蒼の男は死神である   作:勝石

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どうも勝石です。

初めに、この小説が通算6万UAを達成したことについて深く感謝を申し上げます。これまで読んでくださった読者の皆様、ありがとうございます。

ゲームの方ですが……やっとURぐんちゃんを迎えることが出来たぜ……やったぁぁぁぁぁ!!! 前回は80連以上回して出てこなかった分、10連一回で出てきたときはガッツポーズしました。

さて前回の話でタケミカヅチが勇者たちと四国をぶっ壊そうとしているところなのですが、今回は果たしてどうなるのか。それではどうぞ。

The wheel of fate is turning…Rebel3…Action‼


Rebel107.蒼き運命に選ばれた勇者

タケミカヅチが起き上がって神樹を破壊しようとしていた少し前、友奈とラグナは暗闇の中で浮遊するようにゆっくりと落ちていた。二人は巨人との激しいぶつかり合いの末にその攻撃を防ぎ、何とか神樹を守った。

 

しかし、激突で生じた爆発によって樹海に巨大な穴が出来てしまった。爆発に巻き込まれた二人は穴に落ちてしまい、そのままゆっくりと落下していた。

 

最初に目を覚ましたのは友奈だった。自分の姿を見ると力を出し尽くした彼女から切り札が解除され、普段の勇者服へと変わっていた。ただはじめの状態と大きく違うのは身体中に刻まれた傷と手甲が壊され、露になった血だらけの両腕。もう戦う力は残されていなかった。

 

(神樹様は無事……だよね……)

 

勇者システムがまだ働いている以上、神樹もまた健在だろう。これで一応何とかなったわけだ。友奈は改めて周囲を見回す。そこは暗い、静かな空間で白い蔓が何百本もあちこちに縄のように垂れ下がっていた。それなのに不思議と寒くない。ほんのりとした温かさを感じ取ることが出来た。

 

(ここ、不思議な場所だな……何だか地元の神社とかで感じたのと同じかも……)

 

淡い光に身体が包まれていく中、友奈は思い返す。小さい頃に近所の神社へ足を運んでいた時もこれに似たような感覚を覚えた。

 

(神樹様の中なのかな……ここ……)

 

そのせいか、友奈の心に恐怖はなかった。身体と意識が光の中へ溶け合っていくのを感じながら彼女の意識はうつらうつらと途切れていく。その時に少女は一つ思い出す。

 

(そうだ……ラグナは?)

 

薄れていく意識の中、少女は共に巨人に立ち向かった青年を探すと彼は少し自分より下で同じように落下していた。当然ながら光も何もない。ただそのまま、闇の中へと延々と落下していた。

 

(もしかして……ラグナの腕が黒き獣だから!?)

 

落ちていくラグナの姿を見て、先ほどまで疎らだった友奈の意識が覚醒する。元がバーテックスである蒼の魔道書を持つラグナは神樹にとって受け入れがたい存在だったのかもしれない。その影響なのか、ラグナはひたすら闇の中へ落ちていっていた。

 

もしこのまま落ちていったら。このまま帰ってこれなくなったら。

 

早く手を取ってここから出ないと。友奈は手を伸ばそうとするが、力が入らず、動かすだけでやっとだった。

 

「ッ……ぁ!! ユーナ!!」

「ラ……グナ……!!」

 

意識を取り戻したラグナは、友奈の方へ手を伸ばす。少しでも近づこうと友奈も彼のいる方向へと身体を傾けていくが、友奈の身に異変が生じ始めた。

 

「ユーナの身体が……!!」

(消えていってる……!?)

 

友奈の身体から光を帯びた花びらがパラパラと散っていく。気づけば肉体のあらゆる場所がゆっくりと消滅していっていたのである。ぐちゃぐちゃになった右腕を筆頭に腹が、足が、顔が徐々に消えていっている。

 

文字通り最後の切り札を使った結果、友奈の肉体に限界が来てしまった。本来ならば生きているだけでも奇跡的な傷を負っても気力で立ち上がって拳を振るい、更に得体の知れない切り札まで使用したことで、肉体は既に死んでいるも同然の状態になっていたのだ。

 

しかし、長い間スサノオユニットの影響下にあった地で生きてきた友奈の肉体と魂は神のそれに近いものになっていた。そのため、彼女の存在は神樹の力を強めることが出来るのだ。それで神樹、及び土地神は彼女を取り込もうとしていた。

 

枯れた花が散っていくように、友奈の身体から光が零れていく。友奈を取り込もうと無数の草の根が伸びてくる。

 

((まだだ……まだ諦めて堪るか!!))

