魔法少女リリカルなのは ストライカーズ 正義はいつも   作:キングオブ不死身さん

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基本的にブラックな話の方が私的には書きやすいです。それでは始めていきます。


闇の中の正義

15年後 時空管理局 本局 

 

 

暗い室内に、一つの光が差し込んだ。その光はあまりにも神々しく、そして残酷だった。この部屋に入ってくる人物は大抵管理局の捜査官がくる場合が多い。だがこの日に限っては違っていた。捜査官とは似ても似つかないうっすらとした顎髭を生やし、肩ほどまであるボサボサの銀髪と冷徹なブルーの瞳を湛えた男がそこに立っていた。

 

「あんた…何者だ?」

 

いつもとは違う捜査官に疑念を覚える俺は訝しげな眼でその男を見据える。男はさして気にも留めていない様にゆっくりと腰を下ろした。男の顔を見つめるとまるで混沌に吸い込まれるような感覚がしてならない。

 

「ハーマン・ウェストブルック。年齢35歳、罪状はクラナガン空港銃乱射テロ幇助で間違ってはいないはずだ」

 

男は淡々と俺の名前と罪状を一篇の狂いも無く読み上げる。クラナガンでの空港テロにおける銃の輸送で罪に問われた。だからと言って同志の思いを無駄にする気は事更無い。

 

「じゃ、始めるか。お前が銃を密輸したところは何処からだ?答えろ」

 

沈黙が両者の間を包む。答える気は無いのは向こうだって分かっているだろう。それに捜査官如きが手を出すことは不可能なのだから、口を割らせる事も出来まい。そう思っていた矢先、男はナタを取り出した。

 

「何をする気だ…?」

 

「質問に答えろと言っているんだ。貴様にそれ以外の選択肢は無い」

 

男は鬱陶しそうに再び言葉を投げる。ナタは気になるが所詮彼とて捜査官の一人。脅迫用だと判り切ってしまえばそれまでだ。武器による自白は意味を為さなくなる。そうタカを括っていた。

 

――そのはずだった。男は俺の腕を掴んだと思うと何の予備動作も無くナタを振り下ろしたのだ。一瞬の静寂の後にヘモグロビンを含んだ赤い液体が流れ出していく。妙な事に左腕の感覚が無い。俺は自分の左腕のあるはずの方向を見た。この男が何をしたのかを悟った。頭が感覚に追いつかずにショートする。視界が真っ赤に染まっていく。それと同時に抑えがたい激痛が体中を駆け巡る。

 

「うああああああっ!!!」

 

男は笑っていた。苦痛に顔を歪ませる俺を見て、笑っていた。ざまあ見ろとでも言う様な嘲笑が彼の口より漏れ出していた。

 

「質問に答えろといったはずだ。密輸ルートを教えろ、次は貴様の命を頂く事になる」

 

だんだんと意識が霞んでいく。切られた腕はゴミの様に部屋の端に打ち捨てられている。

 

「ソマリア…ワラーベ…レリック…」

 

自分の最後の命乞い。生きたいと願う生への渇望に俺は耐えきれなかった。密輸ルートを吐いてでも、自分を守りたかった。絶望から逃げるための唯一の方法だったから。この男を履き違えた事が俺の最大の誤算だった。

 

ハーマン・ウェストブルックはそれともう一つの誤算を犯していた。それはこの管理局の捜査官が元より諜報を専門とした対テロ部隊である事、そしてテロリストに対しては良心の呵責すら許さずに彼らが泣き叫ぶ様を嘲笑い、憎しみを持った民衆の下へと投げ出してなぶり殺しにされる様ですら平然と眺め、果ては死後の尊厳すら平然と辱めるような部署なのだ。そしてこの場所は彼らの思い通りにできる唯一絶対の王国だった。その君主はこうして今日も獲物が地獄へと落ちてくるさまを嬉々として見守っている。

 

「ソマリアのルートだな?」

 

男は再び元の沈鬱な調子で俺へねっとりとした調子で語りかける。

 

「そうだ…だから命だけは」

 

男の良心に訴えかける様に泣き叫んで懇願する。殺さないでくれ、とお願いだから。そう何回言い続けただろうか。男の良心に通じたのか、彼は振り上げたナタを物惜しそうに地面へと下ろした。

 

「まあいい。それが約束だったな」

 

尋問室を出たその男は煙草を口にくわえ、退屈そうにスマートフォンのコール音を鳴らした。20代ほどの女性の声がスピーカーを通して彼の耳孔へと伝わる。

 

「もしもし、管理局情報支援部隊のクラレントです」

 

「クラレント。捕虜が自白した。管理局統合特殊作戦コマンド(Administration Bureau(Joint Special Operations Command )の司令官に第97管理外世界に特殊作戦チーム3グループを送り込んでくれるように大至急伝えてくれ」

 

「了解です。これから向こうに問い合わせてみます」

 

しばらくいくつかの応対ののち、電話は切られた。薄暗い廊下の中に、彼の靴音のみが響いた。




参考にした作品はゼロ・ダークサーティです。あの映画の尋問シーンがなかなか印象に残ったのでそれをもとに文字にしてみました。難しいです。
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