五月の誕生日イベのあの名乗りにすごい聞き覚えがあるのは私だけですかね…〇マ総統…P1グランプリ…鋼のシスコン番長…うっ…頭がっ…
さて、今回の話は原作最終決戦後半戦!!ある部分から是非イマジン(ツバキ=ヤヨイの中の人)の名曲、『深蒼』をBGMに読んで下さると嬉しいです!!それではどうぞ。
二体の大型は火炎弾と金色の矢の弾幕を展開していた。それをラグナと若葉はひたすら回避し、杏と棗は何とか巨大化している球子の旋刃盤の陰に隠れていた。
「チクショウ…いつからシューティングゲーなんて始めたんだ、タマたちは!!?」
実際弾幕の厚さによって超スピードで飛び回る若葉ですら敵に近づくことが困難だった。ラグナに至っては二体の攻撃を避けるだけでも精一杯だった。
サジタリウスの矢は一方向からでしか接近しないが、かなり速度があるので目視してから動いては回避に間に合わない。レオの火炎弾は逆に遅めだが、色んな方向から飛来してくるのでこちらも厄介だ。
「せめてどちらかの動きを封じれば、戦いやすくなるのだが…!!」
若葉は思わず舌打ちしながら二体を見据える。確かに自分が炎を纏えば火炎弾によるダメージをある程度軽減することができるかもしれないが、その最中に横からサジタリウスに撃墜される可能性もある。それでは意味がない。
それに油断できない敵はまだもう一体いる。頭上でちょくちょく角を錨のように下ろしてくるカプリコ―ンだ。こちらは単体であればさほど脅威ではないが、的確に角を刺しこんで地上で立ち回っているラグナの行動範囲を封じていた。
そこへレオが数百発の火炎弾を射出してラグナを攻撃する。彼は何とかカプリコ―ンの角の後ろに回って攻撃を凌いでいるが、火の球はお構いなしに角の表面を削り取りながら彼に襲い掛かる。それでも他への攻撃を止めることはなく、万が一近づかれてもサジタリウスも加勢してくるのだ。
それでも誰もやられていないために未だに戦況は勇者たちが不利のまま、膠着状態にあった。
「クソがッ…!」
ラグナは足を止めないまま、攻撃を避け続ける。周りに降りかかる火の球は大鎌で薙ぎ払われ、突き刺さってくる矢は樹海の根に突き刺さる。
そこへ再びカプリコ―ンは次々と角を地面に突き刺して彼の進路をせき止める。同じ戦法を取られて彼も苛立ちを覚える。
再び彼は角の後ろに隠れる。火炎弾は容赦なく彼のいる方へ向かっていく。爆発と炎は角の周囲で広がり、爆炎が晴れると欠けた角だけが残されていた。
「ラグナさん!!!」
「まさか…今のでやられちまったのか…!!?」
少女たちの心配を余所にカプリコ―ンは角を自分の方へ引き寄せていく。レオとサジタリウスも対象が一個無くなったことで漸く他の対象へ集中することが出来るようになった。
「ブラッドサイズ!!!」
だがその瞬間、カプリコ―ンの角の内、一本が落下してきた。驚いた少女たちは上空に注目するとそこでは敵の躰を駆け上りながら他の角を繋ぎとめる節を次々と斬り落としているラグナがいた。
どうやら爆炎に紛れて角の裏にしがみついてそのまま上にいる本体へと運ばれてしまったようだ。頂上まで登り切るとラグナは大鎌を大剣へと戻す。瘴気を纏わせてそのまま斬り下ろしてきた。
「ナイトメアエッジ!!!」
躰中を斬られたカプリコーンは成す術もなくラグナと共に地面へと落ちていく。高所からの落下の勢いで躰は両断され、崩壊した。
「これで後二体ぶっ飛ばすだけだ!!」
「安心するのはまだ早いです!!そこからすぐ逃げてください!!」
視界が晴れると待ち構えるようにサジタリウスが頭の上に常備されている弓矢を構えていた。次に放たれるのはこれまでとは比べ物にならない速さで、威力も格段に高い。正にサジタリウスの奥の手である。
「クソッ!!」
ラグナは何とか逃げようとしたがもうすでに遅かった。サジタリウスの矢は光を発し、後ろへと引かれていた。
「ダメッ!!!」
その時、唐突に後ろから声が聞こえたと思ったらいきなり背中を突き飛ばされた。抵抗できなかったラグナは前へ倒れるように転がると、発射された矢は突風を起こしながら頭上を過ぎ去った。急いで起き上がると何事かと後ろを振り向いた。
