蒼の男は死神である   作:勝石

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どうも勝石です。
投票を入れた方ありがとうございます!これからも完結できるよう頑張っていきたいと思います。
しかし、息抜き半分で書いたつもりが9000文字近くになりそうになってたとは…なぜだ?
今回ではラグナの視点から物語が進むので、話の流れも変わってしまいます。須美達がなにをしていたのかはぜひ原作を見ていただくと幸いです。

それでは


Rebel11.花火と花びら

ラグナは待っていた。今の彼が普段生活している巫女の神社とは別の場所で刃たちを待っていた。黒の甚平の上にいつもの赤コートを羽織ったような恰好だった。本来ならラグナはこのような場所には来ない。右腕となっている青の魔道書は周囲の力を吸い取ってしまうため、あまり人混みに入りたくないのだ。それでも来たのは一つの提案がきっかけである。

 

『ときには気分転換も必要じゃないかしら』

 

いつもは訓練を休むなどと言って訓練に打ち込みそうな真面目な須美が珍しく息抜きを提案したのだ。その提案に園子たちが賛同し、安芸の許可をとる形で休暇を貰うことができた。ちょうどこの日は祭りと花火大会が開かれており、みんなで行くことが決定された。

 

(ソノコのやつが言うにサヤも来るらしいけど、ジンも知り合いを連れてくるらしいんだよな。あいつとそこまで親しい奴なんていたか?・・・いや)

 

「あの世界」と同じならきっと「あいつ」もいるだろう。刃、いや「ジン=キサラギ」を誰よりも大切に思うあいつがここにも。ラグナがそんなことを考えていると青い浴衣を着た少年が白い浴衣を着た赤髪の少女を連れてこちらに向かってきた。少年がラグナに気付くとその歩を速めた。

 

「やあ兄さん。ここで待っててくれたんだね」

「『今回は』飛び掛かってこないんだな、ジン」

「え、いいのかい?兄さん」

「ダメに決まってんだろ、このバカ」

「えぇ~、いいじゃないか」

 

刃が今回飛び掛かってこないのはどうやらそうしてしまうと帯が解けて浴衣が崩れてしまうからだそうだ。さすがの刃も素っ裸になる可能性を冒すほど間抜けではない。そんなアホなことを話している内にそれまでラグナの顔を窺っていた少女が刃に尋ねた。

 

「『刃兄様』、この方はどなたでしょうか?」

「ああごめん『椿姫』。ついいつもの感覚で」

 

そういって刃は少し横に下がって少女を紹介した。

 

「兄さんは初めて会うんだよね?紹介するよ。僕が十二宗家に入ってから仲良くなった・・・」

「『弥生椿姫(やよい つばき)』です。お会いできて光栄です、綾月洛奈さん」

「ああ、よろしくイザ・・・じゃねえや、ツバキ。あと俺はラグナと呼んでいいぞ」

「分かりました、ラグナさん」

「ああ」

 

危うく彼女を「あの世界」での呼び方で呼びそうになったところをラグナは寸でのところで飲み込み、何とか誤魔化した。もし弥生家に「アレ」があった場合、それを知っているラグナは何等かの疑いが掛けられる可能性がある。それはまずい。

 

「にしても随分と仲がいいじゃねーかお前ら。クラスメイトなのか?」

「いえ、私は刃兄様とは一学年下です。ただ十二宗家の次代の当主ということもあって大赦の会議などにも連れ行かれたりするんですよ。私もそこで初めて刃兄様と出会い、学校も同じ神樹館ということもあってそれ以降も仲良くさせていただいています」

「そうか・・・よかったな。刃」

「うん」

「そういや、神樹館ってことはソノコたちも知っているのか?」

「当然じゃないですか。あの三人と刃兄様は神樹館でも指折りの有名人ですよ。御役目に一生懸命励んでいる先輩方はみんなの、ヒーローです」

 

そう誇らしげに語る椿姫。どうやらラグナが想像していた以上に勇者に選ばれることは大きなことだったらしい。会話が次第に弾んでいくと沙耶たちも彼らと合流した。須美は藍、園子は淡いピンク、銀は紅色、沙耶は青色の浴衣を着ていた。沙耶の顔色は恥ずかしいからなのか、少し朱色に染まっていた。