 

それでも二人は諦めない。友奈は消滅が比較的緩やかな左手を伸ばしながら進み続ける。それを見て、ラグナはよりその手に届きやすい右手を伸ばした。

 

そして遂に、友奈の手はラグナの腕を掴み取ることが出来た。

 

「や……った……!!」

「よし……後はどうにかして上に上がれば……」

 

言葉を言いきる直前だった。ラグナを引き上げようとする友奈の腕はブチッと嫌な音を立てながら切れてしまった。ラグナを持ち上げようとした腕は既に彼の重さに耐えられなくなっていたのである。

 

(「そんな!?」)

 

支えを失ったラグナはそのまま暗闇の中へと落下する。左肩から先が無くなった友奈は最早痛みすらもまともに感じられないほど意識が朦朧としていた。

 

そんな二人を嘲笑うように、頭上から巨人の雄叫びが聞こえてきた。まだ敵は倒されていなかった。

 

仲間たちがボロボロだった以上、このままではタケミカヅチは必ず神樹を破壊する。そうなれば四国を守る結界は破られ、バーテックスたちは結界内へ侵入して人々は蹂躙されていくだろう。絶体絶命である。

 

土地神たちも同じように感じたのか、友奈の身体を包む光の輝きは益々強まっていき、光の中に溶け込んでその足や手が次々と欠けていく。周りが眩しすぎて何も見えなくなり、身体の感覚も殆どゼロに近くなっていく。

 

身体が散っていく中、色んな人たちの笑顔が友奈の頭を過っていく。両親、友達、街の人々。楽しかった思い出も苦しかった出来事も全部含めて彼女はそれが好きだった。その中でも共にバーテックスと戦った仲間たちが友奈にとって大切な宝物だった。

 

今の友奈ではあの敵を倒すことは出来ない。神樹もじきに崩壊するだろう。

 

(これで……終わりなの……? 皆で……ここまで頑張ってきたのに……!!)

 

それでも諦められなかった。大事なものをどうしても、諦めることが出来なかった。

 

(……もしも、もしもこの状況を覆せる誰かがいるなら……お願いです……私に出来ることがあるなら何でもします……)

 

絡みついてくる蔓に押さえ付けられ冷たくなっていく友奈の身体はいよいよ大半が神樹に取り込まれ、意識もいつ消えるかも分からない状態だった。最期の時を覚悟した友奈は祈った。

 

(だから皆を……私の大好きな人たちを……助けて下さいッ!!!」

 

口から掠れた声と共に溢れ出る友奈の祈り。それは本心からの言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その直後だったのか、それとも同時だったのか。その時、友奈は『炎』を観測()た。零れ落ちるようにそれは真っ黒だった視界に突然出現したのだ。

 

「何……これ……?」

 

あまりの出来事に友奈は困惑する。気づけば真っ暗な空間の中で半透明な肉体で立ち竦んでいた。小さな人魂のような火の玉が彼女の手に乗るように浮遊していた。

 

「綺麗……」

 

線香花火にも見えるその火の玉は神樹由来の七色を束ねた白い光ではない、ただ一つの色彩を放っていた。手のすぐ近くにあるのに篝火は全く熱いとは感じられないが、友奈の手を伝ってどうしてか身体中に力が漲ってくる。

 

その炎が何なのかを、友奈は知らない。しかし、直感にも似た感覚で理解できる。これは神樹やバーテックスとは全く異なる存在。どちらかというとラグナの腕や伊勢で見た窯から感じ取ったものに近いかもしれない。

 

これを手にすれば、皆を助けることが出来るかもしれない。しかし、これを取った時にどうなるのかは誰にもわからない。もしかしたら一生後悔することになるかもしれない。

 

「……それでも、皆を守れるなら!」

 

友奈が覚悟を決めるとその火を自身の方へ抱き寄せた。

 

「……わぁ……」

 

火を取り込んだ友奈の身体は内側から徐々に熱を取り戻していく。まるで一度枯れて燃やされた木が灰から再び芽吹くように体に力が満ち溢れていく。

 

(すごい……身体の中がどんどん熱くなっていく……!!)

 

淡く蒼い光の粒子が霞のように友奈の周りから広がる。それまでの黒一色だった空間も光に照らされてその色を変えていく。

 

友奈は確信する。これは想いを可能にする奇跡の力であると。少女は心の内を曝け出すように宣言した。

 

「……私は……私は!!! 高嶋友奈は!!!! 皆が、大好きだッ!!!!!」

 

例えどれだけ痛い思いをしても、この願いは決して変わらなかった。皆と一緒に楽しい日常を歩んでいくこと。それはいつも気遣い屋で自分のことを後回しにしがちで、皆の和を誰よりも大切にしている一人の少女が胸に抱いた、たった一つの願望(わがまま)だった。

 

「だから絶対に、この世界を……守るんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

魂と覚悟の叫びをあげたその直後、友奈の視界は眩い『蒼』に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ暗な神樹の奥底に突如光が広がる。眼を射抜かれたラグナは目を細めた。

 

「なっ、何が起こったんだ!?」

 

落ちていきながらラグナは自分の上で輝く光をよく見ると、信じられない光景が広がっていた。何だかよくわからないが、それまで今にも消滅しそうだった友奈の身体が突如烈火の如く燃え盛る蒼炎に包まれたと思ったら、今度は炎が自分に向かって何かを伸ばしてきたのだ。

 

炎に巻き付く蔓は燃え落ち、次第にそれから離れていく。対して光は周囲に火の粉を飛ばしながらやがて肉体へと形を作っていく。正体不明の光にラグナはつい警戒するが、光は自分に声を掛けてきた。

 

