蒼の男は死神である   作:勝石

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どうも勝石です。

とうとうこの小説?ss?も100回目の話に突入しましたよ。長かったなぁ…しかも本日から蓮華ちゃんが参戦するし、何かおめでたい。

さてと、今回は現実のめでたさとは真反対に精霊の危うさが明らかになる回です。原作ではこの精霊の後遺症に苦戦させられた勇者たちですが、こちらではどうなるのでしょうか?ついでに色んなことが明らかになっていきます。

100回記念で1万5千文字クラスですが、どうぞ


Rebel86.精霊の危険性

二日後の朝、三日目の検査を終わらせたラグナは病院から出ようとしていた。

 

(チカゲの奴…大丈夫なのか…ウサギに任せたから滅多なことはねえと思うが…)

 

少なからず彼は先日の事件もあって、千景のことを心配していた。あの時の彼女の様子はとても穏やかなものではなかった。そんなことで悶々としている彼の元へ球子がやってきた。

 

「ラグナ、終わったんだったらちょっと若葉の部屋へ来て欲しいんだけど、いいか?あんずが皆に話があるってさ」

「アンズが?どういうこった?」

「とにかくすぐに話したいみたいなんだ。何でも精霊に関係することで確かめたいことがあるんだ」

 

杏はかねてより精霊を使うことに警戒しているようだった。その彼女が呼んでいる以上、何か重大なことがあるのだろう。それにそこから千景の力になれる情報が聞けるかもしれない。

 

「分かった。今行くわ」

「サンキューな。こっちだ」

 

そう言ってラグナは球子と共に杏のいる場所へと向かった。球子に呼ばれた者たちも集まり、若葉のいる病室へと着いた。若干の不安を覚えつつも扉を開けるとそこでは他のメンバー、そしてなんと車いすに座っている友奈までもが待っていた。

 

「ユーナ?何でテメェがここに?」

「あはは…ヒナちゃんに頼んでこっそり抜け出してきちゃった」

「友奈さんにも関係のある話ですから私が連れてきました。本来ならばまだ面会出来ませんので、病院の方々には知らせていません。連れて帰されるでしょうから」

「…たく。あんまり無茶すんじゃねえぞ。まだ重症なんだからな」

「大丈夫だよ!これでも結構治ってきたんだから!」

「ま、今日の話はかなり重要な話みたいだからな。カギはかけて置くぞ」

「うん、お願い」

 

球子が扉を閉めに行っていると、ラグナは若葉に挨拶する。彼女の身体も友奈の両腕と同様、包帯で巻かれている。その下には大天狗の炎によって付けられた火傷があった。

 

「そっちは元気にしているか、ワカバ?」

「まだ少しヒリヒリするが、元気だ。お前こそ、何ともなさそうで良かったよ」

「テメェらと約束していたからな。戻ってくるってよ」

「これを見る限り、友奈の面会謝絶が解除されるのはもうすぐみたいだな」

「そうだといいな…ところでぐんちゃんはいないの?」

「今日はどうしても外せない用事があるそうよ。ごめんなさいね」

「…そうか。アイツにも顔を合わせたかったがな」

 

千景は一同の中にはいない。レイチェルによると私用で外出していると連絡を貰ったとのことだ。ヴァルケンハインはというと、今は大社の仕事を手伝っているらしい。ラグナは杏の方を見る。

 

「そんで、アンズ。話は聞いてるぜ、話があるってな」

「何かあったのですか?」

「はい…取り敢えず皆さん、おかけください」

 

杏に促されて席に着く一同。杏は緊張している様子か、ラグナとはあまり目を合わせようとはせず、どこか遠慮がちだ。樹海にいた時と同じだ。

 

「…やっぱそいつも精霊の影響ってやつか?」

「…すみません。恐らくは」

「そうか…まあ、いいや。テメェの話しやすいようにしてくれ。それより、俺たちに話してえことってなんだ?」

「皆さんの精霊のことについて調べたり、考えたりしている内にどうしても分からないことがあったんですけど、ラグナさんの話などを思い出した時に思いついた仮説がありまして…それで確認のためにも皆に話したかったんです」

「俺の話?」

「…はじめは…弟さんである刃さんの話について聞いたときです」

 

杏はまず、刃がオーバードライブを使った後の様子について話し出した。確かに原理も後遺症も、刃の案件と勇者たちの切り札は非常に酷似していた。

 

「…刃さんは私たちでいう切り札を使い続けた結果、非常に凶暴な人格になった。それを聞いたとき、やはり切り札には精神に対しても負担があることは確信していました」

「そうね…最も、ここ最近のエネミーはそれを使わないとデンジャラスなのもいたから使わないわけにもいかなかったけど」

「うん…特に完成体と…黒き獣…」

 

黒き獣の名前を聞いて杏が一瞬震えたように見えると、ひなたは話の続きを促した。

 

「…話を続けましょう。杏さん、精霊の精神汚染ならば大社の方でも注目こそ最近で懸念自体は前々ありましたが、何故今ラグナさんの弟さんについて注目されたのですか?」

 

