蒼の男は死神である   作:勝石

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どうも勝石です。

最近東郷さんが東京を受胎させたり、大正浪漫っぽい制服を着たラグナが黒いサンチョを引き連れてバトってくるゲームを始めました。やっぱり良いな、メガテンは。

そしてダンスパーティイベントですが、皆さん社交ダンスの経験はありますか? 私はないのでどんな感じかはテレビでしか判断できませんが、正直ダンスは苦手なのでアレが出来る人はすごいと思います。

さて今回の話は花結いのエイプリル・フールネタからのネタですが、今回の話を書いているうちにあまりにも長くなると判断しまして、急遽前後編の2話構成にさせてもらいました。前編はナオトとカグラ、後編はラグナ一人の構成です。

それでは約束されしカオス回の始まりです。どうぞ


花結いの確率事象16.人生はゲームから学ぶもの

その日は寒い風が吹きつけてくる、秋のある朝の出来事だった。ラグナたちは中学生の園子に呼び出されて彼女が住んでいるアパートの部屋に来ていた。刃がいないとはいえ、男子メンバーのみの集合。それもカオス製造機こと園子からの招集となれば嫌な予感しかない。

 

「ラッくん。ムッキー。ナオポン。皆のこと、待ってたんだぜ~」

「……まーた変なことに巻き込もう、なんてことじゃねぇだろうな? ソノコ」

 

フッフッフーと奇妙な笑い声を漏らす文豪少女に死神は呼び出した訳を問う。以前呼び出されたときはホワイトデーで仮装パーティするためだったが、彼女の顔つきを見る限り、今回も何となくそれに近い類の話だと予想できる。

 

「違うよ~。ラッくんたちは私のことを何だと思ってるの~?」

「バラエティー勇者」

「文系ハッチャケ美少女」

「イモータルコスモスブレイカー」

「え~!?」

「悪かったよ。半分冗談だ」

「なーんだ、良かった~」

「いや、良くないだろ」

 

普段の行いのせいだろう、園子に対する評価は残念なものだった。若干へこんだ園子であったが、ラグナのフォローを聞くと気合いを入れなおすように両頬を叩いて、要件について説明し始めた。

 

「ちょっと前にフーミン先輩が勇者部の予算が足りないって騒いでいたの、覚えてる~?」

「あぁ……そういやそんなことあったな。ちょっと前っつーか先週くらいまで俺らで動画制作してた」

「そうそう~。でも結局赤字になっちゃって失敗に終わっちゃったんだよね~」

「勿体ねぇよな~。美女がたくさん出るチャンネルで評判だったのによ」

「アンタ視聴者だったンスか、神楽さん……」

 

残念そうに語る神楽にナオトは思わず突っ込んだ。しかし事実として勇者部の作った動画はネット上でもかなり評判が良く、今でも殆ど更新されていないことを残念に思うかつての視聴者もいる。

 

しかし、動画制作が御役目に支障を出し始めたこと、そして肝心の部費のために稼いだ収入も風の大食い動画のための食費を上回ってしまったため、結果として損にしかならず、勇者部MyTube計画は失敗に終わってしまった。

 

「で、それが今回の集合とどう関係してんだよ?」

「フッフッフー……あるんだよ、ラッくん。この勇者部ショックを乗り越える、起死回生の案が!!」

「へ~、そいつは何だ?」

「それはズバリ!! コミマ!! なんよ!!」

「こ、コミマ?」

 

瞳を爛々と輝かせながら力説する園子に対して、聞き慣れないワードにラグナは頭を傾げるしかなかった。響きとしては以前依頼で赴いたフリマに似ているが、何か違うのだろうか。しかし、彼の横でナオトは何かを理解したようだ。

 

「コミマって……まさか、コミックマーケットのことか!!?」

「ぁん? テメェ知ってんのかよ、ナオト」

「あぁ……俺の世界にもあったからな」

「おぉ~、ナオポンはコミマ経験者だったんだね~。それは頼もしいよ~」

「いや、俺は聞いたことがあるだけで実際には行ったことないんだよ。アイツ……『福田』はありそうだけど」

「でもどんな場所かは聞いてんだろ? 何する場所なんだ?」

 

神楽に促されてナオトは元の世界で生きている友人から聞いたコミマの様子について話し始めた。彼によるとコミマとは半年に一回開催される巨大なアニメやゲームの祭典で、そこでは公式から出たグッズの売買、コスプレの撮影会、そしてサークルや個人で制作した二次創作やオリジナル作品の出展、販売が行われている。

 

「それで、次の冬のコミマに出展するのに作品を作る必要があるってことか」

「でもそれじゃあ俺たちを呼ぶ必要ねぇだろ。ソノコなら普段から自分で小説を書いているし」

「まぁね~。でもどうせ出すならもっと思い切ったことをやりたいから皆にも見てもらいたいの~」

「そこは創作意欲をもう少し押さえて欲しかったぞ……」

 

楽しそうに話している園子を見てラグナは「ったく」と呟きながらため息を吐くも生き生きとしている園子を見て怒るに怒れなかった。彼女が暴走するのは今に始まった話ではないし、包帯に包まれてベッドに寝ていることしかできなかった頃より、創作をして笑っている今の方がよっぽど良いと思ったからだ。

 

「まぁいいや。それで、見て欲しいのは小説の出来か? それならトーシローの俺たちよりアンズ辺りに聞きゃ良いじゃねぇか?」

「ううん、今回は小説じゃないんよ~。ココちゃんにも協力してもらったからね~」

「あれ? 何か一気に不穏な空気になってきたぞ?」

 

まさかの九重の協力と聞いて、三人は改めて警戒を強める。

 

園子がアイデアの獣だとすれば、九重は技術の鬼だ。仮に園子が奇想天外なアイデアを思いついたとしても彼女一人では出来ないこともある。しかし、それも九重が関われば例えそれがどんなに荒唐無稽なことだったとしても、園子のアイデアも不可能では無くなるのだ。

 

