蒼の男は死神である   作:勝石

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どうもお久しぶりです、勝石です。

気づけば後一月でこのssも書いてから一年経とうとしています。時間の流れは早いですね。あの頃よりかは面白いものは書けているのでしょうか…

さて、今回の話は特撮ネタ、パロディの嵐、ギャグ全開やりたい放題の超カオスホワイトデー回。かーなーり長いですが、お楽しみください。それではどうぞ。


花結いの確率事象13.ホワイトデーにヒーロー

「ハァ…去年と違って、今年は何もなくて平和ねぇ…」

 

その日の昼、部室で勇者や巫女たちはのんびりしていた。しかしだからといってガードを完全に緩んでいる訳ではない。

 

「園子さんたちが何もしないというのも落ち着かないけどね…」

「部室にもいないな。今頃何をしてんだろ?」

「また何か企んでいなければ良いのだけれど…」

 

樹の懸念に園子と長年の付き合いである中銀や東郷も同意を示さざるを得なかった。最近園子は授業が終わった後にすぐどこかへ出かけて行く。いや、彼女だけではない。他にもいなくなる者たちがいる。

 

「そういえば最近はラグナ君も刃君も学校が終わるととすぐにいなくなるね?」

「確かに少佐も最近変よね。私も最初は訓練だと思ってたけど、訓練場にはいないし。まさか園子ズの企みに巻き込まれているなんてことは…」

「うーん、まぁ大丈夫じゃない?あの二人でしょ?そう簡単に厄介なことに…いや、巻き込まれそうね。特にラグナは」

「そういや九重さんも研究所の方で変な高笑いをあげながら夜中まで作業してたような…」

「それ本当に大丈夫なのかしら…」

 

心配する部員を元気付けようとした風だが、大小問わずトラブルを起こしたり、巻き込まれたりする連中ばかりでフォローする言葉を見つけることが出来なかった。それでも結城が明るく言った。

 

「でもこれまでも色んなことを乗り越えてきた二人だからきっと大丈夫ですよ、風先輩!」

「…そうですね。友奈さんの言う通りです」

「それでは、ここは一つ。気持ちを切り替えるのにぼた餅はいかがでしょうか?」

「お、ナイス須美!んじゃあ早速一つも〜らいっと」

 

中銀がぼた餅の入った箱へ手を伸ばすとどこからかカードのような物が飛んできて、少女たちの前で突き刺さった。

 

「うわっ、何これ!?」

「クセモノじゃ〜!クセモノの仕業じゃ〜!!」

「いえ違います!これは…手紙…でしょうか?」

 

東郷がカードを手に取るとそれに書いてあった内容を読み上げた。

 

《そのっちとアッキーは確かにいただいた。返して欲しくば屋上まで来い。園子(中)》

 

やはりかと風たちは溜息を吐いていた。知ってはいたが、やはり今年も園子は何らかの騒ぎを引き起こしたようだ。

 

「平和に終わることなんて…なかったわね…」

「またしても混沌が引き起こされてしまうのか…」

「おのれ乃木ィィィィィィ!!」

「でも行かないわけにもいかないし、他の皆に集合を掛けてから行きましょ!」

「今年も『ダークネス園子』と遊べるのかな?」

「そうとも言えるわね…でも何故今回は私と友奈ちゃんを呼ばなかったのかしら?」

 

仲間たちを召集した後、少女たちは学校の屋上まで駆け上がる。そこでは勇者服を着た中園子がいた。

 

「来たわよ乃木!!またこんな騒ぎを起こしちゃって、どういうつもり!」

「フッハッハッハッハー!!まんまと来たな、勇者の諸君!!飛んで火に入る夏の…春の虫だッ!!」

「また言い直してますね…」

「やっぱりまた現れたか、ダークネス園子!!」

「ダークネス園子とは誰の事かな~?今のワシはダーク園子アスタロトなのだーー!!」

 

中銀の言う通り、そこでは勇者服に着替えた中園子がいた。彼女に向かって須美が呼びかけた。

 

「園子さん!そのっちと雪花さんはどこですか!?」

「あの二人ならここだ〜!」

 

そう言って陰から小園子と雪花が出てきた。二人の後ろにはバレットが付いて来ていた。

 

「なんか囚われてる!!?」

「てちょっと!?何で丸菜さんまでいるんですか!!?」

「イーー!!」

「『今はダークネス怪人、ブラックバレットだ!』、と言っているのだ~!!」

「ダークネス怪人って何!?というかどうして言ってることが分かるんだ!?」

「うわー助けてー」

「わっし~、ミノさ~ん、私捕まっちゃった~」

「しかも捕虜二人がなんかすごいお気楽な感じ!!」

 

若干棒読みな感じで助けを求める二人に戸惑う銀たちだが、若葉は構わず中園子に向かって声高く叫んだ。

 

「おい園子!今すぐに二人を解放しろ!」

「フッフッフッ…そう簡単に渡すわけには行かない。そこまでにして二人を取り戻したくば、掛かってこーい!!」

「イーーー!!」

「クッ、卑怯だぞ!!」

「フハハハハ!!卑怯もラッキョウもあるものか~!!!」

 

若葉が苦い顔をしていると、バレットが小園子と雪花を自分の方へ抱き寄せた。若干力が強いこともあって二人の顔は彼女の大きなでっぱりに押し潰されそうになっていた。

 

「ほらほら~。早くしないと~、人質が窒息してしまうぞ~!」

「何だとーーー!!!早く二人を開放しろーー!!!というか二人ともタマが代わりに人質になってやるから交代しろーー!!!うん、すぐにお願いします!!!」

「タマっち先輩、完全に別の目的で交代しようとしてるよね?」

「いーや、そんなことはない!!決してあのキリマンジャロを登頂したいわけではなーい!!!」

「球子、漏れてる!!心の声が漏れちゃってる!!」

 

欲望に負けそうな球子はさておき、このままでは埒が明かないのは本当だ。

 

『待て!!』

 

そんな時、声が聞こえた。いつも頼りになる二人の声だ。

 

「あ、ラグナ君たちだ!」

「もう、アンタたち遅いわよ!」

「済まねぇ、少し遅れちまった!」

「後のことは任せておけ!」

「あら?何だかいつもとは雰囲気が違うような?」

 

どこかヒロイックな感じで返事するラグナたちに少し違和感を覚えた東郷たちだが、五人の戦士が構わず中園子と対峙する。

 

「ダークネス園子アスタロト!!テメェの悪事を見逃すわけには行かねぇ!!覚悟しな!!」

「フーッハッハッハーッ!!!果たしてお前たちにワシを止めることが出来るかな~?」

「やってみなきゃ分かんねぇだろうが!!テメェらやるぞ!!」

『おう!!!』

 

そう言ってラグナたちは何故か両腕を組んで構える。よく見ると右腕には小さな装置が装備されていた。

 

『スサノオマスク、オン!!!』

 

掛け声とともに装置のボタンを押すと五人は全身から眩しい光が放つ。光が収まるとそこにいたのは少女たちが良く知る彼らの姿はなかった。寧ろその姿は別の人物を連想させるものだった。

 

「は、ハクメンさんが…いっぱいいます!!」

「ど、どういうことなんだ!!?」

 

それぞれ違う色をした五人のハクメンが少女たちの前で立っていた。そのまま名乗りをあげる。

 

