ゆゆゆいのタイトル画面のわかひなが尊い……やっぱこれのわゆアニメ化のフラグだろ。
さて今回はゲストキャラにアマネ=ニシキが登場!あの技によるギャグ回になります!それではどうぞ
The wheel of fate is turning…
勇者部の面々は讃州市の文化ホールで物品の片付けをしていた。今日の依頼は老人会のための公演を行う旅の一座の手伝いだが、いつも幼稚園相手に劇を行っている彼女たちは手慣れた様子で協力してくれた。
「お
「いえいえ。それが私たち、勇者部の御役目ですから!」
そうやって風たちと話をしているのは『
「寧ろ良かったんですか?素人の私たちにも舞台の役を与えてくれるなんて」
「良いってことよ。こっちも急な依頼でスケジュールが空いている奴が少なかったし、前に協力してくれた礼とでも思ってくれ」
彼は家を失ったり、家庭の事情で親元で暮らせない少年たちを引き取って面倒を見ており、その少年たちも一座に参加しながら生活をしている。そのため、この一座には女子が一人もいなかったりする。
以前にも勇者部はこの座長の依頼を受けたことがあって、その時も似たような依頼で裏方の仕事を受けていたのだ。当時のことを思い出す赤嶺は少し苦笑いしてしまった。
「アハハ……あの時は私、錦さんに迷惑を掛けてしまった気もしますが……」
「ハハハ! 公演が終わった後にまさかもう一幕用意されているとは思わなかったぜ!」
実はこの依頼の時、赤嶺は勇者部に襲撃してきたのである。丁度公演が終わって勇者部が疲れていたところを襲撃すれば勝てると考えた彼女は意気揚々と襲撃したが、そのまま大変な騒ぎに巻き込まれたのだ。
「あ~……あったわね……友奈たちが幼女になった奴……」
「アレは……まぁ悪かったよ。喧嘩の仲裁のつもりだったが、まさかあんな大騒ぎになるたぁ俺も予想外だったぜ」
遍が話している仲裁とは友奈たちに自身の技、『
「アレは確かに大変だったわね……幼女になった友奈たちが遊んでって甘えてくるし、断ろうとすると涙目になってこっちの良心が抉られるし……」
「千景さんは完全に高嶋さんに夢中で東郷先輩に至っては友奈さんを自分の子どもにすると言い出す始末でしたね……」
「だ、だって。あの時の友奈ちゃんが私のこと、お母さんと呼んでくれたんですよ!? 引き取るしかないじゃないですか!?」
「あの時の高嶋さんは可愛くて……私も危うく後光で魂ごと焼き払われるところだったわ……」
犬吠埼姉妹の言う通り、小さくなった友奈に東郷と千景は虜になっていた。最後には抱きつかれた彼女たちは幸せそうな顔を浮かべながら果てたのである。しかし、大変だったのはここからだった。
「おまけに友奈ズが今度はラグナにおんぶをせがんでいるのを少佐が見つけたら嫉妬のあまりに友奈ズを抱えたラグナを追いかけ始めるし……あの時は本当にどうなるかと思ったわよ」
「私、あの日の記憶ってあんまり持ってないんだけど、そんなことがあったの?」
「まぁね……追いかけられていたアンタたちは楽しそうだったわよ」
良くも悪くも純粋な子どもだったこともあって友奈ズは恐怖を感じるどころか楽しそうにしていたが、その時のラグナは本気で命の危機を感じたそうだ。最終的には刃にも遍が技を使用したおかげで一旦事が収まった。
「そんなことが……綾月君も大変だったのね」
「須美ちゃんも東郷さんに暫く口を利かなくなってしまったわよね……何とか許してもらえたけど……」
「あれね……まさか若き日の自分が切腹しようとしている場面に遭遇するとは思わなかったわ……」
「そんな物騒なやり取りがあったのね……」
千景の言う通り、後日正気を取り戻した東郷は後に小銀や小園子が自決しようとしている須美を引き止めている場面に遭遇してしまったのだ。
白装束を着たあの時の須美の目からは光りが失われていて、国防万歳と奇声を上げながら手に持った短刀を腹に付きつけようとしている様は鬼気迫るものだった。
過剰に暴走しないことをその場で約束することで何とか踏みとどめることが出来たが、普段と同じように話が出来るようになるのに二週間近く掛かった。
「でもなぁ……少しだけ惜しいことがあったんだよなぁ……」
「何かあったんですか?」
「いやな、あっちにいた如月君だっけ?業破抱擁を受けた時に思ったんだけどよ」
「刃さんのことですか?確かに彼も結構大暴れしていましたが」
「そう! アイツを見て俺は思ったんだ! あれほどの美少年は中々いない、これは逸材だってな!!!」
成長してから何故ああなった、と拳を握りながら本気で悔しそうにしている遍に少女たちは苦笑いする他なかった。実はこの男、自分たちの周りの男子と同じように一つだけ残念な点がある。
それがこの美少年好き。それも相当筋金入りのようで、可愛らしい男子を見ると興奮する傾向がある。実際、幼児化した刃を見た彼はスカウト出来ないか真剣に考えたものだ。
「でも例えあの時に少佐を引き入れられたとしても、次の日にはいつもの変態如月刃に戻るだけじゃないの?」
