験済みだ。
それをまた体験したいなどと思うはずも無ければ、ヴィーシャが私を赤ちゃんにしてお世話をしたい、等と言い出すとも思えない。
……言い出さない――と信じたい。
よって、数瞬の内に夢だと自覚、そして、今のシチュエーションから好きに動けるとなれば――、
「時にヴィーシャ、私にこうして世話を焼いていると言うことは、貴官は保護者なのだろう?」
「え? あ、はい。そうなります……かね?」
「では例えばの話、私が甘えるに当たり『貴官』や『ヴィーシャ』と呼ぶのは適切ではないな?」
「は……はぁ」
生返事が返ってくるが知ったことではない。夢の中という私だけの空間ならば、好きに動かせて貰うとしよう。
「では……貴官は何と呼ばれたい?
「なっ……////」
一体何と呼ばれるのを想像したのか、耳まで真っ赤にし俯くヴィーシャ。
それならば私に向けて『あーん』をした時点で紅潮させて貰いたいものである。
呼び方以上に非現実的なことであろうに……。
「ではその……お姉ちゃん、と」
「了解した。では早速――お姉ちゃん、私、コーヒー飲みたいな~」
わざとらしく咳払いをした後に、あのダキアの首都に向けて勧告したときと同じ声色で。
歳相応に幼い声でそうヴィーシャに呼びかけると、彼女の顔が一気に破顔した。
「あぁもう! ターニャちゃん可愛い~!!」
口元に光る涎も気にせず、光速で私を抱きしめ、頭を撫で繰り回された。
あぁ、流石は私の夢だ。現実ではまず有り得ない呼ばれ方をしたし、現実の彼女はここまで自分に素直ではない。
彼女の豊満な胸に顔が埋もれ、若干息が苦しくなった辺りで顔を上げ、
「お姉ちゃん……苦しい」
上目遣いでそう囁けば――、
「はぅっ!」
思わず卒倒してしまった。
と同時に景色が光速で流れていく。
どうやらお目覚めの時間のようだ。
彼女に要求したコーヒーが、既に用意されてることを現実的に理解し、私の意識は引き上げられていく。
「おはよう」
「――っ!? お、おはようございます少佐殿」
目を開く前にどうせ近くにいるだろうと挨拶だけを先に行うと、予想よりも近い所から返事が返ってきた。
遅れて目を開き、状況を確認すると――。
目前まで近付いたヴィーシャの顔があり、しかも唇は気のせいか艶を持っている。
事後か、それともこれからか。
僅かに残った唇の感触からすでにされた後であることを自覚し、
(そう言えば夢の中で柔らかいものに包まれて息苦しくなったな……あれが暗示かっ!?)
妙な考えに行き着いてしまい赤面すると、それをヴィーシャに目ざとく見つけられてしまう。
「顔が赤いようですが、また熱ですか?」
純粋に心配してるのであろう彼女の手は、朝から既に働いていおりひんやりと冷たく、今まで布団を被り寝ていた私の首筋に、心地良い温度が当てられた。
「いや、大丈夫だ」
「ならいいですが……」
その手にそっと手を添えて、大丈夫だと口にすれば、安心したのか彼女の手から力が抜け、添えただけのはずの私の手に預けてきた。
こういった些細な仕草も、大分分かるようにはなってきた――が。
思い通りに事を運び続ければすぐに調子に乗るのだ。
少しは私が不意打ちでもするべきだろう。
熱が無いかを確認するためにのぞき込んだままの彼女、その伸ばした手を引っ張ればどうなるかなど、簡単に想像が出来る。
「ひゃっ!」
簡単にバランスを崩し、そして体を支えようと手近なものに縋ろうとするが……。
そんなもの、私以外に無い空間で、当然の結果のように私に抱きつく格好になる。
そして、そんな彼女が何かを言う前に、何か行動を起こす前に。
ほんの少しだけ首を動かし、首筋に小さな痕を付ける。
――――この後、滅茶苦茶イチャイチャした。
書いてと言われてしまった以上答えてあげるが世の情け
沼の信者を増やすため、沼の平和を守るため、愛と性癖で己を貫く、
ラブリーキュートなこの二人。
ターニャ、ヴィーシャ。
いえ、悪乗りですごめんなさい。
と言うわけで蜂蜜のシロップ割りアイス生クリームトッピングフレンチトーストなタニャヴィシャ(当社比)です。おやつにでもどうぞ。