「レッドハクメン、ラグナ=ザ=ブラッドエッジ又は綾月洛奈!!!」

「ブルーハクメン、『琥珀(こはく)(ひびき)』」

「ピンクハクメン、綾月九重ー」

「シルバーハクメン、如月刃!!!」

「ブラックハクメン、睦月神楽!!!」

(てん)をも断つ鋼の刃、悪滅戦隊、ハクメンジャー!!!推して参る!!!』

 

台詞と同時に決めポーズを取る五人の侍。何がどうなっているのかが分からずに少女たちは困惑する。中園子はその姿を見るや否や狼狽え始めた。

 

「ブァカなぁ~…悪滅戦隊ハクメンジャーだとぅ~…!?」

「いや、ハクメンジャーって何なのさ!!?」

「ブラックハクメンなんてもう黒いのだか白いのだかどっちなのかが分からないわ…」

「そこじゃないよメブー!?突っ込むとこが全然違うよ~!?」

「テメェの企みもここまでだぜ、ダークネス園子アスタロト!!!」

「無視なの!!?」

「やれるものならやってみろ~!!行くぞブラックバレットよ!!」

「イーーー!!!」

「怪人、あっさり人質を離した…」

「いや誰か状況を説明しなさーーーーい!!!」

 

他の少女たちが混乱する中、ダークネス園子たちとハクメンジャーの激突が始まった。実はこの一連の流れは全て中園子のシナリオ通りの展開である。

 

何故こんなことになったのか。それはホワイトデー当日から数日前までに遡る。あれは勇者部の男性陣は部室に集められたときの出来事で、今よりも少し寒い日だった。

 

「テメェらもソノコに呼ばれたのかよ…」

「仕方がないよ…下らない茶番とはいえ、これから来る日の準備が出来ていないのは本当だ」

「乃木家の御令嬢の呼び出しとなりゃあ、断るわけにも行かねぇだろ?」

「テメェはブレねぇな、たく」

 

部室に集まった二人は如何にも嫌そうな顔を浮かべているのに対して、神楽は特に問題なさそうにしていた。無類の女好きであると同時に神楽は二人よりも年上であるためか、余裕そうだった。

 

「神楽、貴様は分かっているのか?奴のことだ、またとんでもない無茶振りをさせられるに決まっている」

「しかも今回はお返しの日だろ?アイツら、バレンタインの時は俺の騒動でイベント自体が有耶無耶になっちまった分、消化不良のままみてぇだ」

「お前ら大袈裟だなぁ。可愛い子ちゃんの無茶振りぐらい、答えなくてどうすんだよ?」

「その貴様の言う可愛い子ちゃんが問題なんだ」

 

先月の飯(による)テロ騒動があったためにその日に取ったメモを全てお蔵入りにしたが、今度こそネタを拾うためにまた何やら暗躍しているようだ。ラグナと刃は園子の日頃の行いをよく知っているが故に不安を覚えていたのだ。

 

「ジンの言う通りだ。あのソノコの呼び出しが穏やかに終わるとは考えられねぇ。なんか一波乱の一つが起こるはずだ」

 

ラグナの心配と同時に突如ガラッと扉が開く。待ってましたとばかりのドヤ顔と決めポーズで二人の園子が入ってきた。

 

「流石だよラッくん!!もう察しが付いているようだね!!トゥッ!!」

「今回も悩める仔羊たちのために皆があっと驚く企画を考えてきたんよ〜!!トゥッ!!」

 

悩める仔羊たちとは自分たちのことなのだろう。だがそれを聞いてこれから自分たちは安心するどころか更に頭を悩ませることを確信した。

 

「やっぱ面倒事か…言っとくが、アイツらのバレンタインみてぇに二人にしか渡さねぇなんてことはするつもりねぇからな」

「そんなことやらないよ〜。なんて言ったって今回はお返しだからね〜」

「皆さんはまだホワイトデーのお返しの予定を決めてないんですよね〜」

「いや、そんなことねぇけど」

『あれれ〜?』

 

ラグナは元より女子たちに慣れないながらも自作のクッキーを送る予定である。刃も市販のクッキーを送る予定だが、椿姫には少し大きめの飴を送る予定だ。

 

「因みにムッキーは〜?」

「そりゃあ全員に飴玉に決まってんだろ。けどできるならもう少し特別なことをしてやりてぇんだよなー」

「お、おいカグラ!こいつらにそれは!」

 

神楽を止めようとラグナは急いで声を掛けるが、既に手遅れだった。彼の言葉に園子も反応した。

 

「そうなんだね〜。具体的には〜?」

「こう、アイツらにサプライズをしてやりたいんだわ。俺は世辞にも菓子作りは得意じゃねぇが、日頃から頑張っているアイツらにも楽しんで欲しいからな」

「それなら私たちにいい考えがあるんよ〜」

「…一応聞いてはやるが、一体何をするつもりだ」

 

絶対破茶滅茶なことなのは確定しているが、友人として一度聞いた。その言葉を待ってましたと言わんばかりに園子ズの目が輝く。

 

「ヒーロー!!それはいつの時代も子どもたちの憧れ!!その輝きに魅せられた者に少年も少女も関係な~い!!」

「ヒーローならテメェらはもうそんな感じのモンだろ?」

「違う違う〜。普段は皆を守るために戦う勇者たち。だがしかーし!!それと同時に皆か弱い女の子!!男の子に守られたり、助けられたりする願望もあるのです〜!!」

「親友と別の部屋になっただけで敵の一群を単騎で制圧する女を果たしてか弱いと呼ぶだろうか」

「それ、一緒になって暴れ回ったテメェが言えた台詞じゃねぇからな」

 

何時ぞやの林間学校での東郷と刃を思い返したラグナが突っ込んでいると、園子は話を続けた。

 

「だから、今回はホワイトデー企画『心の中にいつもヒーローを』を開催しようと思うのです〜!!」

「…ごめん。意味が分からねぇ」

「つまり!今回のホワイトデーで男の子の皆にはヒーローに変身してもらうんよ〜!!」

 

それを聞いた瞬間、ラグナと刃は急いで部屋から脱出しようとドアの方へ一目散に駆ける。それを見て園子はすぐに神楽に合図を送った。

 

「追っかけてムッキー!!」

「あいよ!!」

『ぬあーーー!!?』

 

その時、不思議な事が起こった。神楽が口笛を吹くと突如天井から何者かが降りてきて二人を上から押さえつけたのである。

 

「おう、悪ぃな『(ひびき)』。助かったぜ」

「悪いと思っているのでしたら仕事に戻って下さい、神楽様」

「貴様…『琥珀(こはく)大尉』…か…」

 

犯人の正体は『琥珀(こはく)(ひびき)』。物静かなおかっぱ頭の少年で神楽の秘書官である。今回も仕事を抜け出した神楽を連れ戻すため、遥々讃州中学に来たのだ。

 

「ご無沙汰しています、如月少佐。神楽様がいつもお世話になっています」

「おーい、響ー?その言い方だとまるで俺が世話されているように感じんだけど?」

「事実なので問題ありません」

「俺、悲しいわけじゃねぇのに涙が出てきそうだぜ…」

 

流石にロボットになることはなかったが、頼りになるカミソリ副官の厳しい言葉に神楽は一人男泣きした。園子たちは逃げ出そうとした兄弟に話しかけてきた。

 

「二人とも〜、まだ何も言ってないのに何で逃げようとするの〜?」

「ふざけんな!絶対スベるに決まってんだろうが!!」

「そんなことないよ〜。前もゆーゆたちがラッくんとナオポンの決めポーズを凄く喜んでたよ〜?」

「確かにそうだったけど他の連中は白けてたじゃねぇか!?」

 