 

「ど、どうでしょうか?兄さま方?」

「おお、いいじゃねーか。似合っているぞ、『ノエル』」

「悪くないじゃないか」

「ほ、本当ですか?よかった・・・」

 

ラグナと刃の感想を聞いて安心する沙耶。そんな彼女の様子を見て嬉しそうに園子たちは笑っていた。

 

「ラッくんとジンジンが気に入ってくれてよかったね、ノエルん」

「気に入って当たり前よ。のえるちゃんには立派な大和撫子になれる素質があるもの」

「自信を持てってのえる!女のアタシから見ても滅茶苦茶かわいいぞ!」

「ううん、これを見繕ってくれたみんなのおかげだよ・・・」

 

因みにいま彼女は本来の名前では名乗っていない。それは上里家の、しかも神託を受ける巫女の身分を隠すためである。今やバーテックスの戦いにおける情報戦の要ともいえる沙耶は滅多なことでは外出することが許可されない。万が一怪我をしたり、攫われたりすれば一大事だからだ。沙耶に勇者たちが戯れていると椿姫が沙耶に話しかけた。

 

「初めまして、貴女のお名前は?」

「は、はい!『緋色(ひいろ)のえる』です!十歳です」

「そんなに警戒しなくても大丈夫よ。私も十歳なの」

「そ、そうなんだ。むしろ私より年上に見えたよ・・・」

「そんなことないわ。私も刃兄様によく面倒を見てもらっていたから」

「そうだったんだ・・・」

「そうだ、のえるさん。一緒に祭りを見回らないかしら?きっと楽しいよ」

「う、うん!」

 

そういって少しぎこちないながらも沙耶もといのえるは嬉しそうに椿姫についていき、一緒に祭りを見に行っていた。その様子を見てラグナたちは笑っていた。

 

「あの様子なら仲良くなるのもそれほど苦労しなさそうだな」

「でも、沙耶ちゃんを見ておかなくて大丈夫かしら?」

「椿姫はしっかりした子だ。沙耶を任せても大丈夫だろう」

「じゃあ若い二人は置いといて、アタシたちはアタシたちで祭りを見て回ろうぜ」

「サッちゃんにも危なくなったら連絡するように言ってるから大丈夫だよ、わっしー」

「う~ん・・・」

「わーったよ。俺がサヤとツバキがあぶねー目に合わねーように見張っておくからお前らはお前らで楽しんで来い」

「それはダメよ。綾月君だって見て回りたいでしょ?」

「気にすんなって。俺だってサヤのことが心配だしよ」

「じゃあ、僕も兄さんと一緒に見て回るよ」

「いいのかジン?お前だってソノコたちと見て回らなくても?」

「僕は構わないよ。むしろ男の僕がいては三人が遠慮してしまうだろ?」

「じゃあお言葉に甘えて・・・」

 

ラグナと刃がそう提案すると須美は安心して園子達と一緒に祭りへ向かった。それに対してラグナと刃はのえるたちを追った。

 

 

 

 

 

 

 

「本当にいろんなものが売られているわね」

「ここの出し物は本当においしいよ~。特にチョコバナナ!定番て言われるだけはあるんさ~」

「アタシは断然この焼きそば!ソースが香ばしいー!」

「まあ、そうね。私もリンゴ飴を気に入ったわ」

 

須美たちは食べ歩きしながら祭りを見て回っていた。三人は肩を並べながら各々の形で祭りを満喫していた。そんなときに前方の屋台から肉のいい匂いがした。

 

「見てみてわっしー!ミノさん!あれも美味しそうだよ!」

「アタシは貰おうかな。どうするよ、須美?」

「私はそこまで食べられないから遠慮するわ」

「よっしゃー!じゃあ大将!これ二本くださいな!」

 

園子がそう言って銀の分も頼むと、二人は焼き鳥を一口食べた。途端二人は目をシイタケにしてヒャッハーしだし、あげくあまりにも気に入った園子が店ごと買おうとしたため、須美は二人を引っ張って強制退場した。そんなトラブルに見舞われながらも三人は楽しく過ごしていた。しばらくしていると今度は射的屋を見つけた。よく見ると椿姫、のえる、刃、そしてラグナもいる。