故に二人が手を組めば大抵のことが出来てしまう。なんなら乃木家の財力で後押しすれば多少コストの掛かることでも出来てしまうのだ。

 

「の、乃木。念のために聞くけどさ。何を作ったんだよ?」

「その答えのヒントは目の前にあるのだよ、ナオポン君」

 

そう言うと園子は机に乗ってある物体に向かって両腕を指し示した。そこにあったのは普段園子が小説を書くときに使っているパソコン。電源が付いていて、いつでも操作することが出来る状態だった。

 

「ソノコ、まさかゲームを作ったのか? それもオリジナルの奴」

「そのとーり~!」

「ゲームか……確かに九重ならそういうのチャチャっと作れそうだもんな」

「そんでシナリオは乃木が書いたのか」

「勿論、そのっちと共同作業、だよ~」

 

頷く園子の話を聞いて、ラグナたちは彼女の頼みの内容を理解した。つまり、自分たちにゲームのテストプレイをしてほしいのだろう。しかし、

 

「けどそれなら俺たちじゃなくてチカゲが一番適任じゃねぇか」

「ううん。今回はちーちゃんじゃなくて、三人にやって欲しいんよ~。アクションとかRPGじゃないからね~」

「アクションじゃない男性向けのジャンルでコミマに出すとなると……げっ……」

 

そこでナオトは園子たちが作ったゲームのジャンルを察してしまった。それは自分もやったことのある、いや、不服ながらもかなり馴染みのあるものだった。

 

「もしかして、ギャルゲー?」

「正解~! 皆にやってもらうゲームは~これだよ!」

 

園子がゲームを起動させるとウィンドウが出現し、タイトル画面が表示される。そこにはゲームの名前が大きくポップなフォントで書かれていた。

 

「これから皆には土日の間、この『ときめきの章・真剣(マジ)で私と恋しよう!!』をやってもらいま~す!! やってほしいことは簡単! ゲーム内の三年間を通じて好きなヒロインを攻略し、伝説の木の下で告白して恋人になる! 則ちゲームを一回クリアすること、なんよ~!」

「ちょ、ちょっと待ちやがれソノコ!!」

 

陽気に話す園子へラグナが大慌てで一つ確認を取ろうと彼女の話を一時中断させた。

 

「どうしたの、ラッくん?」

「このタイトルにある勇者って多分アイツらのことだよな? つまりヒロインは……」

「総勢30人以上の勇者と衛士たちのことなんだぜ~!!」

 

まさかの知り合い全員が攻略対象だった。恐らく小学生組も普通に攻略できるのだろう。しかし、流石に知り合いを攻略するのにラグナは抵抗を覚えた。それはナオトも同様のようで気まずい顔をしていたが、神楽は割と平気そうだった。

 

「なるほどねぇ。つまり、このゲームは勇者の皆をオトすゲームってわけか」

「そうだよ~。しかも全員豪華フルボイス~!」

「アイツら、マジでこのゲームに声を吹き込んでくれたの!!?」

 

それこそそういったことが苦手そうな千景や須美がアテレコしたとは思えない。

 

「本当はそうだったら良かったんだけどね〜。収録する時間がなかったから皆の声のサンプルを元にココちゃんがパソコンの音源で再現したんよ~」

「いや、本人に許可取れよ!!? つーかそれフルボイスじゃねぇだろ!?」

「でもココちゃんが聞かせてくれたサンプルはすごく再現度が高かったよ~?」

「技術の無駄遣いじゃねぇか!!」

 

何でこんなおかしなことに科学技術の粋を駆使するのか、本当に謎でしかない。

 

「ほら早くプレイしようよ~」

「しょうがねぇな~……ナオト、テメェがやれ」

「いや何で俺!?」

「俺とカグラはギャルゲーなんてやったことねぇんだよ。先ずはギャルゲー男と呼ばれたテメェが見本を見せてくれ」

「だから俺はギャルゲー男じゃねぇっつてんだろ!! あーもう、分かったよ、分かりましたよ! やれば良いんだろ、やればよ!」

 

ナオトがパソコンの前の椅子に腰を掛けると早速ゲームをプレイし始めた。最初の画面ではプレイヤーの設定を決める場面だった。名前の欄にはデフォルトの設定があったが、そこにあった設定を見てラグナが目を丸くした。

 

「いや、これ俺のプロフィールなんだけど!!?」

「ココちゃんが『それしか知らないから』って言ってたよ~」

「嘘つくんじゃねぇよ、あの野郎!! ジンの奴でもよかっただろ!?」

 

100%面白がっているであろうピンク髪の猫型亜人のほくそ笑む頭に浮かべながら文句を言うラグナである。

 

「そういやジンジンは呼ばれてねぇみてぇだが何か理由でもあんのか?」

「だってジンジンって、ゲームそのものが好きじゃないし~。なんならゲームのラッくんにやきもち妬いてパソコンを壊しそうだし~」

「それもそうだな」

「とにかく設定を直して早くゲームを進めようぜ」

 

ナオトが主人公の設定を自分のものに直してゲームを進めると早速ゲームが始まった。ストーリーの最初の場面。そこでは主人公がモノローグで伝説の木について語りながら登校している様子が映っていた。日にちを見る限り、中学一年の四月のようだ。

 

「そうだ園子嬢。せっかくだから今のうちにゲームシステムについて説明してくれよ」

「分かった~。まずヒロインだけど、最初から攻略対象は決まってないよ~。様々な少女たちと交流する内に好感度を上げて、最終的に好感度が一番高い娘とお付き合いが出来るの~」

「そこは普通のギャルゲーと一緒だな……じゃあパラメータみたいのもあるのか?」

「ないよ~。好感度と選択肢による判定なのだ~」

 

そうかと一言言うと取り敢えずナオトは一旦セーブしてテキストを進めていった。その様子を見守る一同。ホームルームで教師のどうでも良い話が終わると、隣の席の少女が話しかけてきた。勿論知っている顔ぶれだった。

 