「ラグナ、手を取って!」

「ユーナか!? 無事だったのか!?」

「早く!!」

「お、おう!!」

 

友奈の声で必死に呼びかけてくる光に向かって、ラグナは手を伸ばす。ガッチリと手を掴まれた感覚に襲われると、同時に光はその輝きを薄めていく。やがて光の塊は彼のよく知る、しかし数刻前と違って傷も血も無くなった、勇者高嶋友奈の姿へと戻っていた。その『眼』に『蒼』の光を宿らせて。

 

「テメェ、何でそれを!?」

「えっと、よく分からないうちにこうなっちゃった」

 

本人も困惑しているようだが、そんなことを気にしている場合ではない。巨人の声が上から聞こえてきた。

 

「とにかく、どうにかしてあの野郎のところまで戻らねぇと!!」

「でもどうやって!」

 

元の世界へ戻るのに苦心していると、二人の周りが光に包まれた。次の瞬間、二人は外の樹海でスカイダイビングしていて、その真下ではタケミカヅチが今まさにその剛腕を神樹に振り下ろそうとしていた。神樹が友奈たちを転移してくれたようだ。

 

「仕方ねぇ! ユーナ! このまま野郎をぶっ飛ばすぞ!!」

「分かった!! 来い、一目連!!!」

蒼の魔道書(ブレイブルー)起動!!!!」

 

ラグナの合図に呼応して精霊を呼び出した友奈は落下しながら蹴りの体勢に入る。再び蒼の魔道書を起動させたラグナも紅に輝く大剣を取って巨人へ一気に突撃する。

 

「ベリアルエッジ!!!!」

「『全力ぅぅぅぅぅぅ勇者ぁぁぁぁぁぁキーーーーーーーーック』!!!!」

 

友奈とラグナ渾身の一撃は巨人の首を捉えた。二人の敵の接近を許した巨人はあっけなく撃墜され、巨大な土煙を立てた。

 

何事かと慌てふためくタケミカヅチ。自身を脅かす敵は全て駆逐し、後は神樹を破壊する一歩手前だったのだが、突然の増援に彼も訳が分からない様子だった。そんな彼の前に瘴気を纏ったラグナと精霊を酒呑童子に切り替えた友奈が立つ。

 

「もうお前たちなんかに……これ以上奪わせない!!!」

「散々好き勝手に色々なモンぶっ壊してきたんだ。覚悟出来てんだろうなぁ?」

 

片方は普段の朗らかな笑顔からは考えられない、強い意志を秘めた蒼い瞳で敵を見つめる、鬼王を秘めた少女。もう一方は普段の激しい気性はどこへやら、静かにガンを飛ばしながら睨む黒き獣を飼う死神。そんな二人の怪物に思わず畏縮した巨人だが、すぐさま二人を潰そうと腕を振り降ろした。

 

「勇者ぁぁぁぁぁぁパーーーーーンチ!!!!」

「ヘルズファング!!!!!」

 

しかし、攻撃を食らう前に二人は敵の懐へ飛びつき、そのまま巨人のコアにパンチを撃ち込む。敢え無く後方へ殴り飛ばされた巨人は苦悶の声を上げながら胸を押さえる。友奈の手甲が持つ呪いが天の神と同系列である雷神の肉体を侵蝕しているようだ。

 

蒼い霧にも見える光の粒子が樹海中に漂う。巨人が暴れた衝撃に応じてうねり、浮き立つ様は蒼海を思い起こす。この光、そして隣の少女から感じる力を、ラグナは知っていた。

 

(この気配……まさかユーナの奴、『アレ』を持っていた……いや違う、そうじゃねぇ!)

 

確かに友奈が育った場所は境界やユニットと関わりのある場所だ。だがそれだけで持っているとは限らない。そもそもついさっきまでその力を友奈から感じ取ることは出来なかった。他の人間ならともかく、『アレ』と縁の深い自分やその知識を持つレイチェルが見逃すはずがない。それが今になって感じたということはつまり

 

(ユーナは……『選ばれた』んだ!! 『蒼』に!!)

 

その事実に驚きを隠せずにいるラグナだったが、まだ戦いは終わっていなかった。地面に転がり続けるタケミカヅチが憤怒の雄叫びを上げていた。身体から零れる黒い粒子は空中を漂い、掻いたせいか、胸の周囲もだいぶ崩れたようにも見える。

 

取り合えず、考え事は後回し。先ずは他の皆を探そう。頭を切り替えたラグナは周囲を見る。蒼に染まった樹海で自分たちに気づいた仲間たちがこちらへ近づいていた。全員切り札が解除されていて、何人かは腕を押さえたり、誰かの肩を借りたりして酷い負傷もしているようだが、それでも皆生きていた。

 

「おい!! テメェら、大丈夫か!?」

「何とかね……正直さっきまでは立てないくらい色んなとこが痛かったけど、この変な光が出てきてからは大分落ち着いた気がするのよ」

「そうなの?」

「ああ。この蒼い光の暖かさから、海を感じた」

「ここは樹海だけどな」

 

球子たちを横に千景や若葉は友奈に起きた異変の方に気が向いていた。

 