それにお返しのためとはいえ、また三文ヒーローショーをやることにラグナは抵抗を覚えていた。

 

「それは仕方ないよ〜。だってラッくん、あの時は恥ずかし〜って感じながらやってたんだよね〜?」

「当たり前だろうが…こっちはそういうの見たことねぇし…めっちゃ見られたし…」

 

元々SS級犯罪者であるラグナからすれば注目されることに良い思い出はない。突撃して結果的に目立つことはあるが、自分から目立とうなんて経験はないのだ。

 

「でも本気でやれば誰も笑ったりしないよ〜。サッちゃん先輩もレイチェンもラッくん先輩が一生懸命やってくれればきっと喜ぶよ〜?」

「うぐぐ…」

「それに千景先輩も今年、初めて手作りのチョコを作ったんですけど、美味しいものが出来るまでたくさん頑張ったんだと思いますよ〜?」

 

小園子の言う通り、千景は大好きな高嶋と一学年下だが日頃から世話になっているラグナの手作りチョコを作る際に三週間前から風の指導の元で準備していたのだ。

 

「何回不味いものを作ってもたかしー先輩とラッくん先輩に美味しいものを食べさせたーいと思って諦めなかったと思うんです〜」

「しかもラッくんは初めて自分の手作りチョコを受け取った男の子なんよ〜?たかしーとは違う意味で特別な意味が込められてるはずなんよ〜」

「た、確かにアイツ…初めて自分で作ったとかそんなこと言ってたな…」

「なのにラグナ君…私に皆と同じものを渡しただけ…丹念に心を込めて作ったつもりだったけど…やっぱりあのチョコ、ラグナ君には迷惑だっただけなのかな〜…?」

「うッ!?」

 

下手な物真似で落ち込んでいる様子の千景を演じる小園子だったが、これがラグナに効果的面だった。多少台詞の内容に違いはあったが、似たようなことを高嶋か風に相談している彼女の姿がくっきり浮かび上がった。

 

今回のホワイトデーの原則はお返しだ。つまり相手が満足して初めて成り立つ行事なのだ。それに気づいたらラグナはあれだけ頑張って作ったチョコを渡してくれた勇者部員たちに自分の不格好な手作りクッキーを渡すことが恥ずかしくなった。

 

そこへ悩んでいる彼の肩に神楽が手を置いた。

 

「…なあラグナ。お前さん、やっぱ園子嬢たちの提案に乗ってみたらどうだ?」

「…俺にピエロになって来いって言ってんのか、カグラ?」

「まぁ、そんなに怒るなって。そもそもこいつはお前さん自身のための忠告なんだ」

「はぁ?何言ってやがる?」

「だってお前さん、一瞬やる方へ揺らいだろ?」

 

神楽の指摘が当たっていることもあって、ラグナもバツの悪い顔をしてしまう。だがそれは余計神楽に自身の意見が正しかったことを見せてしまう。

 

「だろうな。お前さん、そこんとこは何だかんだ律儀だもんな」

「うるせぇよ、つーか何だかんだゆうな」

「中途半端なモンを出すのはなんか気持ち悪い、けどどうすれば良いのかもわからない。今のお前さんの顔にはそう書いてあるぜ?」

「…そもそも、俺は正義の味方(ヒーロー)なんてガラじゃねぇだろ…」

「分かってねぇな、テメェは」

 

神楽が真剣な顔つきで言った。

 

「これまで色んなことはあったろうが、テメェは誰かのために強くなって、そいつを歯ぁ食いしばって思いっきり守り抜いてきた。何度転ぼうが立ち上がってきたじゃねぇか。そいつが出来ればテメェだってもう立派な英雄(ヒーロー)さ。なに、心配すんなって。そもそも嬢ちゃんたちからすればテメェは初めから『悪』なんかじゃねぇよ」

 

神楽の一言にラグナは黙り込むが、しばらくして決意の籠った眼をしながら言い放った。

 

「…ああ、分かったよ!!良いぜ、そのヒーローとやらになってやろうじゃねぇか!!」

「その言葉を待ってたぜ、ラッくん!!」

「ハハハッ、テメェも素直じゃねぇな。正直になりたいって言っても良いんだぜ?」

「別にそんなんじゃねぇよ。テメェの言ったことにちょっと考えさせられただけだ。それに」

「何だよ?」

「アイツらがそこまで期待してんだったら、そいつを裏切るような真似をするわけには行かねぇだろ」

「良く言った!それでこそ漢ってもんよ!」

 

ぶっきらぼうにそう答えるラグナに神楽は朗らかに笑った。園子たちはというと次に刃を説得していた。

 

「ジンジンもやろうよ~?きっと楽しいよ~?」

「…一応聞くが、僕たちを何の役に当てはめるつもりだ」

「ジンジンだったら戦隊~。ラッくんとも出来るから~」

「何…」

 

兄と出来ると聞いて刃も園子の話に少し耳を傾け始める。漸く話に食いついてきた彼を逃がさないように園子たちも熱心に話す。

 

「ジンジン先輩がラッくん先輩たちと一緒に決めポーズを決めて、その後にカッコよく贈り物をツバッキー先輩にあげれば、きっと忘れられない思い出になると思うんですよ~」

「それは、否定はしないが…そんなことで喜ぶとは思えないな。そもそも椿姫は戦隊シリーズなど見たことがないはずだ」

 

良家のお嬢様である椿姫は残念なことに特撮を家で見ることが出来ないのだ。そのため、特撮の知識は殆どない。

 

「ん~…あ~、そうだ!!ハクメンさんの衣装を元にするのはどうですか~?」

「あの亡霊をだと?そんな奴を何故参考にする?鷲尾たちならばわかるが、何故椿姫がアレを見て喜ぶというんだ?」

「ほら、ツバッキー先輩って時代劇とかも大好きですよね~?もしわっしーたちと同じ感性で、スーツの中身がジンジン先輩だって分かったらきっと喜びますよ~?」

 

それを聞いて刃も苦い顔をする。確かに椿姫はよく自分と時代劇などを鑑賞することが多いから園子の言い分も信憑性があるように感じてしまう。中園子がダメ押しで頼み込んでくる。

 

「お願~いジンジン、ヒーローになって~。他の皆と違って、着ぐるみを実際に着た事があるのはジンジンだけだから一番安心して頼めるのはジンジンだけなんよ~」

「お願いお願~い。ツバッキー先輩たちのためだと思って~」

 

同じ声と顔が二人揃って同じことを頼んでくることに刃は最後まで悩むが、大きなため息を吐くと仕方なさげに言った。

 

「…分かった。一応貴様にも借りがあるからな」

「わーーーい!!ありがとうございます、ジンジン先輩~!!」

「これで計画に一歩前進だよ~!!」

「しかし…またアレをやるのか…パクメンの時もそうだったが、あの恰好は熱いうえに動きにくいったらないんだぞ。それで国防体操をやるのにどれだけ苦戦したのか、貴様らは忘れてはいまい」

 

元々視界がそれほど良くなかったことに加えてパクメンはずんぐりとした体形だった。そのため、国防体操を踊り切るのに何日も練習する必要があった。

 

最終的には大きく動く度に『ズェア』と掛け声をすることがあったのも懐かしい思い出だ。またやりたいとは思わないが。

 

「あの時は学校遅くまで一緒に練習したよね~」

「恐らく僕も貴様も学校を遅くまでいたのはアレが初めてだっただろうな」

「そうだね~。まあでも心配はいらないよ~。戦隊は基本的にスーツとマスクだから着ぐるみよりは動きやすいと思うよ~?」

「その問題が解決されているなら構わん。それと、僕や兄さんを入れても頭数が足りないはずだ。最低でも後三人は必要ではないか?」

「そこでビッキーやムッキーにも頼みたいんだけど~」

 