そこには胸を貫かれた千景がいた。誰がどう見ても即死の傷。なのにどこか安心したような穏やかな笑顔だった。
「千景さん!!!」
『千景!!!』
仲間たちの声も空しく、彼女は樹海の底へと落ちていく。その光景を見て、ラグナの中の何かが切れた。
「お…おお…グォオォオォォ■■ォオォ■■■オォォ■■!!!!!!」
「ま、待てラグナ!!落ち着け!!」
「■す…■メ■だけ■ぶ■殺■■やる…!!!!」
見開かれた眼が敵の方を向くと、殺意を宿らせた眼力にサジタリウスは怯む。逆にレオはその様を見ると、彼に集中砲火を浴びせた。
大剣で火炎弾を弾き飛ばしながら身体中から瘴気を漏らし、喉から獣のような唸り声を鳴らし始める。目の前にいるのは敵ではなく、単なる獲物でしかない。今にも暴れ出しそうな状態だった。
「不味いぞ…このままではまた暴走してしまう!!」
「だが千景が…!!」
「ちょっとウェイト!!千景さんは無事よ!!」
『え!!?』
合流してきた歌野の言葉がいまいち分からなかったが、その時、聞こえてくるはずのない声が少女たちの、そしてラグナの耳に入ってきた。
「白鳥さんの言う通りよ。私はここ」
横を見ると死神のように頭を覆う白いローブ姿の千景がいた。それどころか他の場所にいる者も含めて千景が七人いたのだ。彼女の姿を見て若葉は戸惑いながらも声を掛けた。
「千景!!その姿だということは!!」
「来る途中で七人御先に変えていたのよ。おかげで無傷だけど…」
「全く…肝が冷えたぞ…と言っても状況は良くないが…」
「そうね…彼が我を失いかけている…」
そう言って彼女はラグナの方を見る。檻から解き放たれた猛獣と対面しているようなものだったが、今の千景はそれを恐ろしいとは感じていない。
「…私が彼を何とか説得するわ。皆はバーテックスの方をお願い」
「…策があるんだな」
「策はないわ…でも、前に見た時と比べたら落ち着いている。これならすぐ戻ると思う」
それに、と千景は他に聞こえないように小さく呟いた。
(私の時も…彼はこうしていたから)
危険だと分かっても彼は暴走する自分を助けてくれた。だから今度は自分が助ける番だ。
「…分かった。だが無理はするなよ」
「千景ェ!!ヤバイと思ったらタマたちも呼んでくれよなー!!」
「ありがとう、土居さん」
球子たちが二体の敵に向かっていくのを見届けると千景はラグナに向かって語り掛ける。
「…驚かせてごめんなさい…でも、そうしなければ間に合わないと思ったの…」
「グ■ル■■ルル■ルル…」
今にも自分を吹き飛ばしてでも敵を殲滅しに行きそうな彼を前にして、千景は申し訳なく思っていた。思えばこの男は前の世界でもラムダに庇われて、その時に彼女は彼の眼の前で死んでしまったと聞いたことがあった。もしかしたらそれを思い出させてしまったのかもしれない。
自分が危険な目にあったことにそれだけ怒ってくれたことが少しだけ嬉しかった。例えそれが他の皆でも同じように反応すると分かっていても、自分を大事に思っていてくれていると感じて嬉しかった。
「…あの時と同じね。私が暴走して、貴方が私を止めてくれて…」
「ガ■■ルル■…」
「その貴方が蒼の魔道書の力に負けて…暴走してどうするの…?『貴方の力』は…『あんなもの』に負けるようなものではないはずよ」
でもこんなふうに暴れるような状態になって欲しくない。何故なら彼はそれによってこの世界で後悔する出来事を経験したから。
「グ■…グ…」
「それに貴方が力を使うのは…戦うのは…誰かを倒すためじゃなくて、救うためでしょ?だったら、『憎しみ』で戦ったらダメよ」
「グゥ…ウ…うぅ…」
そう語られてラグナは落ち着きを取り戻していく。瘴気も段々収まっていき、目つきも穏やかなものになってきた。
「…そうだったな」
「良かった…元に戻ったようね」
「ああ、迷惑かけたな。もう大丈夫だ」
「良いのよ。あの時の御礼を返しただけ」
「それでも助かった。ありがとな」
ラグナは改めて敵のいる方向を見る。サジタリウスは今球子たちに抑え込まれており、レオは若葉と歌野に翻弄されていた。
「ユーナとセッカはどうした?」