「高嶋さんは腕の怪我はもう大丈夫なの?」

「確かに……少し前までは血だらけだったはずだが、今は完治しているな……」

「そうですね……眼も蒼色になっていますが、身体の異常はないんですか?」

「ううん、本当に何ともないよ。寧ろ凄く身体の調子が良いし、精霊の反動も全然ないんだ。こんなこと、皆で特訓した後でも全然なかったのに……」

 

以前あれだけ酷かった酒呑童子による肉体へのフィードバックが全く友奈には見られなくなっていた。かなりの力で殴ったのに腕への異常どころか復活した手甲にもヒビ一つ入っていない。千景は一人だけ訳知り顔のラグナに向いた。

 

「貴方は何か知っているの?」

「詳しいことは後で話すが、取りあえず心配はいらねぇ。元気なのは本当だ」

「貴方がそういうなら分かったわ」

「ありがとよ。さて……」

 

勇者たちは倒すべき敵へと顔を向ける。この蒼い光のおかげで幾分か力を取り戻すことはできたが、それでも決して万全とは言い難い。身体は傷だらけで、骨や肉からは鈍い痛みを感じられる。この中で全快なのは友奈だけだろう。

 

しかし、それはポロポロと胸から黒い砂を零している敵にも言えること。天の神最強の刺客ともいえる、タケミカヅチをここまで追い詰めることが出来るのは、きっとこの一度限りだろう。今を逃せば巨人を倒す機会は永遠に来ないだろう。そう思わせるほどの奇跡がここにはあった。

 

「行くぞ、勇者たちよ!! これで最後だぁぁぁぁぁぁッ!!!」

『うおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!』

 

若葉の号令と共に、勇者たちは叫びながら全速力で巨人へ突撃した。同じように片腕の欠けた巨人も形振りを構っていられない。向かってくる勇者たちを無視して神樹を攻撃しようと、口から破壊光線を放った。

 

「くっ、いきなりかよ!!」

 

早速デッドスパイクの構えに入ったラグナだったが、その前に旋刃盤に乗った球子が最前線に出てきた。

 

「こっから先はタマが通さぁぁぁん!!!」

 

そういって球子は旋刃盤から降りると、光線の前にそれを構えた。神樹を守る要塞の如く聳え立った巨大な木楯は光線を激突した。

 

「ぐうッぅぅ!!!?」

 

球子は気力で持ちこたえて踏み止まろうとするが、例え弱っていても巨人が持つ最大の攻撃の一つ。力ずくで球子諸共楯を押し通そうとする。

 

「球子!!!」

「心配すんなよ、お前ら! こんな攻撃でこの勇者タマ様が……倒れるわけないだろぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

それでも球子は倒れない。それどころか更に心に火がついた。カッと目を見開くと彼女の後ろから姫百合を彩らせた方陣が出現する。同時に横から噴出する炎が楯を包み、燃える円盤は激しく回転し始めた。

 

「焔纏の巨刃・瞬旋!!!!」

 

周囲に火の粉を振り撒きながらも高速回転する炎楯は光線の力を分散させ、遂には完全に巨人の攻撃を受け切った。あまりの出来事に味方はおろか、巨人も唖然とする。あの渾身の一撃を止められたことにショックを受けたようだった。

 

「タマっち先輩、その方陣どうしたの!?」

「知らん!!! けどめっちゃ気合出したらコイツと一緒になんかスゲー力が沸き出てきた!!!」

「私もやったことあるけど、同じだったよー!!!」

「そういうことなら行かせてもらうよ!! 散々ボコッてくれた礼を返してやる!!!」

 

球子に続いて雪花の後ろにペチュニアが描かれた方陣が展開される。槍は次第に変形し、手甲のように右腕を覆い尽くした。その後ろから槍の穂先が蛇腹状に伸びていた。

 

「荒ぶれ、カムイの力!!!!!」

 

狙いを定めようとする雪花の右目にコシンプを模した眼帯が出現する。球子に攻撃を押さえられて動揺している今こそ、痛恨の一撃を叩き込むチャンスだ。

 

「『獣霊真槍撃・鋭穿』!!!!」

 

巨人に向けて正拳突きすると蛇腹で繋がった槍の先端は飛び出し、巨人を襲い掛かる。神速の勢いで降りかかる槍を撃ち落とそうと巨人は屈んで流星群を撃とうとするが、

 

「ガァァァァッ!!!?」

 

発射される前に槍は何度も躰に深く突き刺さった。その回数は8だが、あまりの速さに8本の槍が同時に降り掛かってきたように見えた。

 

最後の一撃で雪花にコアごと背中を貫かれたタケミカヅチは理科室に飾られた昆虫標本のようにピン挿しされたが、槍を折ろうとじたばた動きながら激しく抵抗する。

 

「この、暴れるな!!」

「次、私が行きます!!!」

 

紫羅欄花(ストック)が描かれた方陣を展開する。流石に何度も同じ光景を見ていると学習してきたのか、巨人もまた金矢を放つための方陣を展開した。

 

「『ゴーンウィズザウィンド』!!!!」

 