そう言いながらクルッと問題の二人へ顔を向ける。

 

「勿論俺は参加させてもらうぜ!響、折角だからお前もやれよ!」

「自分はホワイトデーのお返しを既に用意していますので遠慮いたします。何よりそう頻繁にはここへ来れません」

 

神楽はノリノリで賛成したが、響きは丁重に断りを入れた。こればかりは園子でもダメかと思ったラグナだったが、急に神楽が響きに呼びかけた。

 

「頼むよ響。今日から14日まで仕事はこっちでやるからさ」

「馬鹿なことを言っていないで本庁へ戻りますよ。あちらでの仕事は他ならない神楽様にしか出来ませんから」

「そんな細かいこと言うなって。そっちも雀ちゃんに夕海子ちゃんたちから貰ってんだろ~?」

 

神楽は何とか部下を説得しようと試みる。しかし彼がここに留まりたがる理由の三割くらいが女子と触れ合うためであることを比較的付き合いの長い響は見抜いていた。

 

「ハァ~…良いですか。貴方は仮にも衛士最高司令官にして十二宗家筆頭である睦月家の当主なんですよ?普段からもう少し節度を持った行動を示さなければ、部下たちにも示しがつかないでしょう?それともしイベントを計画しているようであれば本庁へ帰投してからでも出来ます」

「く~、違うんだよ響!俺がやってあげたいのはもっとデカいサプライズなんだ!」

 

中々首を縦に振ってくれない響の小言に神楽も悩む。しかしここで立ち下がる訳には行かない。普段から頑張っている部下たちのためにひと肌脱いで愉快な思い出を提供したいのも本心だからだ。

 

「話は聞かせてもらった」

『ココちゃん!!』

「テメェ、ココノエ!何でここに!?」

 

その時、先ほどの騒ぎを外から聞いていたらしい九重がさりげなく入口付近に寄り掛かっていた。普段は研究室という名の科学部の一角に引き籠っていることの多い彼女が何故ここにいるのか、ラグナには分からなかった。

 

「いや、少しばかり外の空気を吸うついでにお前たちの様子を見にきただけだが、何やら面白い話が聞こえたのでな。邪魔させてもらった」

「聞いて聞いてココちゃん~。今度のホワイトデーに皆でヒーローの恰好でお返ししようと思ったんだけど~、中々人が集まらなくて〜」

「ヒーローの恰好でお返し…か…」

 

九重は少し考え込んでから一つ園子ズに質問を聞いてきた。

 

「園子、お前はヒーローでどの作品が好きだ?」

「『御免ライダー』シリーズです~」

「怪人さんが皆面白いんだ~」

「なるほど…」

「何がなるほどなんだよ…」

 

二人の答えに九重が悪い笑顔を浮かべ始める。明らかに流れが良くないことを反対派の者たちは察知していた。九重が顔をあげると、とんでもないことを言い出した。

 

「良し、分かった。変身アイテムの製作なら任せておけ」

『やった~~!!』

「ハァッ!!?テメェマジで言ってんのか、ココノエ!!?」

「当たり前だ。ヒーローの変身アイテムを作ることは特撮ファンの科学者から見ればこれ以上魅力的な話はないだろ」

「テメェ特撮好きだったのかよ!?」

「ああ。基本的にジャンルはそれほど頓着はしなかったが、その時に出てくるマシーンや科学技術に心を躍らせたものだ。今考えればかなり無理のある設定もあったが、それも含めて楽しかった」

 

意外な少女時代を送っていた九重に義理の親戚であるラグナと刃は驚きを隠せないでいた。

 

「玩具とはいえ、戦隊の武器やライダーのベルトを分解して構造を本気で調べようとしたあの日々が懐かしい…」

「ンなことやるのも出来るのもテメェだけだと思うけど!!?」

「ですが九重博士。アレはあくまで物語の中の道具ですよ?流石に本物を作ることは難しいと思いますが…」

 

響の指摘するようにどんなヒーローも基本的には創作物であり、現実世界での実現は非常に困難であるはず。だがその程度で怯む九重ではなかった。

 

「忘れたのか、琥珀響。この世界にはライダーや戦隊と同じように瞬時に変身することの出来る者がいる。それも身近にな」

「…まさかテメェ、勇者システムのことを言ってんのか?」

「珍しく察しが良いじゃないか、ラグナ」

「言われてみれば貴様は勇者システムの開発に一時期とはいえ、関わっていたな…」

「アレの変身機能を少し簡易化した装置で作れば同じことが出来るかもしれん。時間はかかるだろうが、それでも一週間あれば出来るだろう…フフフ、腕が鳴るな…」

 

いよいよもってヒーローコスプレ計画がただのお祭り騒ぎから現実味のある企画へと変化していた。九重もすっかりヤル気になっているし、園子たちも当然止める気配を見せない。だがそれだけでは終わらなかった。

 

「その話、拙者も混ぜてはくれないでござろうか?」

「その声…バングか!?」

 

声の主である萬駆が窓の近くで立っていた。開けられているところを見る限り、直接入ってきたのだろう。流石はニンジャだ。

 

「テメェも誰かからチョコを貰った口か?」

「忍者同好会の後輩たちから貰ったでござるよ!といってもここへ来た理由とは違うのでござるが」

「どういうことだよ?」

「どういうことも何もお主ら、ヒーローに変身出来るというのは真でござるか!?」

 

何を隠そう、萬駆もまた特撮の大ファンだったりする。今でもニチアサの番組は欠かさず見ているし、偶にはご当地ヒーローショーのバイトをしていたりもするのだ。

 

「アクションについてはライダーも戦隊もウルトラメンも拙者は指導出来るから仲間に入れてほしいでござる!!」

「代表的な奴は全部知っているってことか。こいつは加えねぇわけにはいかねぇな。ところでスーツのデザインはどうするんだ園子嬢。流石に戦隊だけじゃねぇだろ?」

「デザインはアッキーに頼むつもりだよ〜。あの娘ならきっと協力してくれるから〜」

「どうだ響!ここまで現実的なプロジェクトになってきたぞ!参加しねぇなんてもったいなすぎるじゃねぇか?」

「…仕方がありませんね。ですがここで練習するなら、きちんとやるべきことをやってくださいね」

「分かってるって母ちゃん」

「お母さんではありません」

 

響も考え込んだ末に、ここまで熱心に説得する神楽の言葉に折れてその提案に賛同した。これでついに頭数も揃うことが出来た。

 

「これであと一人だが…そいつに関してはどうするんだ?」

「心配するな、私がやってやろう。どのみち、戦隊ものならば女役は一人いなければならないだろう?」

「じゃ~それでお願いね~」

「こりゃあまたハードな依頼になりそうだぜ」

「やる以上手は抜かない。道化に成り下がるのはごめんだからな」

「それでは皆さ~ん、張り切って行きましょ〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそのまま雪花も巻き込んだ後、今に至る。慣れなかったが、厳しい訓練を耐え抜いた先に漸く動きが完成されたのである。

 

(慣れてねぇこともやったけど、俺たちがやった奴よりもキッツいのを番組の中のヒーローたちがやってるところを見たら頑張るしかねぇだろ)

(だがおかげで今までにないほど鍛えられたはずだ。獅子神萬駆には感謝しなければな)

 

