Lostbelt No.2.5 絶対■■帝国 ■■■ ~最■の男~ 作:>=
『はい。私が話したのは五人でした。女が三人、男が二人です。男は片方が20代の青年でもう片方が30から40の中年の男でした。女は二人が10代後半といったところ、残りの一人は家の息子と変わらねぇ程の子供です。』
「他に人はいたか?」
『恐らく。彼らが乗っていた車はかなり巨大でしたので。』
「五人の中にリーダーらしき者はいたか?」
『私には分かりませんでした。しかし先ほど言った中年男性が立場的には上かと。』
「分かった。情報提供感謝する。」
そういい低身長の男、アルンの側近の一人は電話を切る。
電話を切ると彼は振り向き、口を開く。
彼が向いた先にはソファーで悠々とくつろぐアルンの姿があった。
「アルン様。北西部にある集落の男から情報提供がありました。」
「オッケー。そんじゃメモそこら辺に置いといて。後で見とくから。」
「承知しました。それと一つお耳に入れておきたいのですが…」
「あいつらが今ここ、ベルリンにいるって事だろ?ホントいい度胸してるわ。」
「ご存知でしたか。して、如何なさいますか?」
「無視だよ当然。街中でのドンパチは絶対NG。被害総額とかいくらかかると思ってんの?」
「…了解しました。」
「それじゃあ、少し散歩にでも出てくるよ。何かあったら連絡よろしく。」
「分かりました。」
そうしてアルンは部屋を出ていった。
「…相変わらず考えの読めないお方だ。」
男は一人呟いた。
場所は戻ってベルリンのオフィス街
藤丸とマシュは散歩していた女性を捕まえ、質問をしている最中だった。
「この国の王?」
「はい。王に限らずこの国を代表する人物なら誰でも構いません。」
「そうね…オリ〇―・カーンなんてどうかしら?ドイツを代表するGKよ。」
真剣な表情で女性はそう言う
「ええと、それってサッカー選手だよね?」
「あの、出来れば国を指導する、または国を統べるような人物でお願いできますか?」
マシュがそう条件を付けくわえると女性は途端に真剣な表情になる。
「…そんな人いないわ。いえ、『今は』いないわって言うほうが適切ね。」
「えっ、それってどういうことですか?」
「現在謎の失踪中なのよ。一部では暗殺されたという噂まで立っているわ。」
「え!?失踪中!?一体いつから?」
「三か月ほど前からね。今は何とかなっているけどこれから彼無しでやっていけるのかしら…。国民全員の悩みの種なのよね。」
「あの、その彼…という方の名前は_____ッ!
「あ、そうそう。ちょうど彼が失踪してからね、正体不明の男が首相官邸に現れるようになったのよね。」
「っ!まさかそれってクリプターじゃ…」
「クリプター?かどうかは知らないけど、今ドイツで最も注目を集めているわ。青髪がトレードマークの謎の男、ってね。彼とその男に何かしらの関係があると言われているわね。」
「なるほどなるほど。」
忘れまいとメモを取る藤丸。
そうして女性に礼をして藤丸は女性と別れた。
「割とたくさん情報は集まったね。ってマシュ?大丈夫?」
会話の途中からずっと俯いて震えていたマシュを藤丸が心配する。
「っ!はい大丈夫です。すみませんぼーっとしちゃって。」
「そう?ならいいけど…。そろそろお昼だし、ご飯食べよっか。」
「はい、そうですね。(私が王の名前を訪ねた時、女性が一瞬だけ見せたあの表情…。あれは一体…。まるで何かに操られていた様な…)」
その頃ホームズは住宅街へ移動し、調査を進めていた。
「なるほど、高い生活水準だ。オフィス街に富が集中している可能性も考えたがそれも無さそうだ。」
ホームズは時に留守の家に侵入してまで、隅々と生活実態を調査するホームズ。