 

「あ、ツバッキーにノエルん!ジンジンにラッくんも!どうしたの?」

「園子たちか」

「あ、乃木先輩。それに鷲尾先輩に三ノ輪先輩も」

「何かあったのかしら?」

「じつは・・・」

 

椿姫の話によるとのえるたちが須美達と別れてからしばらくしてこの射的屋にたどりつき、ここの景品の中の鶏にのえるが気づいた。園子がこのキャラが好きであることを知っているのえるは是非ともそれを当てたいと思って挑戦した。しかしどれだけ当てても一向に落ちないそれを見てへこみそうになっていた。

 

「・・・まあ、そういうわけだ」

「園子ちゃん、ごめんね・・・全然落ちないよ・・・」

「そんなに落ち込まないでノエルん。私のためを思ってくれただけでも嬉しいよ~」

「でも当たらないじゃなくて落ちないって・・・」

「で、でも一応他に当てたものはあるよ。ほらこれ」

 

そう言ってのえるは懐から何かを取り出した。出てきたそれは少し太くて長い物体で薄いピンク色でビニールに包まれており、端には金属具で留められていた。それを見る刃とラグナは若干苦笑いしている。須美は思わずそれについて聞いてきた。

 

「・・・えっと。のえるちゃん。これ・・・なにかしら」

「太くて大きなお魚ソーセージです!」

『ブーッ!!!!』

 

のえるがそう告げると須美や椿姫は思わず吹き出してしまい、兄二人は頭を抱えた。本人は悪気があるわけではない。ただ言い方がちょっと誤解を生みそうな表現だったため、二人はついそれを連想してしまったのだ。

 

「ノエル!テメェバカか!?もう少し言い方があるだろ!?」

「緋色、さすがに今のは僕でも擁護できんぞ・・・」

「のえるちゃん!そういうことをこんな広場で言ってはいけないわ!」

「鷲尾先輩たちのいう通りよのえる!みんなに誤解されるわ!」

「え、えー!?」

「ん~?わっしーどうしたの?ツバッキーも、顔が真っ赤だよ~?」

「あ、ああ。気にするな園子・・・」

 

のえるの口から無自覚に飛び出た話をそこまで気にしてなかった園子と男姉弟に囲まれていたためにまだ冷静でいられた銀だが、真面目でそういうことは知識程度しかない須美と椿姫、妹のそういった知識のなさに驚くラグナと刃は大慌てでのえるに自身の言葉の危うさを指摘していた。しばらくしてのえるの「教育」が終わると今度は園子が挑戦。しかしのえるの言う通り中々落ちず、園子が小遣いのほとんどを使っても落ちなかった。そこで見かねた須美は園子に協力し、ついに撃ち落とすことに成功した。

 

「わ~い!ありがとうわっしー!」

「ううん、私は手伝っただけよ。最後に引き金を引いたのはそのっちだからそれはそのっちのものだわ」

「ありがとう!」

 

そう言って園子は射的屋の親父に鶏と三匹の猫の人形との交換を申し出た。しかし

 

「まって園子ちゃん。あれがほしいの?」

「ノエルん?確かに欲しいけど」

「じゃあ私が撃つよ」

 

そう言ってのえるが十発分の弾を買ってライフルを構えた。狙いを定めるその様は中々様になっていた。

 

「おお、これは期待できるんじゃないか?」

「そうですね。私が一緒にいたときも弾は全弾命中はしていたからあれくらいなら撃ち落とせると思います」

「いっきますよ~」

 

そう言ってのえるは一発目を打ち放ち、いきなり人形を一体撃ち落とした。そこからはもはや怒涛の勢いである。初めに宣言した人形三個からさらにバイクのオモチャ、お菓子セット、色鉛筆、線香花火、ヨーヨー、中二臭い手袋、食事券などをどんどん撃ち落としていったのだ。

 

「素晴らしい射的能力だわのえるちゃん!鍛えればきっと大成すること間違いなしよ!」

「何言ってんだ須美!のえるはガン・カタだろ、ガン・カタ!」

「それいいですね、三ノ輪先輩!二丁拳銃とか持たせたらとっても様になると思うんです!」

「ありがとね~ノエルん~♪」

「えへへ♪」

 

