Lostbelt No.2.5 絶対■■帝国 ■■■ ~最■の男~ 作:>=
より強く。
それが私の使命。
誇り高き我が民族が私に望んだものはただ一つ。
更なる強さ。
強さとは何者にも侵されない力。
強さとは如何なる敵をも殲滅させる力。
そして強さとは__________________。
私はその全てを実現させた。
そしてこれからも実現させる。
常に最強である、その為なら私は悪魔にだってなろう。
「着いたかぁ。あぁー全く面倒な仕事の始まりだ。」
男はめんどくさい感情を隠しきれない様子で言った。男はよく目立つ青髪を持ち、顔もそこそこ整っているという男なら大半が羨むような外見を持っていた。
男の名はアルン・ベッテルハイム。彼は汎人類史の裏切り者、所謂クリプターの一人であった。
他の七名と同じように自分の担当する異聞帯を管理することが彼の使命である。
そんな彼は数分ほど前、中西ヨーロッパに位置する異聞帯に初めて到着した。ここが言わずもがな、彼の担当する異聞帯だ。彼はこれからこの異聞帯の管理を始めるわけなのだが
「始めは王様との交流だっけか?うーん早速デカい壁だなぁ。」
アルンがしなければならないこと。それは異聞帯の王との対面である。その目的は王と協力関係を結ぶことにある。そしてこれこそがクリプター達が最も手を焼く仕事の一つと言っても過言ではない。と、いうのもこの異聞帯の王、王というだけあって癖の強い人物であることが殆どである(そもそも人でない王すらいる始末だ)。
そんな曲者達から信頼を勝ち取るのはかなりの難易度がある。敵と認識されなければ及第点といってもいいだろう。
「この異聞帯についてだって『中西ヨーロッパの異聞帯』ってことぐらいしか分かってないしな。異星の神様ももう少し手当をしっかりしてくれねぇと。」
現実アルンの現状は決して良いものとは言えない。
自分が今立っている場所についての知識も殆ど持たず、そのような状態で敵か味方かすら分からない国のトップと一人で面会しようというのだ。
ただ、それは他のクリプターも同じだ。これぐらい当たり前、という事なのだろう。
「ま、本当はソーセージと一緒に一杯してからのんびり行きたいけど、またオフェリア辺りに何か言われるかもだし。まずはある程度仕事してからだな。」
緊張感が感じられない彼だがこれがアルン・ベッテルハイムという男だ。
いざとなるとそのずば抜けた対応力、判断力で乗り越えてしまう。
その能力を買われ見事八人しかいないAチームの一人に抜擢されたのだ。
このテキトーさも自信からくるものだろう
「でもまずはこの国についての情報収集だな。取り敢えずこの辺の街をグルっと一周しておくか。ここが何処か位は知っとく必要がありそうだし。ってかこれ他の奴ら大丈夫か?明らかに失敗しそうな奴いるんだけど。カドックとか芥とか。芥はまぁ何とか上手くやりそうだが…カドックはなぁ…」
この「カドック」とは、アルンのAチームの仲間である「カドック・ゼムルプスのことである。アルンはカドックのことをからかい相手として気に入っており、鬱陶しいくらいに構っていた。
「よし、それじゃあまずは散歩でも____
「そこの青髪の男、止まれ!手を挙げてこちらを向け!さもなくば一斉射撃する!」
アルンが一歩踏み出そうとした瞬間、5名程の警官らしき男たちが銃を構えてアルンへ呼び掛ける。アルンはそれを見てため息をつく。
「はぁ…俺も人の事はバカに出来ねぇな…。何すか?」
「口を開くことを許した覚えはない!大人しく我々の指示に従え!」
適当に弁明するアルンだが警官たちは声を荒げてアルンを威圧する。
周りにいた市民も怯えてその場から離れる。
「あーあ、皆ビビッて逃げちゃって。てかこれ、立派な恐喝でしょ。
正当防衛ってことで別にいいよなぁ。殺しちまっても。」
アルンは自信たっぷりの笑みを浮かべ、手をかざし魔力を放出する構えを見せた。
しかし
「抵抗する気か!これが最後の警告だ!今すぐこちらの指示に従え!これは『わが国の最高権力者』からの命令でもあるぞ!」
「!!!」
それを聞くと、すぐに構えを解いて両手を上げる。
「なーんだ。この国の王様のご命令だったの?だったら早く言ってくださいよ。(国の最高権力、つまりこの異聞帯の王が俺に直接接触してきたか。かなり早いな。)」
「よし。そのまま我々についてこい。抵抗する素振りは見せないことだ。」
「はいはい。(順番は変わってしまったがまぁいいか。王との関係構築に取り掛かるとしよう。にしても成程、王様には優秀な目があるようだな。)」
そうやってしばらく警官に連れられておよそ20分。街の様子をチラチラ観ながらあるいているとやがて馬鹿でかい館の前についた。
「うわでっか。」
「私語を慎め。国の管理を行う場だ。広いに決まっている。館内へ入るぞ。ついてこい。」
「ええと、俺何処へ向かってんの?」
「あの方がおられるお部屋だ。お前と直々に話がしたい様だ。光栄に思え。」
「おぉそれは確かに光栄だ。」