「一回りしてみたが、多少の貧富の差はあれど決して問題となる程ではない。ここまで国民の生活水準が均一な国は私も見たことが無い。」
ホームズもまた、この国の完成度に高い評価を持っていた。
「しかし気になることも幾つか出来た。あの『黒電話』と『謎の棒』は一体…」
ホームズがそれぞれの家宅を調査した所、全ての家に共通して置いてあったものが二つあった。
それが『黒電話』と『謎の棒』だ。
「電話に関しては家の中にあるのは決して変なことではない。しかしこの辺りの家の中には受話器が必ず二つある。片方は家ごとに違うごく一般的なものだったが、もう片方はみな共通してあの『黒い電話』だった。まるであれが特定の者の為に設置されている様な…そんな雰囲気だ。
そして扉の前に設置されているこの『謎の棒』。全ての家に同じモノが同じ場所にあっては中々不気味に感じられるな。しかしこれに関してはある程度の予測がつく。恐らくは___」
「おいそこのおっさん、見ねぇ顔だな。お前。」
「てめぇここら辺のヤツじゃねぇだろ。」
ホームズが推理をしていると、現地の者であろう複数の若者がホームズに近寄る。
「あぁ、私はベルリンを観光しに来た者だ。キミたちは見た所ハイスクールストゥーデントのようだが、学校はどうしたのかな?」
「あぁ?おっさんには関係ねーだろ。」
「お前、ちょっとこっち来い。」
「ここら辺のルールを教えてやるよ。」
明らかに不良学生の類の若者たち。普通なら逃げるなり何らかの拒否的な行動をとるものだがホームズは敢えて彼らに乗ることにした。
「あぁ構わないよ。私も誰かと会話がしたかった所だ。」
そういいホームズは人気のない裏路地へ連れていかれる。
「なんも抵抗せずについてきたなこのおっさん。俺らの事舐めてねぇか?あぁん?」
「こんな人気のない所まで連れてこられたんだ。俺達がなに求めてるか分かってるよなぁ」
「分かったら財布だせや。丸ごとな。」
「ふぅ、悪いがその提案は断らせてもらうよ。もっとも、君たちが私の質問に答えてくれるのであれば、多少のチップは渡そう。いかがかな?」
「あぁ?いい訳ねぇだろ!」
「財布丸ごとよこせっつってんだよ!」
「やっぱ舐めてんだろ俺らのこと!いっぺんシメてやんねーと分かんねぇみたいだな!?」
そういい不良たちはホームズへ襲い掛かる
「「「はい!すみませんでした!!!」」」
まぁ当然こうなる。
ただのぐれた不良程度がバリツの達人に勝てる筈もない。
「ははは。構わないよ。それでは私から質問させてもらっても構わないかな?」
「「「勿論です!何でもお答えします!」」」
ホームズはこの機会を好機と捉えた。この機会にこの国の正体を暴こうと考えたホームズ。
いきなり核心に触れず、まずは身近な質問からしていくホームズ。
「まず、君たちは学校に通っているのかな?」
「はい!国立アルバルト高等学校に通っております!二か月前から通っていませんが!」
「なるほど、明日から再び登校することを勧めよう。さて、二つ目だが君たちの両親はどうしているのかな?」
「はい!父はただいまオフィス街の方で働いていると思います!夜になれば帰ってくると思います!」
と二問程無関係な質問をし、ホームズは本命を尋ねる。
「そういえば、この辺の家全ての玄関前に用途が謎の棒きれが置いてあるのだが___
ホームズがそう語りだした途端、今まで苦々しくも笑っていた不良たちの表情が顔から消えた。顔だけではない、纏う雰囲気まで激変した。そして何より特徴的なのは彼らの眼の色だ。今の彼らは人間の形をした別の何かの様だ。
「(ッ!!これは!?)その棒きれだけでは無い。全ての家に存在するあの黒い電話もだ。あれらは一体何なのか、何の為にあるのか、教えてもr_____
「「「大変申し訳ありませんがその質問にお答えすることはできません。」」」
