今回のガチャ、夏凜ちゃんとわっしーのURが来たぜぇ!!ヒャッハー!!!これまでのリベンジを果たせたぜ!!
石紡ぎの章はというとまさかのオチでしたね…いや、まさかソッチがいるとは…この李白を持ってしても見破れなかったぜ…
さて今回も祭り編!今回はどのような騒動が起こるのでしょうか?それではどうぞ。
「うへ~…疲れた~…多分体育の時間でもあんなに激しく動いたことなかったわ~…」
祭りのダンスが終わり、ラグナたちは若葉たちと合流することが出来た。沖縄の人々は協力してくれた御礼にと衣装を譲ってくれた。一同の中でも棗は特に衣装を気に入ったようで、他の者たちが着替えている中で一人だけそのまま祭り観光をしていた。
「でも皆すごく良かったよ!会場の皆も盛り上がってたし!」
「そうね。それに何だかんだ言って、楽しかったのは事実だわ」
「ま、あそこまで喜んでくれるなら悪い気はしねぇな」
かつての部活での日々を思い出しながら必死に取り組んだ甲斐もあって、沖縄の出し物は大成功に終わった。元の演目が良かったこともあるが、勇者が躍っていることもあって、見物人からの注目も抜群に良かった。
「先ほどの皆さんの活躍は私がバッチリ録画しましたが、見てみますか?」
「…いや、良いよ。なんかどんな感じだったのかが予想出来ちまうしな」
しかし同時にラグナの奇妙なダンスが功を奏したことも否めない。彼のダンスは主に子どもたちの注目を集めることが出来、それに連れられて親も見に来るようになった。この二つがあったおかげで最終的にダンスは大反響になった。
「急に代役として出たのだから仕方がないわよ…確かに、ちょっと、おかしかったけど…ふふっ」
「おい、チカゲ!笑うほどじゃねぇだろうが!」
こちらのMPを吸い取ってしまいそうなダンスを披露していたその時のラグナを思い出した千景はつい笑ってしまう。
あの時は彼の必死さが伝わって呆けてしまっていたが、一旦冷静になった今振り返ると突っ込みどころが多すぎて何から指摘すればいいのかが分からない分、余計におかしさが目立ってしまった。
「ごめんなさい…でも、アレを思い出すとつい…ふくくっ…!!」
「だったらテメェもやってみたらどうだ!!音に合わせて動くのがどんだけ大変なのか分かるだろうよ!」
「あら、良いわよ?私、これでも高嶋さんと一緒にダンスゲームや音ゲーを偶にしているからそれなりに出来ると思うわ」
「ぐんちゃん、私とバッチリ息を合わせてダンスが出来るから本物のダンスもかなり上手だと思うよ?」
「チクショウ!!死角がねぇ!!」
メンタリティが以前よりも強くなったおかげなのか、それとも得意分野であるゲームで鍛えられてきたからか、千景は不敵に笑った。これではラグナの苦労を知ることは永遠にないだろう。
そんな風に頭を抱えて天を仰ぐラグナをあしらった千景の笑顔を見て、レイチェルもクスリと笑う。この調子なら彼女はもう大丈夫だろう。やはり彼に任せたのは正解だったようだ。
「それにしてもラグナ。貴方、あの時は随分と手慣れた様子で助けに入ったわね?もしかして元の時代でも似たようなことをしてきたの?」
レイチェルの指摘に図星を突かれたラグナも思わず苦い顔をする。実際彼女の言う通り、彼は様々な出来事に巻き込まれていく傾向があった。そんな彼に若葉が興味本位で聞いてきた。
「そうなのか?」
「…まぁな。部活とかでああいうことをしょっちゅうしてたからよ。おかげでこっちに来る前からそれなりに愉快な日常って奴を送ってたぞ」
「お前が言うととても愉快の範囲で終わらなさそうだな」
「そんなことねぇから!そりゃあ確かに厄介なことに巻き込まれたりしたこともあったが、基本的には平和な部活…あれ、平和でもない?」
思えば部員でなくても部員内でも騒動の種が尽きることはなかったから、バーテックスが絡むことが無くても時々大変なことが起きることが多かった。それもあってトラブルにも慣れるようになった。毎回起こるのは勘弁してほしいが。