〈初めまして! 私、讃州小学校出身の結城友奈! これから一年よろしくね、ナオト君!〉

〈東郷美森です。よろしくお願いします、黒鉄君〉

「すげぇ……本当に結城と東郷の声だ……」

「これ、本当は結城ちゃんたちが吹き込んでんじゃねぇの?」

「ココちゃんの技術の賜物なんよ~」

 

想像以上に本人と似た声を発しているゲーム内の結城と東郷に男たちは軽く感動している内に最初の選択肢が出てきた。

 

「えーっと……【こっちこそよろしくな】、【……ああ】、【フハハハハハ!!! 貴殿らとの出会いを祝福しよう!】……まぁ、これは分かるわな」

「最後の選択肢、絶対遊んで作ったな……」

「つーかこっちのトウゴウはこの頃からでも普通に足動くんだな」

「まぁね~」

 

当然ナオトは無難に【こっちこそよろしくな】の選択肢をクリックした。すると画面の端では結城と東郷のアイコンからハートマークが出現した。画面の下の方では何かのメッセージが表示されていた。そこにはこう記されていた。

 

〈《結城友奈》の《怖い人かなーって不安だったけど話してみたらいい人だった! またお話出来たら良いな》ゲージが上がった〉

「どうやら好感度が上がったみたいだ。てゆーかどんだけ長いんだよ、ゲージの名前」

「そうか? 結城ちゃんらしい、可愛い名前のゲージで良いじゃねぇか」

「ゲージの名前から主人公のビジュアルが何となく想像できてしまうのは俺が自意識過剰とかそういうことじゃないよな……」

「あ、次はわっしーのゲージだよ~」

 

園子の言う通り、次に表示されたのは東郷のゲージだった。そこには

 

〈《東郷美森》の《友奈ちゃんと気兼ねなく話せるこの男、油断できないわね。彼には注意しないと》ゲージが上がった〉

「警戒された! やっぱりこっちでもトウゴウはいつも通りだった!!」

「つーかこれ好感度上がってねぇじゃん!! 下がってんじゃん!!」

「わっしーの《友奈ちゃんと気兼ねなく話せるこの男、油断できないわね。彼には注意しないと》ゲージが上がったよ~?」

「そこ繰り返すとこじゃねぇから!!」

 

どうやらこのゲームではプラスだけでなく、高まるとマイナス評価になるゲージも存在するようだ。その後も三人はゲームを進めていく。しばらくシナリオを進めていくと早速部活への入部イベントが始まった。当然入るのは

 

〈ようこそ勇者部へ。アタシが部長の犬吠埼風よ。よろしく頼むわね、新人君〉

「風ちゃんも殆どそっくりか~。これも良いな~」

「ここで勇者部の登場か。2、3年は多分いるだろうが、一年とかはどうなってんだ?」

 

このゲームは中学の1年からスタートする。ゲームの年齢設定が現実と同じであれば、恐らく現在の2年生と3年生は既に学校内にいるのだろう。しかし、1年生や小学生たちはまだ登場する気配を見せていない。

 

「小学生組と1年生の皆は2年生になるまでこの頃の学校にはいないけど、会うことは出来るよ~。学校のない日とかに街で遭遇すれば、連絡先も聞けるようになって、いつでも会えるようになるんよ~」

「休みの日に出会ったばかりの小学生女子に連絡先を聞き出す男子中学生……」

「犯罪の匂いしかしねぇ……」

「ただのロリコンじゃねぇかよ、この主人公。どうにかならなかったのか」

 

なお、この遭遇イベントはランダムイベントなうえに学校で会えるキャラクターにも遭遇するようなので、必ずしもお目当ての女の子と遭遇出来ないとのこと。そこでラグナはあることに気づいた。

 

「あれ? おいソノコ。そういやチビたちって過去のソノコたちだが、そこんとこの整合性ってどうなってんだ?」

「リトルわっしーはわっしーの従妹、そのっちとミニミノさんは妹にしたよ~」

「いや名前の方だよ。ソノコとギンは変えてねぇだろ?」

「そのっちは後ろにⅡ世、ミニミノさんはJr.(ジュニア)って付けた~」

「格式高っ!!? いや、テメェらの家柄を考えたら間違ってねぇかもしんねぇけど今時そんな名前つけるか!?」

 

色々と突っ込みたいところはあるが、この際は目を瞑っておこう。画面の中では風が名前がたくさん書かれた紙と板を渡してきた。

 

〈それじゃあこれ、部員名簿ね。ここに名前を書いてちょうだい。他の部員の名前も書いてあるからそこも確認してね〉

「ここでようやく今攻略できる女の子たちを確認できるんだな」

 

ゲーム内の風から渡された部員表が表示される。そこにはやはりラグナたちの予想通り、2、3年の勇者部メンバーの名前と、好感度ゲージと思われるハートが何個か書かれていた。中学1年以下のメンバーの部分はまだ開放されていないからか、名前の欄が黒く塗りつぶされていた。ただ気になる点が一つ。

 

「なんかジンの名前の横にもハートのゲージがあるんだけど!!?」

「ニッチな層の需要にお応えするための特殊エンドだよ~」

「そんな需要に応えんで良い!! おい、これまさかサヤも」

「バッチリカバーしてますぜ、お客さ~ん。因みに二人とも血の繋がりはあるけど、恋人になれるよ~」

「沙耶ちゃんだけでもやべぇのにジンジンまで恋人になるとか大丈夫なのか、このゲーム!?」

 

背徳的なんて言葉では済まなさそうな兄弟エンドを聞いたラグナたちはとりあえずこのルートに進まないようにプレイすることを決意するのであった。プレイ中のナオトはというと、先ほどから何やら部員表を細かく確認しているようだった。

 

「乃木。このゲームって、所謂隠しキャラっているのか?」

「そこも抜かりないぜ~。1週目の後に解放される隠しキャラは5人でレイチェン、安芸先生、過去から来たせりリン、ココちゃん。あとは神じ……伝説の木本人かな~?」

「す、すげぇ……一人としてまともな結末へ辿り着けそうなヒロインがいねぇ……!!」

「ていうか最後に神樹様って言いかけなかったか!? あんなヤツどうやって攻略するってんだ!!?」

 