あっさり第一関門がクリアできそうになり流石のアルンも多少は不審に思うも、どうこう言っていられる状況ではないので警官に着いていく
そうして館内を案内されるアルン。しばらく歩くと目的地に着いたようだ
「ここだ。こっからは一人で入れ。もう待っておられるだろう。」
「おう、ありがとさん。(随分と簡単に会わせてくれるな。しかも一対一で。暗殺とか考えてねぇのか?平和ボケした国なのか?)」
そうしてアルンは扉を開けて部屋に入る。
すると突然声がアルンの耳に届く。
「せめてノックくらいはしたまえよ。青年。」
扉の先にはデスクに座った黒髪の男が座っていた。
男はぱっと見た感じ20代辺りの青年だ。男は苦笑し、まるで手のかかる弟へ言うようにアルンに優しく語りかける。
部屋は少し大きめな書斎、というレベルで、男の他には誰もいなかった。
「!っと失礼しました。お初にお目にかかります。王よ。(うぉっビックリした。こいつがこの異聞帯の王か?なんかやけに人懐っこいな)」
アルンが少々かしこまりながら返すと男は
「なぁに構わないさ、私に用があるんだろう?そこに座り給えよ。そう堅くならないでくれ。君は私の部下ではないのだから。」
と笑顔で答えた。
「あ、あぁすまん。俺もそっちの方が助かる。」
アルンは戸惑いながらも答える。思っていた以上にフレンドリーな性格のようだ。
「あぁそうだ、失礼だが君の名前を訪ねても良いかな?」
「おう、俺の名はアルン・ベッテルハイム。よろしく」
「ベッテルハイム、か。よし覚えた、よろしくアルン・ベッテルハイム。さて、いきなりですまないが時間も惜しい。本題へ進ませてもらう。
わが帝国へ何しに来た?少年」
男にそう聞かれるとアルンは真剣な顔つきなり
「なるほど、やっぱり俺がよそ者だってことはバレバレだったわけだ。」
「すまないが、私には何よりも頼れる『目』があるからね。」
「…了解だ、話そう。まず信じてもらえないだろうが言わせてくれ。俺はこことは違う世界からやって来た。目的はこの世界、いや、この異聞帯を管理するためだ。」
「……ふむ。あぁなに、笑い飛ばすつもりは欠片もない。続けてくれ。」
「あぁ、少し長くなるぞ。まずこの世界はだな................」
そうしてアルンは語る。
この世界が異聞帯、誤った選択、繁栄による敗者の歴史であること
自身がクリプター、汎人類史の叛逆者であること。
異星の神によって汎人類史は侵略されたこと。
そして、クリプターの目的がその異聞帯を管理し、汎人類史より強固なモノに育て上げること。
その他、空想樹などのことについて彼の知る限りの情報を男へ与えた。
「なるほど、面白い話だ。私にではなく劇作家に出した方が儲かるんじゃないか?。」
「まったくだな。だがあいにくこいつはすべて事実だ。ただ、すぐに信じろってのも無理な話か…」
アルンがどうやって説得したものか、と考えていると王は意外な返答をした。
「いや、信じよう」
「…は?マジすか。」
「あぁ、大マジだ。おっと勘違いしてくれるなよ。何の根拠もなければ君の話など一蹴してる。獄に入れておしまいさ。
数日前のことだ。嵐の壁、とでも表現するかな?それがわが帝国の領域を分断する、という現象が発生した。嵐の壁の向こう側とも連絡が取れなくてね、困っていたところだ。君にはその現象に心当たりがあるだろう?」
「…あぁ。」
アルンがそう答えたのを確認すると王はにやりと笑う。
「ほら、君の話と私の帝国の状況が一致したんだ。信用せざるを得ないだろう。」
そう言い、柔らかい笑みを浮かべ、続ける
「と、なるとこの異聞帯とやらを守る為に私がとるべき手段は定まってくる。ひとまず君と協力する体制をとり、この異聞帯を発展させ拡大させる。そして、他の異聞帯と争いこれを侵略する。そして、最後の異聞帯になるまでこれを続ける。その後のことはまだ皆目見当つかないな。まさに神のみぞ知る、というやつだ。異星のだがな。フフフッ」
「それは本当か!?あっさり話が済んでよかったよ。話が通じる王様で助かったぜ。」
先ほどまで持っていた戸惑いと警戒心はどこへ行ったのやら、最初の難関をあっさり超えたことでアルンはすっかり気分が高揚していた。。
そして彼に生まれた隙を王は見逃さなかった。
「それだけ私も切羽が詰まっている、ということだ。短くはない付き合いになりそうだな。」
そう言って王は笑いながら手を差し伸べる。
「おう、よろしく頼む。」
そしてアルンもそれに応じ両者は握手を交わした。
すると王は笑みを保ちながら言った
「しかし今の手段だと君が提案してきたことをそのまま実行するだけで面白みに欠けるな。代わりにこんなのはどうだ?例えば
_______________________________________。」
「ッ!?」
部屋から出た彼は大きな笑みを浮かべ歓喜に満ちた声で言った。
「面白くなってきたなぁ。フフ…っ、クハハハハハッ!
さぁて始まりだ。最高に最悪な仕事の始まりだ。」
部屋に入ったときの好奇心旺盛なアルンではない。もっと何かに燃えているような、そんな姿だった。
「まずはサーヴァント召喚か。フフフ。」