「やっぱりすんごいこともしてきたんだな!なぁ、どんなことしてきたんだよ?」
球子の瞳に秘められた百万ワットの輝きから目を反らすようにラグナは顔を背ける。本当は数えきれないほどの騒動があったから話すだけで祭りどころか一日が終わってしまいそうなので、詳しく話すつもりはない。強いて言うなら、今と変わらないほど楽しかったことだ。
「…勘弁してくれ。言うほど大したことはしてねぇぞ。精々猫探しとか他の部の助っ人とかしていただけだ」
「どちらかというとボランティア活動をする部なんですね」
「それであんなに自然に助けられたんだね。なんか納得」
ひなたや雪花の話を聞いて少女たちは納得した。
「ボランティア系の部活か~…私がその学校にいたら絶対参加していたな~」
「そうだな。テメェらならきっとアイツらと気が合うだろうし、あの部活の活動を気に入ってくれると思うぜ」
そう言う友奈の言葉を聞いて、ラグナは今の西暦の勇者たちが神世紀にいる勇者部で活動している姿を想像する。彼女たちも一緒に参加していたらきっと既存のメンバーとも打ち解けていくだろう。
「つーかテメェら。俺の話をするのは良いが、祭りは花火を打ち上げるまでしばらく時間が掛かるだろ?せっかくだし、もっと見て回らねぇか?」
「良いですね、ラグナさん!皆さんはどうですか?」
「そのアイデア、私たちも賛成よ!杏さん!」
ラグナからの提案に勇者たちも賛同し、出店のある通りを歩んでいく。球子と杏は風船釣りに挑んで二人とも黄色と緑の風船をゲットしたり、皆に応援される中で若葉と歌野が輪投げに挑戦して写真立てと麦わら帽子を当ててひなたと水都にプレゼントしたり、千景や友奈がお面を買ったりして、少女たちは時間を過ごしていった。
そうしている内に一行は一つの射的屋へと過ぎ去る。その時、千景があるものに気付く。
「あ…」
「どうしたんだ、千景?」
「あれ…綺麗だなと思って…」
千景の視線を奪ったもの。それはプラスチックの箱に入った、細く、模様こそ彫られていない簡素なものではあるものの、とても美しく輝いている『銀の腕輪』だった。
千景は一度財布の中身を確かめてみる。残念なことにこれまでに遊びまくっていたこともあって心許ない状態だった。これはどうやら諦めるしかないだろう。
「あれが欲しいの、ぐんちゃん?」
「…ううん。綺麗だったから良いなと思ったけど、別にそこまでして欲しいとは思わないわ。ごめんなさい」
友奈に時間を取らせるのも悪いと思った千景は一度断りを入れるが、その本心は友奈から丸見えだった。
「良いな~って思ってるってことは欲しいってことじゃないかな?」
「で、でも高嶋さんたちに悪いわ。私はもうお金がないから、今やるなら誰かから借りるしかないし」
「だったら二人でやればいいよ!まだ私、残っているかも…」
そう言って友奈も自身の財布の中身を確かめるが、その後に少し落ち込んだ様子になる。
「ごめん…私も大して残ってなかったよ~…」
「だ、大丈夫よ。それは高嶋さん自身のために使って」
シンプルなデザインが割と千景の琴線に触れていたこともあってちょっと欲しいとは思っていたが、流石に親友からお金を借りるのは後ろ髪を引かれる。それに食べ物やお面に型抜きなど、友奈との思い出ならもう十二分に出来た。これ以上求めるのは我が侭だ。
「…じゃあ、俺が当ててやる。それなら借りたことにならねぇだろ」
「でも貴方だって欲しいものがあるでしょ?」
「俺は少なくとも特にこれといって欲しいものはねぇし、これからも大して使う予定はねぇよ。なに、任せとけ。これでも一応、先輩みてぇなモンだ。偶には甘えとけ」
「…それなら、お願いしようかしら」
「おう」
千景にそう言われてラグナは代金を支払って狙いを定める。銃なんて殆ど使ったことないが、チャンスは五回ある。