さすがというか、やはり園子たちが配置していた隠しキャラはどれも一癖も二癖もある者たちばかりだった。見事に全員大人。その内、一人は獣人とのハーフ。もう一人は時をかける少女(しかも義母)。最初と最後の二人に至っては人間ですらない。攻略対象の中で唯一普通の人間なのは年齢の問題に目を瞑ればそこそこ良い条件の安芸だけだった。

 

そんなことで騒いでいると、やがてゲーム内の風による勇者部の活動についての説明が終わり、ゲームの中のナオトは家へ帰ろうとする。

 

そこで偶然東郷と遭遇した。園子が言うに帰宅イベントで会える勇者もランダムらしい。画面内で鞄を持った東郷にナオトが話しかけた。

 

〈おーい、東郷〉

〈あら、黒鉄君。どうしたの?〉

〈良かったら一緒に帰らないか?〉

「ここの主人公、随分と積極的だな」

「ゲームの主人公だからだろ」

「ま、東郷ちゃんみたいな美人だったら声を掛けたがる理由も分かるけどな」

 

三人が各々の見解を示していると、ゲームの東郷がナオトの誘いを断った。

 

〈一緒に帰って友達に噂とかされたら恥ずかしいし……〉

〈そうか……ごめんな〉

〈こっちこそ、ごめんね〉

〈いや、気にするな〉

〈《東郷美森》の《知り合って間もないから断っちゃったけど、気を悪くしてしまったかしら? 友奈ちゃんならもっと上手くやれたわよね……》ゲージが上がった〉

「まぁそうなるよな」

「わっしーはこのゲームのラスボスだからね~、仕方ないんよ~」

「一番難しいのはトウゴウか。覚えとくわ」

 

そのままゲームのナオトが帰宅するとそのまま就寝して一日が終わった。沙耶や刃とは別れて暮らしているのか、家では会わなかった。そこはデフォルト設定元であるラグナと合わせているようだ。

 

「さーて、ここからはゲーム本番だよ〜! 依頼をこなして今会える女の子とスキンシップを取るも良し、新しい出会いやショップみたいな攻略に役立つエリアを寄るのに探索するのも良し! なんなら今すぐ知り合いの娘に今遊びに誘うも良し! 自由にプレイしたまえ、諸君〜!」

「へいへい、分かったよ。所でソノコ。参考として聞きてぇが、誰が一番攻略しやすいんだ?」

「断トツでサッちゃんだよ〜。最初から好感度が高いから~」

「……出来れば普通のルートでお願いします」

 

ゲームの中とはいえ、実の妹と恋愛関係になる事態を避けたいラグナは園子に攻略のしやすいヒロインについて聞いた。

 

「うーん、キャラクター次第では結構簡単に攻略出来る娘もいるからね〜。強いていうならマコっちとかゆみきちとか? あの二人は割と誰にでもフレンドリーだから〜。あとチュン助とかかな?」

「ユウナたちもそうだろって言いてぇけど、まぁトウゴウとかチカゲがいるからな。友達になるだけならまだしも、恋人ってなるとむずいかもしれねぇ」

「逆にトップクラスに難しいのはわっしー以外だとひなたん、みとりん、ちーちゃん、あやや、ツバッキー辺りだよ~。この辺りは好感度が相当高くても攻略できないこともあるんよ~」

「そのメンツだと理由が何となく想像がつくな……」

「え、国土はそんなことないだろ?」

「亜耶ちゃんだとまず、本人の前にうちの連中全員を説得できるかが関門だからな……」

「……なんか納得した」

 

顔見知りである神楽はともかく、確かに亜耶の周りで自分たちの知らない男の気配を感じたら防人組と衛士たちは警戒を上げまくるだろう。実際彼女のルートのカギを握るのは地雷原を彷彿させるほど大量に発生する爆弾を如何に効率良く処理するかだったりする。

 

「そんじゃあお前ら、誰から攻略するんだ?」

 

神楽が二人に攻略対象について聞いた。

 

「そうだな~……とりあえず2年まで待ってみるのはどうだ? 多分その辺りで全員揃ってくるんだろ?」

「何言ってんだ、アンタ。このゲームはキャラがとにかく多いからグズグズしてると気づいた頃には爆弾だらけになって首が回らなくなるぞ。早めに目当ての娘に絞らねぇと」

「あ、それなんだけどね~。あまり特定の勇者を贔屓にしているとその娘と関係の深い勇者に爆弾が付くから気を付けてね~。特に好感度に差が大きいと結構頻発するよ~。その代わり、色んな娘とお話していれば爆弾が付きにくくなるんよ~」

「マジですか……」

 

つまり一人のキャラクターに集中して好感度を上げることは出来ないということである。

 

「2年生の夏休みが終わると一番好感度の高いヒロインのルートに固定されて爆弾の発生率も低くなるよ~。キャラ固有のシナリオを通じてラストに告白を受けたらゲームクリアなの~。それと告白自体はラストだけど、好感度が一定以上より高くなると、プラスモードに突入するから早めに好感度を高くして損はないよ~」

『プラスモード?』

「そう!!」

 

疑問を浮かべる男衆に園子は誇らしげに説明し始めた。

 

「プラスモードとは!! 勇者と二人っきりでイチャイチャし放題になるモード!! 勇者とお話をしたり、衣装や髪型も変化することも出来るし、二人きり用の特別イベントも発生!! マイクを使えば会話も出来るし、お触りも自由!! しかもその間のプレイヤーの行動と開放した好感度ゲージに反映して女の子の性格とかも変化するし、何をしても好感度は下がらない! そうして二人での交流を増やせば増やすほど勇者たちはどんどん自分好みに変わっていくんよ~!!」

『な、何……だと……!!!?』

 

