花見イベントが始まりましたね。前編の一枚絵のぐんたかがただひたすらに尊い…実はこっちでちゃんと再現出来てるかが不安だ…
さて今回は海での、というか海でもカオス回。大分ギャグの方に振り切らせていただきました。一周年記念だから色々展開に悩んで長くなってしまったよ…それではどうぞ。
お詫び:一年やってまさかの初めての誤投稿…最初の投稿に気付いた皆さん、お騒がせしてすみませんでした。
水着の買い物をした翌日、ラグナたちは丸亀市近くの海水浴場へ来ていた。蒼海から棗が人魚のように飛び出る。早く入りたくて仕方なかったからか、既に黒いビキニタイプの水着に着替えていた。
元々は制服姿のまま海へ飛び込む予定だったが、結局皆の説得に応じて海水浴用の水着を買ったのだ。それでも華麗な泳ぎは健在だった。
「うーーーーみだーーーーッ!!!」
それに続いて動きやすそうなセパレートを着た球子が元気よく海の方へと駆けて行った。それを追って白いビキニにパレオを着た杏が叫んだ。
「タマっち先輩~~!!準備運動しないと怪我しちゃうよ~~!!」
「えー。それじゃ棗に遅れちまうじゃんか」
「球子、杏の言う通りだぞ。思わぬ事故が起こった後では遅いからな」
二人についてくる形で若葉もやってくる。彼女は結局ひなたの勧めてきた通りのビキニタイプを選んだが、スポーツ用具店にありそうなデザインで実際、事情を何も知らない人間から見ればアスリートと勘違いされるだろう。
「ふふふ。そういう若葉ちゃんも早く泳ぎたくて仕方がなさそうですよ?」
「そう言って夢中になってカメラを構えている貴女も楽しそうよ?」
「それはそうですよ!水着若葉ちゃんがカメラに収められるこの貴重な時間…逃すわけには行きませんから!!」
そんな若葉をひなたがカメラで収める。彼女は同じくビキニを着ているが、こちらは上に白いTシャツを着ている。それに対して、日傘を差しているレイチェルは黒いワンピースタイプの水着で猫を模した大きな浮き輪を抱えていた。
「そうだったのね。それでは私は一足先に海へ行くわ」
「サンオイルの方は大丈夫ですか?レイチェルちゃんに日光はあまり良くないと思うのですが…」
「それなら大丈夫よ。既に杏に塗ってもらっているわ」
「そうだったんですか。それでしたらゆっくり楽しんできてくださいね」
「ええ。写真を撮る時は言ってちょうだい。ちゃんと目線を返すわ」
「うふふ、ありがとうございます。その時は目一杯可愛く撮りますからね」
レイチェルが海岸へ向かっている近くでは水都と美佳が一行の拠点となる場所にパラソルを設置していた。水都はフリルの付いたセパレートを着ていて、美佳はというとビキニの水着の上に上着を着ていた。
「パラソルはここの方が良いのかしら、藤森さん?」
「そうですね。この辺りで良いと思いますよ、花本さん。でも良かったんですか?準備なら私たちで出来ますから海へ遊びに行ってもいいんですよ?」
「ううん、良いのよ。私、水が苦手で海に入れないから」
「それじゃあ今回来たのって…」
「付き添いというのもあるけど…郡先輩とも遊びたかったから」
「そっか…それじゃあお互い、今日が初めての海の思い出ですね!」
「お互い?」
美佳は意外そうに水都の方を見る。歌野を長年支えてきた水都ならば多くの思い出があるだろう。当然海での思い出があると思ったが、あることを思い出した。
「そっか…諏訪は長野方面だから…」
「はい。海が無いんです。だからこういう風に二人で海で遊ぶのは初めてで」
「そういうことね。それなら楽しい思い出が出来るよう、頑張りましょう」
「おいミト、ヨシカ!荷物はここで良いか!?」
二人が声の方へ目を向けるとラグナがクーラーボックスや荷物を運んできているのが見えた。いつもの赤コートに似た紅い上着と海パンを着ていた。その姿を二人は見つめていた。
「何だよ。俺の身体に何か付いてんのか?」
「いえ…先輩はかなり鍛えているようで、少し驚いただけです」
「鍛えてる?」
改めて自分の腹や胸を見る。長い戦いと鍛錬の日々を通じて彼の肉体は全盛期に近いものになっていて、腹筋や胸筋が目立つようになった。身体には大きな傷を何個かそれなりに残しているが、それほど気にするものでもない。
(今考えてみれば…『この時代』に来てからもう四年になろうとしてんだな…)
明日は7月30日。バーテックスが人類を襲撃した始まりの日にして、ラグナが精霊だった若葉によってこの時代へ飛ばされた日である。あの頃から戦いの連続だったが、同時にかけがえのない思い出も作られていったこともあって、時間があっという間に感じていた。
「ラグナさん?」
「あぁいや、済まねぇ。ちょっとこれまでの戦いを思い返していてな」
「先輩のこれまでとなると…相当長いのでは?上里さんからも聞いていますが、7・30天災の頃から戦っていたそうですよね?」
「まぁな。アイツとワカバに逢ったのもその頃だ」
