蒼の男は死神である   作:勝石

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始まりの章~鷲尾須美の章〜
Rebel01.終わりのその後


「見せてもらったよ。『お前さん』の舞…見事だったよ」

 

真っ白な空間でそびえ立つ巨大な「門」の前で二人の男が顔を合わせる。一人は着物と羽衣の派手な衣装に身を包んだ女形(おやま)で世界の「傍観者」であるアマネ=ニシキ。

 

「そうかよ…」

 

もう一人はボロボロの赤いコートを着た白髪の男だった。彼はすべての「願望」(ゆめ)を喰らい、世界の命運を左右する戦いに勝利し、長い間彼を待ち続けた「妹」を「救い」、「神の観る夢(セントラルフィクション)」を終わらせた。

 

これで世界に「可能性」は戻り、世界の再構築による歴史の繰り返しはなくなるだろう。

 

「…安心しな、タカマガハラシステムに『お前さん』の情報は何も残っていないよ」

「手間、かけさせたな」

「良いってことよ、見事な舞の礼さ」

「…なら後はあんただけだな。『傍観者』」

「まったく残念な話だよ、あれ程の舞を記憶に留めておけないなんてね。「遍」(あまね)の名が泣くよ…」

 

「神の観る夢」(セントラルフィクション)を終わらせる。それはすなわち男に関するすべての「記憶」を抹消することだった。それは目の前のアマネはもちろん、親しいものや血の通った家族でも例外ではない。この後に生まれる世界では男を知るものはいなくなるだろう。

 

「…それで『お前さん』はこれからどうするんだい?」

「みんなの『願望(ゆめ)』を蒼へと還す。そこから生まれる世界は誰の…アマテラスにもタカマガハラにも干渉を受けない…あいつらの世界だ」

「過去、現在、未来にあまねく広がる「可能性」という名の希望…これほど大規模な世界の再構築は見たことがないよ…」

 

これが真なる蒼…「蒼炎の書」(ブレイブルー)の力かい…。そう感嘆の声をあげるアマネに対して男は否定する。

 

「違うよ。俺の力でも蒼の力でもない…」

 

そう告げた後に男は笑う。

 

「あいつらの『可能性(ちから)』だ」

 

そう言って愛刀を残し男、ラグナ=ザ=ブラッドエッジは光に包まれながら消滅した。

 

 

 

 

 

 「今のは…夢…か…」

 

少年は目を覚ました。奇妙な夢を見ていた。その夢は妙に実感があり、起きた今でもその内容を覚えている。

 

夢に出てきた男は自分とは明らかに背丈が違うし、自分は白髪ではなく、金髪だ。それに男の顔の右半分は赤と黒の混じった瘴気に包まれていたがその奥に見えた瞳の色は自分と違って赤色のオッドアイだった。

 

ただそれを除けば自分と同じような雰囲気を持っていた。自分と違う人間のはずなのに、なぜ「あの」光景が懐かしく感じるのだろう。

 

「兄さーん、もう朝だよー」

「兄さま、もう朝だよ。はやくしないと『巫女さん』に叱られちゃうよー」

 

弟と妹の声が聞こえてきた。どうやら今日自分は週末を理由に起こされるまで寝ていたらしい。そろそろ起きないと両親を失った自分たちを引き取って育ててくれている「巫女」が直接起こしに来るかもしれない。

 

「おう、今行くから待っててくれ、『(ジン)』、『沙耶(サヤ)』」

 

そう告げて少年はベッドから這い出て普段着に着替え、居間に向かった。そこでは食事の準備を進める「巫女」と食器を持ってきている弟妹が見えた。

 

部屋に入ってきた兄のことをいち早く気付いた妹、沙耶はテーブルに置いた後に満面の笑みを浮かべながら少年のもとへと近づいた。

 

「おはよう、兄さま!」

「おう、おはようサヤ。今日は体の調子大丈夫か?」

「うん!」

 

妹の沙耶は昔から体が弱い。熱が出やすく、空気の汚い場所ではむせたりすることがある。それゆえ学校を休みがちであったことから周りから浮くようになった。

 