男たちもこれには衝撃を覚えずにはいられなかった。園子たちが作ったゲームは最早ギャルゲーと呼ぶにはあまりにも規模が大きすぎた。それで行われるのはただの恋愛シミュレーションなどではない、仮想的な恋愛体験だった。

 

何より普段から想像できない、デレまくる少女たちと聞いて、男たちの好奇心が擽られる。並の男であれば劇物ともいえる代物だ。戦慄のあまりに震える男たちの様子を園子はニコニコしながら見ていた。

 

「皆やっぱり男の子なんだね~」

「うるせぇよ! そんなんじゃねぇよ!」

「その割にはラッくんもナオポンもすごくガクガクブルブル言ってるけど~?」

「俺は異世界のギャルゲーの進化に驚いてるだけだ! これを作ったやつはどんな頭の仕組みしてんだよ!!?」

「えへへ~、褒められた~」

「ああ、ホントだよ!!」

 

園子ズと九重が作り上げた怪物にナオトは素直に賛辞を贈るほかなかった。対して神楽は冷静に分析していた。

 

「この内容だ、バカ売れはほぼ確実だろう。けど多分他の連中にバレたらただじゃ済まねぇぞ?」

「そこは任せて。プラスモードをやらせて何とか説得してみる」

「確かに一部の部員が嬉々としてこのゲームをプレイしている様子が目に浮かぶぜ……」

 

主にパートナーへの愛がとんでもなく重い娘たちとか。普段は遊ばない者たちもかなりハマってしまうかもしれない。

 

「だがその話じゃあまだそのモードにはなれねぇみたいだな」

「好感度がすごく必要だからね~。出来ても終盤くらいかな~?」

「おーし、ンじゃあ早く進めようぜ! カワイ子ちゃんたちのデレ顔が、俺たちを待っている!!」

「……分かったよ! 俺もテストプレイを付き合うって言っちまったからな! 最後までやってやらぁ!」

「取り敢えずストーリークリアを目指すぞ! それまでは止まらねぇ!」

 

改めてゲームを進めることを決意するラグナたち男子。その後、園子に見せてもらったパッケージの絵や出番の多さなどを考慮した結果、ナオトは攻略するヒロインを結城友奈に決めた。

 

理由としては「パッケージでも前面にあったし、ファーストエンカウントを考えると恐らく初見のプレイヤーは最初に彼女を攻略しようとするだろう」と判断したから。

 

一先ず一年のうちは必要以上にキャラを増やすリスクがある散策を避け、依頼をこなして彼女の好感度を適度に稼ぎつつ、ゲームの大まかな流れに沿ってプレイすることにした。

 

〈やったー! 野球部の助っ人、大成功だ~!〉

〈しかしよくあのヘルスラッガー斎藤を打ち取ったな。お手柄だぞ、ナオト〉

〈みんなのおかげだ〉

〈《結城友奈》の《色々助けてもらっちゃったなぁ。でも一緒にいると何となく安心するかも》ゲージが上がった〉

〈《乃木若葉》の《今回の依頼で色々と助けられたな。これからも頼りにしているぞ》ゲージが上がった〉

「二人以上と受ける依頼だと同時に好感度が上がるんだな。誰が一緒なのか表示してくれているからやりやすいな」

「今のとこは直接会いに行くのは爆弾処理か集中的に好感度を上げたい場合だけだな」

「つーかさっきの東郷もそうだったけど、結城からまた知らないゲージが出てきたぞ? 俺そこまでゲージ管理なんてできないんだけど大丈夫かこれ?」

「好感度は各ゲージの総合値になってるけど、使っているゲージによってプラスモードとかで変化が起こるんよ~。一応メニュー画面でも見れるから安心して~」

 

それを聞いてナオトたちは一安心だった。まさか昔のボードゲームみたいにメモ用紙とペンを使いながらのプレイ、なんてことにはならなさそうだ。その後は夏休みが開けた9月になると転校生イベントも発生したりと、新たな出会いを経験していく。

 

〈乃木さん家の園子だよ~。よろしくね~〉

【えーっと……俺たち知り合いだったりする?】

【園子様疲れてない? 俺椅子になろうか?】

【よろしく】

「おい選択肢」

「ありゃ~。まだ学力のパラメータが足りなかったみたいだね~」

「いや学力以前の問題だろうが」

「ま、面白そうだから椅子になるやつを選んでみるか」

〈え? じゃ、じゃあお言葉に甘えて~〉

〈《乃木園子》の《久しぶりに会った友達が知らない間に変態さんになってるけど何があったんだろう。誰かから変な影響でも受けたのかな》ゲージが上がった〉

〈《結城友奈》、《東郷美森》、《三好夏凜》、《三ノ輪銀》の全てのゲージが下がった〉

〈《黒鉄ナオト》は《園子様の椅子》の称号を手に入れた〉

「ゲームの俺が何か新しい扉を開けようとしてる!!?」

「おい!! 皆ドン引きしてるぞ!! ソノコ様もめっちゃ気ぃ使ってるぞ!!」

 

栄誉があるかないか分からない称号を得たりもしたが、それでも三人は基本的にゲームをそこそこ楽しんでいた。そして遂にこれまで基本的には避けていた刃ともランダムイベントで遭遇してしまった。

 

〈やあ兄さん。ここで会ったのも何かの縁だし、早速昔みたいに(あそ)ぼうよ?〉

「ごめん。これは俺じゃあ対応できないから逃げる」

「だな。俺でもそうするわ」

「待て! それは逆効果」

 

自分が背を見せた場合に弟が取るであろう行動が手に取るように理解できるラグナはナオトを止めようとしたが間に合わず、ナオトは逃走を促す選択肢を選んでしまった。

 

〈逃げるんだよォー!〉

〈待ってよ兄さあぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!〉

〈《如月刃》の《兄さんは相変わらずつれないなー。でも苦痛に顔を歪ませながら逃げる兄さんも最ッ高ッ!!》ゲージが上がった〉

『うわーーーっ!!?』

「やーっぱりこうなったよ……」

 