それに箱もそれなりに大きさがあるから当てること自体は難しくないはずだ。何より当てると言ってしまった手前、引き下がることは出来ない。
ラグナは引き金を引く。しかし、惜しくも弾は空を切って箱を外した。
「外れてしまいましたね…」
「だ、大丈夫だって。一応後4回は撃てるしな」
そうは言うが、次の二発も外してしまった。これには流石のラグナも焦る。それを見ていられなくなったのか、レイチェルは溜息を一つ吐いてから彼に話しかけた。
「ラグナ、ちょっと待ちなさい」
「何でだよ、ウサギ。そりゃ確かに外してるけど、まだ終わってねぇだろ」
「そうね。このままやればいつか当てられるわ。でもその前に貴方の財布が更地になるわよ」
「…じゃあどうすんだよ」
「私が貴方に指示を送るから、貴方はただ言う通りに銃を動かしなさい。その代わり、私が良いと言うまで絶対に引き金を引いてはダメよ」
「分かった」
そこからラグナは再び銃を銃口を箱に向けて構える。手元を狂わせないよう、レイチェルの指示の下で慎重に照準を合わせていった。
「撃って」
「おう!」
引き金を引くと見事に箱に当てることが出来たが、前後に揺れるだけで倒れるには至らなかった。その様子を見てもレイチェルは動じない。
「あー惜しい!もう少しで落とせたのに!」
「…いいえ、もう大丈夫よ。そうでしょう、ラグナ?」
「当たり前だ!!次は撃ち落としてやる!!」
今の射撃は弾速や射撃時の手のブレを改めて確認するための一射。そこも考慮して彼女は照準を合わせる。そして最後の弾丸がラグナによって放たれた。
「今よ」
「落ちろ!!」
「良かったですね、千景さん」
「…うん」
出店を後にしたラグナたちは花火大会の会場へ向かっている。千景は右腕を愛し気に擦っている。先ほどの腕輪が提灯の光に照らされていた。
「二人ともありがとう。大事にするわ…少し派手すぎるかしら?」
「そんなことないよ!すっごく似合ってるよ!」
「友奈の言う通りよ、千景」
めでたく撃ち落とすことに成功したラグナたちが腕輪を千景に渡すと、彼女は早速それを身に付けた。その顔はとても穏やかな表情だった。
「でも良かったですね、千景さん。銀製のアクセサリーだなんて、とても縁起がいいですから」
「そうなの、アンちゃん?」
「はい!銀は昔から月の女神の力が込められているって言われているんです。邪気や魔を払う効果があるとも言われていて、昔から御守りや魔除けとして重宝されていたんですよ」
「そうだったのか…」
それならば今これを千景に渡せてよかったのかもしれない。戦いで一番生活環境が劇的に変わるのは恐らく彼女だ。
これからは元々住んでいた高知ではなく、レイチェルがいるであろう香川で暮らすことになるだろう。確かにここは他の仲間がいるから心配しすぎかもしれないが、これまでの彼女を見ているとつい心配になる。
「なるほどな。そう考えると贈り物としても良いということか」
「若葉さんも分かってくれますか!?」
「お、おい若葉!?何でそこでまたあんずのスイッチを踏むんだ!?」
「私が悪いのか今のは!?というか今のもスイッチだったのか!?」
「地雷踏み若葉ちゃん、ですね」
そのまま杏先生がノンストップでシルバーに関するロマンチックな話を語り尽くす騒ぎもあったが、それも込みで楽しい時間だった。
だがその中で少女たちは少しずつ妙な違和感を感じていく。何の変哲もない、祭りの光景。しかし何故かは分からないが、次第に妙な違和感を感じてくる。具体的に言うと、後ろから形のない鋭い物が押し当てられている感触がする。
「…ねぇ。何か感じないかしら?こう、居心地の悪い何か…」
「…やっぱり千景さんもそう思いますか?」
「何かあったのかよ?」
「いえ…先ほどから何か変な感覚がして…こっちをじっと見ているような…それもあまりいい感じがしなくて…」