「でも同行せずに一人でどこか行ってしまったんですよね…」
当時のことは水都たちも覚えている。神々の戦いの前兆に世界各地で自然災害が多く発生していて、混乱に満ちた世界だった。そしてそこへバーテックスの襲撃。勇者や巫女の覚醒があったとはいえ、あらゆるインフラが麻痺し、人類の敵が跋扈していた世界は地獄そのものだった。
そんな世界で旅した当時のラグナの正気を二人は疑うしかなかった。去年諏訪の民を歌野と一緒に導いた水都は猶更そう感じた。
「そして友奈さんたちに逢った後は定期的に壁の外の人を保護しては四国へ連れてきていたんですね」
「そんで、ミトたちに逢ったってわけだ」
「あの時は本当にありがとうございました。あのメモや荷物のおかげで、皆無事に四国へ辿り着けました」
「何言ってんだよ、テメェとウタノがやってのけたんだろ?もっと自信出して良いんだって。アイツにまた言われるぞ」
「そうですね…ありがとうございます」
懐かしい出来事を思い返しているとそこへ水着を着た千景と友奈、更にビスチェビキニを着た雪花にパンツタイプビキニを身に付けた歌野も集合する。
「荷物を運んでくれてありがとう、ラグナ!」
「気にすんなよ。力仕事ぐらいなら出来るしな」
「それでもありがとう!ところで、もう準備って終わってたりする?」
「はい。丁度ラグナさんが持ってきた荷物で全部ですが、どうかしましたか?」
「せっかくだから美佳ちゃんとも遊びたいなって思って。ぐんちゃんが来る時に少し話してくれたからどんな人かなって興味持ったんだ!」
「い、良いんですか?でも私、水が苦手で…」
二人とも水着に着替えて海に入る気であることを察して美佳は少し躊躇した。だがその時、友奈はあるものを見せた。
「ジャジャーン、ビーチボール!さっき空気を入れてきたんだ!」
「なるほどね…これなら態々海に入らなくても楽しむことが出来るわ」
「そういうこと!ね、一緒に遊ぼ?」
自分に向かって朗らかに笑う友奈を見てから美佳は千景と顔を合わせる。そんな彼女に千景は優しく微笑み返す。
「高嶋さんも誘っているし、海に来たのに何もしないなんてもったいないわ。一緒に思い出を作りましょう」
「…分かりました。行きます」
短い返事だが、美佳は嬉しそうに二人と一緒に砂浜の方へ駆けて行った。その様子をラグナと雪花が見守っていた。
「これで美佳の勇者に対する距離感が少しでも縮まれば万々歳だけどね」
「ユーナとチカゲなら大丈夫だろ。今は見守ろうぜ」
「見守ろうぜって…中年のおじさんみたいなことを言っちゃってるよん?」
「おっさんじゃねぇよ。こっちじゃテメェらとそう変わんねぇだろうが」
「でもラグナって世界をジャンプする前のメモリーも持っているせいか、時々同年代と感じない時もあるのよね。偶に諏訪にいるお爺ちゃんたちとかオジサンたちと話してる感じがするわ」
「それフォローになってない気がするよ、うたのん」
「大人らしくて頼りになるってことよ!」
そう笑っていると真鈴が後ろから合流する。タンキニに身を包んだ彼女が海岸を眺めていると開口一番に言った。
「いや~、絶景哉、絶景哉~」
「真鈴さん、どうしたんですか?」
「その顔を見ている限り、嫌な予感しかしねぇが」
実際真鈴の視線の先にあったのは海辺ではしゃいでいる水着姿の少女たちで、彼女の顔は実にだらしないものになっていた。
「う~~~ん!夏と海と来れば水着なのは知っていたけど、これだけの山が見れるなんて~!私、来てよかった!!」
「アハハ、タマちゃんと同類だねぇ、こりゃ」
「そこらのオッサンよりオッサンっぽいぞ」
「ちょっと!?仮にもJKである真鈴さんにオッサンは無いでしょ!!?」
謂れの無い烙印を付けられそうになった真鈴は抗議するが、全く説得力がなかった。
「安芸さんもそういうことを言わなければもっと年上に見られるのに…」
「わ、若い時はこれくらい元気で良いのよ」
少しタジタジしていると真鈴の視線に千景と友奈に混ざってビーチバレーしている美佳が映った。少し不器用そうにしながらも楽しそうな彼女を見て真鈴もどこか安心したような顔になる。
「良かった。花本ちゃん、結構元気になってきたみたいね」
「…あっちにいた時はもっと酷かったのか?」
「そうね。黒き獣が出てから何日も襲撃が続いた時期があったでしょ?あの頃は凄く不安定だったわ」
大社から出ることが基本的に許されていない巫女たちは外の情報を知るには大人たちから聞くしかない。しかも樹海化は自分たちの知らないところで発生してしまうため、勇者の無事を案じる巫女たちは気を休めることが出来なかった。
「しかもそこへ郡ちゃんの件もあって、一時期すごく不安定だったんだけど…この前会ってから何とか落ち着いてきたのよ」
「そうだったのか…」
自分の知らないところでも大変な思いをしていた人間がいる。そう痛感するラグナであった。