ひなたの疑問に対して杏は恐る恐るラグナに聞いた。

 

「ラグナさん…刃さんに身体的な負担はなかったんですか?若葉さんや友奈さん程でなくても良いんですが…」

「…確かに初めの頃は疲労はしていたが、後になって鍛えまくったのか、秩序の力を覚醒させる前でも何ともなさそうだったぞ」

「そうだったんだね…でもそうなると、私たちとは精霊を降霊させる方法が違う…ということかな?」

「テメェらは確か、神樹とアクセスすることで呼び出してんだよな。そう考えると確かにアイツとは違うな」

「そうなの?んじゃあそっちはどうやって?」

 

興味を示してくる雪花にラグナは答えた。

 

「アイツの場合、戦うときに使う事象兵器…アークエネミーとも言って俺たちの時代の勇者システム以外の武器だが、そいつの中にある精霊の力を完全に開放させるために身体に精霊を憑依させていたはずだ」

「神樹様とアクセスしてなかったのか?」

「…そんな話は聞いたことねえな」

「おかしいですね…それではどうやって精霊を…」

「…思い出した。昔、聞いたことがあるんだ。アークエネミーは…精霊をあらかじめに憑依させた素材から造られるってな…」

「精霊を現実世界の物質に憑依させて武器として使う…ですか…」

 

それを聞いて、杏は考え込んでいると疑問を抱いた球子が彼女に質問した。

 

「ちょっと待ちタマえよ、あんず。それだけで今のタマたちと何か違うのか?武器とはいえ、精霊を使っているのは変わらないだろ?」

「…そうだね。多分だけどタマっち先輩にも馴染みのあるもので例えるなら私たちの武器に宿っている霊力が近いんじゃないかな?旋刃盤なら神屋楯比売とか」

「つまり、アークエネミーにとって精霊の力がその代わりなのね」

「…ある意味少し違えな。俺の世界でのアークエネミーも…単純に力を使ってたわけじゃねえし」

「何が使っていたんですか?」

 

水都の質問にラグナは苦い顔をしていた。

 

「…アークエネミーの『(コア)』に使われているのは『魂』だ」

「た、たま!?」

「人間の魂でも使ったのか!?」

「まあな…ある意味そうだ」

「…そう。だから『精霊の力』ではなく、『精霊そのもの』なのね」

「どういうことだ、レイチェル?」

 

若葉の疑問にレイチェルは答えた。

 

「あれらの兵器には明確な『意思』を持つ必要があるのよ。現世へと現れたことで『存在を獲得した精霊』は自身の引き起こした『事象』を『観測』し、強く『認識』することで初めてその力を発揮することが出来るわ。だから、あれは『事象兵器』と呼ばれているの」

「…済まない。私ではいまいち理解が追いつかないみたいだ」

「若葉ちゃん。先日から『お勉強』していたのは覚えていますよね?」

 

それを指摘されて若葉は黒き獣と戦うのに神話や伝承についての数多くの書物を読んでいたことを思い出した。それは精霊のイメージを強く掴むためだ。それによって勇者に精霊の力を宿しやすくなるのだ。

 

「何だか術式みてえだな。因みにどんな本を読んでんだよ?」

「はい。一つこちらにありますが、ご覧になりますか?」

「ああ。少し見せてくれ」

「どうぞ」

 

ひなたから手渡された帖装本(じょうそうぼん)にラグナは目を通す。折り畳まれた中身を開けて、頭を何度も捻り、本を動きまわしたりしていると

 

「そうか…これが…」

 

ラグナは両手で逆さになった本を掲げて

 

「これが…この世界の魔道書なのか!」

「違いますよ?」

 

分からないのを誤魔化そうとしたが、ひなたにバッサリ言われてしまった。実際書かれていることは全て古語で記されており、ラグナから見ても意味不明な代物である。

 

「ラグナさん…あんまり勉強は得意じゃないですもんね…」

「言わないでくれ、ミト…」

 

ラグナはちょっと凹んでいたが、ひなたは古書を読んだ時の効果とアークエネミーの違いを自分なりに説明し始めた。

 

「良いですか?勇者の精霊を身に着けるのに若葉ちゃんたちは精霊のイメージを掴む必要がありますが、先ほどラグナさんが申し上げていたアークエネミーでは既に精霊は意識を持ったイメージとして物質に憑いています。これによって、精霊は自分自身で力を使った時にどうなるのかをイメージ出来るようになり、力を発現させることが出来るようになるんです」

「すげー!!じゃあ勉強しなくても精霊の力が使えるってことじゃないか!!羨ましすぎるぞ!!」

「タマっち先輩は勉強したくないだけでしょ~?」

「だってアレ全然読めないし…」

 

球子はブーブー言っているが、ラグナはそこへ補足した。

 

「残念だがタマコ…アークエネミーは誰にでも使えるモンじゃねえ。アレは一応、自分から使用者を選ぶんだ。そしてこっちはどこまで一緒なのかは知らねえが、あっちと同じだったら…使用者を何が何でも守ろうとする。それこそ『身体の主導権を奪ってでもだ』」