結果としてナオトたちは嬉々としてナオト(恐らくビジュアルはラグナ)を追いかけてくる刃の特に有難くもない一枚絵を手に入れた。本来ならばここで刃を迎え撃つべき場面だったのだが、普通に逃げてしまったためにナオトたちはちょっとしたトラウマが出来てしまった。

 

その後もなんやかんやありつつも再び四月になり、一年生も進級してくる。時には先輩になった自分を頼って彼女たちは悩みを相談してくることもあった。

 

〈先輩……私、友達を作ったことがなくて……どうすればもっと皆と打ち解けられるんでしょうか?〉

「今度はマイか……あいつは割と社交的な方だと思うけどな」

「初めの頃はそうでもなかったからな。これで合ってるぞ」

「じゃあこの選択肢かな」

〈決め台詞をしながらカッコよく誘ってみよう〉

〈……わかりました! 私、やってみます!〉

 

ゲーム内のナオトのアドバイスを聞いた夏目麻衣はその日の放課後でほかの同学年部員に話しかける。どうしたのだろうと少女たちが不思議に思っていると麻衣は意を決して、目元にフレミングの左手の法則を思わせる手の構えを取りながらポーズを取る。

 

〈……オッス、マイだよ! 一緒に帰ろ!〉

『〈……〉』

〈……えと、その……テヘッ☆〉

 

刹那、神楽とナオトはクハッと声を漏らしながら仰け反った。こういったことにはあまり反応しないラグナでさえも画面から顔を逸らせて頬を赤らめていた。どうやらこの麻衣のセリフがかなり彼らにとってグッとくるものがあったようだ。

 

「こういうサービスイベントもあったりするのだ~」

「もう全てのイベントがこんな感じだったらいいのに……」

 

とまあ、時々叫んだり悶えたりしながらも男たちは順調にゲームを進行していくのだった。当然ながら結城の好感度稼ぎも忘れていない。堅実に依頼をこなしたり、たまに下校イベントで遭遇したりで着実にポイントを上げていく。

 

そして夏休みになると部員が自分を訪ねることが増えたり、勇者部が3泊4日間の合宿をするイベントが発生したりした。攻略するルートがそろそろ決定されるため、夏休みの間は通常時よりも好感度を稼ぎやすくなっていた。海と旅館を満喫した後、一行は讃州中学へ帰って解散した。

 

〈ナオトくん! 今度もまた遊ぼうね~!〉

〈こっちも楽しかったぞ。ありがとな〉

〈《東郷美森》に爆弾が付いた〉

「東郷ちゃんにまた物騒なモンが付いちまったなぁ……」

「つーか思ったけどよ。爆弾ってそんなすぐに爆発しねぇだろ? 夏休みもあと2日くらいで終わるみたいだし、今はユウナを優先した方がいいんじゃねぇのか?」

 

ラグナの指摘にナオトは少し考え込む。確かにこれまでは爆弾が生じても出来た翌日に処理してたし、他のキャラにできた時に東郷を優先したときも他のキャラの爆弾は爆発しなかった。

 

「そうだな。残り少ない夏の間は結城を優先するか」

 

そんなすぐに爆発することはないだろうと考えたナオトは早速友奈に連絡して公園へ遊びに行こうと誘うことにした。ゲーム内のナオトが公園で待っているとキャラクターの立ち絵が現れた。しかし、それはナオトが誘った人物ではなかった。

 

〈おぉぉぉぉぉぉぉどぉぉぉぉぉおおぉれえぇぇぇぁぁぁぁぁぁ■■■■■■■■■■■■■!!!!!〉

 

画面いっぱいに殺意の波動に目覚めたとしか思えないような形相で突撃してくる東郷が表示された。当然ナオトは逃げようとしたが、そのまま後ろから東郷にタックルされ、一瞬閃光が走ると爆音と一緒に巨大なキノコ雲が表示された。

 

これが初見である三人が唖然としている中、画面は暗転し、神樹と思われる巨大樹が描かれた薄暗い画面が表示された。真ん中にはタイトルと同じようなフォントで『ゲームオーバー』と表示されていた。

 

『爆死したぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?』

 

まさかの結果に男たちは絶叫した。よく考えたら東郷は精霊バリアや壁の外の件でも分かるように、良くも悪くも悩んだら即行動を移すような人間だ。それが友奈に関係していればその傾向が更に極端になるのも知っている。

 

そういう意味じゃ確かに放置してはならなかったのかもしれなかったが、まさかこんなギャグ漫画のような爆発オチが待っているとは全く想定していなかった。

 

「ありゃー、爆弾が爆発しちゃった~」

「爆弾じゃねぇだろ、人間魚雷だろ!!! 点いた翌日にユウナに近づいたら即自爆特攻ってどういうことだよ!!?」

「まぁ、ウルトラにダイナマイトなボディーの持ち主だしな、東郷ちゃん……」

「テメェは一体何の話してんだよ、スケベ野郎!!!」

「つーかこのゲーム、死亡エンドあんの!!? 難易度高くね!!?」

「だってねぇナオポン、よく言うでしょ~? 恋とデートは戦争だーって~」

「恋もデートもする前に死んだけどね、俺!!」

 

日が暮れるまでプレイした末にまさかの爆殺処理でナオトのターンは終わった。一応ゲームには救済措置としてヒント講座「助けて! 九重博士」が設けられているが、なんか負けた気がするからとナオトは再生しなかった。

 

「ナオト……その、なんだ……すまん」

「良いよ……俺だってあんな早く爆発するとは思わなかったんだ。いや、マジで爆発するのも予想外だったけどさ」

 

東郷放置の選択肢を提示したラグナは申し訳なさそうにナオトに謝罪したが、彼は大して気にしてる様子はなかった。

 

「それよりこの死亡エンド、もしかして全員に配置されているのか?」

「そだよ~」

「女を口説くときに死ぬこともあるのか。ギャルゲーってスゲーな」

「いや全部のギャルゲーがこれって訳じゃねぇから。しかもこんな突然死は中々拝めませんから」

「だって書いてあったでしょ~? 真剣(マジ)で私と恋しようって」

「タイトル、真剣(マジ)で恋しないと死ぬに変えた方が良いぞ」

 