「アンタ、仮にも教官なのに酷いわね……いや言いたいことは分かるけど」
「そこなんだよなぁ……俺も後になって気付いたよ……戻ったらまた一戦やり合うことになってたかもってな」
ちょっと冗談っぽくそう言ったが、それが本当に起きてしまいそうなのが如月刃である。その時、赤嶺が遍に気になったことを聞いてきた。
「そういえば思ったんですが、遍さんは勇者部の女子の中だったら誰をスカウトしたいですか?」
「あぁ? お前さんたちの中でかい? そうだねぇ……」
「そ、そこは真面目に考えなくても良いと思いますよ、遍さん?」
樹がやんわりとそう助言するが、遍は真剣に考える。恐らく何人か心当たりのある人物がいるのだろう。やがて口を開いて答えた。
「んー……俺としては小学生の銀ちゃんと樹ちゃん辺りは一番良いと思うんだよなぁ。男の子だったらすぐにでもスカウトしてたかもしれねぇ」
「あら。良かったわね、樹ちゃん。本物の女形に認められるだなんて」
「褒められて嬉しいんですけど、何故か素直に喜べません……」
普通に考えれば一座からの呼びかけが貰えるかもしれないのは嬉しいことなのだが、男の子だったらという部分の破壊力が凄まじすぎた。
「あと夏凜ちゃんも中々良い線行ってるぜ!」
「あら。良かったわね~、夏凜」
「ちょっと風!! 何でそこで笑うのよ!?」
「いやだって~、舞踊一座からのお誘いよ~? 完成型勇者としては喜ばしいじゃないの?」
「アンタのそれは単に私が男っぽいって言いたいだけじゃないのよ!?」
ニヤニヤしている風に夏凜は憤慨する。自身の美を評価されているのは間違いないが、やはり先の言葉でまだ誤解しているようだ。
「わ、私だってね!! 少し女らしいところはあるわよ!!」
「そうかしら~? 夏凜の女子力はアタシの知っている限り、そんなに高かった覚えはないんだけど~?」
「ムキ~~!!! いつもうどんをバカズカ食べているアンタにだけは言われたくないわよ!!」
「な、何おう!?」
「ま、まぁ落ち着きなって夏凜ちゃん。俺ぁ別に男っぽいからという理由で選んだんじゃねぇよ?」
遍は急いで二人を宥めようとするが、二人はこちらの話を聞こえていないようで言い合いを始めてしまった。
「どうしましょう……二人がこうなってしまっては暫くこのままだわ」
「俺は芸を持っていたり、個性が強かったりすると座長としても役に当てはめやすいと思っただけなんだけどな」
「それでは男子限定というのは?」
「俺自身の趣味もあるのは否定しねぇが、俺自身は元々西暦の大昔からある歌舞伎舞踊とか日本舞踊の影響を強く受けて成長してな」
遍が言うに彼がやりたかった舞踊は元々男子のみで構成されていて、女子の役者は基本的に存在しないのだ。だから彼は基本的にそういった伝統に沿ってやっているらしい。
別に一緒に仕事するくらいには特に問題はないが、正式に一座の門に下るには余程芸や演技に長けていなければならないそうだ。勇者部が大丈夫なのも信頼だけでなく、彼女たちの芝居の評価が元々高いことも大きい。
「我が国の伝統文化をそれだけ想ってくれるとは、遍さんもまた愛国の士なんですね!」
「流石にそれは言い過ぎだが、間違っちゃいねぇな。それに家は男所帯の上に住み込みでよ。女なんざ入っちまったら他の団員の気が立って芸どころじゃねぇ。ましてお前さんたちのような別嬪と四六中一緒にいたら逆に俺らが困っちまうぜ」
「別嬪って……どうしてそう臆することなく言えるのよ……」
「当たり前だろ。俺は芸の道に生きている人間なんだぜ。俺の魂が美しいと思ったものを否定するつもりはねぇよ」
千景に迷いなくそう言う遍を見て、樹はとても眩しく見えた。彼女自身も歌手になるという夢を持っていて、今もボイストレーニングやカラオケ屋で一人レコーディングしたりして自身の歌を聞き直したりと努力している。
そう言う意味では遍は先輩に当たる人物である。今日も今後の参考になれないかと色々勉強しているのだ。
「芸に生きている……ですかぁ。憧れるな~」
「憧れるんじゃなくて、将来自分はなっているくらいの気概は持ちなよ、樹ちゃん。人が出せる芸は結局のところ、
「は、はい! 分かりました!」
樹が勢いよく返答しているのを見て、遍はその意気と言うかのように頷く。
「幸い、お前さんたちが持っている
「ありがとうございます!!」
「お、良い返事だ。こいつは将来が楽しみだねぇ。さてと……」
遍たちは未だに喧嘩を続ける風たちの方へと向く。夏凜が風の言い分に噛み付いている構図になっていたが、そろそろ収まってくれないと困る。
「ほら、お前さんたち。そろそろ諍いもその辺にしときな」
「もう。お姉ちゃんもちょっと大人げないよ」
「アハハ……確かにちょっと言い過ぎたわね。ごめんね、夏凜」
「うぅ~……」
樹に窘められて風も夏凜に謝罪し、夏凜も悔しそうにしながらも渋々納得した。
「そ、そりゃあひなたとか東郷に比べたら私はそこまで女子力がないかもしれないけど、私だって日々成長してるんだから! 流石に毎日コンビニ弁当は止めたから!」