ここ数日間の苦労の日々を思い返した後に中園子との戦いを続ける。何とか一ヶ所に集めると五人は変身と同時についてきた剣を構えた。

 

『悪滅合体奥義、疾風怒涛!!!』

『うわ~~~~!!!』

 

斬撃と共に飛ばされた衝撃波を喰らった中園子とバレットは吹っ飛び、人質役だった雪花と小園子は無事に救出された。倒れている中園子に刃が語り掛けた。

 

「ダークネス園子アスタロトよ、其処迄だ。貴様との(まがつ)(えにし)、我らが剣にて幕引きとしよう」

「刃兄様の演技が光っています!」

「同感ね。役を演じているはずなのに不思議なほど違和感がないわ」

「多分前も似たような恰好だったからじゃね?」

「あ、ホントだ!なんか似てると思ったらパクメンがデカくなった感じですね!」

「演出や言い回しは歌舞伎を参考にしているのでしょうか?」

「いや殆ど別人みたいに綺麗になってんじゃないのよ!!?」

 

ハクメンの恰好した刃の芝居に感動している椿姫を余所にパクメン時代の刃を知る神樹館組は感慨深そうに見ていたが、訓練生時代か勇者部での刃しか知らない夏凜たちからすればとても同一人物とは思えないほどの変貌だった。

 

「いーや、まだだ。この程度で勝ったなどと思うなー!!」

「何だって!?」

「お前たちはまだ知らない…ワシはまだ、とっておきの切り札を残しているのだぁ!!」

「気を付けてください、ハクメンジャーの皆さん!!こういう時は大体敵が巨大化して襲い掛かって来るんですよー!!」

 

戦隊もののファンである結城が注意するが、ラグナが力強く返事する。

 

「ハッ、心配すんな!!どんな敵が来ようが俺たちは負けねぇよ!!」

「大した自信だな…ならば見せてやろう!出でよ、最強怪人!!」

 

中園子が槍を高く掲げると、バレットが急いで後ろから大量のドライアイスを用意して屋上の床を冷気の煙で満たした。

 

「丸…バレットさん、何やってんですかね?」

「まさかの演出班兼任…?」

「倒された直後ですのに忙しい方ですわね」

「でもここまで大袈裟な演出をやるということは…次に出てくるのはボスクラスの敵のはずよ」

「最強怪人だもんね!」

 

少しシュールな絵面に突っ込んだが、次に起こる出来事に少女たちはワクワクする。やがて煙の中から人影が出現した。

 

「テメェが最強怪人…てハァッ!!?」

 

出てきた人物にラグナは思わず素のトーンで声を出してしまった。その人物は全身が金色の鎧に包まれた鳥のような姿で、背には巨大な五寸釘…ではなく杖のようなものがあった。

 

「ちょっと待て!!そいつライダーじゃねぇかよ!!?」

「ライダーとは元々我ら大ジョッキーが改造手術で作り出した怪人なのだ~!!」

「そうだった!つーかバング!!テメェそっち側かよ!?」

「どうした…戦え…レッド…」

「もうなり切ってるし!!」

「如何した、レッド。リーダーが動揺してしまっては見苦しいぞ」

「油断するなレッド。奴は恐らく強い。気を引き締めるぞ」

「テメェらは平然としすぎなんだよ!!」

 

バングはライダー枠としか聞いてなかったために味方だと勝手に思い込んでいたラグナは少し動揺してしまったが、周りがそのまま普通に進行しているため、気持ちを切り替えた。

 

「と、とにかく!!テメェらの企みもここまでだ!!」

「まだまだ~!!今度はこれだ~!!機甲怪獣メカカカ~!!!」

『タオーーーーーーー!!!!』

 

園子が指を鳴らすと同時に讃州中学の校庭に巨大な猫型ロボットが現れた。まさかの展開に勇者たちも大慌て、意外な敵に男子たちも唖然としていた。

 

「ちょっとちょっと!!あんなの学校に持ってきて大丈夫なわけ!!?」

「フッフッフッ…特別に許可を貰ってあるのだー!!」

『タオタオーーーーーー!!!』

「悪の組織の威厳とか色々が台無しだよー!!?」

「でもメカカカカさんがあれだけ大きいのに今までどこにあったのでしょうか?」

「違う違う亜耶ちゃん、アレはメカカカだよ。『カ』が一つ多いって」

「マコッチ、そこ訂正してる場合じゃないよ~~!!」

「どうやって倒すんだろう!!普通の戦隊ものだったらここで合体ロボとか出てくるんだけど!!」

「友奈さんも乗らないで~~!!」

 

一応安全は考慮しているらしいが、やはり巨大な敵はバーテックスを連想させるようで一部の勇者たちは警戒する。

 

強大な敵を前に結束力を高めた五人は敵と向き合う。巨大ロボ兵器、悪組織の首魁、更には悪のライダー。戦力から見ても差がありすぎた。それを見ても尚、ハクメンジャーの一味は引き下がらない。

 

「…デカい敵が来ようが関係ねぇ。命を懸けてこの世界を守るのが、戦隊ってモンだからな!」

「猪口才なぁ…そこまで言うなら力づくで分からせるだけだ!!お前たち、やってオシマ~イ!!」

『タオーーーー!!!』

 

そう言って悪三人とハクメンジャーが激突しようとしていた。勇者たちの歓声に包まれながらヒーローと怪人たちは戦う。

 

「お前らの覚悟、見せてもらったで!!」

「何とか間に合ったみたいだな!!」

「またとんでもないことになっているな」

「ナオトはともかく、師匠に赤鬼まで!!?」

 

しかしそこへ更に乱入者が増えた。ナオトは事前に現れることを知っていたが、獣兵衛とテイガーが来ることは予想外だった。

 

「何、同じく人類の自由のために戦っているんや。助け合うの当然やろ?」

「師匠も当たり前のように役をこなしてる!?」

「俺のことは構うなやレッド。お前にはやらなアカンことがあるやろ?」

「…分かってるって!けど後で説明しろよな!!」

 

そう言ってラグナは戦っている戦隊の仲間たちと合流しに行った。

 

「おお!!あのライダー関西弁話せるんか!!?」

「せやで。といってもお前が話してんのを参考にしただけやけどな」

 

どうやら関西弁に関しては実際に話している静の話し方からマスターしたらしい。ナオトはというと、メカカカに驚いてそれどころではなかった。

 

「それよりあのデカイ奴を倒さなきゃなんねぇわけだがどうするよ!?」

「心配ないやろ。のう、ピンクハクメン」

「…当然だ。黒鉄ナオト、テイガー、こっちへ来い。今からお前たちにも変身してもらう」

「お、おう」

「了解した」

 

よく理解できないままナオトとテイガーは九重の前までに寄ってきた。

 

「おお!!これは、増援回の奴ですよね!!」

「新しいメンバーが来るんだね!!でもアレ?十兵衛さんはまだ大丈夫だけど、テイガーさんとナオト君はどっちも赤だからラグナ君と被るんじゃ?」

「そこは上手く調整するんじゃない、結城ちゃん?」

「フッ、そういう友奈も興奮を押さえるのに必死みたいよ?」

「それで九重。一体どうやって変身するんだ?よもや合体ロボの代わりというわけではないだろう。そういう改造をした覚えはないからな」

「ああ、使うのはこれだ」

 

九重が後ろを指すとそこにはコードの配線が数本飛び出た大きめで古そうなパソコンがあった。それを見てもいまいちピンと来なかった二人に九重が器用にキーボードを操作しながら説明した。

 

