「どったの、フィリア」
「……いいえ、なんでもないの……」
明らかにフィリアの様子がおかしい今日この頃、ハクはフィリアと国内まで来ていた。
普段郊外に住んでいるハクは買いだめをしているのだが、それの補充、剣のメンテナンス、etc。
とまぁ、なかなか国の中まで入る事のないハクとのデートなのだが、肝心のフィリアがいつものように暴走しないのだ。
「……はぁ」
「なぁフィリア、悩みがあるなら聞くぞ?」
「……良いの。ハクが聞いたらきっと喜んでしまう話だわ」
「まさか。そんなはずは無いよ」
「お見合いの誘いが来たの。実家から」
「おお、やったじゃん?」
「……はぁぁぁぁぁぁ……」
鈍感なハクに対してか、それともお見合いの話を持ってきた親に対してか、とにかくため息を連発するフィリア。
でもそんなハクを愛しているフィリアは強く言うこともできず、その不満はため息となって晴天の空に登るのだった。
「なんか悪いこと言ったならごめん。……んでさ、まずは何から買ったほうがいいかな」
「まずは剣のメンテナンスかしら?メンテナンスには時間がかかるし剣を預けなきゃいけないし、まずは鍛冶屋によりましょう」
「わかった」
フィリアはひとまず立ち直る事にし、代わりに今日を全力で楽しもうと決心する。
そんな感情を知ってか知らずか、ハクは素直にフィリアのガイドを受けるのだった。
「ハク、これ似合うかしら?」
「うん。レースが似合ってて、いつもの簡易鎧よりも女の子らしいと思うよ」
「一生これを着るわ」
「やめてちゃんと洗濯して」
服屋でさりげなく互いのコーデを決めたり。
「はいハク。こっちの塩も」
「あむ、あむ。…う゛め゛え」
「これも、これも、これも……」
「ちょっ、待って食えない食えない一度に食えない」
さりげなく牛肉の焼き串を『あ〜ん』をしあったり。
「……あっ!」
「大丈夫?【ヒール】」
「わぁ……!ありがとう、おねえちゃん!」
「どういたしまして」
「……優しいんだな」
「『強者は弱者に手を差し伸べる』。騎士学校で最初に習ったわ」
転んだ幼女を話題にしばらく話し込んだり。
気づけば、夕方になっていた。
「今日は楽しかったわ」
両手いっぱいに荷物を抱え、フィリアが満面の笑みで呟く。
レッドピンクのカチューシャ、純白のワンピースの上に透け感のあるピンク色の上着を羽織り、靴はベルトを巻いたブーツで固めたフィリアはいつもの騎士然とした格好とはまた違い、完全なる乙女の姿をしていた。
「射的とか、色々あったよな。今日って縁日かなにかなのか?」
「商店街では平日でも珍しくない光景よ」
これまた両手に荷物を抱えるハクも、茶色のズボンにワインレッドのシャツ、上からジャケット、靴を黒にし、普段の勇者然とした真っ赤な服とはまた違う雰囲気を醸し出していた。
「そうなのか。郊外に住んでるとわかんないこともあるんだな」
「国内で住んでみるのはどうかしら?」
「冗談。【国殺し】が国に住むとか、笑えないでしょ」
「…………そうね」
少ししょんぼりとするフィリア。
ハクは苦笑してフィリアの頭に手のひらをのせ、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「まぁでも、フィリアとたくさん楽しいことができるんなら、悪くないかもな」
目を大きく見開く少女。
少し照れ臭そうにそっぽを向く少年。
「……なら、その時のためにいい物件を探しておくわね」
「気が早いって。ありがたいけど」
まだ喧騒名残が残る街中を、二人は、ゆっくりと、歩いて行くのだった。