杏が弩の引き金を引くと巨人を覆い尽くしそうなほど広範囲の吹雪がオーロラを纏って襲い掛かる。時を同じくして巨人も方陣より無数の金矢を飛ばす。初めこそ両者の攻撃は拮抗していたが、風圧に負けた金矢は容易く吹き飛ばされていき、とうとう巨人は吹雪に飲み込まれた。

 

「このまま凍れ!!!」

 

次第に勢いを増して迫ってくる吹雪に巨人の躰は氷に覆われていく。杏に完全に押し負けてしまった今、金矢をいくら飛ばしたところで無駄打ちでしかない。

 

ならばと姿勢を低くすると、巨人は両肩から流星群を放つ。砲撃は勇者たちの頭上から降り注いできた。球子、雪花、そして杏。勇者たちの中でも特に広い範囲で攻撃できる者たちは今、切り札を使ったばかり。流石にこれまでは防ぐことは出来ない。

 

しかし彼女たち以外にももう一人、同じように広い範囲で攻撃できる者がいる。

 

「歌野さん、お願いします!!」

「任されたわ!! それじゃ、イッツショーターイム!!!!」

 

歌野は金梅糸が描かれた方陣を展開させると、吹雪の中へ飛び込んでいった。寒冷だった冬の諏訪で長年育ってきた彼女は雪花同様、この猛吹雪の中でも動くことが出来る。振るった鞭は雷に打たれたような轟音を響かせながら自分たちを襲う星たちを叩き落していく。

 

打ち返されたする星たちは巨人の周囲に落下する。それでも攻撃を続けようとするが、その前に歌野の鞭が前方から飛んできた。

 

「『ロータスルートストライク』!!!!」

 

稲妻のような速さで両肩が鞭で打たれると、流星群を発射する両肩の砲口は爆発を起こした。それもすぐに極寒の暴風によって掻き消され、傷は瞬く間に凍り付いていく。これで巨人がいくら肉体を再生しようとしても氷が邪魔して上手く傷が治らなくなってしまった。

 

「グオォォォォァァァァァァァァァァ■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!」

『うわぁッ!!』

 

窮鼠猫を嚙むとはこのことか。巨人は耳を劈くような絶叫を放つと、杏の吹雪を霧散させた。歌野たちに続いて追撃しようと巨人を囲んでいた前衛組は絶対零度の衝撃波で吹き飛ばされた。

 

冷気が消えたことで漸く動けるようにはなった巨人は槍の突き刺さった躰を強引に引き摺って近くの勇者を叩き潰そうとする。辛うじて直撃は避けていく勇者たちだが、容赦なく降りかかる巨人の腕は樹海を破壊していく。

 

「やば……時間切れかも……」

「ホワッツ!? パワーが……!?」

「雪花さん、歌野さん!? どうしま……!?」

 

雪花と歌野が唐突に片膝をつくと同時に杏も身体から力が抜けていく感覚に襲われる。方陣は消え失せ、精霊を降ろしていた時の衣装も消滅した。

 

友奈も一度使っているこの『切り札』。確かに強力だが、その力を発揮できるのは僅かな時間のみ。それが過ぎてしまうと強制的に解除され、暫く戦えなくなってしまうのだ。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!」

「くそ……アイツ、こっちに来たぞ!!」

 

遂に自身を縛る鎖が解かれたタケミカヅチは一目散に神樹の元へ向かっていく。その前を球子が待ち構えるが、彼女もまた切り札が解除されていて、正直立つだけでもやっとの状態だった。

 

旋刃盤も元の小さい円盤へと戻ってしまい、自分も満身創痍。このままではあっさり轢かれるのが目に見えていた。

 

「悪いが、ここから先は行かせない」

「な、棗!!」

 

その球子と巨人の間を割って入るように棗が現れた。けたたましい叫び声を出し続ける巨人に対して彼女は実に静かだった。

 

棗は巨人に向かって駆けていく。同じように巨人もまた二人を跳ね飛ばす勢いで彼女を迎え撃つ。敵が自分から接近してきたから進行を変えたりはしない。寧ろ捻り潰す気満々である。

 

両者は次第に近づき、遂に棗は巨人の攻撃範囲に入ってしまう。巨人は腕を少女に向かって振り下ろす。これで決まりだと思った瞬間、棗の声が樹海に響いた。

 

海神(ニライカナイ)の叫びを聞け、怨嗟の声を轟かす巨人よ!!!」

 

雷神の鉄槌は下ろされた。しかし、それは棗を捉えるどころか樹海に落ちることすらなかった。ヌンチャクを鉄棍に変形させた彼女は銀梅花(ギンバイカ)が描かれた方陣を展開。巨人の懐に入って攻撃を躱し、逆に全力の一撃を胸のコアに叩き込んだ。

 

「『剛勇闘棍・海神撃』!!!!」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!?」

 

水を纏った鉄棍は巨人の胸に抉り込み、棗の周囲から迸る水流に乗って空へと押し返される。それに負けじと何とか水流を叩いて掻き消した。水流が消えると同時に棗の切り札も解除された。

 

「後は頼むぞ、皆……」

 