まさか店の景品の半分を一人の少女に取られるとは想定していなかった店主は天を仰いでいる間に五人は大満足のまま次の店へ向かおうとした。その時に銀があることに気付いた。

 

「あれ、ラグナたちは?」

「兄さまたちならさっき別の屋台の方へ向かったよ」

「みんな一緒だからラッくんもジンジンも安心して離れたんじゃないかな~?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかしすごかったな、サヤのやつ。あれ景品の半分は分捕ったんじゃねーか?」

「ああ、しばらく見ないうちにやつもやつなりに逞しくなったんだなと感じたよ」

 

今ラグナと刃は神社の近くでソフトクリームをなめながら祭りの方を見ていた。のえるが射的で荒稼ぎして須美達についていくのを見届けた後、二人は近くの屋台でそれぞれソフトを買って休憩していた。

 

「そういやジン。あのツバキって娘のことをどう思っているんだ?」

「な、なにを言ってるんだい兄さん!?僕と椿姫はそういう関係じゃ!」

「いや別にそこまでは聞いてねーよ。ただあいつがいるときのお前は園子や須美たちとは少し違うと思ってな」

「・・・まあ少なからず彼女のことを大事に思っているのは間違いないよ。もとは養子の僕のことをはじめから白い眼で見なかったのは勇者たち以外だと彼女と『睦月家当主』くらいだからね」

 

刃がぽつぽつと話し始めた。話によると今でこそ多くの人間は刃のことを優れた衛士として認めているが養子に入ったばかりの頃は周り、特に大人たちからは不審の目で見られていた。格式の低い綾月家から現れ、しかもそれまでには前例のない男性の樹海への参戦、そもそも勇者システムに比べて戦力として使えるかが未だ謎だったアークエネミーの使用。信頼されるに足る実績があまりにもなさ過ぎた。そんなときでも刃と自然に接していたのが椿姫だった。

 

やがていざ御役目が始まると、勇者たちを的確にアシストするようになり、またアークエネミーの火力でバーテックスを屠ることとなり、大赦にも大きく買われるようになった。最も刃本人は大赦に対する忠誠は元々低かったため、全く気に掛けていないが。

 

「そんな話、全然聞いたことなかったな・・・」

「そりゃあ、そんな話をしたら兄さんが心配するでしょ?それにあれは僕自身の問題だったしね」

「・・・そうか。ならこれ以上は言わねえよ。その代わり、飲み物でもおごるわ」

「フッ・・・ありがとう、兄さん」

「じゃあ俺ちょっと行ってくるわ」

 

ラグナは自販機へと駆け出して手頃な飲み物を買いに行き、その後二つのラムネ味のサイダーを持って帰ってきた。しばらく兄弟二人でのんびりと過ごしていたが二人の前にある光景が目についた。それは二人の子供だった。一人は須美たちとほぼ『同年代の少女』だった。少女は先ほど会った椿姫に比べる少し色が淡いが、赤い髪で白いリボンで短いポニーテールを形成していた。髪には『花びらの形』をした髪飾りをつけていた。少女は小さな子供を連れていて、辺りをキョロキョロと見渡していた。

 

「あれ・・・迷子か?」

「そう・・・みたいだね。でも一緒に探しているひとがいるみたいけど」

 

ラグナと刃はすでに子供が少女と一緒にいるためそのうち見つかるか大人が助けてくれるだろうと考えてはじめは放置していた。しかしいつまでたっても通行人は二人の困っている様子に気付く気配はない。少女が困り始めているととうとうこどもが泣き出してしまった。少女は子供をなだめようとするが中々子供も泣き止まない。

 

「・・・ったく。仕方ねーな・・・」

「兄さん?」

「済まねえジン。ちょっと待ってくれ」

 

見ていられなくなったラグナは二人の元へ駆け寄った。近づいてきた彼を見て少女も少し警戒したのか子供を庇うようにラグナの前に立つ。

 