「だからま、アタシもアンタたちと逢うようにアドバイスして良かったと思ったのよ」
「俺にっつーかチカゲに会ったおかげで元気になった気もするけどな…まぁそう言われたら悪ぃ気しねぇや」
「それにアンタのところって、黙り込んでいる暇とかなさそうだしね」
「どういうことだよそれ」
「アハハ。何だか安芸さんって先輩というより花本さんたちのお姉さんみたいね!」
歌野が冗談っぽく言うと水都が補足してきた。
「みたいというか、実際弟さんいるんですよね。安芸さんって」
「そうなのか?」
「そだよ。アタシに歯向かってばっかりの生意気なヤツ」
「弟なんてそんなモンだろ。俺のとこもそうだったし」
命を狙ってくる時点で最早生意気の域を超えている気もするがラグナは真鈴の言わんとしていることが良く理解出来た。
「本当、ちょっと前は姉ちゃん姉ちゃんって言いながらべったりだったのに、気づいたらお前とか名前で呼んで来んの。こうしている内にいつか態度だけじゃなくてタッパもアタシを越えていくのかねぇ?」
「ババクセェぞ、その台詞。下の弟妹が知らねぇうちにいっちょ前みてぇなツラになって驚くのは分かるけどな」
「婆臭いは余計だから!アタシまだピッチピチだから!」
「マグロとかカツオみてぇにか?」
「活きの良さのことじゃないわよ!いや、活きは良いわよ!!いや違う…あれ、どっち!?」
自分でも何を言っているのだか分からなくなってきている真鈴は一度落ち着くために深呼吸する。
「だけど…そこが可愛いのよ。だから…もっと元気になって欲しいわ。今でも大分良くなった方だけど」
「…大変なんだな」
「うん…あの子、天恐なのよ。最後に見た時は苦しそうだったし、正直心配なんだ…それにこの前の黒き獣のこともあるし…」
「マスズ…」
「それでも元気にやっているみたいよ。お父さんによると最近は帽子を着けていればちょっとした遠出なら出来るようになったみたいなの」
弟の快復について話す真鈴を見て、ラグナは未来にいる弟妹たちを思い出す。物心ついた頃から生まれの親が死んでいる自分にとって二人は唯一の肉親だ。自分も沙耶が病気になったら度々様子を見ていたし、連絡が取れなくなった二年間でも二人のことが心配で仕方がなかった。
「気兼ねなく外に出られるようになったら良いな」
「うん。そん時は皆も家に来なよ。そんで麻雀しよ!家は雀荘でアタシも小さい頃からやってるから強いよ~?」
「その時はお手柔らかにね。出来るなら教えながらで頼みますよ」
そんなことを話してからしばらく経つと若葉が自分たちを呼んでいるのを見つけた。何事かと歌野がそっちの方へ行くと何やら相談した後に納得して自分たちの方へ戻ってきた。
「おかえり。ところでワカバが何だって?」
「スイカ割りをやるから用意してって言ってたわ!皆は先に集まってて!」
「うたのんがスイカを持っていくなら私、棒とハチマキを持っていくよ」
それを聞いラグナたちはスイカを歌野たちに任せて若葉達の元へ向かった。他のメンバーも集まっていてこれから始まることを楽しみにしているようだ。
「これで皆集まったのか?」
「ああ!!それで若葉!!スイカはどこなんだ!?タマは待ちきれないぞ!」
「そう急かすな。ちゃんと歌野と水都が用意してくれたんだ」
「皆~!待たせたわね!」
歌野が運んできたスイカはそれはもう立派なものだった。身がぎっちり入っていて、陽の光が反射する様はまるで輝いているように見えた。
「これはまた、立派なスイカですね」
「私の畑で育てたスイカですもの!今日はベストのを二つ持ってきたわ!」
自身の農作物に強い愛着を持つ歌野は誇らしげに言った。丹念に育てた甲斐もあって叩いた時に景気の良い音が鳴った。
「それではこれがハチマキとスイカを割るための棒です。まずは誰からやりますか?」
「私がやろう。何、こう見えて私はスイカ割りは得意なんだ」
「では私がスイカを置きますね」
若葉が水都から所定の物を受け取るとハチマキを巻いて目を隠し、棒を構える。スイカは彼女から離れた場所にひなたが安置した。
「若葉ちゃーん、右だよー!」
「行き過ぎだー、もっと左に寄れー!!」
「それほど逸れているようには見えないが?」
「何言ってんだよ棗、スイカ割りは妨害も付き物だろ?」
本当の情報の中で虚偽の情報も混ざってしまっていることでこのスイカ割りはかなり難易度が高くなってしまった。それは若葉にとって逆境のはずなのに彼女の幼馴染であるひなたはただ黙って見守っていた。
「助けなくても大丈夫なの、ひなた?貴方が入っていけば若葉も多少はやりやすいと思うけれど」
「はい。あれで若葉ちゃんを惑わすことは出来ませんから」
レイチェルの問いにひなたはそれだけ言って笑った。その言葉通り、色んな言葉が飛び交いながらも若葉は一切惑わされることなくスイカの方へと向かう。スイカの前まで来ると大きく棒を振りかぶり、力強い掛け声とともに振り下ろした。