「……マジか」

「マジだ。実際、あっちのジンはそれで精神干渉を受けていた時期があったからな…それにこっちの精霊も、前に同じようなことをしたことがある…」

 

一つは東郷達、神世紀の勇者たち。沙耶がそう願ったからというのもあるが、精霊バリアで主をいかなる死の要因から守っていた。もう一つは沙耶自身で、こちらでは精神が弱っている状態で大量の精霊を肉体に取り込めさせられたために魂が飲まれかけたのだ。

 

「…もう少し古典の勉強、頑張ってみるぞ」

「おや?」

「どうしかしましたか、棗さん?」

「ああ。ラグナ、お前の腕の蒼の魔道書は黒き獣の身体なのだろう?先ほど出たアークエネミーとは違うようだが、どうやって戦っているんだ?」

 

彼女の疑問にラグナは答えた。

 

「…俺の場合は基本的に魔道書と術式で戦っているんだ。まあ、もう一つ、戦えている要因はあるが…」

「もう一つ?」

「ああ。『ドライブ能力』だ」

『ドライブ能力?』

 

また知らない単語が出てきて勇者たちは頭の上にはてなを浮かべるが、それをレイチェルが解説した。

 

「ドライブというのは、『魂の力の具現化』よ。その人間の魂の持つ性質が力として現実世界に現れるの」

「それはどんな人間にもあるものなんですか?」

「いや。持ってねえやつもいる。そもそも俺自身も、こいつを手に入れるまでは持ってなかったしな」

 

ラグナは自分の腕を見ながらそう語った。元々自分にはドライブ能力も術式適性もなかったが、蒼の魔道書を手に入れてからはドライブを覚醒させ、術式が使えるようになっていた。

 

「因みにレイチェルにもあるのか?」

「ええ。前々から風や雨を引き起こしていたでしょう?あれが私のドライブなの。ヴァルケンハインの人狼の変身もドライブよ」

「人間の枠でいうなら、ジンも持っているな。あっちは武器と同じで冷気を操るものだった」

「そっちも冷気使いがいたのか!あんずと気が合うかもな!」

 

その言葉にラグナはどう返答するべきかは分からなかった。杏は球子と触れ合うようになってからはかなり社交的になったと思うが、刃のコミュニケーションスキルはあまり褒められたものではない。事務的に対応するのが関の山かも知れん。

 

「まあ、そういうのは会わせてみねえと分かんねえし…どうだろうな…」

「そうなのかぁ…でもそうしてみるとそれも精霊と似てるよな」

「…まあ、ドライブを使い分けられる奴はいるしな。サヤとかは」

 

実際ベルヴェルクを使うときと神樹を降ろしたときとで武装の違いで変わっているともいえる。それに杏は疑問を思った。

 

「え?ラグナさん、ドライブは魂の力なんですよね?一個しかないんじゃないんですか?」

「基本的にはな。だが同じ魂でも二種類使えたりすることもあったぞ」

 

ラグナが二種類のドライブが使える人物を考えると、元の世界でのノエル=ヴァーミリオンを一番に思いつく。彼女は通常、こちらの沙耶同様、ベルヴェルクを使うときにチェーンリボルバーと呼ばれるドライブを持っているが、神輝ムラクモを身に付けて『μ(ミュー)No.12(トゥエルブ)』の姿となると、ドライブもシュタインズガンナーに変わる。

 

「杏。ドライブは魂の持ち主の性質に近いものであっても本人そのものではないわ。ある意味、その魂を構成する性質で表面化した一面なの。だから魂の形や在り方が変化すれば、ドライブも変化するわ」

「そう言う意味では勇者の使える精霊もそうですね。恐らく勇者の性質に応じてどの精霊が喚ばれるのかも変わっていくのだと思います」

 

そうなのかとラグナが感心していると球子が自分に質問しているのに気付いた。

 

「じゃあラグナ?お前のドライブって何なんだ?」

「俺のドライブはソウルイーターで、周囲の人間の魂や力を吸収する力だ」

「そう言う意味では黒き獣の力…ということですね…」

「ああ…それとアンズ。一つ聞いて良いか?」

「な、何でしょうか?」

 

ラグナは何かを覚悟するようにゆっくりと話し始めた。

 

「アンズ。正直に答えてくれ。『俺』を『殺したい』と思ってるか?怖いと思ってるか?」

「ッ!!」

 

ラグナの言葉に対して杏はビクッとする。そんな彼女を友奈が庇った。

 

「ちょ、ちょっとラグナ!?いくら不安そうにしているからってアンちゃんにそんな聞き方しなくても!!」

「…済まねえな、ユーナ。だが、これは一応杏にとっても重要なことだから聞かせてもらう」

「アンちゃんと…ってどういうこと?」

「…言ったよな。ジンはアークエネミーを使ったことで凶暴化したって。実はアイツの武器、元の世界だと黒き獣に対する殺意が他のアークエネミーよりも人一倍強いんだ。こっちでも同じものを使ってるけどよ」