宙に浮いている巨人は神樹に向けて口を開けてエネルギーの装填を開始する。度重なる勇者たちの猛攻で光線を撃てなくなったが、まだ炎の槍を撃つだけの力は残っている。

 

その直前、巨人は自分よりも高い場所から声が聞こえる。ふと見ると一羽の青い鴉を見つけた。

 

「タケミカヅチ……ここが貴様の終端だと知れッ!!!」

 

それはこの戦いを通して最も長く自分と戦ってきた勇者最速の女、乃木若葉だった。数倍までに刀身が伸びた生太刀を携え、彼女はマッハを超えるスピードで迫ってきていた。

 

「勇者、乃木若葉!!!! 推して参る!!!!」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!」

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!」

 

怒りの咆哮を上げるタケミカヅチに対して中学生の女子とは思えないような声で咆哮を返す若葉。その後ろから桔梗を描いた方陣が展開された。

 

すると翼から吹き出る炎が若葉を護るように包んでいく。文字通り巨大な火の鳥へと変貌した少女は巨人へ突貫し、灼熱の炎を帯びた刀で斬撃を浴びせる。それに対して巨人は拳で応戦し、鴉の翼を折ろうとする。

 

若葉を覆う炎の衣はタケミカヅチとの衝突から彼女を守ってくれるが、戦いが長引くにつれてチリチリと少しずつ彼女の肌は焼かれていく。タイムリミットのことも考えれば、そろそろ決着をつけたいところだった。

 

巨人は神樹に向けて口を開く。炎の槍を放つ準備が完了した。それを見て若葉は神樹を庇うように立ち塞がった。

 

しかし、それこそ巨人の狙いだった。神樹がこの世界の要である以上、勇者は必然的に神樹を庇いながら戦う必要がある。だがこの攻撃であればいくら今の若葉でも撃ち抜くことが出来るだろう。

 

すべての力を乗せて、タケミカヅチは炎の槍を撃った。躱さなければ致命傷は免れないが、躱せば神樹は木端微塵に吹っ飛ぶ。

 

その二択が迫られる中で若葉はそのまま槍に向かって突っ込む。炎の中で愛刀を構え、槍が目と鼻の先まで来ると、彼女は刀を切り上げた。

 

「はぁッ!!!!!!」

 

刹那、槍はあっさりと両断され、消滅した。対する標的は一切減速することなく巨人に突っ込む。危険を直感した巨人は最後の抵抗とばかりに若葉に噛みついてきた。しかし、巨人の顎が自分を捉える前に若葉は飛行速度を落とさぬまま、刀を横薙ぎに振った

 

「『光焔の太刀・滅尽』!!!!!」

 

猛火に包まれた愛刀は吸い込まれるように巨人の口に入っていく。天をも焦がすと言われた大天狗の炎は巨人の顎を焼き切り、徐々に頭部を切断していく。

 

「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!」

 

無理やり止めようと巨人は刀を手で掴もうとする。しかし、それも若葉の魂のように勢いを増していく炎によって一瞬で焼け落ちた。対する彼女は空を突っ切り、巨人の頭を斬り飛ばした。宙を舞う巨人の下顎より上の頭部は砂となって霧散した。

 

「■■■……■■……!?」

「やれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

『おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』

 

会心の一撃を決めた直後に切り札のタイムリミットが来たことで若葉は翼を失う。元の勇者服に戻り、地面に降下する彼女の叫びに呼応して、ラグナと千景が落下してきた巨人に跳び掛かった。

 

「行くぞチカゲ!!! 俺に合わせろ!!!!」

「ええ、いつでも行けるわ!!!!」

「よっしゃ行くぞ!!! オーバードライブ!!!!!!」

「力を貸して!!!!!」

 

オーバードライブを発動させたラグナと玉藻前を降ろした千景が同時に方陣を展開する。ラグナのものには蒼の魔道書を示す紋章が、千景のものには彼岸花が描かれていた。

 

「その躰、塵も残さず殲滅してあげるわ!!!」

欠■(かけら)も残ら()ぇぞ、■の右腕(コイツ)が喰()尽くすか()な!!!」

 

黒く妖しい瘴気に包まれた二人の鎌は獣と妖狐の牙と化す。動くことも反撃することもできない巨人に二人は同時に大鎌で切りかかる。

 

「ブラッ()オン■■(スロ)ート!!!!!」

「『咲キ散ラス無慚ノ塵鎌!!!!!』」

 

鎌による容赦のない連続攻撃が巨人を襲い掛かる。黒い嵐は巨人の肉は抉り取り、斬撃の軌跡から血飛沫のように紅の光の粒子が散っていく。

 

「■……■■……!!」

「私たちは生きる!! これから先も……大切な人たちの傍で!!!」

「何度■■(でも)守り通し()()るさ!!! テ■■(メェ)らのふ()けた願■(ゆめ)()な!!!」

 

二人の死神は大きくその得物を掲げる。黒と紅が混じり合った瘴気が二人の刃へと集まっていき、エネルギーの刃は獣の顎のように巨大なものへと変貌した。

 

『とっととくたば(りやが)れぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!』

 

