ヤンデレに愛される最強   作:翠晶 秋

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最終話 ヤンデレと終焉。

レオが砲塔を向けた瞬間に、その腕が神速を以って切り捨てられた。

即座に腕を生やしたレオが視線を向けると、そこには抜き身のデュランダリアを地面に突き刺しているハクの姿。

 

「勇者ハクの再臨だ……。この俺が来たからには、もう誰も傷つけさせない」

 

紅蓮色の風が吹き荒れ、ハクを含めた4人の体を包んだ。

 

「無敗、無敵、無情の勇者様のご加護だ……しっかり受け取れ」

「この力は……さっきのとは違うの?」

「そりゃあ違うさイヴ。さっきのはデュランダリアの加護。そして、今回のは俺の加護」

 

デュランダリアは超回復。

ただ持つだけで所有者の再生能力を高め、勇者が解放したときにはその力は周りの者にまで加護を授ける。

そして、勇者だけに与えられた、他者と繋がる加護。

 

一年足らずで魔王を倒した【暁の天剣】、万を記し魔法を想像する【退魔の華】、あらゆる光をエネルギーに変える【閃光の申し子】など、様々な勇者が加護を有する中で───。

 

「地を割り、世界を穿て」

 

【国殺し】の加護は、神を超える破壊力にあった。

ハクの胸に、ぽっかりと穴が開く。

髪の毛は炎のように燃え上がりたなびいた。

 

フィリアが軽量長剣を振る。

大地は呻き、雲のステージはモーセが杖を振りかざしたかのように二つに割れた。

 

【バカなっ!?】

【これが、勇者の力……!?前より強くなってない!?】

「マァ基本、勇者はソロ活動するらしいからな……。加護にも相性があるんだろ」

 

イヴが翼を広げる。

漆黒の翼は紅蓮の光をその内に宿し、その瞳はらんらんと輝いていた。

 

「ボク……魔王の娘なのに!勇者の力が、とっても気持ちいい!」

「……どうやら、フィリアよりも加護の相性が良いらしいな?」

【……ッ!!所詮は小娘よ!】

 

レオがすべての砲塔をイヴに向ける。

もちろん、誰も動かない。

レオ以外、この場の全員が知っているのだ。

 

───勇者ハクが来て、負けるわけがないことを。

 

イヴは翼をうんと広げ、自身の身を包んだ。

次々と砲弾が着弾し、黒煙が吹き上がる。

……無論、イヴは傷ひとつついていなかった。

 

【どういうことだァ!?】

「翼だよ。翼の一枚一枚が、君の砲弾を『攻撃』したんだ」

 

そして、全ては破壊された。

砲弾も。衝撃も。ダメージも。威力も。

……そこに砲弾が放たれたという結果さえ、勇者の加護は『攻撃』し、破壊した。

 

【ごめんね。君には二度と戦って欲しくなかったんだけど】

「いいっていいって。こんなやつは、俺がいねえと倒せねえんだから」

 

エリースの頭部にあった巻き角がぐんぐんと大きくなる。

やがてそれは鋭利になり、凶器となった。

 

【……っ!!次は貴様か!】

【ハアアアアア!!】

 

エリースがレオに突撃する。

咄嗟に重ねたレオの六本の腕は、全て一直線に貫かれていた。

狼狽するレオ。

エリースの後ろから、人影が飛び出す。

 

「……あなたは、殺すッ!!!!」

 

フィリアであった。

フィリアが手を振り下ろすと、どこからともなく澄んだ水色の鎖が飛び出した。いつぞやのアダマンタイトである。

アダマンタイトの鎖は意思を持つかのようにレオの腕に巻きつき、それを一本に纏めた。

 

あとは、切り落とすだけ。

フィリアが手を軽く振るうと、轟音と共にレオの腕が切り落とされる。

 

【……ハハ!何をするかと思えば、腕くらいくれてやる!どうせいくらでも再生でき……。……ッ!?】

 

いくらレオが力を込めようとも、レオの腕は新しく生えることはなかった。

フィリアの『攻撃』は、あらゆるものを縛り付ける『束縛』であった。

 

「『ラヴ・チェーン』。今名付けたの」

【貴様ァアアアアアアアアアッ!!!!】

 

レオは腕をフィリアに向ける。

しかし砲弾は出ない。腕が無いのだから。

フィリアは涼しい顔でとある一点を指差す。

 

そこでようやくレオは。

自身をみつめる、異質な存在に気が付いた。

 

「ははは……オーバーホールって、普通の人が受けるとこんなんなんだなぁ……」

【……貴様、その力はどこで手に入れた?それにオーバーホールだと?どこまで知ってる!?】

「知ってるさ。全部な。オーバーホールの力も、勇者という存在も、この世界の因果も、なにもかも!」

【どこで知った!?貴様は何を見ている!】

「この脚で、全部の大陸を回った。そして知った。だからこそ、【十二宮】のお前には、死んでもらわなければならない!」

 

先祖から受け継ぎ、蓄積された力をたった一人の体に流し込むオーバーホール。

【破】の言葉の力を使って【世界の記憶】のプロテクトを破壊したハクには、全てが見えていた。

 

「これは系譜だ……全てを、終わらせる始まりだ!」

 

そこで初めて、ハクはデュランダリアを正面に構えた。

オーバーホールのによって生み出される【破】の加護が、デュランダリアに集中する。

やがてデュランダリアの容貌は真紅の剣から紅蓮の翼となり、空へ、空へと吹き上がる。

そしてそれが、なんの前触れもなく振り下ろされたとき───。

 

 

 

 

 

【ウソだァアアアアアアアアアアアアaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!】

 

 

 

 

───獅子神の咆哮と一緒に、全てが消え去った。

 

 

 

 

これは、とある最強の勇者と。

 

「ん〜〜〜〜イイ朝!」

 

とある救われた女騎士と。

 

「おはようハク。朝ごはんできてるわ」

 

とある憧れた魔王の娘の。

 

「エグみがすごい。フィリアちゃんこれなに入れたの!」

 

愛をモチーフにした、小さな小さな大陸の物語。

 

「惚れ薬よ?男の人にしか効かないの」

「え?これ対象人数は?」

「一人よ」

「ズルイ!」

「ずずず……」

「あっちょ、吐いて!吐いてよ!」

「ハク、ねぇどうかしら?」

「なにも感じないけど?」

「ええっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

の、はずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




coming soon……?(ヤンデレは帰って来る)




【ヤンデレに愛される最強】は今回で連載の終了となります。
長いこと愛してくださり、ありがとうございました。
できれば感想など、書いてくださると幸せです。
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