「そう……アンタも成長したのね。昔の口を開けば訓練とサプリばかり言う三好夏凜がいつの間にか大人になって、アンタを育てた部長としてアタシは鼻高いわ」
「誰もアンタに育てられてないわよ!」
つい風にまた噛み付くが、実際に風のおかげで夏凜は少しだけ自炊することが出来るようになった。そこは感謝しているが、お互いともあまり素直ではないからこうなってしまう。
「はぁ……感謝も素直に言えないなんて、夏凜はやっぱり勇者部のツンデレ代表ね」
「誰がツンデレ代表よ!? アンタこそ、もう少し普通に喜べないの!?」
「あぁ、また始まった」
「お前さんたち、仲いいねぇ。喧嘩するほど何とやら、案外オシドリも目じゃねぇほどの仲じゃねぇのかい?」
『違いますよ!!』
「ハハッ、反応まで一緒とは微笑ましいねぇ」
二人の様子が相当面白かったのか、遍は愉快そうに笑っている。対する樹は恥ずかしいのか、顔を手で覆い隠していた。
「二人とももう少し素直になれば良いのに……これでは子どもの喧嘩だわ」
「子ども……そうです! それです!」
「何か思いついたの、樹ちゃん?」
「それですよ、東郷さん! 子どもの頃に戻ればきっと素直な気持ちに戻って仲直り出来るはずなんです!」
「……やりてぇことが何となく見えて来たぜ。けど、本当に良いのかい?お前さんたちのことだからこれで大人しく終わる、なんてことはねぇと思うぜ?」
「大丈夫です! お姉ちゃんたちもきっと分かってくれます!」
「あいよ。そんじゃあ少し気合いを入れるから離れてな!!」
樹本人から確認を取ると遍は全身に力を入れて構える。渦のように桃色の羽衣が彼を囲み、その周辺から桜吹雪が舞う。
「出で包め!!」
遍が二人の足元に向けて扇を指し示すと方陣が出現し、二人を羽衣が蓮を彷彿させるように包む。
「うあっ!? 何これ!?」
「な、どうなってるの!? てか狭い!?」
「ちょっと夏凜! アンタ何処触ってんのよ!?」
「それアンタも同じでしょ、風!! 人のこと踏みつけんじゃないわよ!?」
大慌ての夏凜と風だが、こうなってしまう以上、発動させた術式を止めることは出来ない。そのまま遍は技を行使した。
「
大仰な台詞回しの後に遍は拘束を解放させる。光の柱から出現したのは
「あれ、なにこれ!?」
「わたし、どーしてここに?」
可愛らしくも幼くなった風と夏凜だった。いつもの讃州中学の制服ではなく、恐らく幼稚園の制服であろう服を着ていた。きっちりと黄色の帽子を被り、胸に平仮名で書かれた名札も付けていた。
「風先輩と夏凜ちゃんが……子どもの姿に!」
「こんな風になってたんだね、私……」
「この頃のお姉ちゃんってあんまり覚えてないんだけど、確かにこんな感じでした……」
「夏凜ちゃんも幼少期の姿になっているわね。こちらの世界に来る前に一度見たことあるけど、洋服を着ているだけで本人はそっくりそのままだわ」
風の妹である樹は彼女の姿をそこまで覚えているわけではないが、それでも今の風の姿に違和感を不思議と感じられなかった。
東郷もかつて結城たちと一緒に見た夏凜の幼少期の映像を思い出しながらしみじみと見比べる。以前に春信に彼女の近況報告をしたことがあったのだが、その時に彼は返事と一緒に幼少時の夏凜の映像を送り返したことがある。
その映像を見た時の夏凜と今の夏凜の姿はそっくりだった。というか全く同じといっても良い。友奈の時もそうだったが、遍のこの技は本当に驚かされるものだ。
「遍さん、実は二人が小さい頃に会ったことがあるとか?」
「俺の技は本人の記憶を辿る形で姿を変えているんでな。当時に会ってなくても問題はないのさ」
「な、なるほど」
それにしても幼い。姿から見て幼稚園児なのだろう。場合によっては保育園児かもしれない。樹は小さくなった姉に話しかけてきた。
「お、お姉ちゃん。私のこと、分かる?」
「いつきだよね? あんたなんかでかくなってない?」
「友奈ちゃんたちの時もそうでしたが、やはり記憶の方も後退しているのでしょうか?」
「完全にそうというわけじゃねぇと思うが、恐らく今の記憶はうろ覚えになっているかもな。これも一日で戻るよ」
遍が説明している内に樹は風と戯れている。いつも大きく映った姉の色々と小さくなった姿を目にして、樹は何とも言えない高揚感に包まれた。
「わぁ~……お姉ちゃんが本当に小さくなってる~。可愛いな~」
「ちょ、いつき! おねえちゃんのあたまをなでちゃだめよ!」
「はいはい、分かってるよ~」
「あー! こどもあつかいしてるわね!」
プリプリ怒りながら腕をバタバタさせている今の風の姿は逆に樹を和ませていた。頭を撫でる手が止まらないでいた。流石にこのままではいかんと感じた幼女風はそれを振り払って頬を膨らませた。
「むぅ~」
「ごめんね、お姉ちゃん。何だかね、いつもと違うからつい揶揄いたくなって」
「もう! あんまりおねえちゃんをからかわないでよね!」
「うんうん、分かってるよ。でもお姉ちゃん、可愛いよ」
「そ、そ~? もう、そのてにはのらないんだからね。で、でももうちょっといってもいいわよ?」