「良いか、私が準備を終えたら二人ともこいつの前で『アクセスコード:テイガー(ゼクス)』と叫べ。そうすれば変身ができる」

「いや、全く話が見えてこないんだけど!!?」

「お前たちが一体となってメカカカと戦ってもらう」

「サイズが歴然だぞ。一体化したとして、その後どうすれば良いんだ?そもそもこんなジャンクPCで変身は可能なのか?」

「詳しい説明は後だ。今初期設定が終わったから変身出来るぞ」

「今まで使ってなかったってことだよね!!?安全面一切考慮されてないよね!!?これ使って変身とか大丈夫なのか!!?」

「ハッハッハッ、心配することはない。何を隠そう…天才科学者である私が一から作ったのだからな!!」

「心配しかねぇ!!!」

 

ナオトの言い分は至極真っ当だが、こうしている今もメカカカは暴れている。怪人と中園子はシルバーハクメンたちで何とか押さえているが、悪のライダーの加勢によって苦しい状況だった。

 

「……ああもう!!やるしかねぇな!!行くぞ赤いの!!」

「了解だ。迷っている時間はなさそうだからな」

『アクセスコード:テイガーX!!!』

 

何やら覚悟を決めた二人がそう叫ぶと二人の身体は光となってジャンクの中に引きこまれた。またしても奇天烈な現象が起こってしまったことが、九重も動揺しない。

 

「こ、九重さん!!?テイガーさんとナオトさんが!!?」

「大丈夫だ、今に来るぞ…ほら!!」

「ジュワッ!!!」

 

九重の言う通り、突如閃光と共にメカカカに向かって巨人が拳を突き出しながら突撃してきた。そこには先ほどいたテイガー…が十倍以上巨大化したような何かがいた。

 

「まさか…あれ父ちゃんなのか!!?」

 

小銀の声に反応して巨人になったテイガーは振り返って何も言わずに頷いた。

 

「で、デカい…バーテックス並じゃないの、これ!!?」

「九重さん…これは一体…」

「ガハハハハハ!!!これぞ、科学と神樹の力を融合させたことで誕生した、『ウルトラメンテイガー(ゼクス)』だ!!!!」

「この時代の科学技術を使えば、人間を巨大化させることが出来るのだな」

「まさに…サイエンスの力ね…!!!」

「こんなのどう考えてもオーバーテクノロジーだよ、二人とも!!!」

 

もう色々と突っ込みどころが多すぎて突っ込み勇者たちが息をしていない。パソコンからはテイガーとナオトの声が聞こえてくる。

 

《すげぇ…テレビでしかこういうの見たことなかったけど、まさか本当に変身ヒーローみたいなことが出来るなんて思わなかったぜ》

《私もだ。子どもの頃は憧れていたが、自分が巨大化することになるのは流石に予想出来なかったな》

「感慨に更けているところ悪いが、お前たちにはメカカカの相手を頼む」

《了解!!》

 

それを聞くや否やナオトと一体化したテイガー改めウルトラメンテイガーXは早速メカカカに接近戦を仕掛けてきた。その様子を見て球子が一つ指摘してきた。

 

「なあ九重、こいつはウルトラメンなのにカップ麺がないのか?」

「心配するな。その辺りの設定も守っているぞ、そこだ」

 

九重が指さしたのはPCの横にある小さめの箱。そこからは光が漏れていて、中では何かがゆっくりと回転しているようだった。

 

「この中にある物体を加熱することでテイガーXのエネルギー源であるジャンボエナジーが発散される。それをこのジャンボエナジー変換器で回収してテイガーXに供給しているのだ!!」

「カップ麺から…電子レンジに進化しただと!!?」

「それはただアナログがデジタルになってしまっただけでは!!?しかもジャンボエナジーに関しては最早水蒸気」

「ジャンボエナジーとジャンボエナジー変換器だ、諸君!!!」

 

どう見てもただの家庭用電子レンジにジャンクPCを接続しただけにしか見えないが、九重が言うにこれはエネルギー変換器らしい。この際だから装置から伸びてテイガーの頭と繋がっているホースも見なかったことにしよう。

 

「その時に制限時間間近になると、PCは火花を飛ばしながらアラームを鳴らす」

「それで…時間が過ぎるとどうなるんだ?」

「こいつが止まれば加熱は収まり、当然テイガーXもエネルギーが無くなる。ついでに変換器は中身もろとも爆発する」

「パソコンじゃないのかよ!?」

「電子レンジの温め機能が失敗しただけじゃないですか!!?」

 

もう球子と杏の突っ込みは留まるところを知らないが、それだけ九重の発明が今最高にイカれているのだ。因みに変換機にはご丁寧にデジタル時計のタイマーがある。時間から見て恐らく3分に設定されているのだろう。

 

「というか何故よりにもよって爆発するんですか!!?」

「その方が緊迫感があるかと思って」

「他にもあるじゃないですか!?」

「よく分かったな。実は…時間が近づく時には目の部分も紅く光るのだ!!」

「そこは胸にランプのタイマーだろ!?」

「あれは変に目立つ上に取られたらしぼんでしまうだろ」

「だからって目が光るんかい!?」

 

どうやら胸にタイマーは九重のセンスに合わなかったようで付けなかったようだ。

 

「因みに今使っているのはシルバーハクメンの弁当だ」

「ズェア!!?」

「丁度いい具合の大きさだったからな」

「覚えていろ化け猫め!!!」

 

知らない間に昼ごはんの危機に陥ってしまったことに憤慨する刃。しかしそれによって敵の攻撃への対応が遅れてしまった。

 

「シルバーハクメン様、攻撃が来ます!!」

「ズェイヤッ!!!」

「むん!!!」

 

椿姫の声に反応して何とか萬駆の攻撃を弾いた刃だが、彼の瞬間移動紛いの高速移動と羽状の手裏剣を使った変幻自在の攻撃に撹乱されていた。

 

「これは俺も助けに入らなあかんな」

「なら早く行けば良いだろ、親父」

「おう、任しとき」

 

そう言って獣兵衛も服の中からベルトのようなものを取り出し、腰に装着した。そして手に携帯端末をベルトの方へ振り下ろしながら叫んだ。

 

「変身!!!」

 

端末がベルトの中心部と擦れ違うと、軽快な電子音と共に十兵衛の姿も変化した。紙吹雪が舞い散る中、いつもの黄色いパーカーから黄色を基調とした鎧武者のような恰好となった。

 

「貴様は…御免ライダー獣王かっ!!」

「獣兵衛さんがライダー枠だったの!!?」

「昔に観てたんでな。さてと…」

 

獣兵衛は舞い散る紙吹雪の手を顎に当てながら首を捻って台詞を力強く言い放った。

 

「俺の強さにお前が泣いた」

「ああ…獣兵衛さんの変身も素晴らしいわ…」

「カッコイイ…獣兵衛様超カッケええ!!!」

「決め台詞もバッチリ決まってます~」

「須美ちゃんと瑠奈ちゃんたち、興奮と感動で涙が流れそうになっているよ…」

 

樹のサイレント突っ込みを聞くと十兵衛は懐から懐紙を取りだして二人に手渡した。

 

「ほれ嬢ちゃんたち、涙はコイツで拭いとき」

「あ、ありがとうございます」

「うわーい!!やったー!!」

「獣兵衛様から貰い物だなんて一生宝物にします~」

「ほんじゃあ俺は行ってくるで。嬢ちゃんたちも気ぃつけてな」

「私もそろそろ行くか。早く決着を付けねばならないからな」

 