「そうだったんだね…だけど、それがアンちゃんとどんな関係があるの?」

 

友奈がそう聞くと、ラグナは苦い思い出を語るかのように話し始めた。

 

「武器の名前は…『氷剣・ユキアネサ』だ」

「ユキアネサ…なるほど、大体見えてきたぞ。杏の精霊、雪女郎か」

「ああ。同じ名前なら使われている可能性が高いと思ってな。もしあっちと同じなら、アンズは訳が分からないまま俺を攻撃し始めるかもしれねえから話がしたかった。黒き獣の名前が出る度にビクついてたしな」

 

見破られたことに動揺する杏を球子が手で庇う。

 

「…おい、ラグナ。もしあんずに手を出すようならお前でも容赦しないからな」

「そんなんじゃねえよ。ただ、もしアンズが何かの拍子で俺を攻撃しても自分を責める必要はねえって言いてえんだ」

 

その言葉の意図を杏は掴めなかった。確かに自分は黒き獣のことを怖いと思っている。しかし、だからと言ってラグナを攻撃したいというわけではない。寧ろ自分が攻撃してしまったらきっと自分を責めてしまうのだろう。しかしその後、ラグナは強く言った。

 

「今、蒼の魔道書…黒き獣は『俺の一部』だ。だから俺が黒き獣と認識されても文句は言えねえ。だがそれを全部含めて、俺はラグナ=ザ=ブラッドエッジだ。絶対に自分を見失わねえし、黒き獣『そのもの』にはならねえ。それにもし暴走して俺を攻撃しちまったら、逆に俺が助けてやる。安心しろ」

 

そう言ってラグナが笑うと、杏が自分の意志を示してきた。

 

「…ありがとうございます。実際のところはまだ黒き獣のことが怖いですけど…私も頑張ってみます。ラグナさんを…友達を傷つけるのは、嫌ですから。だから…もしその時が来たら、必ず私を助けてくださいね」

「ああ、俺に任せろ」

「違うぞ、ラグナ。タマ『たち』に、だ!」

「そうだったな…最後の最後でアンズを守ってきたのは、テメェだったもんな。その時は頼りにしてるぜ、タマコ」

「あんずはタマの大事な後輩だからな!タマに任せタマえってんだ!」

「ありがとう、タマっち先輩!!」

「…ま、これで一件落着ってことかにゃ?」

「でも私は二人が仲直り出来て良かったよ~」

 

頼りになる先輩に後押しされて、杏の顔も明るくなり、周りも安堵する。一度落ち着きが戻るとラグナは元の話題を言及した。

 

「よし…話を戻すぞ。それでアンズ。勇者が精霊を身に着ける方法とアークエネミーとで何が変わるんだ?どっちも精霊が身体に入るだけでも危険だから結局同じようなモンだろ?」

「確かにそうですが…それでも神樹様とアクセスするよりはかなり安全だと思います。皆さん、伊勢にあった窯のことは覚えていますよね?」

 

それを聞いて全員は頷く。特にラグナは窯とは何かと因縁があるのだから忘れようにも出来ない。そしてそれを指摘されて、彼は嫌な予感がした。

 

「…まさか、アンズ…テメェはこう言いてえのか!?『神樹』は『境界』と同じだって…!!」

『えッ!!?』

 

その指摘を聞いてその場の全員は驚きを隠せないでいたが、杏は真剣な眼差しでそれを肯定した。

 

「…半分は、そう捉えてもらっても構いません」

「なんですって!!?」

「…クソが!!」

 

レイチェルは珍しく声を上げ、ラグナも壁に拳を叩きつける。訳が分かっていない他の勇者たちを余所に杏は俯いたまま自分の考えを解説し始めた。

 

「神樹様には地上のあらゆるものの『情報』を蓄積させた『概念的記録』があります。私たちが切り札を使うとき、私たちは神樹様との霊的なつながりを頼りにそれとアクセスし、力を抽出することで、漸くそれを肉体に顕現させることが出来るんです」

「ちょっと待てよ、その概念的何とかってのは前にも聞いたことあるぞ!アレって精霊のことだけじゃなかったのかよ!?」

「…ひなた、それは本当なの?」

「はい…それがありますから…私たちは神樹様の恵みによって、不自由なくこの狭い四国で生きることが出来るんです。そうでなかったら…きっと四国は今よりも混乱に満ちていたと思います。食べ物は不足し、インフラも供給が間に合わなかったはずです…」

「確かにその通りね」

 

レイチェルがひなたの言葉に同意した後に杏は話を続けた。

 

「レイチェルちゃん。境界というのは、あらゆるものと繋がる根源…なんだよね?それについて、もう少し詳しく説明してくれないかな」

 

レイチェルも少し苦い顔をしていたが、やがて口を開いた。

 

「…境界とは人々の記憶が還る座にして、全ての平行次元に繋がる根源よ。そこには以前ラグナが説明した、世界を構成する因子である魔素に満ちているわ。そして境界に触れると、その中にある膨大な情報量に飲まれて自分を見失う…つまり自己の存在を認識できなくなり、自我や肉体が崩壊するわ」