こればかりはラグナも神楽もナオトの意見には賛成だった。経験者である彼ですらルートが固定される前にあっさり死んでしまったのだからこのゲームが如何に難しいのかは素人から見ても分かるだろう。

 

すると気になるのは最も難しいと評された東郷ルート。結城と一緒に最序盤に登場してきた彼女もまた、攻略対象に選ばれる可能性が高い。現実でもぶっ飛んだ行動に出る彼女がヒロインのルート、しかも脚本はあの園子先生だ。

 

「……これ、トウゴウのヤツも見た方が良いよな?」

「だよな……」

「仕方ねぇ。俺がやるか」

「カグラ!? テメェ行けるのか!?」

「馬鹿にすんなよ。要は周りに気を配りながら女の子と楽しくお話をするゲームだろ? だったら普段大赦の方でやってることと変わんねぇよ」

「おい。職場で何やってんだよ」

「いや、サボってるわけじゃないよ? ちゃんと働いてるよ? ただたまーに神官のお姉さんたちにお茶をしないかちょっとお話を」

「それ結局ナンパしてるだけじゃねぇか」

「その度にビッキーかメブーに怒られるところまでワンセットなんだろうな~……」

 

何はともあれ、今度は神楽の番になった。自分のプロフィールを入力してゲームを始めると今度は東郷を攻略するためにゲームを進めていった。

 

〈東郷っていつも牡丹餅作ってくるけど、他のものは作らないのか?〉

〈友奈ちゃんが喜ぶから〉

〈友奈なら他の菓子も東郷が作ったものなら好きだと思うけどな〉

〈……そうね……例えば?〉

〈そうだな……〉

【団子とか】

【クッキーとか】

【鯛焼きとか】

「この場合は団子だな。東郷ちゃん、和菓子作るの得意だし」

「そんなに単純に決めて良いの~? 鯛焼きも良いと思うよ~」

「よし、団子だな」

『おう』

「うぐぅ~」

 

ちょっと拗ねる園子を他所に男たち三人が意見を一致させた後、神楽は団子の選択肢をクリックした。

 

〈団子……そうね、偶には別のものも作ってみようかしら〉

〈きっと喜んでくれるぞ〉

〈うふふ、そうね〉

〈《東郷美森》の《実はいつもと違うものを作りたくてどんなものにしようかと決められなかったけど、他人に聞いてみるものね。今度お礼に御裾分けしなきゃ》ゲージが上がった〉

「お、初めて友好的なゲージが出たぞ」

「これは期待できるかもしれない!」

「ほーれ見たか、俺の実力!!」

「それじゃあどんどんいこー!」

 

流石は三人の中でも年長かつ、女性との話し合いに慣れているだけあって、その後も神楽の快進撃は続いていく。先のナオトのプレイを見た反省から結城にも気を配りつつ、着実に東郷の好感度を上げていった。

 

〈明日の校外学習は博物館ね。友奈ちゃんは先ずどこから見学したい?〉

〈東郷さんの好きなところからで良いよ!〉

〈そう? じゃあ睦月君はどう?〉

【旧海軍のコーナーへ】←

【恐竜のコーナーへ】

【科学実験のコーナーへ】

〈本当!? じゃあ決まりね!〉

〈良かったね、東郷さん!〉

〈《東郷美森》の《もしかして私と同じ護国思想の持主かしら? それなら是非とも御国の未来について討論したいわ》ゲージが上がった〉

「よっしゃー! この調子でいくぞ!」

「やっぱこっちでも護国思想なんだな、アイツ」

 

それも東郷の個性だから無いと逆におかしくはあるが、と思いつつ神楽たちはゲームを進めていく。大まかな流れはナオトの時と同じおかげでサクサクと進めていくことが出来た。

 

〈最近ゴミを増えているように感じるわね〉

〈どうすれば皆ポイ捨てを止めてくれるかな?〉

【ポスターを貼ってゴミを捨てるのを止めるように勧めるのはどうだ?】

【やっぱり護国思想を広めて国民の愛国心を育てるしかない】←

【町内に自作のゴミ箱を設置して捨てる場所を提供してみよう】

〈まあ! それは良い考えね〉

「いやいや何言ってんだよ……まぁ本物は流石にここまで極端じゃねぇと思うけど」

「でも好感度も上がってきてるし、良いんじゃね?」

「そうだな。選択肢の方もどんどんアイツの趣味に合った感じに」

〈昼休みに私とお話がしたいって聞いたけど、どうしたの?〉

【御国を守って下さった艦艇について】←

【今日の宿題について】

【我が国の現状と将来について】

「アイツの趣味に合った感じに……」

〈新入生オリエンテーションで出し物をしようって風先輩が言ってるけど、何をしようかしら?〉

【国防についての講義を開こう】

【国防仮面による演劇というのはどうだろう】

【皆の前で国防漫才をやりましょう、大将!】

「合わせすぎだろぉぉぉぉぉぉッ!!?」

 

パソコンの画面に表示されている選択肢を見てラグナは再び絶叫した。御覧の通り、護国などと関連する選択肢を選ぶと何故か従来の枠が護国思想に関連した選択肢に代わっていた。

 

これを神楽は何度も繰り返していき、2年の4月になる頃には選択肢の全てに国防の文字が入っている状況になっていた。

 

「選択をさせろよ!! 何のための選択肢なんだよ!? 何で国防の話題を選んだだけでこっちが国防に染まっていくんだよ!!?」

「多分、このゲージが原因じゃねぇかな……」

 

ナオトは苦笑いしながら画面に表示されているログを指さした。

 