ありったけの力をタケミカヅチのコアに叩き込むラグナと千景。二人の武器を纏う瘴気は巨人のコアを貫き、その躰は喰い潰されるように崩れていく。

 

それでもまだ、巨人は神樹を破壊しようと動き続ける。残った腕で自分の胸部に武器が突き刺さったラグナと千景を叩き潰そうと横から殴りかかる。しかし、それを見て二人は笑っていた。

 

「高嶋さん!!!!」

「最後()一発、決め()■■(やが)れ!!!!」

「オッケーぐんちゃん、ラグナ!!!! そいつを逃がさないで!!!!」

 

巨人と拮抗する二人の背後から既に友奈が前方へ跳び込んできていた。巨人の頭上から狙いを定め、一気に降下する。狙うのは先ほど若葉が切り落としたことで下顎だけになった頭部。

 

「例えお前たちが何度来ても」

 

蒼に染まった樹海の中で友奈は力の限り叫んだ。

 

「何度だって、何度だって、私たちは立ち向かう!!!! それが私たち、人間だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

怒号を飛ばすと同時に友奈の背後から再び桜の描かれた方陣が顕現する。瞬間、鬼王を表す手甲は凄まじいオーラを放つ。天を呪う呪詛がより強くなったのだ。

 

「勇者ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁパーーーーーーーーーーーンチッ!!!!!!!」

 

全力全開になった彼女のパンチは巨人の頭部にめり込み、巨人の躰は無理やり頭を詰められた縫い包みのように変形する。次第に友奈は巨人の首をぶち抜きながら進み、そのままコアまでに到達しても彼女は止まらない。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!」

 

友奈のパンチによってコアはとうとう粉砕される。パンチの勢いが止まらないまま彼女は巨人の肉体を貫通し、下腹部から脱出した。全身から黒い粒子を巻き散らす巨人と同様、切り札の制限時間が来た友奈の勇者服は輝く花弁を散らしながら通常のモノへと変化していく。

 

「■……■……■…………」

 

ゆっくりと宙へと浮上するタケミカヅチ。コアを失い、自身の躰を保てなくなった巨人は少し呻き声をあげた後にそのまま空中で静止した。

 

まさかまだ何か隠し玉でもあるのかと勇者たちは身構えるが、暫くして巨人の躰は砂になって崩れ去った。コアは御魂を破壊された未来の完成体たちと同じように爆散し、出現した黒い光の柱は天へと昇っていった。光が消えると巨人の形跡は跡形もなく消え去った。

 

「……なああんず。タケミーって、幽霊になっても戦える力とか持ってたりしないよな?」

「タマっち先輩、そういうこと言わないでよ!」

「それマジであったらシャレになんないよ、タマちゃん……」

「今までアブラムシみたいに散々しつこかったからでしょうね……」

「安心しろ、球子……奴の気配はどこにもいない」

「……と、いうことは……」

 

棗がそう呟くと、巨人にフィニッシュを決めた友奈が周りに手を振りながら叫んだ。

 

「勝った……勝ったよ、皆……!! アイツを……倒したんだ!!」

「やっとかよ……やれやれ、二度と相手にしたくねぇな」

「同感ね……」

 

全員が満身創痍。樹海もボロボロになり、いつの間にか蒼い粒子の海は消失している。それでも全員生還して四国を最悪の事態から守り切ることが出来た。

 

少女たちは集まって、互いの無事を確かめ合った。見れば友奈の眼も元の赤色に戻っている。蒼の魔道書を解除したラグナは彼女に蒼い眼の経緯について聞いたが

 

「……スマン、なんだって?」

「だからね! ラグナの手を取ろうとしたら身体が消え始めたんだけど、そしたらいきなりバーンってなって目の前にポンって蒼い火の玉が出てきて、欲しいって願ったらなんか身体がババーンってなってああなったの!」

「色々と突っ飛ばしすぎてよく分からねぇが……要はピンチだったところでテメェの前に蒼い火の玉が出てきて、それを手にしたら眼も蒼くなって身体も再生したと」

「そう、そんな感じ!」

 

友奈の言葉を聞いて、ラグナは考え込む。『蒼』は望む者の前にのみ現れると言われているが、友奈があるかどうかも分からない力を望んだりするとは思えなかった。

 

「……なぁ、どうしてそんな得体の知れない力を望んだんだ?」

「それは……あの時は皆を助けたい、皆の生きてきたこの世界を守りたいって夢中で……正直それ以外は考えられなかったかな……」

 

何とも友奈らしい理由だなとラグナは小さく笑った。戦いが終わって樹海は元の四国へと変遷していく。再び少女たちは穏やかな日常へと戻ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなことはなかった。気づけば勇者たちは自分たちの家ともいえる丸亀城ではなく、壁の上に立っていた。

 

「あれ? どうしてタマたち、壁の上にいるんだ?」

「神樹様が間違えて飛ばしたのかな?」

「そんなことってあるのかしら……?」

 

千景が疑問を覚えるのも無理はない。彼女たちは敵であるタケミカヅチを倒し、四国を守り切った。だからこれ以上戦う必要は何処にもないはずだ。

 

「み、見てください! あそこ!」

「何ッ!?」

 