「高嶋さんは三体の大型を倒した時に腕を怪我したから今は休ませているわ。雪花さんはその護衛」
「なるほどな。だったらこいつらを早いとこ倒してぇところだが…」
「私は伊予島さんたちがいる方へ行くわ。私なら近づけると思うから」
「そうか…なら俺はワカバがいる方へ行くわ」
「分かったわ。なら行きましょう」
「おう!!」
二人は戦う敵へと駆けていく。七人の千景が自分たちの方へ来るのを見た球子たちは安堵しているようだった。
「千景、ラグナはどうなった?」
「あの人なら大丈夫よ。それよりあの敵は?」
棗の質問に答えた後に敵の状況を杏が答えた。
「どうもあのバーテックスは大量の矢を使う時と強力な一発を使い分けるようです。まだ使うことは出来ませんが、強力な方は撃たれたら恐らくタマっち先輩でも防ぐのは困難かと…」
「なら私は近づいて攻撃しに行くわ。そうすれば少し隙が付けるかもしれない」
「…分かりました!それではお願いします!」
杏の頼みを聞いてすぐ千景は球子の旋刃盤の後ろから出た。彼女を視認するとサジタリウスは大量の矢を放射する。千景が撃ち抜かれるとその場で花びらのように霧散し、その度にまた別の場所で千景が出現する。
七人御先の能力は一度に自分を7人出現させるもので、例え他が倒されてもダメージを受けることはなく、数を埋めるように分身を出現させる。そのため、一度に七人同時に倒さなければ千景にダメージは通らない。
その恩恵によって彼女はサジタリウスの弾幕を搔い潜ることが出来る。日頃からゲームしていることもあって、抜群の反射神経で矢を躱しながら直進することが出来る。
サジタリウスに間合いを詰めることが出来ると千景は敵の頭上へと跳躍する。それを見てサジタリウスは彼女を攻撃するために上へ向く。
「タマっち先輩!!私が仕掛けたら続いて!!」
「おっしゃ、任された!!」
「ヘルマン・アンド・ドロテーア!!!」
漸く攻勢に回ることが出来た杏は弩を構えて冷気で矢を形成する。巨大な氷の矢を撃つと命中した場所は凍り付き、サジタリウスは大きく仰け反った。相手も攻撃されたことに気付き、二人の方へ攻撃しようとしたが、そこへ球子の旋刃盤が突撃する。
「『焔纏の巨刃・瞬旋』!!!」
炎を纏いながら突っ込んでくる旋刃盤はサジタリウスの矢を射出する口に突っ込み、横から火を噴射しながら高速回転してそれを破壊する。
これは敵わないとサジタリウスは逃走を図ろうとするが、千景は旋刃盤の上に着地する。
「これで…終わりよ!!」
そう告げると同時に千景は七人御先を解除して玉藻前に切り替える。白いローブから白の着物姿へと変化し、髪はポニーテールとなる。顔の横に付いた白いお面は(⁻v⁻)と描かれていた。
彼女の大鎌へと紅い花びらが集まっていく。七人御先の力で作られ、サジタリウスによって撃ち消された分身たちだったものだ。それが集まっていくことでどんどん大鎌の刃は紅に染まる。千景はそれを横薙ぎに振るった。
「『暁ヲ仰ギ見シ黒鎌』!!!」
真紅の刃に斬られたサジタリウスは真っ二つに斬られ、爆散した。最も厄介だった敵の片翼を倒したことでかなり戦況が良くなった。
「やったぞー!!!これで後はアイツだけだ!!」
「そうね。これで後は皆であの超大型と戦えば…!!?」
少し希望を抱いたと思ったら突然レオの方から光が出現した。その原因はそれまでとは比べ物にならない大きさの火球だった。かつて本州の沿岸を焼き尽くしたあの一撃だ。
太陽が降りてきた。それを見た誰もがそう感じただろう。その時、千景は一つの人影を視界に捉えた。
それはラグナだった。大剣を握って真正面からレオと対峙する。普通に考えれば正気の沙汰を疑う。それでも
(貴方なら…きっと…)
千景は彼を信じずにはいられなかった。
(本当に…あの時と同じだな…)
ラグナは少年の時に経験した、かつての大橋の合戦を思い出す。初めて樹海で暴走した時、自分は闇をも喰らい尽くす深淵の黒に意識を呑まれた。
その時自分を諭す声に導かれ、光の方へと進んだことで意識を取り戻した。それでもあの記憶は自分の心を侵食し、今でも苦しめる。
これからもそういう場面に繰り返し遭遇するかもしれない。恐らく永遠に。しかしそんな