無機質な口調でそう言う不良たち。
「…私は先ほどバリツで君たちを撃退した。同じように暴力的手段をとる、といっても?」
「「「はい。如何なる手段をもってしても我々は口を閉ざすことはありません。」」」
「…そうか、承知した。
失礼する。」
そういいホームズは不良のうちの一人に膝蹴りを食らわせる。
「なっ!!!」
しかし驚愕したのはホームズの方であった。
蹴りを食らった不良はうめき声も出さず、そればかりか口から血を出しながら無言で立ち上がったのだ。他の二人は仲間の負傷に目もくれなかった。
「……すまない。大変大人げないことをしてしまった。質問に答えてくれたことに感謝しよう。すまないがこれで私は失礼する。」
そういいホームズは踵を返し、路地裏を出る。
その間も不良たちはじっとホームズを見つめていた。
路地裏を出たホームズは焦った表情を浮かべる。
「(この場所は、Ms藤丸の旅路の汚点だ。
この異聞帯は、この国は、狂気で満ちている。)」
ホームズは速足でオフィス街へと向かった。
一方場所は戻ってオフィス街。
マシュと藤丸は昼食を食べる為にレストランを探しているのだが、どこも満員の様だ。
「どこの店も混んでますね。」
「オフィス街のお昼なんてこんなもんだよ。」
「わ、私、ちょっと向こうの方も見てきますね。」
そういい駆け足で去るマシュ
「あっマシュ!待っ…はぁ、一人になっちゃったな。」
そう一人ため息をつく藤丸
一人になった藤丸は改めてベルリンという街を意識する。
「だけど本当にすごい街だなぁー。キレイで発展してて活気があって。」
恐らく今まで訪れた異聞帯、特異点の中でも随一の街であろうベルリンに惜しみない評価を下す藤丸。
「一体何をしたらこんな街が出来るんだろう?」
今まで訪れた異聞帯や特異点の中で最も栄えているであろう世界。それだけにこの異聞帯におけるターニングポイントが気になっている様だ。このような大きな変化がもたらされたのだ。相当昔なのだろうか、と藤丸は考える。
「…っていうか、こんな世界のどこが間違っているんだろう?なんで剪定なんてされたんだろう?」
そう、藤丸の本音はそこにある。少なくとも見た限りこの世界に滅ぶべき要素などない。豊かな暮らしを都市田舎関係なく全員が送れている。そんな世界が何故剪定されてしまったのか。何ならこちらの方が汎人類史よりも見込みがあるといってもおかしくはない。
そんな世界が何故。
それが藤丸立香の本音だ。
更に言うと彼女は
「…こんな世界を消さなきゃいけないの、いやd____
「正しい世界、そんなものが存在すると君は思うかね?」
「えっ?」
ふと、藤丸の背後から声が聞こえた。
勢いよく振り返る藤丸。
しかしそこには誰もいなかった。
「今のは一体…」
藤丸が背後を見つめているとマシュが走って帰ってくる。
「先輩!あちらの方に席の空いているレストランがありました!急いでいきましょう!」
「あ、本当!?ありがとうマシュ!じゃあ急いで行こっか。」
そして二人は少し人目のつかない場所にある店の前へ到着した。
店の看板には『ZIONs』とあった。
「これなんて読むのかな?ジオンズ?」
「シオンズではないでしょうか?取り敢えず入りましょう。」
二人は店内へ入る。
そこには客は一人もおらず店内も薄暗い。本当に営業しているのだろうか、と二人が疑っていると真後ろから声が聞こえた。
「…客か…久しぶりだな…」
「「うわぁぁぁ!!!」」
いきなり無警戒の背後から声を掛けられ驚く二人。そこにはウェイターと思われる中年の男性が立っていた。
「…席へご案内いたします…」
「は…はい。」
そういい男性は二人を席に案内し、メニューを渡す。
その後男性は二人の前から立ち去ると思いきや、席の前に仁王立ちして注文を急かすように二人をギロリと睨む。