「えっと、お兄さんどうしたのかな?」

「それはこっちの台詞だ。アンタら、どうしたんだよ?さっきからずっとここで誰かを探してたみたいだけどよ」

「う、うん。実はこの子がお母さんとはぐれてしまって・・・」

 

ラグナが自分たちを襲い掛かってきたわけではないことを察知した少女は訳を話し始めた。どうも今連れている子供は母親とはぐれてしまい、泣いているところを同じく友達とはぐれた少女が発見し、一緒に親を探し始めたらしい。ただ一向に見つからないため、目立ちやすい神社の方へと向かって今度は周囲の通行人を呼んでいたがそれでも見つからなかった。

 

「それで今の状況になっているってわけか」

「うん・・・できればこの子のお母さんを見つけたいけど」

「・・・おい坊主」

 

ラグナがしゃがんで子供と目を合わせた。子供は顔のゴツイラグナを見て少しビクッとしてしまった。

 

「母ちゃん、どんなカッコだった?」

「ど、どーゆーこと?」

「あー、髪が長いとか服が白いとかそういうことだ」

「え、えっとかみはながくてくろくて、あとちゃいろいちっちゃいバッグをもっていて。あとふくはくろかった」

「分かった・・・おいアンタ。あそこに俺の弟がいるからあいつの近くで待っててくれ」

「えっ!?でも・・・」

「こいつを弟と一緒に待たせても仕方ねーだろ。少しでも一緒にいたアンタの方がまだ安心だ」

「うん、じゃあお願いしてもいいかな?」

「ああ。おいジン!こいつらのこと、頼んでもいいか?」

「いいけど、一人で探すの?兄さん?」

「ンなわけねーだろ。サヤたちにも協力してもらうよ」

 

そう言ってラグナはのえるに連絡して事情を話し、全員で子供の親と少女の友人を捜索した。しばらくすると母親がラグナと接触することができ、無事に親子が再開することができた。母親に連れていかれた子供は振り返りながら別れを告げて去った。

 

「バイバイ、はなのおねえちゃん!じつはいいひとのおにいちゃん!」

「実は、は余計だ!」

「あはは、でも本当にありがとう。おかげで助かったよ!」

 

少女は笑顔で別れていく子供を見て安堵の息を下した。しかしラグナは彼女の言葉を否定する。

 

「まだ終わりじゃねーよ」

「え?」

「アンタもはぐれたんだろ?友達に連絡を取れないのか?」

「あ、そうだった!あの子の親を探すのに夢中になってしまって・・・」

「で、取れそうか?」

「えっと・・・電源が切れているみたい」

「手伝うか?」

「ううん、なんとか自分で見つけるよ。ありがとね」

「・・・分かったよ。まあ頑張れ」

「ありがとう!」

 

少女はラグナたちの元を去っていき、ラグナは刃と合流してきたのえるたちとともに花火を見に行った。

 

 

 

 

 

「わっしーがこういうのについてよく知っているよね~」

「一週間前から前準備をしているもの。絶対に思い出に残るものにしたいからね」

 

須美がみつけてくれたスポットを目指してラグナたちは移動していた。須美の話によるとこれから向かうポイントは一番花火が見える場所らしい。それを聞いてみんな楽しみにしていた。そうしてポイントにたどり着いた。

 

(確かにここならよく見えそうだな・・・ん?あれは?)

 

ラグナが少し離れた位置に目を向けると女子の一グループが困ったような顔を浮かべながら話し合っていた。同じように気付いた銀たちが彼女たちに話しかけた。

 

「どうしたんだ?なんか困ってるみたいだけど?」

「実は・・・友達の一人とはぐれてしまって・・・いくら連絡を取ろうとしても携帯から返事が来ないんです」

「え!?じゃあ探さないと!」

「・・・おい」

「ヒャッ!?だ、誰ですか貴方!?」

「ああ、落ち着いて。こいつ悪い奴じゃないから。で、どうしたんだよラグナ?」

「・・・そのはぐれたやつって赤髪の花びらの髪飾りつけた女か?」

「!!はいそうです!どこで見かけました!?」

「最後は神社の方で分かれたんだけど、その後は知らねえ」

「兄さん、もし花火のところに行くと分かっているならここに来るんじゃないか?」

「なるほどな。じゃあ俺とジン、あと友達の何人かは探しに行くぞ。あいつは一応お前の顔も知っているはずだからお前を見つけても大丈夫なはずだ」

「アタシらは?」

「お前らも動いてもいいけど顔を知らねえからあまりここから離れるな。この混み具合じゃあ合流が難しい。逆に見つけたら俺たちに連絡してくれ」

「分かったわ、気を付けて」

 