「視線…ですか」
千景と水都の言葉に反応してラグナとひなたは視線を後ろへ移してみる。後ろでは特に目立ったものは見当たらない。しかし、確かに自分たちに向けて良くない感情が向けられているように感じ取れる。
「…改めて言われると分かってくるモンだな。確かにさっきからこっちを見ている誰かがいやがる」
「…どうするんだ?今騒ぎ立てたところでこの人混みじゃ逃げられるだけだぞ?」
「…今は手を出してきていないようですが、一度ヴァルケンハインさんやクラヴィスさんたちと合流しましょう。どのみち、ここで捕まえようとしても若葉さんの言う通り、雲隠れされる可能性の方が高いですしね」
「あんずがそう言うなら間違いないな。それじゃレイチェル、連絡は取れないか?」
「ええ、少し待って頂戴」
レイチェルが父に居場所を聞いた後、かくしてミッションは開始された。彼女が言うに二人は諏訪の屋台から離れた後、花火が見えやすい浜辺の方へ行ったらしい。人混みをかき分けながら少女たちはそこへ向かう。
本当なら他にも回ってみたい場所もあったが、正体不明の誰かに見られている以上、安全な場所へ移動する必要があったので出店は一先ず後回しにした。
(クラヴィスや爺さんがいるところなら安全だろうしな…)
穏やかな老紳士のヴァンパイアはともかく、腕っぷしが凄まじい少し強面な人狼執事の前で喧嘩を売るような奴なんてこの四国にいるはずがないだろう。したところで返り討ちは必至だ。
そんなことをラグナが考えながらも何とか一同は浜辺の方へ出ることが出来た。ここでも人は多かったが、間近で花火を鑑賞したいと考えている者たちは皆砂浜の方で集まっており、歩道の方にいる者たちは少なかった。
「漸く人混みも晴れてきたな!」
「ここなら大丈夫だな…後は爺さんたちと合流出来ればいいが…」
ラグナがキョロキョロと辺りを探していると、不意に後ろから背中を叩かれた。もしや先ほどの奴か。警戒しながら後ろへ振り向く。
「あ、先輩たちも来てたんですね」
「いやー、良かった~!もしかしてこのまま誰とも会えないんじゃないか心配だったよ…ってどしてラグナ君はそんな怖い顔してんの?」
そこには普段の三つ編みを解いて髪を後ろに束ね、活発そうに山吹色の浴衣の袖を捲った真鈴と片手に綿飴を持ち、白鼠色の浴衣を着て二つのおさげを後ろに纏めて紐で結んだ美佳がいた。
「…ああ、済まねぇ。今ちょっとゴタゴタしててな」
「…何かあったの?」
状況が分かってない真鈴たちにひなたがかくかくしかじかと説明する。それを聞いて彼女らも目の色を変える。
「なるほどね…そりゃまた不気味な話だよ」
「ええ…ですから一度皆さんで見通しのいい場所へ向かおうということになって、今丁度ヴァルケンハインさんたちを探していたところだったんです」
「勇者を狙っているということね…そうなら、少し厄介だわ」
大社もとい勇者への不平不満がまだ存在していることは美佳たちの耳にも届いている。この祭りに潜んでいる可能性は十分に考えられた。
「そういうことならアタシも烏丸先生に連絡しておくよ」
「ありがとうございます、安芸さん。ですがこうなっては花火を見れませんね」
少し惜しい気もするが、こうなっては仕方ない。ひなたが他の勇者たちにもその意図を伝えようと振り返るが、そこでは周りを探し回る少女たちがいた。
「おい、どうした?誰かいないのか?」
そう呼びかけるとこちらに気付いたレイチェルが言った。
「ラグナ、大変よ!千景がいないわ!」
「皆…どこへ行ってしまったのかしら…」
件の千景はというと不安そうに周りを見渡していた。ここへ来る途中であの人混みに紛れて逸れてしまったのだ。
(何とか合流しないと…皆、きっと心配しているわ…)
連絡を取るためにカバンから携帯端末を取ろうとしていると、後ろから自分を呼び掛ける声が聞こえた。その声に千景は耳を疑う。
(嘘…何で…!?)