(俺は何のために…力を使っているか…)
その問いの答えは解っている。そしてそれはこれからも変わることがない。ラグナは小さく笑うと倒すべき敵と向き合い、左手で押さえた右腕に力を籠める。
「うぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁ!!!!」
地響きが起こる中で無限とも思える量の瘴気が彼の元へ集まっていく。あまりの力の強さに思わず膝をつく。スコーピオンに刺されてから彼の魔道書は力を増しすぎてしまったため、ラグナも力に呑まれないよう、無意識にリミッターを掛けていたようだ。それを今、本当の意味で開放する。
レオの火球が全てを焼き尽くす光ならば蒼の魔道書は全てを呑み込む闇だ。この戦いの勝者次第で世界は終わることにもなれば存在し続ける。それは最後まで武器を手に立っている者だ。
『ラグナ!!!』
『ラグナさん!!!』
「貴方!!!」
咆哮をあげる彼の異変に集合してきた他の仲間たちも気づく。今のラグナの姿にかつてのスコーピオンと戦った時と同じ光景を錯覚した。だがラグナの目つきは覚悟を決めるように鋭くなる。
「見せてやるよ…バーテックス…そして天の神…!!これが『蒼』の…そして…!!」
空を覆い尽くすように居座るバーテックスに向かってラグナは吠える。
「『俺』の『力』だ!!!!」
自分の声が轟く中でラグナは自分の前方に海よりも深い蒼色の方陣を展開し、黒き獣を模った瘴気をその雄叫びと共に放出する。同時にレオは奇妙な声を上げながら火球を放つ。
「デッドスパイク!!!」
ラグナは大剣を逆手に取る。切り上げるようにそれを振ると彼の足元から黒き獣を彷彿させる巨大な瘴気の柱が発生し、レオの火球を飴玉のように噛み砕こうとする。
「おおっ!!!」
砕ける様子を見せない火球に向かって今度は右腕を薙いだ。すると先ほどと同じように怪物の姿をした瘴気が出現し、火球を横から体当たりした。
「吹き飛べ!!!」
大剣を振り回すと瘴気の波から怪物の爪が顕現する。火球の表面は大きく剥ぎ取られ、押し返されるように後退する。
その事実にレオも驚愕しているようだった。今の一撃は自分の使える攻撃の中でも最高のものだった。いとも簡単に勇者たちを四国ごと捻り潰すことが出来ると思っていたのだろう。
だが現実ではどうだ。こうして自分を追い詰めている男の力は以前自分を瀕死までに追い込んだある怪物に匹敵するものになっていた。そんなものに構うことなく、ラグナは更に大剣を大きく構える。
「カーネージ!!!!」
実際に斬りかかるわけではない。しかし大剣を大きく振り下ろすとそれに合わせて再び獣は出現する。それが火球を喰い千切るように切り裂く。
「シザー!!!!!」
そのまま大剣を振り回すと瘴気の爆発で火球は爆散し、衝撃でレオは吹き飛ばされた。火球から火の粉が樹海中に広がる。爆発による光が収まると勇者たちは炎の中から彼の姿が見えた。
ラグナの身体はこれまで以上に濃い漆黒のオーラに包まれ、炎のように黒い火花を撒いている。右目は赤い光、左目は元来の碧眼と同じ碧い光の軌跡を描いていた。
何よりも特徴的だったのは、中の力が反応しているせいなのか、どす黒い血のような紅色の光を放ちながら点滅している彼の大剣だった。
「…『ブラッドエッジ』…本当に渾名の通りです」
杏が小さくそう呟いたが、安心するのはまだ早い。万が一暴走だった場合、勇者たちは彼とも戦う必要がある。ラグナが敵を睨みつけながら大声で叫んだ。
「おいテメェら!!!」
「な、何だ!!?」
「コイツは俺に任せろ!!テメェらは他の奴らを頼む!!」
いきなり叫んだことには驚いたが、異常のある様子を見せていない。以前のような獰猛性は鳴りを潜め、普通にコミュニケーションを取ることが出来そうだ。あの様子なら大丈夫だ。
「…ラグナ、必ず勝てよ!!」
「任せろ!!!」
皆の気持ちを代弁した若葉の言葉にラグナは頼もしい返事を返す。それを聞いて少女たちはレオを彼に任せて星屑たちを協力しながら駆逐していった。
ラグナと対峙しているレオは翼のような器官を門のように開けた。そこから大量の火炎弾と火を纏った星屑が押し寄せてきた。