「そんなに危険な場所だったんだ…」

 

友奈が思わずそう漏らした後、若葉が話に入ってきた。

 

「待て、杏。境界のある窯に近づいたのはあの伊勢での一回だけだろう?我々が精霊を呼び出す時とは全然違うではないか」

「恐らく私たちの場合、切り札を使用するときは意識…いえ、魂が神樹様と『接続』することになるんです。その時に生じた繋がりを通って、精霊の力を構成する情報が肉体へと取り込まれます。そしてその時の私たちの魂はいうなれば、境界の中に半分浸かったような状態になるんだと思います。そしてその時に繋がりを通って私たちの身体に『良くないもの』が侵入し、溜まっていくんです…」

「良くないもの…ってどういうものなんですか、杏さん?」

「古来から『瘴気』や『穢れ』と呼ばれてきたものです。これが溜まると、精神が不安定になり、危険行動に走りやすくなってしまう。そう言う意味では窯の境界に触れた時と同じことが起こるんだと思います」

 

その回答に対して水都は不安を感じる。元々感受性の強い彼女にはそういったものに敏感である。初めの頃にラグナの右腕に対して警戒したのもそれが原因だ。それを聞いて、友奈の顔に不安が出る。

 

「ちょ、ちょっと待って!!それじゃあ…ぐんちゃんにも…!?」

「…思った以上に事は重大だったみたいね」

「わ、私!!ぐんちゃんと連絡を取らないと!!」

「友奈、私の端末を使え!!」

「ありがとう、若葉ちゃん!」

「私は大社に連絡してみます!」

 

友奈とひなたが急いで電話を掛けるために一度話の輪から離れると、杏の話を聞いたラグナは神樹に対して憤慨する。穢れといったものは少し自分にとって分かりにくいが、似たような現象は知っている。

 

「クソッ…それって要は『魔素中毒』みてえなモンじゃねえか!!しかも境界に半分浸かるだぁ!?ンなことしてたら境界に魂を持ってかれちまうじゃねえか!?」

「ラグナ。心配しているのは分かるけれど、頭を冷やしなさい。今興奮しても何も解決しないわよ」

「…悪ぃ」

 

そう言われてラグナは一度深呼吸している間にレイチェルは得た情報から自身の仮説を立てた。

 

「でもこれで分かったわ。魂が弱体化していけばその分を補おうと器に収まる精霊の比率が上がっていくわ。ただそれは有害なものだから肉体には体調不良や最悪の場合、肉体の損傷を引き起こし、精神面では魂の器に穢れがどんどん溜まっていくのよ」

「…だからこそ、ラグナさんの時代の武器は本当に凄いんです。その方法だったら、肉体への負担を今以上に軽減させて、しかも精神汚染を私たちの時よりも抑えることが可能なんですよ」

「何だと?どういうことだよ?」

 

意味が分かっていないラグナに杏は説明した。

 

「恐らくですが…その科学者は精霊そのものをあらかじめ素材、もしくは何らかの(コア)に収めることで常に精霊の力が使える状態にしているんです。オーバードライブも私たちと同じように、一時的にコアと魂の間で繋がりを作ることで精霊が憑依出来るようになり、彼の使う術式という兵装が強化されるんだと思います」

「だがそれだとやっぱり穢れが溜まるんじゃねえのか?」

「はい。ですがこれならば神樹様と接続する必要がありませんので、少なくとも魂が引き寄せられて弱体化することはありません。膨大な概念的記録と比べれば一体の精霊が持つ情報量は少なく、これによって肉体に溜まる瘴気の量も同じように少なくなるんです。しかも接続するコアもすぐ傍にあるので、接続が完了するのも私たちよりも速く、力の抽出も迅速です。だから総合的に評価すると戦力的にも戦略的にも非常に利の適った兵装なんですよ」

「…マジかよ…いや、マジかよ…」

「とんでもない発明ね…」

 

その話を聞いて、ラグナは改めて九江の天才性に驚かされた。それはつまり彼女は色々な協力や調べもあっただろうが、たった一代で西暦勇者たちの切り札の欠点を殆ど改善、しかも実戦に投入できるレベルの兵装を作ってのけたのだ。

 

しかし同時にそれに気づいた杏の頭脳にも驚愕した。自分は悪いところしか殆ど挙げてないはずなのに、アークエネミーの特徴やその利点まできっちり言ってのけたのだ。

 

実はこの娘、元の世界のココノエやナイン、トリニティとも話が合うのではと思ったものだ。しかしもう一人、心配事のある者がいた。

 

「それなら杏。ひなたたち、巫女の身に危険はないのか?神託も、それと同じようなものだろう?」

「どういうことだよ、ワカバ?」

 

ラグナの疑問には雪花が答えた。

 

「ラグナ。巫女の皆とか棗さんもそうだけど、私たちって神様の声を聞くことが出来るのは知っているわよね?」

 