「すごく嬉しそうね、犬吠埼さん」
「子どもになったことでより感情が分かりやすくなったのかもしれないわね」
上辺では樹の言葉を否定しているが、ニヤニヤしながらも何だかんだ追加要求してくる辺り、相当嬉しかったのだろう。少なくとも彼女は樹に任せていいだろう。
「風先輩は樹ちゃんに任せて良いとして、夏凜ちゃんは……」
東郷たちが幼くなった夏凜の方を見る。彼女の方はキョロキョロと周りを見回して不安そうにしていた。言われてみれば幼少期からの知り合いはここにはいない。そのせいで不安になっているのかもしれない。
「うぅ~……」
「あぁ夏凜ちゃん、寂しさで泣きそうになっているわ。ほら、そんなところにいないでこっちにおいで」
「さ、さびしくない! さびしくなんてないわよ!」
東郷は腕を広げてロリ夏凜を迎え入れる体勢になるが、この時期から強がりな性格だった彼女は顔を腕で拭いて顔を背けた。しかしその様子もまた東郷の母性本能を擽るものだった。
「もう、夏凜ちゃんったら可愛いわね! そんなに恥ずかしがらなくても良いのよ?」
「むぐっ!?」
「夏凜ちゃんが東郷さんの胸の中に埋もれた!?」
東郷に抱きしめられた夏凜は彼女の豊満な胸に顔が包まれるような形で密着していた。何とか振りほどこうとするが、幼くなったことで弱体化した自分の肉体では東郷の腕力に勝つことは出来なかった。
それでも必死にもがくが、離れることが叶うことはない。やがて大人しくなってきたが、腕がピクピクと痙攣しているようだった。
「と、東郷さん! そろそろ放してあげて! 三好さんが窒息してしまうわ!」
「え? あら、ごめんね夏凜ちゃん」
「ふぇぇ……」
千景に呼ばれて我に返った東郷は急いで夏凜を放す。当の彼女は目をグルグル回してフラフラになっていた。
「しかし、こいつはすげぇな。女に抱かれて桃源郷へ旅立ちそうになる奴は初めて見たぜ」
「確かに、立派な桃に包まれていましたね……」
遍の何気ないコメントに赤嶺が小さく呟くとそこへ残りの友奈ズと亜耶、そして芽吹がやってきた。
「風先輩!片付け終わりましたーってあれ?その娘たち、どうしたの?」
「友奈ちゃん! 実はかくかくしかじかで……」
東郷の説明により、やってきた三人にも事情が伝わると高嶋は樹と風を見比べていた。
「そうだったんだね。じゃあ前に私たちが前に小っちゃくなったっていうのも遍さんの技だったの?」
「まぁそういうこった」
「それで夏凜もこんなことになっているのね」
芽吹が幼くなった自分のライバルを見てそう言った。元の世界にいた頃の自分だったら恐らく頭を抱えているところだったが、この世界に来て色んな珍事に巻き込まれてきたおかげで大分耐性が付いてきた。結城はロリ夏凜の目線までにしゃがむと話しかけてきた。
「こんにちは! 私、結城友奈っていうんだ! 貴女のお名前は?」
「かりんよ!」
「夏凜ちゃんって言うんだ~、良い名前だね!」
「そ、そんなことないわよ」
人懐っこい結城のおかげでロリ夏凜の緊張も少しずつ解けていった。見慣れていない遍がそれに感心していると結城が会話を続けていった。
「ねぇ、夏凜ちゃん。夏凜ちゃんは今、何歳なのかな?」
「ごさいよ!」
「そうなんだ~。まだ小さいのにしっかりしているんだね!」
「とーぜんよ! プールのなかでおよぐことだってできるんだから!」
「すっごい! 夏凜ちゃん、運動が得意なんだ~。私が夏凜ちゃんと同じ年だった頃はそこまで運動は出来なかったから羨ましいな~」
素直にロリ夏凜の言っていることに友奈が関心していると、ロリ夏凜は誇らしげに言い放った。
「こんなところでまんぞくなんてしないもん!つぎはにじゅーごめーとる? およいでやるんだから!」
「夏凜ちゃんは本当に頑張り屋だね!」
「こ、これくらいとーぜんよ!」
朗らかに笑う友奈の言葉に対してロリ夏凜も満更でもなさそうな様子だった。そんな彼女の様子を見て少女たちは感慨深そうにしていた。
「夏凜の向上心の強さはこの頃からだったのね」
「ええ。そしてその努力家な部分が彼女を形作っているわ」
二人は後に成長した彼女についてしみじみと考えているとロリ夏凜は芽吹の方へ歩み寄ってきた。やってきた目的が分からない芽吹はつい身構えると、ロリ夏凜は彼女に指さした。
「おいかけっこして」
「追いかけっこ? 貴女と私で?」
「うん。わたしとあんたとゆーなで」
「……仕方ないわね。少しだけ付き合ってあげるわ」
「じゃああんたおにさんね!」
「え!? ちょっと、待ちなさい!」
急に小さくなった夏凜と遊ぶことになって調子が狂うが、それを芽吹は不快に思うことはなかった。二人の様子を東郷たちは見守っている。
「アハハ! 芽吹ちゃん、楽しそうだね!」
「亜耶ちゃんは混ざらなくても良かったの?」
「はい。私はあまり運動に自信がありませんので。それにこうして三人を見ている方が楽しいんです」
「その気持ち、私も何となく分かるわ」
少し恥ずかしそうにしてはいるが、確かに夏凜と結城と遊んでいる芽吹も楽しそうにしていた。