「面ーーーーーッ!!!!」
スパーンと鋭い一撃を入れるとスイカは大きなヒビが入ってそのまま割れた。見事な一撃に感嘆の声が上がる。
「流石ワカバだな。一発で仕留めやがった」
「というかまるで最初からどこにあるのかが分かっているかのように一直線に向かっていったわね」
「微妙な気配の違いで分かるんだ」
「もう超人の領域に入り始めている気がするわ…」
この娘の行き着く先は一体どこなのだろうか。そんなことを真面目に考え始めた千景を余所に次のスイカの準備を進めていた。
「それじゃあ乃木ちゃんが割ったスイカを今上里ちゃんたちが切り分けている間に次のチャレンジャーを決めようか?」
「なら俺の番だ!」
意気揚々とラグナが立候補する。それを聞いてレイチェルが彼に提案を出してきた。
「ねぇラグナ。せっかくだから勝負をしないかしら?」
「勝負?スイカ割りでか?」
「ええ。私が置いたスイカを貴方が割れるか、勝負してみたくはなくて?」
いまいち彼女の言っていることが理解できないが、あの黒い笑みは恐らくとんでもない難題を吹っ掛けるつもりだろう。それを一番理解しているのはラグナだ。
「テメェの勝負になんざ乗るかよ。どうせロクなことにならねぇ」
「あら。無様に尻尾を巻いて逃げるだなんて、これでは私の不戦勝かしらね」
「いくらあの人でもそんな見え見えの挑発「上等だ!!その勝負、受けて立ってやらぁ!!!」やっぱり乗ってしまうのね…」
「フフフ…そうこなくては。貴方…いいえ、貴方たちがこの難題にどう挑むのか、見せてもらうわ」
あまりにも単純なラグナに千景は溜息を吐くが、同時に何とも彼らしい反応に少しくすっと笑った。ラグナは早速若葉からハチマキと棒を受け取ると構える。レイチェルもスイカを用意してゲーム再開。
「大丈夫でしょうか…あそこでは少し遠い気もしますけど?」
「まあ良いじゃん、伊予島ちゃん。これはこれで面白そうだし、ラグナ君なら何とかなるでしょ」
「なんというか…結構意地悪な場所に設置しましたね、あの女の子」
「レイチェルがサドなのはいつものことだけどな」
「いやね球子。私と遊びたいのなら素直にそう言えば良いものを」
「ヒェッ!?ヤ、ヤダナ~ダイジョウブデスヨ!タマはタマに言うタマジョークだから!」
うっかり失言してしまった球子にレイチェルは優し気に微笑みかけるが、それが逆に球子に恐怖を与えてしまったようだ。
「ラグナ、右だー!右に行けー!!」
「こっちか!?」
「ああ、正しい方向から外れていますよ!もう少し左に回ってください!」
「じゃあこうか!?」
ラグナは周りの声援を頼りにスイカのある位置を探す。左右を行き来しながら正しい方向を定めていく。その様子をレイチェルは楽しそうに見ていた。
「あーそこそこ!!そんな感じで真っすぐだよー!!」
「おっしゃー!このまま突っ走るぜ!」
そうしてラグナはスイカに向かって前進する。何とかスイカのある場所近くまで来ると歌野が叫んだ。
「ラグナ、後もう少しよ!」
「よし、じゃあここで振り下ろすんだな!」
「いいえ、そこでジャンプして頂戴!!」
「任せろ!ジャンプして…は、ジャンプ?」
何だかスイカ割りでは聴き慣れない命令が聞こえたような気がする。訳が分からず混乱したラグナに水都がフォローを入れてきた。
「ラグナさん!スイカは今、ラグナさんの前方『上空』にあります!」
「上空って何!!?そんな場所にそもそも置けんの!?つーかスイカ割りでスイカを割る奴よりも高い場所に置いて良いの!!?」
水都たちの言うようにレイチェルが設置したスイカは宙に浮いていた。シルフィードを使うことで下から風を発生させて浮かしていたのだ。なおご丁寧にスイカの下側は紙に包まれているので、落下しても問題ない。
「クソッ、とんだ3Dスイカ割りだぜ!!浮いているとかアリかよ!?こうなったら」
「因みにハチマキを取って位置を確認しようとしたら貴方の負けよ」
「チクショウ!!やってやるよ!!」
「何もそこまで勝利にこだわらなくても良いと思うのですが…」
「よっぽどあの女の子に負けるのが嫌なのね…」
「だったらアタシたちで勝たせるわよ!!」
スイカが厄介な位置にあることが分かったところで試合再開。様々な高さのジャンプを繰り返して周りの声から大体の高さを計っていく。
「ラグナー!まだまだ高さが足りないよーん!!」
「うおりゃッ!!」
「もっと高く跳ぶのよ!!」
「でぇいッ!!」
「そこだ!!そこまでいけば十分割れる!!」
最後の指示を聞いてラグナは念のために跳ぶ力を確認すると、その後、少し力を込めてジャンプし、一気に棒を振り下ろしながら落下する。
「ナイトメアエッジ!!!」
地面に叩き伏せられたことで見事にスイカは割れ、豊かな紅い果汁がラグナの顔にブチ撒かれる。これで二つめのスイカも割ることが出来た。
「やったー!!これでラグナの勝ちだよ!」
「見事なチームワークね」