それは以前、雪花自身から聞いたことがある。そう言ったら雪花は説明し始めた。

 

「私たちはさ。実際に声を聞いている訳じゃないんだよ。あの時は、映像というか…とにかく情報を一方的に投げかけられるんだ。まあ、私や棗さんの場合は山や海の神様が精霊を介して直接交信してくることもあるけど」

「そうだな。私の人生の殆どは沖縄の海と共にあり、海は今の私を形作っている大事な一部分だ。だから海の声も理解できる」

 

それを考えると沙耶の場合は雪花や棗のスタイルを憑依で行ったケースなのか。そう納得したラグナは通常の神託について聞き始めた。

 

「…じゃあ神託ってのは一方的に情報を受信してるだけってわけか」

「そうですね…私たちの場合はそうなります」

「…そういえば以前みーちゃんたちが神託を受けた時に倒れそうになったりしたわね。それで巫女は不安定になったりはしないの?」

「確かに神託を受け取った瞬間は気分が優れなくなったするけど、精神に異常が生じたりといったことは聞いたことないよ」

 

それを聞いてレイチェルは自分なりに考えをまとめる。

 

「神樹が自分から与えた情報というのもあるでしょうけど、それでも殆ど汚染が無いのね。でもこれで巫女がどうして平気なのかが理解したわ」

「本当か?何故だ?」

「恐らく巫女の肉体は普通の人間、ひいては勇者よりも神樹の力に対して丈夫でそれを受け入れる器が広いのよ。だから神樹からの神託を受けても、殆ど影響を受けないの」

「…うちの妹も巫女だが、ガキの頃から病弱だったぞ。アイツの場合は何が起こっていたんだ?滅茶苦茶精霊を呼び寄せることが出来たんだけどよ」

「力ではなくて?」

「アイツが喚んだ精霊は全員、意思っていうか魂があった。だから俺はこっちでも同じだと思っていたんだが…」

「そうなるとその娘には神樹や精霊の力を増長させる力も持っていたようね。それこそ元の器の容量を上回るほどに。けれどそれによって精霊そのものが現世に留まることが出来るようになり、貴方の良く知る精霊の形となったのでしょう」

 

ラグナに沙耶の体質に関する考えをレイチェルが説明すると話を戻した。

 

「その中で特にひなたはそれと同時に以前の貴方の腕を…黒き獣の躯である蒼の魔道書を封じ込むことが出来る秩序の力を持っているわ。そのおかげで他の巫女とは違って神樹から鮮明な神託を受けても自分に瘴気に当てられることがないのよ」

「要は安心して重大な神託を授けられるということか。そういや、秩序の力の源は何物にも揺るがない絶対的な意思だよな…」

「大方若葉への想いだったりしてね」

「…とにかくひなたに問題がないことは分かった。だがそれなら何故そうでない私たちはまだ完全に崩壊していないんだ?それだけ危険なら、そうなってもおかしくないのでは?」

 

その若葉の疑問を聞いて歌野は立ち上がった。

 

「これは私の勝手な考えだけど、皆聞いてくれないかしら?」

「ああ、良いぞ」

「さっき言った魂とか器とか認識とかはよく分からないけど、私が自分だって証明するものはあるわ」

「それは何なの、歌野?」

 

雪花がそう聞くと、歌野は自信満々にそう言った。

 

「私が耕した畑、そこで育てた野菜、それに蕎麦!!そして何よりもみーちゃんの存在が私、白鳥歌野に自分がいずれ農業王になる女だって証明してくれるのよ!!!」

「ちょ、うたのん!?」

「みーちゃんが…私の親友が私の傍にいて、私を観測()ていてくれている限り、私は農業王ハイパーにパワーアップするの!!どんな敵が来ようと、絶対に負けないわ!!!」

「うぅ…恥ずかしい…けど、すごく嬉しいよ。私にとっても、うたのんは世界で一番…大事な友達だから!!」

 

二人のやり取りを見てラグナはポカンとしていたが、レイチェルは何かに気付いたようだった。

 

「なるほどね…」

「何一人で納得したみてえな顔してんだよ、ウサギ」

「歌野…いいえ、皆が精霊を使っても自身を見失っていないのは、互いの存在を強く観測しているからよ。例え境界に近づくことになっても自分を引き留める、観測による確かな繋がり。それを時として人は…『絆』と呼ぶわ」

「それで…境界の影響を受けなくなるのか?」

「受けなくなるというわけではないけれど、何もしないよりかは効果が大きいわ。自分の存在を確固たるものにするのは、何も自己の認識だけではないわ。他者もまた、その人の魂を形作るのにとても重要なファクターなの。その人をその人として認識する者がいれば、観測対象は自身の存在を保つことが出来るのよ」

 

レイチェルの言葉にラグナも思い当たる節があった。あっちでは主にテルミ、レイチェル、ノエル、ジン、セリカ。こっちではそれに加えて勇者部やこの時代の仲間たち。他にも多くの人々。確かにそれらは自分に色んな所で影響を与えたのだと自覚している。

 