「でもアレじゃあ仲直りどころじゃなくなっちゃったね」
「まぁ良いじゃない、赤嶺さん。暫く遊んでいれば二人とも落ち着いて話も出来るわ」
「それに普段勇ましい夏凜先輩が芽吹先輩たちにこうして甘えているところを見るのも微笑ましいですよ?」
「ん? どうして?」
「二人のやり取りを見ていると何だか年の離れた姉妹みたいだと思ったんです。すごく仲が良くて」
その言葉を聞いて、東郷の頭の中で電流が走った。
「遍さん」
「おーっと落ち着きな、嬢ちゃん。言いてぇことは分かっちゃいるがお前さん、女子がしちゃあ不味い顔になってるぜ?」
「それでもお願いします! 私にも技をかけてください!」
「我慢の限界が来ていたのね、東郷さん……」
「何で自分から俺の技を喰らおうとするのかねぇ……あいよ、ちょっとそこに立ってな。出で包め!!」
そういって遍は東郷に扇を向ける。早速桃色の方陣が展開され、羽衣が彼女を包む。
「ぬわぁぁぁぁぁ!! 退いてくれぇぇぇ!!」
「待ってよ兄さぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」
「えっ!?」
『あ』
そこへラグナと刃が猛スピードで東郷たちの方へ走ってきた。東郷は彼らを避けようとしたが、それも叶わず三人は羽衣の拘束に呑まれてしまった。
「あー!! 東郷さんだけじゃなくてラグナと刃君までー!!?」
「え!? 東郷さんがどうかしたの!?」
「えーっと……男子二人と揉みくちゃになっちゃった?」
「揉みくちゃ!?」
友奈ズが動揺している中で遍は一人呆れたように樹に聞いてきた。
「……あの子たち、些か面倒事に巻き込まれすぎやしないかい?」
「いつものことですよ……」
「あの!? 三人は御無事なのでしょうか!?」
「別に俺の技に害があるわけじゃねぇが……今回はなぁ」
遍の言う通り、現在東郷たちは羽衣の中でぎゅうぎゅう詰めになっていた。それもあって嫌でも三人は密着してしまっていた。
「どうなってんだこいつは!!? てか痛ぇ! 蹴るんじゃねぇよ、トウゴウ!!」
「仕方ないでしょ! 綾月君こそ顔が近すぎるわ!」
「別に好きで近づいてるわけじゃねぇよ!? 元はといえばジンが、ってテメェは何人の耳元で囁いてやがるんだ、ジン!?」
「漸く二人っきりだね、兄さぁん……て何故鷲尾までここにいるんだ?」
「貴方は逆に冷静すぎやしないのかしら、刃君!?」
「当たり前だろう。何故僕がお前のことなど態々気にする必要があるんだ?」
「少しは周りの目を気にした方が良いと思うわ」
「それ、テメェが言うのかよ!!? つーかジンはさり気なく人のバック取ってんじゃねぇ!! ぶっ飛ばすぞ!!」
「これでもう逃げられないよ、兄さぁん! さぁ、やっと僕と殺し合いが」
「出来るかぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ちょ、二人とも暴れないで!! 私が二人に押し潰されちゃう!!」
怒ったラグナは急いで身体を旋回させて刃と対峙すると彼と取っ組み合いをし始めた。といってもここは狭い蓮の形をした拘束網。バランスを取ることは至難の業である。そのため、ラグナの後頭部は東郷の胸に収まってしまった。
「あぁあ、ああ、綾月君!!? どこに頭を置いているの!!?」
「やめろ!! ジンを刺激しちまうだろうが!!! 後で吊るすなり切腹させるなり好きにして良いから先ずこいつを止めるのを手伝ってくれ!! このままだとマジでシャレにならねぇ!!!」
「な、え!!? わ、分かったわ!!」
「おい鷲尾!!! 僕と兄さんの殺し合いを邪魔するなぁ!!!」
「テメェが先ず自重しろやぁぁぁぁ!!!」
最早風と夏凜とは比べ物にならない修羅場である。中にいるラグナたちだけでなく、外の高嶋たちも大慌てだった。恐らくこの中で冷静だったのは大人である遍と兄を捕獲出来た刃、そして状況を分かっていないロリ組だけである。
「芽吹に樹ちゃん! 夏凜ちゃんと風さんは!?」
「もう耳を塞いでいるわ……」
「あ、あれはちょっと今のお姉ちゃんたちには刺激が強すぎますッ!!」
「ねぇいつきぃ。どーしてあたしのみみをおさえてるの?」
「お、お姉ちゃんにはまだ早いから!!」
「はなしなさいよ、めぶき! なにもきこえないじゃない!」
「今は聞こえなくて良いのよ」
子どもたちは芽吹と樹に連れられて一旦退避したが、依然として状況は良くない。このままでは桃色の羽衣が紅く染まるのも時間の問題だ。
「頼む、誰か早く何とかしてくれ!! でないと俺が人として大事な何かを失っちまう!!! つーか失いそうだ!!!」
「わ、分かったわ! と、取り敢えず大鎌で斬り開けて」
「ぐんちゃん、それ危ないから! 中の東郷さんたちも危ないから!」
「あ、遍さん!!!」
「もうすぐだ! さぁお前さんたち、全ての業を捨ててきな!!」
不穏な空気の中、遍は力を込める。周囲に桜の花弁が舞い散る中、再び台詞を放った。
「我が扇は全てを包む舞の抱擁!!
