Lostbelt No.2.5 絶対■■帝国 ■■■ ~最■の男~ 作:>=
「おお、やっぱ街並みも賑やかだな。この街だけで勝負したら汎人類史にだってマウントとれるんじゃないか?」
「私は…帰っていいか?さっきから騒音で頭にガンガンくるんだが。」
サーヴァントの召喚に成功したアルンは官邸を出て散歩に出かけていた。彼の傍で悪態を吐く老人こそが彼のサーヴァント、『キャスター』である。
老人は彼の小さな体にはとても合わないサイズの白衣を身にまとい、眠そうな目で文句を言う。アルンはサーヴァントを召喚し、己の使い魔との親睦を深める為にこうして散歩に彼のサーヴァントを誘ったのだが、当の本人はかなりご機嫌ナナメな様子。
「ひでーなじーさん。もっと仲良くしようぜ。ほら、生前みたいに『陽キャ卍!』って感じで。」
「誰がじーさんだ。とにかくさっさ帰って研究に戻らせてくれ、あと一分以上ここにいるだけで私のIQ30位落ちるわ絶対。」
「でも、じーさんならIQが30程度落ちたところで十分天才でしょ?」
「ただの天才なんて星の数ほどいる。天才であることを誇る天才なんて最早凡人だろう?それじゃ、私はこれからも研究室に引きこもるつもりだ。必要以上に私に関わるな。」
そういい老人、もといサーヴァントは城の方へ去ってゆく。
「あーあ帰っちゃったよ。仕方ないから一人で散策するか。」
そういいアルンは一人で街中を歩き、一時間ほど町についての把握を進めた。
しばらく経ち街を散歩し終えたアルンは屋敷へ戻り、自室へと向かう。
自室のドアを開けたアルン
するとそこにはピンク色の髪を持ち眼鏡をかけた女性がいた。
「はぁーい、失礼してまーす」
「ッ!誰お前?ここ俺の部屋なんだけど。」
アルンは警戒しながらそう尋ねる
「勝手に入ってすみませーん。でも『誰お前?』は酷くないですか?私ちゃんと自己紹介しましたよね?NFFサービスのコヤンスカヤですよ?アルン・ベッテルハイムさん。」
「…あぁ今思い出した。そういや居たわお前みたいなの。」
「えー私扱い酷いー。ま、それはともかく、
クリプターの皆様方相当お怒りですよ?特にオフェリアさんとか」
「え、なんで?」
「やっぱり忘れてたみたいですね、クリプター会議。各々異聞帯に到着してサーヴァントを召喚し次第、会議に参加する、と予め決められていたようですが?」
「え、マジで!?」
「…仕方ないですね。見たところ特に異常は無いそうですし、私の方からキリシュタリア様に伝えておきますね。次の定期会議は三か月後です。次は忘れないでくださいね。」
「ごめんごめん。」
「…それでは私はこれで、失礼しますね。」
そういいコヤンスカヤは消える。
「…さて、仕事仕事。」
それから三か月という月日が経過した。
『空想樹の発芽から90日、三か月もの時間が経過した、濾過異分史現象、異聞帯の書き換えは終了した、まずは第一段階の終了を祝おう。これらも諸君らの尽力によるものだ、と思っている。』
とある城の一室にて、金髪の男キリシュタリア・ヴォーダイムは威厳に満ちた声で報告した。
その一室には大きな円卓があり、その円卓の周りにはキリシュタリアを含む八人のクリプターのホログラムが囲う。
カドック・ゼムルプス
オフェリア・ファムルソローネ
芥ヒナコ
スカンジナビア・ペペロンチーノ
キリシュタリア・ヴォーダイム
ベリル・ガッド
デイビッド・ゼム・ヴォイド
そしてアルン・ベッテルハイム
「うん?そいつは大げさだ、キリシュタリア。俺たちはまだ誰も労われるようなコトはしちゃあいない。宇宙からの侵略もテクスチャの書き換えもぜんぶ異星の神さまの偉業だからな。俺たちがしたコトと言えば、異聞帯の王のご機嫌取りだけさ、本番はここからだろう。」
と、軽快な口調でベリルが言う。
「嘘だろお前。俺死ぬほど働いているんだけど。背中バッキバキなんだけど。」
と横槍を入れてくるのはアルン。