「…そうだな。テメェの言う通りだ」

「まあそれでも対策としてはまだ物足りないわね。他に何かないかしら?」

「…『蒼の魔道書を自分の力だと思うな』」

 

ぼそりとそう呟いたラグナの言葉に杏は反応する。

 

「それはどういう意味なんですか?」

「修行してた頃、俺の師匠が口を酸っぱくして言っていた言葉だ。もしかしたら…何かのヒントになるかもしれねえ…」

「なるほど…自分の力だと思うな、ですか…」

 

それを聞いて杏も考え込む。しかしその答えを導き出す前に友奈が珍しく顔面蒼白になりながら皆の輪に入ってきた。包帯に包まれながらも携帯端末を握っている両手は震えていた。

 

「どうしよう…皆…ぐんちゃんが…ぐんちゃんが『あの村』に行ったんだって!!!」

『何だって!!?』

「何回もぐんちゃんの携帯に電話掛けたんだけど繋がらなくて!!私、どうすれば良いのか分からなくて!!」

 

何人かは話についていけなかったが、丸亀組とラグナ、レイチェルはそれを聞いてどこなのかを理解した。以前彼女は自分の出身地について話したことがある。そこではかなり酷い扱いを受けていたらしい。

 

当然そんな場所へ自分から進んで行くとラグナたちは思えなかった。ひなたが友奈を優しく抱きしめて宥めようとする。

 

「一旦落ち着きましょう友奈さん。説明は私がしますから」

「うん…ありがとう、ヒナちゃん…」

「おいヒナタ!何が起こってんだ!?」

「大社によりますと、千景さんはどうやら大社の方々と高地にある実家へと向かったそうです。何でもこちらへ家族を移住させて、千景さんと暮らすためだそうですが…」

「何故だ!!?あの話を聞けば千景にとって家族と暮らすことに何も良いことがないのは分かるだろう!!?」

「千景さんはここ最近、心が不安定になっていたことが発覚したようです。そこで大社は少しでも彼女の精神を安定させるのに、家族という居場所を与えたかったようなんです」

「ぐんちゃん…そんなに追い詰められてたなんて…」

 

もっと自分が側にいてやれればと友奈が思い悩んでいると、ひなたが悲しそうに千景の近辺での情報を話した。

 

「…そして最近になって、彼女の母親は天空恐怖症候群のステージ4になろうとしているという報告もあります」

「…黒き獣の影響だな」

「恐らくはそうかと。ですが千景さんの地元にはそれに対応できる施設がない以上、専用の病院のある丸亀市へ移住するしかありません。それに千景さんが断れば私たちの内の誰かが行かなければならないことになったでしょうし…」

「それで私たちを行かせないために自分が行った…ということか」

 

ひなたから聞いた大社の話は決して間違っているわけではない。子供が家族と過ごすことは何もおかしいことじゃない。確かに子どもにとって家庭とは心の拠り所と成り得るものだ。

 

しかし、千景の場合は違っていた。今の彼女にとってそれは友奈の存在だ。不安な状況における最大の心の支えだ。レリウスの時も、黒き獣の時も、ラグナが危険かもしれないと分かったときも、彼女はいつだって友奈を守ろうとした。今の郡千景にとっての居場所とは、高嶋友奈の傍らだ。

 

なのに千景はここ数日、一切友奈とは会っていない。レイチェルと会って少し心が安らいだようだが、まだ根本的な問題は解決していない。

 

もしそんな状態で自分の力しか観測()ず、自分自身を観測()ない人間がたくさんいる村へ行ったらどうなるのか。自分の存在をこの前まで認めなかった親がいる場所で過ごすようになったら。孤独になるような場所にいれば。

 

 

 

 

ー  貴方が悪いのよ -

ー 兄さんが悪いんだよ ー

 

 

 

 

その時、ラグナの背筋に嫌な悪寒が走った。聞こえてきた幻聴には千景以外にもう一人、聴き慣れた声が重なって聞こえた。明らかに違う声なのに、声の主の見た目も違うのに、その言葉に込められた殺意(想い)はとても良く似ていた。

 

もっと気を付けていれば。あの時、レイチェルの制止を振り切ってでも会っていればこうならなかったのだろうか。そう後悔しかけたが、急いで意識を無理やり変えた。ここでそんなことをしても事態は何も好転しない。

 

「…レイチェル、アイツの村へ転移出来るか?」

「ひなた、場所は?写真だと一番助かるわ」

「はい!ここです!」

 

ひなたは至急一度だけ千景を迎えに行ったときに取った写真を見せた。稲田が多く映っていて、如何にも田舎だといわんばかりの光景だった。その中で大きな建物があった。この村の小学校のようだ。

 

「…分かったわ。とにかくここへ飛ぶわよ」

「ああ!!」

「待て!!タマも行くぞ!!」

 

球子に引き続いて他の勇者たちも行こうとするが、レイチェルがそれを制止した。

 