店員は「それでは注文が決まり次第お呼びください」の一言でも掛けて厨房へ戻るのが普通だ。そんな異様な男性が放つプレッシャーと先ほどから襲ってくる空腹に負けた藤丸はふと目についたメニュー覧の端にある「ポークソテー定食」を注文した。
「ポークソテー定食でお願いします。」
「…セットにライスかパンが付いてきますが…」
「あ、ライスで。」
「サラダの種類は…シーザーサラダとシーフードサラダがございます。」
「じゃあシーザーで。」
「ドレッシングは?」
「えぇと…胡麻で…」
「スープは?オニオンとコーンがございます。」
「じゃあコーンで。」
「お肉の焼き加減は?」
「ええとウェルダンかな?」
「火は?」
「え?火?はぁ…じゃあ弱火?」
やけに注文の多いウェイターに若干引く藤丸。
その後も幾つか割とどうでもいい注文を聞かれて最後にドリンクを聞かれ藤丸が水と答えると店員は深々と頭を下げて「かしこまりました。」と返事をする。
「あ、私も先輩と同じのでお願いします。」
藤丸の様に注文責めを受けたくないマシュがそう注文すると、またもや男性は深々と頭を下げて「かしこまりました」と返事。
そう言い厨房へ戻る男性。
「アハハ・・なんか特徴的な店だね。注文もやけに多いし…。」
「きっとお客さんの要望に少しでも応えようとしてくれているんですよ。期待できますね、先輩。」
「そうかなぁ…。まぁいっか!取り敢えず今までの整理をしようか!」
「そうですね。ホームズさんもいれば良かったのですが。」
「じゃあまずは基本情報から。
ドイツ、首都ベルリン。異聞帯の王は未だ不明。クリプターも不明。
…うーん。進歩はしたけどまだ分からないことだらけだなぁ。」
「異聞帯の王は三か月ほど前から失踪と聞きました。今から三か月前と言えばアナスタシア皇女のカルデア襲撃の時期と一致しますよ。先輩。」
「そうだね、同時にクリプターが各異聞帯へ移った時でも…あっ!!!そうだ!!マシュ、クリプターの中で青髪の人って心当たり無い!?」
「え、ええと…Aチームの中で私に思い当たるのは…アルンさんですね。アルン・ベッテルハイムさん。彼の青髪はかなり目立ちましたから。」
「そっか。多分だけどその人が今回のクリプターの可能性が高いよ。三か月前、ちょうど異聞帯の王が失踪した時期からベルリンで度々見かけられている人物らしいよ。」
「なるほど…アルンさんですか。それは…厄介ですね。」
「その人ってどんな人なの?」
「そうですね…一言で言うと『とても重い腰を持った獣』といった所でしょうか。」
「それって_______」
「お待たせしました。ポークソテーセット二つ」
藤丸が口を開きかけた所でウェイターが食事を持ってくる。
「あ、はい。先輩、アルンさんについてはボーダーに戻ってからにしましょう。」
「うん。分かった。」
そういい二人は食事にありつく。
「あ、おいしいですね!」
「ホントだ!ジューシー!」
二人がそうして食事をとっている様子をウェイターはじっと見ていた。
「あぁ~おいしかった。」
「そうですね。おなかにもちょうど良かったです。」
食事を終えた二人。
マシュがふと時計を見ると既に夕方近くになっていた。
「せ、先輩!ゆっくり食べていたらもうこんな時間です。ホームズさんと合流する時間を過ぎています!」
「え!ウソホントだ!やば早く行かなきゃ!」
「あ、先輩!お会計は…」
「あっ!もうお釣りいいや、机においとけば後で回収してくれるよきっと!」
「分かりました!急ぎましょう先輩!あ、ごちそうさまでした!」
「ごちそうさまでした!」
そう叫び二人はダッシュで店を出ていった。
二人が元々いたテーブルへ歩み寄るウェイター。
「…何しに来たんだあいつらは。」