思い出したくない過去がどんどん千景の脳裏をよぎっていく。皆と一緒に過ごして、彼と生活していく内に徐々にあそこでの辛い出来事を忘れることが出来た。それなのに。
(何で…どうして、こんな時に…この日に…皆との最高の思い出になる今日、ここにいるのよ…!!!)
千景の心が理不尽に対する悲しみで少しずつ蝕まれていく中、以前に比べてみすぼらしくなったその人物は彼女に声を掛けてきた。その姿が自分の眼に入った時、千景は携帯の振動に気付くことが出来なかった。
「レイチェルさん!!郡先輩とは連絡が取れないんですか!?」
「ええ…あの中にいるとは思うけど…」
レイチェルの言葉を聞いて、ラグナは自分たちが進んできた方向へ振り返る。確認したところ、他のメンバーは全員揃っているとのことだ。
だがそれはつまり、千景はあの人混みの中、独りでいるということだ。そして先ほどの怪しげな視線も感じない。つまり
「クソッ!!皆は一旦ここで待ってろ!!俺が探してくる!!」
「待って、ラグナ!一人でこの人混みの中からぐんちゃんを探すなんて無茶だよ!皆で探そう!」
「けどまださっきのストーカー野郎がいるかもしれねぇんだぞ!ンなところにテメェらを連れて行くのは危険過ぎる!」
確かにここにいる皆は強い。それはラグナもよく知っている。だがそれでも危険な目に遭っても良いとは言わない。しかし、友奈が頼もしそうに笑った。
「大丈夫だよ!」
「何で…」
「私たちは…ただの勇者じゃない!『勇者部』なんだよ!仲間なんだよ!だから…こういう時こそ、目一杯頼って欲しいよ!」
「…!!」
勇者部。もう久しく聞いていない名前。自分が教えていないはずの名前。彼にとってこの世界でのもう一つの居場所の名前。それをあの世界にいた少女と瓜二つの友奈が話していた。一瞬、元の時代に戻ったのかと錯覚した。
「…どこで、その名前を…」
「あ…その、これは皆と合流する前に金魚掬いのおじさんに会った時にね。私たち、部活動の仲間みたいだねって」
「それで…勇者部なのか?」
「部活って名前があるでしょ?野球部とかサッカー部とか。だから私たちは勇者とかの集まりだから勇者部だってなったの。若葉ちゃんたちと一緒に決めたんだよ?」
友奈の言葉に合わせて丸亀組と諏訪組が頷く。それを見てラグナの目から橙色の汁が溢れ始めた。自分でも何故なのかは分からない。でも色んな感情が込み上がってくる。
「…ハハハ」
「ラグナ、どうしたの?何だか泣いているように見えるけど…」
「大丈夫だ。なんつーか、ちょっとな」
言葉では表現し切れない懐かしさでつい涙ぐんでしまったなんて恥ずかしくて言えないが、これで大分焦る気持ちが治まった。
「…でもありがとな、ユーナ。危うく一人で突っ走るところだったぜ」
「ううん!私もその気持ちが分かるから…でも、皆と一緒ならきっと何とかなると思っているよ」
「そうだな…その通りだ!」
「しかし、お前も大概一人で突っ走る傾向にあるな。私も人のことは言えんが」
「そうですね。ですが、どちらもそのお陰でたくさんの人が助けられてきたのも事実です」
若葉たちも少し困ったような表情を見せるが、それでも決して嫌がっているようではなかった。一度頬を両手で叩くとラグナは彼女たちに話してきた。
「…済まねぇな、テメェら。大分冷静になれた」
「ノープロブレム!!心配なのは皆も一緒だもの!」
歌野からのフォローが入ると杏が早速計画を話し始めた。
「丁度皆連絡手段を持っていますし、人数もありますから三人ほどの班に別れれば問題はないはずです。それなら危険を下げることは出来ると思います」