「皆、よく聞いて頂戴。あの娘が態々黙って行ったのは、恐らく自分の村の人々を皆に知られたくなかったからだと思うの。出来ることなら、ここにいて欲しいわ」

「だけどさ!!」

「…それと、最悪の場合も想定しないといけないかもしれないわ」

「さ、最悪の事態って…」

「……あそこは千景にとって忌まわしい場所なのよ。それにラグナ、覚えていないかしら。貴方と喧嘩するきっかけとなった彼女の話」

 

ラグナは思い返す。確か勇者が無価値だのなんだのと罵られていると言っていたが。

 

「…あの後、調べてみたら聞くに堪えないつまらないものばかりだったけれど、確かにそう言った意見を散見することが出来たわ」

「…じゃあ今、こいつらを連れて行くのは危険だな」

「本当は貴方も言われているから、貴方も危険だけどね」

「心配すんな。嫌われるのには慣れてる」

「そう…でも彼女の村はかなり危険だわ。前まで彼女を蔑んでいた村よ。一度勇者として称賛したとしても、今の彼女を見たら、同じことを繰り返すかもしれないわ。その状況で千景に精霊の悪影響が出たら…」

「最悪、村人を攻撃してしまうかもしれねえってことか…」

 

それを聞いて友奈はレイチェルに縋りついた。

 

「レイチェルちゃん、お願い!!!ぐんちゃんの、私をぐんちゃんのところへ連れて行って!!!早く!!!」

「ま、待ちなさい友奈!貴女の腕はまだ治ってないのよ!」

「そうだぞ、友奈!もしそれでお前に何かがあったら!」

「でも!!このままだとぐんちゃんが!!ぐんちゃんが人を傷つけちゃう!!」

 

涙を流しながら自分を連れて行って欲しいと懇願する友奈を見て、ラグナはかつての結城友奈を思い出す。彼女もまた、友を助けてやれなかったことに深い悲しみを味わった。

 

高嶋友奈は基本的に自分の意見を強く主張したりはしない。そうしたら諍いを起こしてしまうからだ。気まずい空気や悲しい雰囲気が苦手だから、例え自分が不安でも明るく振る舞おうとする。

 

その彼女がボロボロの身体を押し、他の人間の意見を跳ね除けてまで千景を助けに行こうとしている。郡千景にとって彼女が大事であるように、友奈にとっても千景は掛け替えの無い存在なのだ。

 

若葉の部屋の騒ぎを聞きつけてか、病室のドアの前が騒がしくなる。これでは友奈がここにいるのがバレるのは時間の問題だ。

 

「…ユーナも連れて行くぞ、ウサギ」

「…本気なの?」

「あのユーナがここまで言ってんだ。それにテメェもさっき言っただろ?他の奴との絆が魂を固定させてくれているってな。確かにそういうことは前にもあったし、こいつらのには賭ける価値がある」

 

友奈や沙耶のことを思い出しながらそうラグナは語るが、少し心配そうにレイチェルが懸念を話した。

 

「…もし、今の彼女が村人たちに攻撃されたら?」

「そうなったら俺はユーナとチカゲを守るし、テメェもそんなことさせるとは思えねえが?」

「お願いレイチェルちゃん…絶対迷惑を掛けないから…」

 

ラグナと友奈の言葉を聞いて、レイチェルも溜息を吐きながらも承諾した。

 

「…そこまで言われたら行くしか無さそうね。良いわ、万が一のことがあったら友奈のことは私が責任を持って守る。だから千景のことは…貴方に任せるわ、ラグナ」

「任せとけ。ユーナ、あっちに着いたらウサギから離れんじゃねえぞ」

「分かった…ありがとう、二人とも。絶対にぐんちゃんを助けようね!!」

「ああ。そのために行くんだからな!」

 

三人が行くことが決まると同時に若葉の病室のドアから叩かれる音が聞こえてきた。しかも友奈の名前まで呼んでいる。

 

《高嶋さん!ここにいらっしゃいますよね!早く御自分の病室へお戻り下さい!》

「不味いぞ!看護師に気付かれた!」

「ウサギ!!」

「二人とも、私から離れないで。飛ぶわよ」

 

ラグナはレイチェルの側へと近づき、友奈の車椅子の後ろの取手を取る。周りは巻き込まれないために三人から離れていく。

 

「ラグナ、友奈、レイチェル!千景のことを頼んだぞ!」

「おう!!」「うん!!」「ええ」

 

若葉の言葉に返事すると同時に三人は薔薇の花弁と香りを残して高知へと飛び立った。その後、看護師たちはマスターキーを使って突入したが、勇者たちは知らん振りを決め込んだ。




実際、原作のわゆの瘴気や精霊って魔素に似てるなって思った自分がいる。まあそんなことになったら、最後がアラクネになるか、ユキアネサ病になるかと洒落にならないけど。精霊の使い方もライチの戦い方と凄く似てるし。

と思ったらきらめき四話をやって衝撃。なんとレンちが精霊の力を使ったライトセイ〇ー(精霊刀)が使っていた。どういうことなんだ。

それでは次回、いざぐんちゃんの村へ…そこでラグナたちが見たものは…それではまた。

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