「当たり前だろ、俺たちを誰だと思ってんだよ」
「もうラグナさんったら”ッ!?」
杏は何かを言おうとしたが、その前に言葉が詰まってしまった。いや、レイチェルを除く全員が息を呑んだ。くるっと自分たちの方へ向いたラグナの顔や胸には真っ赤な果汁が掛かっていて、棒からも紅い雫が滴っていた。つまり何に見えたのかというと
「きゃあああああああ!!!?お化けーーーーーーー!!!!」
「ウェッ!!?お化け!!?」
「来るな来るな!!何か怖い!!」
あまりにも不気味な様相の彼に他の勇者たちも思わず後ろへ下がる。だがそれと同じくらいパニックに陥っている人間がいた。
「おおおおおお化けがどこだって!!?」
「ておい!!お前もか!?」
「どどどどこにいるんだ!!?クソ、何も見えねぇ!!」
「そんなものはいないから貴方はまずそのハチマキを取りなさい!」
レイチェルの助言通り、ラグナは何とかハチマキを取ろうとするが、手やハチマキそのものがべたついたりして取れなかった。これは不味いと判断したラグナは何とか他の者たちに協力を仰ごうと声のする方へ向かった。
でも今の彼は木の棒を片手に持って目隠しをした果汁まみれの状態だ。どうみても不審者にしか見えない。これに他の女子は逃げるしかない。
「誰か取ってくれー!!」
「嫌だぁぁぁ血だらけのお化けぇぇぇ!!」
「せめて海にでも入って洗い流してきてぇぇぇぇ!!」
「どこ!!?お化けも海もどこ!!?」
混沌に満ちた空間で少女たちの悲鳴が海岸に響き渡る。埒が明かない中、ラグナは彼女たちとは別の方向へと向かった。それは偶然にも海の方だった。そのまま直進した彼は沖の方に行った。
「ふぃーーー…な、何とか取れたか…ったく、何がお化けだよ…どこにもいねぇじゃねぇか」
「ラグナーー!!もう大丈夫―!?」
「まあな!!」
自分を呼ぶ友奈の声が聞こえるとその方へ手を振る。周りを見てみるとそれなりに陸から離れた場所まで行ってしまったようだ。
「とにかく、これで何とか騒動が収まるわね…」
「アハハ…アレは怖かったね」
「でも、意外だったにゃ。ラグナってお化け嫌いだったんだね」
「…ホラーの類とかもあまり好きじゃないみたいよ。本人は意地を張って認めようとしないけど」
「そう考えますと、なんだか可愛いですね」
混乱が収束したことで安心した少女たちが雑談している時にラグナは海岸の方へ泳ぐことにした。
「上着がある分、少し動きにくいが、この調子なら取り敢えず何とかなるな。さてと」
岸まで目指すか。そう考えていると突然足首に異変が起こる。
「ちょっ!?足動かねゴボボボボ…」
浮力を保てなくなったラグナは腕をバタつかせて何とか息を継がせようとしたが、足の方が動かないために思うように身体が浮かない。そんな彼の様子の変化に仲間たちも気づいた。
「ちょ、ちょっと!?先輩のあの反応、まさか溺れてるんじゃ!!?」
「えっ!?」
「本当だ!早く助けに行かないと大変なことになるぞ!」
それぞれが対応策を取ろうとしている中、少女たちで一番素早く行動したのは棗だった。
「済まないレイチェル!その浮き輪を借りるぞ!」
「持っていきなさい」
言うが否や、レイチェルから浮き輪を受け取った棗はすぐに海に飛び込んで一直線にラグナの方へと向かっていった。
カジキを彷彿させる泳ぎで瞬く間にラグナの方へと向かっていく。彼のいた場所の近くに着くと浮き輪を一旦置いて潜水を開始。そのまま落ちていく彼を抱えて浮上した。海面に辿り着くと彼女はラグナを浮き輪に乗せ、それを押して海岸へと向かった。
「あ、棗さんとラグナだ!!」
「無事に救出することが出来たみたいですね!」
「二人を迎える準備をするぞ!まずはタオルだ!」
何とか浜辺へ戻ることが出来た棗は若葉と一緒にグロッキーのラグナを抱えてパラソルのある方へ運んだ。彼の足にはワカメが絡みついており、どうやらそれで身動きが取れなくなったようだ。
「ラグナさん!!しっかりしてくださいラグナさん!!」
「返事をしてください!!大丈夫ですか!?」
何とか身体が冷えないように上着を脱がしてタオルに包ませた後に声を掛けるが、ラグナから全く返事が返って来ない。何かがおかしいと感じた友奈は一度ラグナの顔まで耳を近づけると表情が変わった。
「大変だ!!息してないよ!!」
「ならすぐに人工呼吸せね…ば…」
それに思考が行き着いた途端、若葉の言葉が詰まった。恐らく他の皆も何故そうなったのかを察したのだろう。
「…こういう場合は…誰にやってもらった方が良いんでしょうか?」
「こ、この中で人工呼吸の経験がある人~」
友奈の呼びかけに対して棗だけがそっと手を挙げた。それは当然か。この場にいるほぼ全員がまだ中学生や高校生。寧ろこんな現場に出くわしたことのある棗の方が珍しい。
「仕方がない。こうなったら私がやろう」
「ちょ、ちょっと待って古波蔵さん!」
「どうしたんだ千景?」