再び拘束が解かれて光の柱が出現すると、そこから三人の影が出現した。それを見て結城は親友の安否を知るために駆けつけた。
「東郷さん、大丈……夫?」
そこにいたのは自分たちが良く知っている、が、今まで見たことのない姿の東郷たちだった。恐らく先ほどの夏凜たちと同じ年齢までに若返ったのだろう。特に東郷は分かりやすかった。
「東郷さん……須美ちゃんより小っちゃくなっちゃった」
「これも幼稚園ぐらいの時なのかな?」
結城が驚くのも無理はない。普段は大人びた雰囲気を出している相方が急に幼くなってしまったのだ。青い服を着ていつものリボンを付けていない東郷が結城の方へと歩み寄った。
「おねーさん、どうしたんですか?」
「あ、ううん! 友達に似ていたからつい見つめちゃった。え~と、ユアーネイムイズ東郷さん?」
敢えて外国語風に名前を問う結城。自分の知っている親友であればきっと反応してくれるはずである。チビ東郷は結城の言葉を聞くと少し不機嫌そうにしながら黙り込んでしまった。
「全然返事をしてくれないね、東郷さん」
「多分外国語が嫌だったんだと思う」
そう考えた結城は改めて日本語で挨拶した。
「それじゃあ改めまして、結城友奈です! 貴女の名前は東郷美森さんかな?」
「はい、とーごーみもりです」
「やった! 返事をしてくれたよ!」
「よこもじはげんきんです!」
「そしてやっぱりさっきは英語がダメだったみたい!」
流石は生粋の愛国者。幼少期から諸外国に対して警戒していたようだ。二人の様子を見届けると他の少女たちは男子のいる場所へ視線を移す。そこでは白い患者服を着た金髪碧眼の少年が二人、ポツンと座っていた。
「こっちは刃君だよね。そしてこっちは……もしかしてラグナ?」
「金髪……確かに沙耶ちゃんと如月君のお兄さんだからあり得ない話ではないけど……」
そこにいるラグナは東郷たちに比べてもう少し年上に見えるが、それでもかなり幼くなっていた。目測からして八歳くらいだ。右腕に封があることを除けば、彼は神社へ預けられたばかりの頃の姿になっていた。
その隣にいるのは凶暴性が皆無の幼い刃。本当にどうして成長したらああなるのかと頭を抱えてしまうほど、気弱そうな顔つきだった。ラグナが自分の手や身体をざっくり確認すると大声で叫んだ。
「なんだこりゃあぁぁぁぁぁぁ!!? 何故俺がガキにぃぃぃ!!?」
「あれ? ラグナ、もしかして結構元の記憶があるの? 私たちのことは分かるかな?」
「ユーナにチカゲ、後アカミネに女形の兄ちゃんだろ?忘れちゃいねぇよ」
「意識もはっきりしているし、大丈夫みたいね。でも何故……」
「大方、その兄ちゃんの右腕と関係してんのかもな。そいつからは尋常じゃねぇ気配を感じるし、一枚噛んでいてもおかしくねぇ」
「確かに有り得なくもないわね」
それにしてもいつもは大きくて頼りになる彼がこんなに小さな子どもになっているのを見ると、何だかむず痒い気分になる。もしかしたら東郷や樹たちもこれと同じ感覚だったのかもしれない。
「……あの」
「何だよ」
「貴方の頭をその、撫でても良いかしら?」
「……好きにしろ」
子ども扱いされている気分も否めないが、千景が東郷を撫でている結城をチラチラと見ているのが見えたラグナは仕方なさそうにしながらも頭を差し出した。
それを千景は遠慮がちになりながらも彼の頭を触れる。意外と髪は手触りは柔らかく、癖になりそうだった。
「……ありがとう。満足したわ」
「そうか……」
正直かなり恥ずかしかったが、喜んでくれたようで何よりである。
「じゃあ私も! 私にもやらせて!」
「私もお兄様になでなでしてみたいな~」
「ま、待て!! テメェらはダメだ! いやテメェらが悪いわけじゃねぇんだけど今やられたら多分俺がダメになるからせめて今は待ってくれ!!」
ラグナは結城のなでなでで顔が蕩け始めているロリ東郷を横目で見る。彼も以前に結城のマッサージを受けたことがあるが、あのゴッドハンドは友奈族共通の特技であることがこの世界で発覚した。
確かにそれで撫でられてみたいかと言われればされてみたくはあるが、今それをやられたら収集が付かなくなる。残念ではあるが辞退してもらう他ない。
「そっか~……それじゃあ仕方ないね」
「あーあ、残念だったな〜」
「済まねぇな、今は勘弁してくれ」
「そういえばこっちにいる如月君は大丈夫なのかしら?」
千景の指摘で他の者たちが刃へと注目すると、小さくなった刃は若干涙目になって少年ラグナの後ろへ回った。
「に、兄さん……へんな人たちがいるよ~……」
「のわっ!? テメェもかよ、ジン!? つーかまた人の背中にベタベタすんな!」
「えぇ!? ど、どうして?」
「はぁ? あそこまで暴れておいて何言ってんだ?」
いきなり兄からヤジが飛んできたことに少年刃は怯えてしまった。これにはラグナも戸惑ってしまう。これでは本当に子どもの頃の刃だ。
「ラグナ先輩。もしかしたら如月先輩の記憶は他の皆さんと同じように幼少期の頃と同じ状態なのかもしれません」
亜耶の指摘を受けたおかげでラグナも一旦冷静になる。確かに今の刃からは殺気を感じない。