 

 

 

「ったく。あの野郎、どこに行きやがった?」

 

先ほど分かれた少女を捜索するラグナだったが、いまだに見つかった報告はない。まさか巫女並みの方向音痴で探すつもりが徳島の外れまで行ってしまったなんてないことを切に願っていると、

 

「・・・やーっと見つけたよ。このバカ」

「あ・・・さっきのお兄さん」

 

少女が少し涙目になりながらもなんとか花火大会の会場へと進もうとしていたようだ。どうやら刃の予想通りだったようだ。

 

「おら行くぞ。テメェのダチを見つけた」

「ホント!?」

「ああ。もしもしジン。俺だ。例の子を見つけたぞ」

 

他の友人たちに連絡しながら仲間たちが待っている場所へと向かっていくラグナ。少女はそんなラグナに左手で引かれながらついていった。少女はラグナの背中をみる。最初は少し怖い人かと思ったが困っている自分をなんだかんだ言いつつも最後まで手伝い、最後にはこうして自分を助けてくれた。こんな人が本当にいるんだ。そんなことを考えていた。その姿はまさに今も自分が憧れる存在のものに見えた。

 

「ありがとう・・・助けてくれて」

「単にテメェが人に頼らねーことが問題なんだよ。そりゃテメェの厄介ごとに巻き込まれるのは御免だが、見知ったやつがさらに厄介なことになっている方が迷惑だ。そうなる前にとっとと助けを求めやがれ。そうすりゃ俺たちも対応しやすいだろうよ」

「・・・あはは」

「なんだよ?急に笑って、気持ち悪ぃ」

「ううん。ただ思ったんだ。貴方はとっても優しい人なんだなって」

「はあ?何言ってやがるんだテメェ?今の会話のどこにそんな風に感じる要素があったよ?」

「だってさっきの男の子のときも私のときもここまで一生懸命動いてくれたんでしょ?それに言い方はちょっと厳しいけど心配してたってことだよね?そんなことが言えるのは優しい人だからだと思うんだ」

「へいへい。そうですか」

 

少女の自分に対する評価を聞いてラグナは頭の隅である女の子の言葉を思い出す。あの世界で同じく会ったばかりの自分に対して同じような言葉を掛けたその娘のことを。そんなことを考えていると花火が上がり始めた。

 

「そろそろ行くぞ。ぐずぐずしていると終わっちまう」

「うん・・・・ねえお兄さん」

「なんだ?」

 

少女の問いにラグナが耳を傾ける。花火が打ちあがる中、少女は「それ」を口にする。

 

「お兄さんってまるで『勇者』みたいだね」

「・・・生憎そんな立派な人間じゃねーよ」

「そんなことないよ!見ず知らずの人のために自分から行動して助ける人だもん。悪い人のはずがないよ」

「そうかい・・・じゃあそう言うことにしておくよ」

 

ラグナはそんな少女の言葉を聞きながら歩を進める。そろそろみんながいる場所だ。

 

「私の名前は『結城友奈(ゆうき ゆうな)』!お兄さんの名前は?」

「・・・ラグナだ」

 

花火の轟音が轟く中、二人はそれぞれの仲間たちと合流することができた後に別れた。再び会うことになることを知らずに・・・

 




いかがだったでしょうか?
今回出てきた一人目のゲストはジン兄様に一途な少女、ツバキ=ヤヨイです。
以前の世界ではかなりラグナに対しては冷たかったが、ここでは早い段階から知り合うことができたので、ラグナに対する態度も原作よりは軟化しています。

もう一人は勇者であるシリーズを知る皆さんならご存じだろう結城友奈。彼女だったからこそ、勇者の章でみんな諦めなかったんだろうな~。彼女たちの出番はまだ先の話ですがこの出会いがどうラグナたちに影響を与えるのか・・・

それではまた

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