「いや、だってその…流石に躊躇いがないというか…その…」
ラグナに人工呼吸する。それは必然的に口に向かって息を吹き込む必要がある。つまり
「か、彼と…く、口が…」
「そ、そういうことになるわよね」
「なぁ、あんず…それって要は…」
「…キスしちゃうってことだよ」
「き、キス!!?棗と…ラグナがか!!?」
はっきり言ってしまうとその場の全員が赤面した。いくらバーテックスと戦う勇者とはいえど、思春期の女子。異性にそういったことをするのは流石に躊躇するくらいには恥ずかしいようだ。
「…そう言われたら少し恥ずかしいな」
「でも、そうしないとラグナは助からないし…」
「そ、そうよね…高嶋さんの言う通りよね…」
先ほどの自分の台詞と今の物が矛盾していることに悶えつつも千景は慌てる。このまま放置したらラグナは確実に死んでしまう。かといってこのまま棗に任せるのもモヤモヤしてしまう。今だに恥ずかしがる一同を見かねて、レイチェルが前に出た。
「仕方ないわね…私がやってあげるわ」
「え!!?でも…」
「心配しないで。私は下僕に接吻する趣味なんてないわ。これはただの施しよ」
「…そうね…じゃあお願いするわ」
「レイチェルちゃんって結構ラグナ君に対する当たりが厳しいね…」
「郡先輩も慣れているせいか、何も疑問に思ってないわ…」
「レイチェルちゃんはラグナに対してはいつもあんな感じだよ?」
「なるほどねぇ…じゃあ本当にツンデレお嬢様なんだ」
「何で私がこんな猿にデレているなどと言われるのかが理解できないのだけれど、もう始めるから少し離れて頂戴」
「多分そういうところだと思うぞ…」
球子が小さく突っ込んでいる余所でレイチェルはラグナの方へ近づく。彼の顔の左右に手を置くと同時に自分も近づいていく。
「おぉ。二人とも大人だねぃ~」
「まさかこんなところで映画の中だけだと思ったけど…本当にあるんだ…」
「…カメラは回すなよ、ひなた」
「それは野暮というものですから♪」
「キャーー!!まだかな?今かな?キャーー!!!」
「あんずは荒振り過ぎだーッ!!」
野次馬が騒がしい中でもレイチェルはラグナの方へ顔を近づけ続ける。そろそろ触れるか触れないかの距離になると息をスゥっと吸い込み
「いい加減目を覚ましなさい!!!」
「びrbりbりrびrびりrbりbり!!!!?」
一言説教を浴びせると同時に紫電をラグナの身体に流し込む。感電したラグナは時々骸骨の姿になったりした後に口から黒煙を少し吐くとすぐさま復活した。
「テメェ殺す気か!!!?」
「命を助けてやったのに随分な噛み付きっぷりじゃない。でも様子ならもう大丈夫そうね」
「俺、黒焦げになってんだけど!?うっかりウェルダンになりかけたんだけど!!?」
「だから妙にこんがりした匂いがしたのね。でも応急処置にAEDを使うのは当然でしょう?」
「あんなモン応急処置じゃねぇよ!!止めだよ!!つーか自分で自分をAED扱いすんじゃねぇ!!!」
「あら、それは悪いことをしたわね。貴方のことだから、適当に刺激を与えればすぐ復活するかと思ったわ」
「人を昭和の家電みてぇに言うんじゃねぇ!!俺はもっとデリケートだ!!」
「そんなに自称デリケートなら毎回毎回不用意に生死の境を彷徨わないことね」
目覚めは最悪だったが、ラグナの様子から彼がピンピンしていることに気付いた他のメンバーは安堵する。
「でも本当に無事で良かったよ…」
「そうだな。あの時はマジでお陀仏かと思ったぜ」
「あそこはどうやらワカメの発生地だったようだ。次は気を付けるんだぞ」
「あ、ああ…てことは、テメェが助けてくれたのか。ありがとな」
「海で仲間が死ぬのは嫌だからな。それに私だけでなく、レイチェルも尽力してくれたぞ」
それを指摘されてラグナはレイチェルの方を見る。その視線に彼女も気づいた。
「何かしら?」
「…やり方はまッッッたくもって納得できねぇが…助けたことについてだけは礼を言うぜ。助かった」
「…相変わらずの減らず口だけれど、三大珍獣が勢揃いすることよりも珍しいものを見せたことに免じてその謝礼を受け取っておくわ。どういたしまして」
お互い素直ではないこともあって余計な一言を入れているようにも感じるが、二人はそれで満足したのか、特にそれ以上何も要求はしなかった。周りが落ち着くと千景があるものに気付いた。
「その腕…」
「あん?…ああ、これか」
それはラグナの右腕だった。さっきは一連の騒動もあって他の者たちに気を掛ける暇がなかったので何も言われなかったが、見るとそれは何重もの封が巻き付けられた、真っ黒な腕だった。レイチェルはその正体をいち早く察した。
「…こうして貴方の魔道書を直に見るのは初めてね」
「…言われてみればそうだな。別に特別見せるモンでもなかったし」
「ではこれが…」
「ああ。蒼の魔道書だ。つっても今は俺の右腕だけどな」