「……おい、ジン。さっきまで俺を追いかけ回していたのを覚えているか?」
「え? ぼく、そんなことしてないよ?」
「していたのよね、さっき……」
千景はつい小さく突っ込んだが、どうやらこの刃は先ほどのやり取りを覚えていないらしい。その様子をラグナは頭を押さえるも彼の手を握った。
「……仕方ねぇな。ジン、ちょっと付いて来い」
「何かようがあるの、兄さん?」
「まぁな。トウゴウと女形の奴に謝りに行くぞ。知らねぇ内にだが、テメェも色んな奴に迷惑を掛けちまったからよ。それが終わったら俺の部屋で泊まってもらうぞ」
「とうごう? おやま?」
「……一人は目の前の兄ちゃんだ。済まねぇな、女形のアンタ」
「気にすんなよ。ちょっと予想外のこともあったが、良いモン見れたからチャラで良いぜ」
「そうかよ……」
「ごめんなさい、おやまさん」
「いや~、やっぱ美少年って良いねぇ」
「おい」
何か危険なものを感じたラグナが刃を連れて遍から離れる中、中学生たちは呆然としてた。未だにラグナの後ろから頭を下げた少年があの刃であることが信じられない。本当に別人としか思えないくらいだ。
「……誰なの、あの子?」
「如月先輩ですよ、千景先輩」
「そ、そんなわけないでしょ!? 他の皆でもまだ現在に至るまでの片鱗があったのに、あんなのもう別人じゃない!?」
「今は凄く強い刃君でも昔は甘えん坊だったんだね~」
「本当に人間はどう成長するか分からないね……」
兄と一緒に結城とロリ化した東郷にも謝罪する刃の背中を見ながら赤嶺と千景は何とも言えなかった。それに対して高嶋と亜耶は小さな少年たちが手を繋いでいる様子を見てほっこりしていた。
「でも私はラグナ先輩が本当にいいお兄さんだと思います。先ほど如月先輩と大喧嘩していたのに、今は手を引いて一緒に東郷先輩たちと遊んでいますよ」
「前から年下の面倒見は良い人だったからね。私たちの時も結構色んな所で何だかんだ助けられてきたよ!」
刃が八八艦隊について熱く語っているロリ東郷の聞き手になっていると亜耶は二人を結城と一緒に見守っているラグナを羨望の眼差しで眺めていた。
「私もラグナ先輩を見習えば『あの子』ももう少しだけ心を開いてくれるのでしょうか?」
「亜耶ちゃんにでも素直になってくれない人がいるの?」
「はい。先日神樹様が召喚なされた私の義弟です。防人の皆さんと私とは度々顔を合わせていますが、恐らく他の皆さんとは一度しかないと思います」
「あー! あの眼鏡の男の子だね! 私、覚えているよ!」
「その子は亜耶ちゃんのことが苦手なの?」
「そういうわけではないと思いますが、確かに距離を置かれているように感じます。元々親戚の子なのですが、諸事情で私の家に引き取られたんです。ただ、家での出来事が原因で周りに心を閉ざしていて……」
「複雑な家庭環境なんだね」
意外な亜耶の台詞に赤嶺は疑問を覚える。彼女は類を見ないほど純粋な娘で、どんなに気難しい相手に対しても温かく接してくれる。
それは元は敵だった自分だけでなく、内情を知らない者からは死神として恐れられているラグナや元々かなり性格に難のある刃に対しても同様であり、そのおかげで二人も刃の発作が絡まなければ彼女には割と素直である。
逆に彼女がはっきりと距離を感じるということはそれだけ普段から彼女に対して心を開いてくれていないともいえる。他の防人や衛士たちにも恐らく同じ態度なのだろう。
だが亜耶の話を聞いて、千景はどこか他人事には聞こえなかった。
「……もし家族の問題が理由なら、時間が掛かると思うわ。一番身近にいる分、やはり影響も大きく受けるから」
「千景先輩……」
「でも、だからこそその子を見捨てないであげて。きっとその子は、心の中では寂しいのだと思うから。正面から接し続けていれば、その子はいつか必ず貴方に心を許してくれるようになるわ」
「……はい! ありがとうございます!」
千景のその言葉を聞いて亜耶は少し心が晴れた。どうやら悩みが多少解決することが出来たらしい。
「カッコよかったよ、ぐんちゃん! まるで本物のお姉ちゃんみたい!」
「そんなことないわ。私がこう考えられるようになったのは高嶋さんや勇者部の皆のおかげよ」
少し照れ臭そうにするが、千景は亜耶の力になれたことを嬉しく思った。
「亜耶ちゃん、もうそっちに行っても大丈夫かしら?」
「芽吹先輩! もう大丈夫ですよ」
そうして芽吹と樹が亜耶たちのところへと戻った。二人の腕にはロリっ娘になった風と夏凜が眠っていた。どうもあの後も二人は遊んだらしく、今は疲れて寝ているそうだ。
「そういえば亜耶ちゃん。『すごく大きな人形』が亜耶ちゃんを探しに来てるんだけど入れても大丈夫?」
「まぁ、そうだったんですね。良いですか、遍さん?」
「俺は構わんよ。入れてやりな」
「だそうよ。入ってきて」
芽吹が後ろの方へ声をかけると、そこから2メートルほどの紫の人形が出現した。人形の顔には一筋のヒビが入っていて、肩から地面に付きそうなほど長い両腕の先端には鋭い爪が装備されていた。そのうちの片腕は勇者部の荷物が入ったバッグを持っていた。