だがそれも新しい敵が来たら別の話だ。外の世界では無数のバーテックスが闊歩し、一部では肉体を構成し始めている完成体もところも散見出来る。それらの個体よりも小柄な進化体たちは躰が構築され、四国へ侵入する機会を窺っていた。

 

「敵の数が殆ど減ってないな……」

「アハハ……本当勘弁してくださいよ、神サマ」

 

つい弱音を吐いてしまう者たちもいる中でラグナは大剣を握る。タケミカヅチとの死闘で勇者たちにはもうまともに戦う力を残していない。もし戦うことになったら、自分が殿になって全員逃がすつもりだ。

 

そんな彼の思惑に反して、バーテックスたちは攻めることなく、表現の仕様がない奇声を上げる。まるで宴でも開いているかのように奇妙な歌声が天に広がった。

 

『―――――――――――――――――――!!!!!!』

「な、なに!!? このノイズ!?」

 

化け物の歌は人間である勇者たちにとって不快な騒音でしかなかった。歌声に合わせてバーテックスたちの躰も点滅し始める。同じころにひなたを連れたレイチェルがやってきた。

 

「皆さん無事でしたか!?」

「取り合えず生きてるっちゃ生きてるぜ……それより、ありゃなんだ!?」

「分かりません……ですが、とてつもなく危険な存在が来るのは間違いないと思います」

「……確かに規格外の存在が来たわね……空を見て御覧なさい」

 

レイチェルに促されて勇者たちは空を見上げる。そこにあったのは巨大な方陣。12の雲来文を備えた巨大な内行花文鏡だった。

 

出現しただけで凄まじい威圧感が一行を襲う。立つことも困難で多くの者たちが膝をつく。辛うじて踏ん張るラグナが呟いた。

 

「アレは……何なんだ?」

「……今の世界を作り出した元凶、『天の神』です」

「アイツが、そうなのか……!!」

 

ひなたの言葉を聞いてラグナの目つきが鋭くなる。つまりコイツのせいで。弟妹たちは、鷲尾須美たちは、結城友奈たちは、乃木若葉たちは。長く苦しい戦いに身を投じることになったのか。

 

「ハッ、上等じゃねぇか……」

 

疲労した自身の身体に発破を掛ける。大剣を構えて彼は空の上で輝く敵を睨みつけた。ここまで来たのに負けて堪るものか。

 

そう決意する彼だったが、不意に大地は大きく揺らいだ。バランスを崩しそうになった彼は大剣を壁に突き立てて何とか倒れるのを防ぐ。

 

今度は何だと叫びそうになったところ、友奈の声が聞こえてきた。

 

「見て!! 本土の方から光が!!」

 

友奈の言う通り、本土の、正確には伊勢の方から光の柱が天へと昇っていた。それだけじゃない。海の向こうからも四方八方から光の柱が立っていた。

 

「まさか……あの野郎、全ての窯を起動させたのか!!?」

 

そんなことしてどうするんだ。その疑問の答えはすぐ知ることになる。バーテックスたちの点滅が激しくなる中、空にある方陣から黄金の光が射してきた。

 

眩しさのあまりに勇者たちは目を手で覆う。まるで開かれた岩の扉から出てくるように方陣の内側から何かがゆっくりと降りてくる。それを見てラグナは勿論、レイチェルすらも息を呑んだ。

 

「なん……だと……!!?」

「どうして『アレ』がここに!!?」

「レイチェル、ラグナ……アレがどうかしたのか!?」

「アレは……」

 

今まで見たことのない顔で動揺する二人を見て若葉は思わず、天空に浮遊する物体について聞く。震える口でレイチェルはその正体を告げた。

 

その物体は全てが鋼鉄で出来た翼を持つ巨大な棺。上の部分にはメカニカルな輪冠があり、そこから羽衣を思わせる四つの布がぶら下がっていた。棺の中身を収めるため、中心にある箱にはムラクモを示す紋章が刻まれていた。

 

天に浮かぶ棺は世界を創り出した存在。境界の奥深くで世界を観測し続ける、三輝神最後の一柱。

 

神の御名は、『マスターユニット・アマテラス』




アマテラス、降臨。スサノオ、ツクヨミと来たらトリを務めるのは彼女しかいないでしょう。

そしてここでアンケートを設けます。ラグナの台詞にところどころ■で隠してアンリミテッドモード(UM)を表現していますが、振り仮名が必要かどうかを教えてもらえるとありがたいです。ご協力よろしくお願いします。

※振り返ってみたら■になるのはUMのオーバードライブのときだけでした……紛らわしい誤植をしてしまい、申し訳ございません。因みにオーバードライブの時の■には振り仮名を振りました。

次回からはのわゆ、そしてうひみ終盤が始まります。アマテラスの出現によって勇者たち、大社、そしてラグナはどうなるのか。一年以上書いてきたのわゆ編がエンディングへ向かっていきます。やっと他のブレイブルーキャラを本編でも出せるという喜びと一緒に、西暦の皆の物語に終わりが来ることを寂しく感じます。

皆さんの感想と評価をお待ちしております。それではまた。

ラグナの台詞に振り仮名は必要?

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