そう言って獣兵衛も戦いに参戦した。嬉しそうにしている須美を東郷たちは微笑ましそうに見ていた。

 

「フフ、良かったわね須美ちゃん」

「アンタたちの趣味に合いそうだものね…でもこれが敵側だったらどうしようもなかった気もするわ…」

「獣兵衛さん自身の戦闘能力も高いものね…下手したらラスボスクラスじゃなかったのかしら?」

「その案もあったんですけど、味方ライダーが居なくなるから却下になりました~」

 

そう言っているうちに屋上も校庭も本格ヒーローショーと化していた。ハクメンジャー一味は獣兵衛と共に中園子と萬駆と激戦を繰り広げており、テイガーとナオトもメカカカを組み合っていた。

 

「いや~、改めて見ますと壮観ですにゃ~園子ちゃん」

「そうですね~雪花先輩~。ライダーに戦隊にウルトラメン、全員集合ですからね~」

「アンタたちも一枚噛んでたんかい!!いや何となくそんな気もしてたけど!!」

「でも良かったじゃないの、風さん?これだけ愉快な見世物は中々なくてよ。それに、皆も楽しんでいるわ」

 

レイチェルの言葉通り、完全に引き込まれていった少女たちは各々で必死に応援している。しかしヒーローたちも押されてしまい、ついには押し返されてしまった。

 

「クッ…さっきとは比べモンにもならねぇ強さだぜ…」

「これが…ダークネス園子アスタロトとその一味の力ってのかよ…」

 

ラグナたち戦隊はボロボロでテイガーの目も紅く光り始める。少女たちの後ろのジャンクからも喧しい警告音も鳴り響き、ピンチであることを知らせてくれる。強いて健在なのは元の強さが並み以上の獣兵衛くらいだろう。

 

「どうしよう…このままじゃあ、世界は園ちゃんたちの物になっちゃうよ!!」

「クッ…やはりじっと見ているなどしていられない!!我々も行くぞ!!」

「まあ待ちなさい、若葉」

「しかしレイチェル、このままでは!!」

「フフ、そこまでのめり込んでいるならあの娘たちの目論見も成功しているわね。でも心配することはないわ」

 

慌てる若葉にレイチェルは小さく微笑みながら語り掛けた。

 

「最後まで決して諦めず、不可能を可能にする。それがヒーローというものよ。そうでしょう、ラグナ?」

 

挑発的に笑いながら自分に呼びかけるレイチェルの言葉にラグナも舌打ちしながらも身体に力を入れる。

 

「…呼び間違えてんじゃねぇぞ、ウサギ!!今の俺はラグナじゃねぇ!!」

「あら、それでは貴方は一体何者なのかしら?」

「俺は…悪滅戦隊ハクメンジャーのレッドハクメンだ!!遊びなんかじゃねぇ、俺たちは本気(マジ)でヒーローをやってんだよ!!」

「分かっているならそれで良いわ」

 

刀を地面に突き立てて立ち上がるラグナもといレッドハクメンの背中を見てレイチェルも安心したように笑うのであった。そんな啖呵を切ったリーダーを見て、仲間たちも呼応する。

 

「…漸く腹を括ったな、リーダー」

「テメェらバカ共と一緒なら、絶望って奴も尻尾巻いて逃げ出すだろうよ」

「そうですね。それにアレの首魁であるダークネス園子アスタロトを倒せば怪人たちにも影響があるはずです。それまでは周りの敵は我々が押さえておきますから、止めはリーダーが」

「任せとけ…テメェら行くぞ!!」

『うおぉぉぉぉぉ!!!!』

「兄さまーーー!!!皆さーん!!!頑張ってくださーーい!!」

 

リーダーの奮起のおかげで戦意が圧倒的に向上した一味は一気に戦局を巻き返していく。それを見てテイガーとナオトも力を振り絞る。

 

《…あんなモンを見せられたら…俺たちも負けられないな!!》

《限界を超えた先に初めて見えるものがあるということか…我々も続くぞ!!》

《ああ!!本当の戦いは…これからだ!!!》

『タオーーー!!!』

「避けて、ウルトラメーン!!!」

 

テイガーXが立ち上がったところへ飛び掛かってくるメカカカ。咄嗟に歌野が声を上げて注意したがメカカカのスピードも速く、テイガーXに齧り付くのは避けられないようだった。だが、その時。奇跡は起きた。

 

《マグネテックホイール!!!》

『タオーー!?』

「今のでメカカカがフラフラになりましたよ!!」

「ハーッハッハー!!甘かったな、メカカカ!!ウルトラメンあるあるひとーつ!回れば大体何とかなる!!!」

「そこは光線技じゃないんですね、球子さん…」

「アレはどっちかというと止めだからな!」

 

何はともあれ、破竹の勢いでヒーロー側の反撃が展開されていった。少女たちも目の前のヒーローたちの活躍に熱中していた。

 

「頑張ってくださーーい、シルバーハクメン様ー!!」

「ブルーも頑張るんですのよー!!」

「気合入れやがれブラック!!」

「行け行けピンク!!」

「レッドー!!ファイトだよー!!」

「高嶋さん…それだと別の人に聞こえてしまうわよ?」

「負けるなー獣王ー!!」

「そこだよー!!テイガーX!!!」

「聞こえるかレッド、アイツらの声が!」

「ああ、ヒーローって連中はいつもこういう風に信じてくれている奴らがいてくれたから戦えたんだな…」

「そいつには同感だぜ…んじゃそろそろ決めますかね!!」

「そんなら俺から先陣を切るで!!」

 

そう言うと同時に獣兵衛は渦巻く雲を彩った方陣を展開すると、目にも止まらぬ早業で萬駆を斬りつける。

 

「これでもうちょこまかとは逃げられん!」

「うぐ!」

「では…とう!!」

 

そうして獣兵衛が跳び上がって萬駆の上を取ると一気に下に向かって切り掛かり、武器を尻尾で取るとダメ押しに横薙ぎを喰らわせた。直撃を貰った萬駆が呆気なく倒されると獣兵衛は最後静かに締めくくった。

 

「『仁王忌岸突』…」

「あ、後から言うんですね…」

「でもこれはこれで趣きがありますから」

 

東郷が水都の突っ込みをフォローしていると、吹き飛ばされたところから変身が解除された萬駆が現れた。

 

「おや?拙者は今まで一体何を?」

「萬駆さんが正気を取り戻しましたよ!!」

「これでまずダークライダークライシスが収まったわ!!」

《次は我々(俺たち)の番だ!!》

 

獣兵衛に引き続き、テイガーも腕の装甲にエネルギーを貯め始める。バチバチと電機の火花が飛び散る。最後には二人で技の名前を叫びながら腕をL字に構えて光線を発射した。

 

《ボルティックスパークショット!!!》

『タオーーーー!!?』

 

エネルギーの光線を浴びたメカカカは縮んでいき、やがて人型のサイズへと戻った。これでメカカカも無力化することが出来た。

 

《我々に勝つなど》

《2万年早いぜ!!!》

 

テイガーと中にいるナオトが天に向けてガッツポーズをする中、戦力を失った中園子は狼狽始めた。

 

「何ということだ…ワシの最高戦力がこうも簡単にやられていくだと…!?」

「最早此れ迄だ。秩序を乱す貴様を此れ以上看過することは出来ん」

「わ、悪かった!もうやらないから滅するのだけは勘弁してくれぃ!」

 

そう言って頭を下げる中園子を見ても刃はガードを崩さないが、ラグナは彼に声を掛けた。

 