しかも沙耶は引っ込み思案で家族以外の人間にはなかなか心を開かなかったため、友達と呼べる人間がいなかった。そのため他の同級生よりも兄達やその友人と仲良くすることが多かった。

 

特に一番上の兄には、自分が病床に伏せたときにたびたび「巫女」と一緒に自分の看病をしてくれたからか、とても懐いていた。

 

「あ、『巫女さん』。兄さん起きたよ」

「あら、本当だわ。ラグナ~、そろそろ朝ごはんの準備ができるから顔洗ってきて~。」

「分かった」

 

どうやら食事はもうできそうだ。少年は顔を洗ったあとに鏡に映る自分の顔をよく見た。やっぱり夢の中の「あの」男と自分はどこか似ている…気がする。

 

「兄さま、今日はうちで遊びましょう」

「待ってよ沙耶、兄さんは今日僕と外で遊ぶ約束をしているんだ」

「お、おいジン…」

 

食事を食べ終わると妹が自分に甘えてきた。しかし今日は弟の刃と外で遊ぶ予定だ。

 

弟の刃は特に体調の問題はなく、勉強も運動も問題はなかったものの少し臆病で幼少期は泣き虫なところがあった。両親を失ったことからか唯一自分よりも年上の血縁者である兄のことが妹に負けず劣らず大好きだった。

 

「なぁ、『巫女さん』…」

 

少年はふと自分たちの保護者である『巫女』に目を向けた。この『巫女』は家の近くの神社に勤めていると同時に、ゴールドタワーの地下にある社の管理も任されている。

 

彼女も自身の姉を事故で、両親は流行り病で亡くしているらしい。自分たちの母親の親友で何度か会ったことが縁で親戚のいなかった自分たちを引き取り、育ててくれている。そのため兄弟たちにはとても信頼されている。

 

「う~ん、今日は体調は良さそうだし、この近くでなら連れて行ってもいいわよ」

「そうか…なら」

 

サヤ、と少年は妹を呼んだ。

 

「今日俺はジンと外に遊びに行くつもりだ。だから今日は家では遊べねぇ」

「うん…」

 

沙耶の顔が俯いてしまった。今日は兄とは遊べないかもと思ったのだろう。

 

「だから…もし良かったら今日は久しぶりに外で遊ばねぇか?たまには外の空気を吸うのもいいだろ?」

「兄さま…うん!」

「ジンもそれでいいか?」

「いいよ!じゃあ公園でかくれんぼなんてどうかな?」

「いいじゃねーか」

 

弟の提案で外での予定が決まり、三人は出かける準備を進めた。

 

「じゃあ『巫女さん』、行ってきます」

『行ってきます』

「いってらっしゃい」

 

保護者に別れを告げて、兄弟たちは外へと向かった。

 

 

 

 

家を出た後、少年は玄関にある名札を改めてみた。自分たちが引き取られてから4年、この家で暮らして来た。はじめはそれまでとは違う環境での生活に対して不安に思うことがあったが、『巫女』や彼女の知り合いである『猫のおじさん』のおかげで生活に苦しむことはなかった。

 

今思えばあの人たちがいなければ自分たちはどこかの施設に預けられて、そう遠くないうちにばらばらになっていただろう。感謝しなければ、と思いながら少年は小さく名札に書かれている名前をつぶやいた。

 

『綾月  芹佳

     洛奈

     刃

     沙耶』

 

「ラグナ兄さん、どうしたの?」

「なんでもねぇよ」

「変なラグナ兄さま」

 

 弟と妹に呼ばれて少年、「綾月洛奈(あやつき らくな)」もとい「ラグナ」は彼らのもとへと駆け出した。現在神世紀296年。少年の運命の環が今回り始めた。

 




皆様はじめまして勝石です。今回初投稿の小説を読んでいただきありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

本作は結城友奈は勇者であるシリーズとブレイブルーシリーズのクロスオーバーものです。できる限りどちらの設定も組み込めるように頑張りますが場合によって断念する部分も生じる可能性があることをご了承ください。

その他感想、意見があれば書いてくれると幸いです。

それでは、

The wheel of fate is turning...

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