「行くぞ!!!この輪っか野郎が!!!シード・オブ・タルタロス!!!」
それらをラグナは荒ぶる瘴気の波で薙ぎ払っていく。全力で突き進みながらも全く力が衰えるようには見えない。灼熱で身体が焼かれようと、星屑たちを撃破するだけソウルイーターで火傷と気力が回復するからだ。
それに気づいたレオは一度門を閉じ、火球を増量させてラグナに向けた。四方八方から飛来してくる火炎弾はラグナの動きを止める。その間にレオは間合いを取って警戒する。そのせいで両者とも攻めあぐねていた。結果として互いに一歩も引かない、互角の戦いを繰り広げていた。
「デッドスパイク!!!」
埒が明かないと判断したラグナは瘴気を飛ばす。それに対してレオは大きく身体を回転して火炎弾を周囲に撒き散らし、天にも届きそうな巨大な炎の渦を起こし始めた。瘴気は渦にぶつかるとそのままかき消された。
「以前の大型と同じスタイルで攻撃してきたわ!!」
灼熱の竜巻は樹海中に火炎弾をばら撒き、灼熱の暴風が吹き荒れる。それによって周りの星屑が巻き込まれ、勇者たちもラグナもまともに動くことが出来ずにいた。それによって時間だけがいたずらに過ぎていく。
「…不味いな…樹海への侵蝕が酷くなってきたぞ!」
「…だったら!!!」
時間がない中、ラグナは再びデッドスパイクを放つ。瘴気の怪物は渦へと突っ込むが、やはり攻撃が通用していないようだった。
「今だ!!!ヘルズファング!!!」
その時、ラグナは禍々しい姿となった右手を突き出しながら突進する。デッドスパイクを纏うと炎の渦を強引に突破し、中に入っていった。
「砕けろ!!!」
勢いそのままでレオの正面にある球状の部位をつかみ取る。掴まれた場所から少しずつ力が奪われていき、徐々に砂になって崩れていく。力を籠めるとあっさりとそこは握り潰された。
躰の一部を破壊されたレオが奇声をあげると同時に炎の渦が収まった。敵が怯んだところへラグナは追撃を掛けようと畳みかけてくる。しかし相手もそれは読んでいたのか、火炎弾を一発放って反撃した。
「危ない!!!!」
「ガントレットハーデス!!!」
レオの攻撃に千景は思わず声をあげるが、ラグナは蹴りを繰り出す。蹴り上げる際に獣の爪が瘴気として顕現し、至近距離から放たれたレオの火球を弾き返した。ズボンに火は付いたが、火球はレオの片翼に命中し、おかげで後退させることが出来た。
レオの動きが鈍っていく中、ラグナは自身の大剣を大鎌に変形させる。大剣の刃から出現したエネルギーは紅蓮の炎のように揺らめき、巨大な牙を思わせる刃へと形を成す。
「ブラックオンスロートぉぉぉ!!!!」
敵が逃げられないように大鎌の一撃を叩きこみ、そのまま猛烈な斬撃を繰り返す。斬られた場所は抉り取られ、粉塵が舞う。
今ラグナが使っている技は間違いなく彼最大の大技だ。しかもこれまで以上に力も増している分、最後の一撃が決まればレオとてただでは済まないだろう。
だがレオも最後の悪あがきとばかりに火炎弾を輪のように展開する。ソウルイーターによる力の吸収で火炎弾を形成するのに時間が掛かっているようだ。
「でももしこれであの火の球を喰らってしまったら…ラグナさんが…」
「頼む!!!これで決まってくれぃ!!!」
「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
怒号が樹海に響き渡る中、ラグナは最後の一撃に入る。大鎌を振り上げると膨大な量の瘴気が集まっていき、大きく顎を開けた凶悪な獣が現れる。
同時にレオから火炎弾が発射され、あらゆる方向から一斉に火球がラグナに襲い掛かった。攻撃をされている内に力のチャージが終わったようだ。
「攻撃してきたぞ!!」
「貴方!!!」
「負けるかぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ラグナの最後の一撃はレオに振り下ろされ、その躰を貫こうと迫った。同時に火球はラグナに降りかかる。両者の攻撃は同時に激突し、星の消滅を思わせる大爆発を起こす。
二人の姿は煙に包まれる。少女たちは思わず最悪の事態を考えてまう。息を呑む者もいれば、唇を噛んで悔やむ者もいる。