〈《東郷美森》の《素晴らしい大和男児へと成長したわね、睦月君。これで勇者部とこの国の未来は安泰だわ!》ゲージがMAXになった〉

「いや~。東郷ちゃんをオトそうとしたけど、逆にこっちがオチちまったわ~。ハッハッハッ!」

「オチたっつーか堕ちたんだろうが!! 思いっきり国防面に堕ちてんだろうが!? 何をしたらああなるんだよ!?」

「旧帝国海軍の武勇伝とか零戦についての解説とか日本の今後とかについていろいろ話してたらこうなった」

「どんだけ詳しく聞かされたんだよ!!?」

「だってすげー楽しそうに話してくれるからさ……あんな顔を見たら、また見たくなるだろ?」

 

神楽はドヤ顔でこう言っているが、選択肢全てが国防になっているという破壊力にはラグナとナオトも頭を抱えた。流石にこのままでは可哀そうだと思って園子に助けを求めるが

 

「う~ん、この状態になるともう抜け出せないんだよね~。ひたすら国防道まっしぐらなんよ~」

「何でそんな危険なルートが序盤に転がってんだよ!!?」

「一応初期の段階とかだったらわっしーの好感度をわざと下げたりして直したりとかは出来たけどね~。ここまで来るともうゲームを進めるしかないんよ~」

「ともかく進めるしかないならエンディングまでやるしかねぇか」

 

危険なフラグがビンビン立っている中でも、神楽はテキストを進めていく。園子によると東郷の選択肢では何度も罠の選択肢が配置されていて、それを選ぶと国防ルートへのトリガーが引かれてしまうらしい。それを10回以上連続で選ぶと晴れて国防ルートは確定し、誰に対しても憂国の士として接するようになってしまうのだ。その時に連続記録を伸ばしていくと選択肢が侵食されていくそうだ。

 

このルートでは東郷は自分を同志として認識することはあっても、恋愛対象として認識することはないそうなので、残念ながらこれもバッドエンドの一種に数えられてしまうとのこと。もちろんプラスモードも発生しない。

 

そのため、東郷と恋仲になるにはこの選択肢を回避しつつ、爆弾による死亡を避けながら本当の意味での好感度を稼ぐ必要がある。しかも彼女は他の勇者たちに比べて好感度が上がりにくいかつ下がりやすいので、他の勇者たちに時間を掛けすぎると、好感度の関係でルートの割り込みが発生してしまう。そのため攻略が非常に難しく、開発に携わっている園子たちは彼女をラスボスと呼んでいるのだ。

 

「まぁこれだけが理由じゃないんだけどね~」

「この言い回しだとまだなんかヤベェモンを隠してるなぁ……」

 

出てくる選択肢が全て愛国に関するもので中にはそこそこ際どい内容のものもあったりしたが、ここまでくると神楽も開き直ったのか、より面白可笑しい選択肢を選びながらゲームを進めていった。そして運命の夏休み明けになると

 

〈〈国防万歳ッ!!!! 国防万歳ッ!!!!〉〉

『なんか皆国防馬鹿になってるぅぅぅぅ!!!?』

 

あら不思議。結城たちが、須美たちが、若葉たちが、芽吹たちが、赤嶺たちが、刃たちが、果てには大赦の神官たちまでもが、とにかく画面に映る全員が両手を挙げて万歳と叫んでいる一枚絵が画面に表示されていた。よく見ると全員頭から旭日旗を生やし、軍服のような衣装を着ていた。東郷はというと国防仮面の恰好になっていた。

 

「くっ、ダメだ!! 既に皆脳改造されていやがる!!」

「これが……怪奇・国防人間!!」

「ンワケあるかッ!!」

 

狼狽えているプレイヤーたちを他所に画面内の東郷が仰々しい演説をした後、勇者部は大赦から借りたと思われる巨大な船に乗って夜明けへと向かっていった。ゲーム内の東郷曰く「御国の輝かしい未来へいざ抜錨!!」とのこと。最後には火の玉から即座に綺麗な青い星へと変遷した地球をバックに大きく国防の文字が表示された後にタイトル画面に戻っていった。どうやら国防は星を救ったらしい。

 

「は~い。これでわっしーの国防ルートは終わり〜。どうだった〜?」

「最高に頭がどうかしてるルートだったとしか言えねぇよ」

「アハハハハッ!! いい具合にぶっ飛んでて俺は楽しかったぜ!」

「いやいや、色々危ねぇネタが落ちてたから。俺の世界だったらネットの掲示板とかで日本の夜明けよりも真っ赤に炎上するようなネタがゴロゴロ転がってたから!」

 

国防堕ちに対する評価は三者三様だったが、これでヒロインを攻略するどころか、まともなルートへ突入することもできないまま、二人の番は終わった。

 

「これで残ったのはラグナだけだな。俺たちを参考に頑張れよ!」

「えぇ……」

 

ある意味参考にはなったが、ラグナとしては出来れば成功したパターンを参考にしたかったというのが本音である。

 

「あ、ちょっと待って~。時間的にちょっと難しいかも~」

 

園子がパソコンに表示されている時計を指さす。時間を示す数値が23時に近づいていた。そろそろラグナたちも寮室に戻らないと怒られる可能性がある。

 

「……そうだな。このまま始めてもキリが悪くなるだけだし、今日はこの辺にしようぜ。そんで明日はラグナの部屋に集合な」

『賛成!』

「俺、寮でやるのかよ……ま、ゲームでこんなに遅くなるなら仕方ねぇか」

 

ラグナは了承すると男たちはその場を後にした。夜静まった自身の寮室にあるベッドに転がると明日プレイするゲームのことについて考える。

 

「さて……明日は誰を攻略するか……あの感じじゃあ正直誰を選んでも嫌な予感しかしねぇんだよな……」

 

取り合えず明日の朝一で部屋掃除をするためにもラグナは布団を被って眠りの中へと落ちていった。




ギャルゲーと言ったら皆さんは何を連想しますか?僕はパソコンでしたらKeyさん、据え置き系だったらファイアーエムブレムですね(本当はシミュレーションRPGですが、覚醒とかifをやったら意味が分かると思います)

次回ですが、本編の方を進める予定です。皆さんの感想、評価をお待ちしております。それではまた。
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