直面すればその悍ましさがひしひしと伝わってくる。右肩から下には人間の肉だと思われるような場所が無く、腕の形をした黒い物体と説明された方が分かりやすいだろう。
「…これまでもラグナさんの腕のついては何度も聞いていましたが、こうして見るのは初めてですね…」
「…見せびらかすモンでもねぇからな。それにこんなの見ても良い気しねぇだろ」
それを見て千景が心配そうに聞いた。
「…本当に大丈夫なの?どこか痛んだりとか…」
「それに関しちゃ問題ねぇよ。最近は機嫌が良いみてぇだし、制御のコツも掴んできたんだ」
実は千景と戦闘訓練している間もラグナ自身は魔道書の制御に精を出していた。人に物事を教えるとなると、当然ながら自分もそれが出来るようになる必要がある。だから当然暴走の危険性を少しでも減らすように自分でも鍛錬していた。
(あっちにいたおかげで色んなことを思い出せたんだよな。修行していた頃…それとガキだった頃のこと…)
そんなことを思い返しているとひなたが別のことを指摘した。
「違いますよ、ラグナさん。千景さんは勿論それについても聞いていますが、それ以上に先ほど溺れかけていたのにもう立ち上がっても大丈夫かについて聞いているんです」
「なんだそっちか。そいつなら心配ねぇよ。この通り、バッチリだ」
「だったら休憩にスイカを食べてから皆でビーチバレーしようよ!ちょうどネットがあるところもあるみたいだし、この人数なら二チームに分かれることが出来るよ?」
友奈の提案を聞いてラグナは上着を再び羽織る。
「そいつは良いな。面白そうじゃねぇか」
「では巫女である私たちは審判と観戦としましょう」
「そうね。それに勇者の皆が試合したら見ごたえがありそうだわ」
「ンじゃあ一回休んだら早速行くぞ!!」
そう決まると一行はスイカを食べ終えてからビーチバレー用のコートへ向かった。それぞれのチームに分かれるとラグナのサーブからゲームが始まった。
「Aチームは若葉ちゃん、棗さん、千景さん、友奈さん、レイチェルちゃん。Bチームは歌野さん、雪花さん、球子さん、杏さん、ラグナさんでそれぞれ5人ですね」
「10点先取した方が勝ち。勿論勇者システムみたいな力を使うことは禁止ですね」
「覚悟しとけよテメェら!!手加減は無しだからな!!」
「遠慮はいらないわ!!来なさい!!」
「それでは試合~、始めッ!!」
開始の合図とともにラグナがサーブを打ち込んだ。飛ばされたボールは真っすぐ相手のコートへと直進した。それに反応した友奈が跳躍してボールを拾う。
「悪いけど、簡単に点はやらないよ!!」
「それよりボールが!!」
「レイチェルちゃん、お願い!!」
「任されたわ」
友奈が打ち上げたボールにレイチェルが向かってボールを相手コートへ打ち返す。小さな身体からは想像できない力でボールを打ち放った。しかしそれを球子が受け止める。
「球子さん、ナイスセーブ!!」
「ナッハッハッハ!!タマも今までとは違うのだ!!あんず、パース!!」
「う、うん!!それではラグナさん!!」
「任せろ!!!」
球子、そして杏から繋がったボールに向かってラグナはジャンプする。スパイクを打つ絶好の位置とタイミングだ。ラグナは渾身の力でボールを打ち込むと同時に叫んだ。
「デッドスパイク!!!」
勿論本当にデッドスパイクを放つわけではなく、戦うときのいつもの癖でつい名前を叫んでしまっただけである。だがボールには十分な力が掛かっていた。これで決まれば先制点だ。
「させない!!」
「何―ッ!!?」
「良いよー棗さーん!!」
しかし、それを棗が阻止する。自慢の長身と長い腕でボールをブロックしてラグナのスパイクを弾き返す。
「雪花さんそっちです!!」
「はいよー!!」
それを杏が咄嗟に指示したことで弾かれたボールを雪花が対応する。何とか拾い切って歌野へとつなぎ、彼女もボールを再び前方にいるラグナへとトスした。
「皆済まねぇ!!」
「ドンマイよ!次こそ決めちゃって!!」
「おう!!」
「そう簡単にはやらせないぞ!!」
「また防いで見せる!!」
再びラグナのアタックチャンスだが、それを待っていたかのように若葉と棗が待ち構える。
「若葉ちゃんたちがブロックの態勢に入りましたよ!」
「このままじゃまたラグナさんの攻撃が!!」
「どうだろうね、やられっぱなしで終わるような奴とは思えないけど」
「いったい何をしてくるのかしら…」
巫女たちが見守っている中、ラグナは再び跳ぶ。目の前には障害である二人の勇者。されど小細工は不要。真っ向勝負で打ち勝つのみ。
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
雄叫びを上げながらラグナは最初のものよりも強いアタックを打ち込んだ。無論若葉と棗の手と激突したが、二人のブロックを突き抜けてAチームのコートへと飛んでいった。
「しまった、防ぎきれなかったか!!」
「大丈夫…まだ取れる場所よ…ここは私が!!」