「なら、見つけた後は丸亀城へ集合ね」
「一応聞くけどさ、もしその視線の主と鉢合わせたらどうすんだ?」
「そこは無視で良いんじゃない?私たちの目的はあくまで千景だからさ」
「でも場合によっては千景さんがエンカウントしているかもしれないわよ?」
「そこも込みで考えよ、うたのん。私たちにも出来ることがきっとあるから」
この状況に於いて慌てるどころか、少女たちの結束は強くなっていた。その様子を見て、大社にいる巫女二人が話に入ってきた。
「皆。その話、私たちも協力しても良いかな?」
「勿論だ!寧ろこっちが頼みたいくらいだぞ!」
「ありがとう…」
球子からそれを聞いて真鈴と美佳も嬉しそうにする。これまで自分たちはただ見ていることしか出来なかった。ここで引き下がって後悔するのは嫌だ。
「レイチェルちゃん、どうですか?」
「今お父様たちと連絡が取れたわ。ヴァルケンハインが向かっているところだそうよ」
その時、電話の裏で娘の成長にクラヴィスの涙腺が少し緩んだことをレイチェルは知らない。
「一応注意はするが、ここは民間のイベントだ。あまり他の客に迷惑を掛けないように立ち回るぞ」
「そう言っていますが若葉ちゃん。目が輝いていますよ」
「…まあ、そうだな。こんな状況で言うのは不謹慎なのは分かっているが…」
幼馴染にそう指摘された若葉は少し照れ臭そうに言った。
「…こうやって、皆と何かを企むのも…楽しいと思ったんだ」
「おや?悪戯っ子若葉ちゃんですか?」
「そうじゃな…いや、そうだな。人生最初にして最大の悪戯かもしれんな。正直、ワクワクが止まらないんだ」
そんな彼女の顔をひなたは心底嬉しそうに見る。自分の知る限り、乃木若葉という少女は生真面目を絵に描いたような性格でこういったこととは対極の存在だった。
その彼女が今、友を助けるためとはいえ、空き地で集まった小学生の悪だくみのようなことを楽しいと言っている。だが同時に晴れ晴れとしたその横顔を見たらそれが良い変化であることが明白だった。
「…あ!!勿論一般客には迷惑を掛けない範囲でだぞ!!私たちは勇者でもあるから民の安全が第一だからな!!決して私が不良になったとかそういうことでは…おい、聞いているのかひなた!?」
「はいはい聞いていますよ、若葉ちゃん♪」
「だったら何故徐にスマホを構えるんだ!?やめろ、撮るなぁぁぁ!!」
まぁ、流石に根っこにある生真面目さは消えていない。ここまでやるのは偏に郡千景が仲間だからだ。何事にも報いを。共に戦ってきた仲間に報いたいのだ。
「ラグナさん…心苦しいかもしれませんが、お願いできますか?」
「…これ本当に策で必要なんだよな?」
「一応念のための保険ということで…」
「そういうことなら仕方ねぇか…」
その後に班の探索範囲やなどの準備を素早くやっていると少女たちの携帯から音が鳴る。画面を見るとそこには千景から送られてきたであろう、短いメッセージが記されていた。
それだけで彼女が電話に出られないほど追い詰められた状況に置かれていることが分かる。各自が配置へと急行する中、若葉が端末を通じて宣言する。
「それでは千景救出作戦を開始する!!皆、ぬかるなよ!!」
『おーーーー!!!』
西暦での勇者部最初の『依頼』が始まった。
前回今回で日常編は終わりだと言ったな…アレは嘘だ。いや、纏め切れなかった。
次回ですが、とうとう本編百話目!花結はこの後に投稿する予定です。祭りの最後に勇者たちを待ち受けているのでしょうか?それではまた。