「『ニルヴァーナ』さん、お迎えに来てくださったんですか?」
「……」
「まあ! あの子も探してくれていたんですか? ありがとうございます! お荷物の方は大丈夫ですか? 私もお手伝いしますよ?」
巨大な人形にしてアークエネミー、ニルヴァーナは空いている手を横に振る。自分は大丈夫だと言っているようだ。先ほどから一切言葉を発していないが、亜耶にはその意図を理解することが出来るらしい。
「いやー…まさかこんなに大きな人形に会うとは思わなかったねぇ」
「正直、最初はかなり警戒したわね。私たちの時代でも似たようなものを持った敵がいたから」
丸亀組が初めてニルヴァーナと出会った時は緊張したものだ。何故なら見た目がレリウスと行動を共にしていたイグニスとそっくりだったからだ。それでも事情を知っているラグナや面識のある防人組のおかげで早い段階で打ち解けることが出来た。
「楠さんはニルヴァーナの言葉を理解出来るの?」
「いいえ。家では亜耶ちゃんとのえるとあの子だけよ。ここではひなたや東郷みたいに巫女の力を持っている人も出来るみたい。亜耶ちゃんが言うに話し相手が増えて嬉しいそうよ」
「私もニルヴァーナさんとお話がしたいなぁ」
「あの子や亜耶ちゃんを通じてなら出来ると思うわよ」
「芽吹先輩、亜耶さんは見つかりましたか?」
女子たちが会話している途中で、亜耶を探しているらしき一人の少年がやってきた。少年はラグナたちと同じ金髪で、眼鏡のレンズ越しに見えるのは青い瞳だった。
「
「ええ、まあ。『姉さん』も亜耶さんを探しているようでしたからね」
「それでも来てくれて本当にありがとうございます」
「お義姉ちゃんなのに名前呼びなんだ……」
樹の何気ない疑問に少年、袈瑠々は一瞬眉を顰めるが、すぐに平静に戻る。
「……冗談が上手いんですね、樹先輩。僕の『姉さん』はいつだって、『
「そ、そうなんだ……」
「こ、これは厳しいね……」
「思った以上に大変かもしれないわね、亜耶ちゃん」
しっかりと受け答えは出来るが、それでも他者に対する強い拒絶を千景は感じることが出来た。具体益に言うと村にいた頃の自分や会ったばかりの頃の刃やしずくから感じたものよりも濃い闇だ。確かに彼の心を開かせるのはかなり大変そうだ。
「……ほうほう」
「あの、貴方はどうかされましたか?」
袈瑠々が訝しんでいても遍の視線が彼から外れることはない。どこか品定めするような目つきで、自分の周囲をグルグル回りながら観察する。流石に鬱陶しく感じ始めると遍は袈瑠々に向けて指さして宣言した。
「はい採用!!!」
『へっ!?』
「うん、ばっちりだ!! ちょっと闇を感じるけど可愛くて紳士的な美少年!! 文句なしの合格だ!!」
「ちょ、ちょっと待ってください! 僕は貴方のところに行く予定はありません!!」
「そんなつれないことを言わないでおくれよ~。偶にだけで良いから! ちょっとここに名前を書くだけで良いから」
「だから、僕は舞台になんて参加するつもりはありませんよ!! そもそも誰がそんなものを見に行くというんですか!?」
「私は袈瑠々君の演技をしている姿を見てみたいですよ? きっと素敵だと思います!」
「この状況で何を言っているんですか、貴女は!? 僕がやるわけないでしょう!?」
「……」
「姉さんまで見たいの!?」
姉と呼んでいるニルヴァーナまでもが亜耶と同意見であることに袈瑠々も愕然とする。それに対して遍は好機とばかりに袈瑠々を勧誘し続けた。
「ほら、姉ちゃんたちもお前さんの舞が見たいらしいぜ! ここで引いたら男が廃るってもんだろう!?」
「袈瑠々君、何事も挑戦よ!」
「なんでこうなるんだよ!!? 助けて姉さぁぁぁぁぁぁん!!!」
その後、哀れに思った樹や高嶋が何とか遍を説得することで袈瑠々の一座入団は保留となった。
因みに翌日になると幼児化した者たちは元の姿へと戻り、記憶も曖昧になっていた。そのため、ラグナが陳謝と叫びながら土下座していた理由を東郷は最後まで分からなかった。
いつもは年上のお兄ちゃんのラグナ君も今回は子ども役です。声は勿論、アニメの少年時代のもの。
ゲストキャラですが、一人目はアンケートで当たったアマネ=ニシキ! ドリルと羽衣で舞うように美しく戦うべらんめえ口調の兄ちゃん。ドリルといったらジンの声優さんが出てる某ロボアニメを連想してしまいますね。
そしてもう一人は眼鏡ショタ、カルル=クローバー! 感想欄でも彼の登場を待ちわびているような声がちょこちょこあって、アマネが出るならカルルも、と思って今回参戦させてもらいました。無論、姉さんことニルヴァーナも登場です。
本作でのカルル君では、亜耶ちゃんの親族になりました……だってこの子、それぐらいやらないと知らない間に闇落ちしそうなんだもん。こちらではレリウスがゆゆゆ世界の住人じゃないからまだマシだけど。
次回から本編です! 作者の周りが忙しくなってきているので投稿は大分先になると思いますが、残り少ないのわゆ編! 最後の戦いの時が刻々と近づいてきています!
それではまた。