友奈は飛んでいくボールに向かって一目散に走っていく。刻一刻とボールは地面に近づいていく。それでも友奈は止まらない。
「とーーどーーけーーー!!!」
最後にはボールに飛び掛かって、友奈は振り絞った力でボールを自陣へと叩き返した。しかし高度が少し心もとないようだ。
「あーー!!皆ごめーん!!」
「大丈夫よ!!高嶋さんが拾ってくれたこのチャンス…無駄にはしないわ!!」
友奈が拾ったボールの飛ぶ方向には千景が構える。親友の努力を無駄にしないため、出来る限りボールを打ち上げた。
「くっ…!!少し打ち上げ過ぎたわね…あのまま入っても相手に拾われるだけだわ!!」
「いいえ。よくやってくれたわ、千景。それにまだ悲観するには早いわよ」
「アルカードさん?」
何やら策を思いついたレイチェルは若葉の方へ向くと驚きの指示を出した。
「『飛びなさい』、若葉!!」
「承知した!!棗さん、手伝ってくれ!!」
「応!!」
あの少ない言葉数だけでレイチェルの意図を若葉は掴んだらしい。しかし、ボールがある場所はとても人間が届く高さではない。しかし、若葉は不敵に笑う。
「安心しろ、千景、友奈!!お前たちの繋いだボールで必ず決めてみせる!!」
「乃木さん…」
「若葉、いつでもいいぞ!!!」
「良し、行くぞ!!!」
『おぉぉぉぉぉ!!!』
若葉は棗の方へ助走をつけて小さくジャンプする。棗は両手を組んで足場を作っていて、若葉はそこに着地するとそのまま彼女を宙へと投げ飛ばした。
同時に若葉もまたそこから大きく跳躍する。ぐんぐんと高度を上げていき、あっという間にボールのある位置へ辿り着いた。
「乃木ちゃんが跳んだぁぁぁ!!?いや飛んだぁぁぁ!!!!?」
「彼の義経の八艘飛びにも劣らぬ大ジャンプ!!!見事ですよ、若葉ちゃん!!!」
「人間ってあんなに高く飛べるものなのね…」
「違うよ花本さん!!?アレは若葉さんにしか出来ませんから!!!」
若葉の飛翔には観客席の方も大歓声を上げた。特にひなたは大興奮のまま、彼女の活躍の瞬間をハイスピードカメラで撮影していた。勿論試合の邪魔にならないよう、フラッシュは切っている。若葉のこのスーパープレーにはBチームも脱帽していた。
「フライング若葉ですって!!?」
「どんな運動神経してんの、あの娘!!?」
「クソッ!!太陽の光が邪魔で見えねぇ!!」
「皆さん、分散してください!!一ヶ所に集まるのは危険です!!」
『おう!!!』
杏の言う通り、Bチームは散らばったが、若葉のいた位置はちょうど太陽のある位置なので彼女を直視することは出来ない。これではどこに彼女がボールを打つのかが分からない。
「ここだぁぁぁぁぁ!!!」
相手のコートで隙のある場所を見つけた若葉は全力でボールを叩きこむ。ボールは真っすぐ狙った方向へ落下していった。
「やらせなーーーい!!!農業王ハイパーアターーーーック!!!」
だが直感を頼りに歌野が隕石の如く落ちていくボールに向かってダッシュし、辛うじてボールをAチームの方へ打つ。長い間一人で戦っていた時の経験がここで活かされたようだ。
しかしボールは空しくもネットに防がれ、そのまま落ちていった。これによって先制点はAチームのものになった。
「やったーー!!!これで1点だよー!!」
「次もこの調子で行くわよ!!」
『おーーー!!!』
「くそーーー!!!先にやられたぞーー!!」
「心配すんな、まだ1点だ!!すぐに追い越してやろうぜ!!!」
『おーーー!!!』
何はともあれ、勇者たちの士気は衰えるところを知らない。それぞれの位置へと戻っていき、今度は棗がサーブする番になってゲームが再び始まった。
時間が経つにつれて試合は次第に白熱していく。その時、美佳が仲間の巫女たちに一つ、疑問を聞いた。
「あの…皆。ちょっと聞きたいことがあるんだけど…」
「どうかしましたか、花本さん?」
「この試合…どうなるのかなと思って…」
「どっちが勝つかとかそういう話?因みにそれならアタシはBに一票入れるわ」
「私もBかな…」
「私はAですね♪」
「私もA…ってそうじゃなくて!!」
「あれ違う?じゃあ何かあったの?」
真鈴がいまいち彼女の言いたいことが掴めずにいると、美佳が少し小さい声で言った。
「さっきの激戦で漸く1点入ったのよね?」
「そうなるわね?それが何か?」
「あのボール…市販の、普通のボールですよ?」
「そうですね…私と若葉ちゃんが買ったから…」
「…ボールの方が耐えられるのかしら?」
『あ』
思わぬ落とし穴に気付いた巫女たちを余所に激闘はボールが破裂するまで続くのであった。
…なんだ、ただの必殺技無しのイナズマイ〇ブンか。それでも勇者システムも精霊も使ってないからまだ超次元さk…バレーボールにはなっていないという不思議。
次回からはいよいよ原作の流れへ少しずつ戻ります。尺の問題で今回の話では入れられなかった海水浴からの帰りでの話です。それではまた。