ヤンデレに愛される最強   作:翠晶 秋

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ヤンデレと最強

 

とある国のとある郊外、そのぽつんとしたとある一軒家で、とある男がグラスに入った水を眺めていた。

鋭い目付き、燃えるような赤い髪、ロングコートを羽織ったその男こそ、数年前にこの世界に『野炉取(のろとり)羽久(はねひさ)』として召喚され、世界を救った勇者ハク。

外見に似合わぬ優しい心で何が善か悪かを見定め、結果的に魔王を味方につけて自らを召喚した国を滅ぼすという勇者らしからぬ行動をとったのだが、それはまた別のお話。

 

「んー……。暇だ」

 

ぽつり、と青年が呟く。

 

「じゃあ、私とチェスはどうかしら……?」

「フィリアか」

 

ぬっと横から出てきた少女の名はフィリア。

ハクがぶっつぶした国に仕えていた騎士で、流れるロングの薄紫の髪、真紅色の瞳が特徴だ。

ちなみに、女騎士と言えど胸はない。

おかげで今もつけているチェストプレートは新任の時から新調していない。リーズナブル。

 

「今日の仕事は終わったの?」

「ええ。あなたに早く会いたいもの、雑務なんてすぐに終わらせられるわ」

「うーん……。まあ、ありがとう?」

 

フィリアは仕えていた国がハクによって潰されたため、騎士の資格だけ持って現在は銀行に務めている。

ハクは戦いは当分しないと誓い、冒険者にもならず勇者時代に稼いだ金を使って毎日食い、寝ているだけ。

 

「……俺も仕事するべきかな?」

「あなたが働く必要はないわ。私が養ってあげる」

 

ハクが国をぶっつぶした時、フィリアは新たな兵器の実験道具として連行されかけていた。

それをハクに助けられてから、フィリアは病的にハクを気にかけるようになった。

 

チェストプレートを外して代わりにエプロンを身に付け、ハクの昼御飯を作り始めるフィリア。

ハクは相変わらずグラスの中でたゆたう水を眺めている。

 

「今度は何を考えているの……?」

 

背中を向けたまま寸胴を掻き回すフィリアに、ハクは視線を移さずに答える。

 

「この水は俺の魔法から来てるだろ?」

「そうね」

「つまりは、この水は魔力からできてるだろ?」

「そう、ね……?」

「じゃあなんで、この水を飲んでも魔力が回復しないのかなって。元は魔力なのに」

「哲学的ね……ひたっ」

 

肩をぴくりと跳ねさせたフィリアにハクは怪訝そうな顔をする。

 

「どした?」

「いえ、なんでもないわ。……完成。トマトスープよ」

 

ことり、とハクの目の前に真っ赤なスープが置かれる。

バジルなどが添えつけてあることからフィリアの生活力が伺える。

ハクは両手を合わせて「いただきます」の後、スプーンでスープをすくって一口。

 

「………………」

「どう?」

「ふぅむ………………」

 

暫しの沈黙。

 

 

 

「これ、血ぃ入れたろ」

 

 

 

「………………!?」

「『………………!?』じゃないよ。いつもよりも酸味が強い。あとエグみがやばい」

「お……あの……」

「あれだろ。さっき『ひたっ』って言ってたのはナイフか何かで指切っちゃったんだろ。んで、血、入れたろ」

 

驚くほど冷静な対処。

フィリアはドキドキ。

ハクは片手をフィリアの頭の上にぽんと置き、無表情のままその頭をうりうりと撫でる。

 

「ああ、あああ……!」

「まったくさ。お前もそろそろお婿を取らなきゃいけないんだから、血、入れるのとかやめろよ?」

「あああ……ウン?」

「俺だから良かったものの、他の男の人はあんまりこういうの好まないべ」

「べ、べ……?」

 

頭に置かれた手に両手を添えてフィリアは上目遣いでハクを見る。

 

「ハクは、血はいや……?」

「ううん、そうだなぁ。良い気はしないかも」

「じゃあ、もうしない……!」

「うん、そうしたほうがいい」

 

ハクはフィリアの頭に置いた片手を使ってフィリアの左手を掴み、その傷のついた人差し指を口に含む。

 

ふぁ、ふぉれはほれへふーへほ(ま、これはこれで食うけど)

「はぶっ!!」

 

件の血、フィリアより大量に噴出。

 

「ふぁ……?なっ!?おっま、言ったそばからスープに血増やしてどうすんだよ!ずず……。ほら、もう鉄じゃん!鉄分の液体じゃんトマトどこいったんだよ!」

「ま、また口に含んで……!」

「まあ飲むけど!ほら、もっと頑張れよ!まずは血を止めて……!」

 

どこの国も、どこの街も、どこの村も、こんなところで一国の騎士と世界を救った勇者がイチャイチャしているだなんて知るよしもない。

これは、そんな二人の、二人だけのお話である。




~アキさんの豆知識コーナー~

どうも、夜中に紅茶を飲みながら執筆するのがマイブームの秋です。
さて、今回は【ヤンデレとメンヘラの違い】について説明していきましょう。

まず、ヤンデレとメンヘラの共通点は【好きな人は病的に好き】ですね。
さて、いきなりですがここから違いが生まれます。

ヤンデレは、好きな人に好きになってもらおうとします。
メンヘラは、好きな人は自分の愛を受け入れてくれると思っています。

つまるところ、ヤンデレは好きな人が『いやだ』と言ったことはやめるし、好きな人のためなら死ぬ気で頑張ります。
逆にメンヘラは『いやだ』と言っても『遠慮』と考えてしまい、自分がダメなのは周りがすごいからと思い込んでしまいます。

簡潔にまとめると、ヤンデレは『嫉妬心の強い女の子』、メンヘラは『愛の押し売り』ですね。
属性って、小説を書く上で大切になりますから、覚えておくと良いですよ。
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