「分かってないのねベリル。異聞帯の安定と樹の成長は同義よ。そしてアルン、前の会議をサボった貴方にその言葉を言う資格はないわ。せめて最低限の仕事をしてから言いなさい。キリシュタリア様は異聞帯のサーヴァントとの契約の継続に全力を注げと言っているのです。アナタ達のように、まだ遊び気分が抜けていないマスターに対して。」
そう厳しい口調で言うのはオフェリア
「そうね。私もそこには同意したいわ。」
オネェ口調で同意するのはペペロンチーノ
「一番初めの会議をサボるなんて洒落にならないわよ。各々がそれぞれの異聞帯で上手くやれたかを確認するための大事な会議だったんだから。みんな冗談抜きでドン引きよ。」
「サボってねぇよ。忘れてたの。いいじゃん結果オーライだから。」
「結果の話じゃありません。貴方にやる気があるのか、という話です。」
「あぁ、こいつは冗談抜きで仕事をほっぽり出すぞ。そういう奴だ。」
とアルンを非難するのはカドック・ゼムルプス
「おうおう、酷い言われっぷりだなぁアルン。ま、こいつはどうか分からんが、少なくとも俺はかつてないほど真剣だよ、お嬢さん。何しろ一度死んで来た訳だしな?こうして蘇生したものの、異星の神とやらの恩情が二度あるとは思えない。なら生きているうちにやりたいことはやっておきたい。」
とベリルは獰猛な笑みで語る
「殺すのも奪うのも生きていてこその喜びだ。なぁアンタもそう思うだろ、デイビット?」
「同感だ。作業の様な殺傷行為はコフィンの中では体験できない感触だった。俺とお前の担当地区は原始的だからな。必然その機会に恵まれる。」
とベリルの振りに返すのはデイビット
「無駄話はそこまでにして。キリシュタリア。要件は何?」
そう文句を言うのは芥ヒナコ
「そうだな、遠隔通信とはいえ私が諸君らを招集したのは異聞帯の成長具合を確かめる為ではない。」
キリシュタリアが本題に入る
「1時間ほど前、私のサーヴァントの一騎が霊基グラフと召喚武装の出現を預言した。」
「「「「「「「!」」」」」」」
「霊基フラグはカルデアのもの。召喚サークルはマシュ・キリエライトが持つ円卓だろう。南極で虚数空間に先行し、行方を晦ましていた彼女らがいよいよ浮上する、という事だ。」
「死亡していなかったのですね。三か月もの間、虚数空間に漂っていたというのに…」
「そうねせっかくコヤンスカヤちゃんが色々と手回ししてくれたのに。人選ミスじゃないヴォーダイム?私のサーヴァントだったら基地ごと壊せていたわよぅ。」
「いや、あれが最適解だった。コヤンスカヤの計画はよくできていた。問題があったとすればあのサーヴァントが積極的に働かなかった事だ。だがそれはカドックの責任ではない。使者である三体のサーヴァント、彼らは我々のサーヴァントではないのだから。」
「…それで、連中はどこに出るのかは判明しているのか?」
「そこまでは予言されてはいない。あと数時間でこちらに出現する。という事だけだ。」
「…出現場所はロシアだ。異聞帯の中に浮上する。」
「それはなぜ?」
「なぜも何も道理だろう。彼らが現実に出るための縁はカルデアを襲ったサーヴァントだけだ。オプリチニキは彼らにとっての座標でもある。」
「…ふん。因果応報とはね。やられたらやり返せだ。奴らにとっちゃ僕は真っ先に倒すべき敵ってわけだ。」
「ようカドック!なんなら俺が助太刀に行こうか?お前さんは荒事には不慣れだろう?俺でよければレクチャーしてやるぜ?」
「結構だ。あんたはあんたの異聞帯に引っ込んでろ。兄貴分を気取るのはペペとアルンだけで充分だよ。」
「えー?本気で心配してんだけどなぁ、オレ。っていうかペペロンチーノは親父役だし、アルンは近所の悪ガキって感じだろ。」
「なに俺のその微妙な役割。兄貴だろ俺。頼れる兄貴だろ俺。」
「ま、本人がやる気なら口出すのは粋じゃねぇな。がんばれよカドック。皇女様への男の見せ所だしな。」
「カドック、言うまでもないが我々の使命は異聞帯による人理再編。もう一度、人類が神とともにある世界を作り上げることにある。異星の神による侵略が終わった今カルデアの抹殺は余分な仕事だ。雑務と言っても差しさわりはない。しかし、障害であることも否定できない、カドック、君の手腕に期待している。」