「そんなにカッカッすんなよ。反省してるみてぇだし、良いんじゃねぇの?」

「…ならばそうするとしよう」

 

その言葉に納得して刃は振り返るが、その瞬間、中園子は立ち上がって槍を突いてきた。

 

「あーー!!まさかの不意打ち!!」

「刃兄様危ない!!」

「ハーッハーッハー!!掛かったなハクメンジャー!!ワシの勝ちだぁ!!」

 

中園子の槍は吸い込まれるように刃の背中へと向かっていき

 

「ったく、そんなこったろうと思っていたぜ」

「だが、そんな見え透いた攻撃など、我等には通用しない」

 

命中する直前に中園子の動きはピタリと静止した。よく見れば刃は自分の周りに巨大な方陣を展開しており、それが彼を守っていたのだ。

 

「んで、どうすんだシルバー。一応お前さんが捕まえたわけだしよ」

「無論、審判(ジャッジメント)を行う」

 

刃は目の前の中園子を凝視すると、彼女の周囲で習字のような書き方の○とXが交互に点滅し始めた。

 

「なるほど、アレで悪なのかそうでないかを判定するのね」

「でもダークネス園子はさっき思いっきり不意打ちしとるから悪判定喰らうんとちゃうか《ブブー》ほらやっぱり!」

 

大きくXが表示されるとハクメンジャーの面々は自分の刀を刃の方へ投げるとそれぞれの刀は空中で分解して彼の武器と合体して背筋を超える大太刀へと変貌した。

 

刃はそれを手に取ると、横一閃に振り払った。

 

「悪滅超奥義刻殺!!!」

「ウボァァァァァァ!!!」

 

瞬間、黒い斬撃が中園子に命中し、その場で中園子は倒れた。これは流石にヤバいのではと他の勇者たちも慌てたが、中園子は何事もなかったかのように立ち上がった。

 

「あ〜、何だか〜とってもスッキリした気分だよ〜」

「そ、園子が悟りを開いたような顔になっている…のか、あれは?」

「今我等の剣はダークネス園子アスタロトの中にある罪を刈り取った。之により、奴の悪を滅することに成功した」

「悪滅ってそういう意味だったの!?」

「やったー!!これなら皆無事のまま事件解決だね!」

「よーし、ジンが決めたところでテメェら、アレをやるぞ!」

 

ラグナの号令でハクメンジャーの面々が集まると刃が使っていた刀は元の五本に戻った。それぞれの刀を取ると全員一斉にそれを鞘に収めた。

 

『悪滅完了』

「これにて一件ら〜く〜ちゃ〜く〜」

 

小園子の台詞で最後が締め括られる形で7人のヒーローの戦いに幕が引かれた。全てが終わったことを確認した後、中園子が皆に感想を聞いてきた。

 

「これで終わり〜。ど〜?皆気に入ってくれたかな〜?」

「すっごく楽しかったよ、園ちゃん!!」

「私も私も!!皆カッコよくて、もう夢のような時間だったよー!!」

「それだけ気に入ってくれたなら頑張った甲斐があったよ。ノギーとひなたはどうだった?あんまり見たことないって言ってたけど」

「最初はお仕置き案件かと思ったが、まさかあれだけ心が熱くなるとはな。良い物を見せてもらったよ」

「応援若葉ちゃんが撮れて良かったです!勿論、ヒーローの皆様の活躍も、撮り逃してはいませんよ!」

「ひなたさん!!是非後で兄さまの写真を下さい!!できれば全部!!」

「はいはい。分かっていますよ〜」

 

大方のメンバーからは大好評だったことにヒーローたちも悪役たちも満足そうに笑った。喜んでもらうという最優先事項は達成出来たようだ。

 

「そうね。私もこういうのはあまり見たことなかったけど、素直に楽しかったわ」

「まぁそうね。何だかんだ面白かったし、アクションも凄かったで満足したわ」

「萬駆の特訓のおかげだな」

「いやいや拙者は何も。お主らが必死に付いてきてくれたおかげでござるよ」

「鍛えたのは萬駆さんだったのね。アレだけの動きが自然にこなせるようになるなんて、一体どんな訓練をしたの?」

「垂直飛び蹴りで岩を砕いたり、迫り来る数本の丸太を避けたり、仕舞いには大赦支給のジープに追いかけられたさ」

「…本当に無事に帰ってこれて良かったわ」

「アンタたち…本当に頑張ったのね…」

 

神楽の口から語られた特訓の内容を聞いて芽吹と夏凜はそれ以上詳しくは聞かないことにした。小園子はというとレイチェルたちの方へ行っていた。

 

「レイチェンたちは〜?」

「とても素敵な見世物だったわ、園子。貴女はどうだったかしら、千景?」

「そうね…こうして皆と一体になって楽しむのはとても新鮮だったわ」

「うん…こういうのは見たことなかったけど…楽しかった…」

「…そいつが聞けて良かったよ」

「その…様になってたわよ、レッドハクメン 」

「…おう」

 

褒められることに慣れていないのもあって思わず顔を背けたが、全力で取り組んだ分、心の中では充実感が得られたラグナであった。

 

「良かった〜」

 

あまり表立って騒ぐタイプではない千景やしずくも気に入ってくれたことから今回のイベントは大成功で間違いないだろう。それを確信した中園子は次の段階へと進んだ。

 

「はいはーい!それじゃあ皆〜、今日は何日か覚えているかな〜?」

「今日は3月14日…あ、白い日!」

「その通り!!だから今回のホワイトデーはヒーローたちからの贈り物だよ〜!」

「それで今回男の子が皆ヒーローの恰好をしてたんだね!」

「せいか〜い。それじゃあヒーローの皆〜、準備は良い〜?」

「おう少し待ってろ。確か教室に…っておい。何で赤鬼がまだデケェんだ?」

 

チョコを取りに教室へ向かおうとするとラグナが未だに巨大化したままのテイガーに気づいた。全ての敵を倒したが、まだ彼は大きいままだった。

 

「おい赤鬼。良い加減元に戻れよ。もう全部終わったぞ」

《それが…戻り方が分からなくてな。今困っていたところだ》

「……え?」

 

テイガーが言うに変身の解除法が分からなかったようだった。しかしそれでも彼の両眼は赤く光り続け、ジャンクのアラームは止まることを知らない。

 

「貴様!!早く変身を解け!!私の昼食を木っ端微塵にする心算か!?」

《だって解除法なんて教えられてねぇんだもん!?どうすんだよこれ!!?》

《ま、待て黒鉄ナオト!こういう時こそ冷静になるんだ!!》

「それより、確かウルトラメンの活動時間は3分だからもうそろそろ」

 

杏の言葉が終わる前にレンジが光り、そのまま屋上全体を包むほどの大爆発が起こった。その日、讃州中学からはキノコ雲が上がると同時に部長である風の断末魔の悲鳴が聞こえたという情報があったとかないとか。

 

「ギャァーーーー!!!?爆発オチとかサイテー!!!!」

 

なお幸い全員が頑丈だったこともあって怪我人はおらず、チョコもその日の夕方に無事渡すことが出来たそうだ。




はい、というわけで筆者が自重することなく突っ走った結果、これまでの話の中で最長の2万字超えのギャグ回が出来上がりました。皆様はどれだけのネタが分かりましたか?

さて次回ですが、本編で水着回をしようと考えています。それではまた。







高嶋「あれ?でもぐんちゃんが昔好きだったのって、確か魔女ッ子だった筈じゃ?」

園子ズ「ラッくん…」

ラグナ「やらねぇからな!!!!」
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