「ラグナは…どうなったんだ…?」
「若葉!煙が晴れるぞ!」
棗の言う通り、煙が晴れていく。そこには先ほどまで纏っていた黒いオーラが消失し、ボロボロになって倒れているラグナと全身が切り傷だらけで頭部が消滅しながらも依然として佇んでいるレオがいた。
「そんな…!!」
「まだやれるのかよ…あのバーテックスは…!!」
「…あれだけの手負いだ。今総攻撃を仕掛ければ…倒せる…」
「…そうだな。奴が回復しない内に仕掛けよう!!」
勇者たちが突撃する準備に入る。しかし、杏が冷静に待ったを掛けた。
「皆さん、ちょっと待ってください」
「ど、どうしたの、伊予島さん!?」
「超大型の足元を見てください…侵蝕が止まっています…」
「と…いうことは…」
「ええ…バトルのウィナーは…もう決まっているわ」
歌野の言葉と同時にレオの全身から徐々に土煙が漏れ始め、やがて躰も砂状に変質した。切り傷を伝って全身がひび割れていき、遂には瓦解していった。
「超大型が…」
少女たちがレオの崩壊を確認すると少ししてラグナの手がピクリと動く。その後、拳を天に向かって突き上げた。
「…見たか…これが…蒼の…そして俺の力だ…!!」
「ラグナが生きているぞ!!」
「じゃあ…あの人が勝ったのね!!!」
彼の勝利が確定した頃には星屑たちも駆逐されていた。後ろで控えていた雪花と友奈も戦闘の終了が確認されると急いで仲間たちと合流した。
「皆ー!!大丈夫ー!?」
「ああ…だがラグナが…」
「こんなんじゃ、くたばらねぇよ…テメェらこそ、怪我はねぇよな?」
「貴方ほどではないわ…それより貴方こそ調子は大丈夫なの?この前の大型と戦った時と同じ雰囲気だったわよ?」
「今のところ、なんとも…ねぇよ」
「それなら安心ね。とにかく、立つのに手はいる?」
「大丈夫だ…っこらしょらっと」
ラグナは取り敢えず立ち上がったが、少しよろけて膝をついてしまった。
「だ、ダメだよ、その身体で無理しちゃ!ほら、一旦座って」
「あ、ああ。済まねぇ…」
「あれだけの戦いだったんだ。疲労が限界まで来ているはずだ」
「寧ろこれまでの限界を超えて力を使ったようにも見えたわ…まさに、『アンリミテッド』って感じでね」
歌野の言葉に誇張表現ではない。ラグナは確かにあの時、かつての自分の恐怖に打ち勝ち、限界を超えて戦い、そして未来を手にした。満身創痍の彼に千景は微笑みながら労いの言葉を掛けた。
「本当にお疲れ様…今は高嶋さんの言うように、ゆっくり休んで」
「…ならそうさせてもらうぜ…ありがとな…」
そうして座ると、ラグナは眠りに落ちるように千景の方へ寄り添いながら倒れた後、目を閉じた。樹海は消えていき、やがて現実世界へと戻るとひなたたちが勇者たちを笑顔で迎えた。約束は無事に果たされた。
ただ帰ってきた時、何故か千景は慌てふためいていて、杏はいつの間にかイイ笑顔しながら鼻血を垂らしていたそうだ。
アンリミテッドラグナとの戦いは勝つものではない、生き残るものだ。
というわけでこの話でラグナ君のアンリミテッドモードが解禁されました。原作ゲームのアビスモードのラスボスであるこのラグナ君は群を抜いた強さだったのですが、こちらでもその凶悪性は健在です。
お察しの良い方は文だけで気づいたかもしれませんが、ぐんちゃんのお面は今回の戦いよりハクメンのお面からパクメンの全身を丸まった感じにしたものです。理由は以前よりも他者に心を開くようになったから。お面の被り方が変わったのも同じ理由です。
勇者たちの方ですが、ざっくり説明すると精霊の力を擬似的なドライブみたいなもので、攻撃するときは術式と同じ要領です。これによってある程度精霊の負荷を軽減させることができます。
さて次回ですが…原作にはなかった婆裟羅祭りです。勇者たちとラグナが良い思い出を作れると良いですね。
そういえばアンリミテッドラグナといえば隠しボスとしての方が有名でしょう。多くの格ゲーには隠しボスがいます。そしてのわゆ編に登場しながらもまだちゃんとした出番のないブレイブルーのボスキャラがいます。
要はそういうことだ。
それではまた。