「アンタに言われるまでもない。僕だって負けるつもりはないからな。通信はここで切る。奴らが来るなら迎え撃つまでだ。」
そういい、カドックは消える
「私も玉座に戻るわ。こちらの王は探求心と支配欲の塊だから。ほっておくとどんな展開を望むか分からない。」
そういい芥ヒナコも消える。
「んじゃ俺もこの辺で、ロシアからのSOSがあったら知らせてくれ。」
そういいベリルも消える。
「私も失礼するわ。こっちもちょっと様子がおかしいの。報告は上げたけど、デイビットにも意見を聞きたいわ。アナタ、私の異聞帯の四角についてどう思う。」
「アキレス腱だ。これ以上はない急所だろう。おまえにとっても、その異聞帯にとっても。俺やヴォーダイムであればすぐに切除する。だがお前であれば残しておけペペロンチーノ。そういう人間だろう、お前は」
「あらそう。じゃあ様子を見ましょうか。ちなみにアルン、アナタはどう思う?」
「四角?知らんよ、んなもん。サイコロでも転がして決めとけば。四角だけに。」
「ふふ、それもいいわね。」
そうしてペペロンチーノも消える
「んじゃ俺も消えるわ。特に生産性のない時間だった。」
「おい、アルン。」
通信を切ろうとしたアルンにデイビットが声をかける。
「おう、どした。」
「お前、異聞帯で何があった?」
デイビットが鋭い眼光でそう尋ねる。
「なんだ?いきなり。俺の異聞帯に特に異常なんて____
「お前の異聞帯ではない。異聞帯で『お前』に何があったかを聞いている。」
緊迫した雰囲気が漂う
「…さぁな。」
ただそういいアルンは消えた
「…では通信を切る。予定通り、次の会合は一月後だな。」
そしてデイビットも消える
「ではキリシュタリア様、私もこれで失礼します。」
そしてオフェリアも通信を切る
一人残ったキリシュタリアは一人呟く
「空想の根は落ちた。異星の神はじき降臨する。この三か月で異聞帯の書き換えも終わった。この惑星は、次代の人類史は我々の者だ。」
「だが、そんなもので私は満足しない。私は決して手を緩めない。」
「神秘が途絶え、世界の基盤が人間に渡ってから二千年。
今まで、あらゆる賢人が到達しなかった世界に私は挑む。」
「見ているがいい、マリスビリー・アニムスフィア。アナタが描いた机上の空論を、この私が完成させて見せる。」
会議を終え、通信を切ったアルンは深くため息をついた。
「ふーっ、取り敢えず目的は大分果たせた。一つ山は越えたな。」
席を立ったアルンはそのまま自室を去り、エレベーターで地下へと向かう。
地下には独房があり、その独房にアルンが求める人物がいる。
カツーン、カツーン
アルンの軍靴が音を鳴らす。そして、その音は彼が一つの独房にたどり着くと同時に止む。
「やぁ」
アルンが声をかける
「………。」
「クリプターの奴らと会話したよ。」
「………。」
「お前の情報通りだよ。助かった、もう完全にこれからの方針が固まった。」
「…………。」
「お前が現れてくれて本当に良かった。これからも良き協力者でいて欲しい。」
そういいアルンは立ち去る。エレベーターに乗ろうとしたとき。
「………これからどうするつもりだ。」
アルンは足を止め
「そうだな、まずは
カルデア粉砕に全ての労力を注ぐ。それが今分かっている最大の山場だ。
この争いの一番の脅威、それが分かってるクリプターがどれだけいるのやら。」
アルンはそういいエレベーターに乗る。
「ロシアはだめだな。カドックのあの面の感じじゃあすぐ落ちるだろう。」
「となると問題はその次だ。場所的に考えたら次に来るのはオフェリア、もしくは俺のトコだよな。」
「何しろ相手は世界の救世主サマだ。俺とは永遠に相容れることはないだろう。」
「百回殺しても足りないだろうな。まったくピンチでたまらないよ!カハハハハハハ!」
男は笑う。
来るべき、運命を背負った者たちとの闘いを見据えて。
そしてその先にあるものを見据えて
三か月あっという間に経ち過ぎだろ何かエピソード入れろよ。