蒼の男は死神である   作:勝石

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どうも勝石です。

今回は番外編。アンケートの結果、東郷さんと刃が激しくヤバイ感じになるお話です。ただでさえ原作でも(重い)愛をぶつける相手がいる2人だがそれが揃うとどうなるのか…そんな感じで出来たのがこの話です。

事前に言いますがキャラ崩壊、特に東郷さんのキャラはぶっ壊れているので気をつけてください。寧ろバッチコイな方、どうぞ。




園子の夢Act02.猛る思い

「…ここは?」

 

燦々と目をくすぐる太陽の光に起こされて、如月刃は辺りを見渡した。そこは自分の知る世界とは全く別のものになっていた。

 

「何だここは?何故僕はこんなところにいる?確か僕は兄さんとエンドレスでデンジャラスな追いかけっこをしていたはずなのに…」

 

どうやらまたラグナを殺すために彼を学校中で探し回っている最中だったらしい。刃は少し歩を進めながら意識を失う前の時系列を整理していた。

 

「それにしてもつれないなー、兄さん。早速授業が終わった後に殺し合おうとしたらすぐに教室から逃げ出すんだもん」

 

それにしても、と刃は周りの環境を見回す。彼の前に広がるのは太陽の光を反射して輝く青い海。その前にあるのはゴミが一つもない白い砂浜。後ろには書籍でしか見たことのない西暦にあったというヤシの木らしき樹木で形成された森があった。気温も暑いものの少し乾燥しているため、不快になるようなものではない。まさに「常夏の孤島」と呼ぶにふさわしい島だ。

 

「あれは!」

 

砂浜の方を見ると誰かが倒れているのが見えた。その人物はこの前から車椅子から立ち、かつての記憶を取り戻した盟友の姿だった。少女は刃に揺すられると目を覚ました。

 

「う…うん。あれ、刃君?」

「気がついたようだな、鷲尾」

 

少女、東郷美森は刃の手を取って起き上がる。

 

「ここは一体何処なのかしら?友奈ちゃんもいないなんて。それにこんな場所、四国にそもそもあったかしら?」

「僕に聞くな。取り敢えず他の連中を探しに行くぞ」

〈残念だがここにおるのお主らだけじゃ〉

「!!!」

 

突如聞こえた謎の声に刃と東郷が素早く反応した。刃に至ってはユキアネサに手をかけている。

 

「貴様、何者だ!姿を現せ!!」

「まさか、天の神の関係者!?」

〈ワシはもうお主らの前におる〉

「何だと?」

 

それを聞いて刃と東郷は辺りを見回すがやはり自分たち以外の人影は見えなかった。苛立ち始める刃の周りが凍りつき始めた。

 

「ふざけているのか、貴様…何処にもいないではないか」

〈おるよ〉

「何処に…」

〈お主らの足元じゃ〉

『なっ!?』

 

足元という言葉を聞いて二人は察した。この声の主はこの島そのものだったのだ。それを聞いて刃は静かに島に問う。

 

「…何が目的だ?」

〈…知りたいかの?〉

 

刃の問いに対してなにやら凄みのありそうな雰囲気で声を低くして言う島。だがその程度で怯む刃ではない。

 

「御託はいい。とっとと話せ」

〈本当に知りたいかの?〉

「あまり僕を苛立たせるな。早く、言え」

〈分かった…〉

 

島は一度呼吸を整えると、

 

〈はーい、やってまいりましたー!!如月刃ランキング、第3位!!〉

 

突然訳の分からないことを大声で発表した。事態に頭が追いつかない2人は呆気に取られている。島はそれでも構わず続けた。

 

〈モフモフとした毛並みの犬神!!どうですか?第3位に選ばれた感想は?〉

「はっ?」

「へっ?」

〈そうですか、ありがとうございましたー!!それでは第2位!!〉

「おい!!」「ちょっと!!」

〈つぶらな瞳が可愛い牛鬼ー!!第2位に選ばれてどう思いますか?〉

 

意味不明なことを次々と言い出す島に2人は困惑していた。だがそれでも島は止まらない。

 

〈はーい!かなりエグい回答、ありがとうございましたー!!それではお待ちかね、第1位!!!〉

「誰も待ってなどいない!!」「話を聞いて!!」

〈他と圧倒的大差をつけて第1位に輝いたのは…青坊主さん!!おめでとうございまーす!!いやー今のお気持ちはどうですか?〉

 

なぜかは分からないが三体の精霊の名前を発表する島。何のランキングなのかは不明だが、青坊主が一位らしい。

 

〈容赦のない答え、ありがとうございましたー!!以上、如月刃ランキングでしたー!!〉

「待て、貴様!!さっきからなにを言っている!!?」

〈いやー、さっきから言っているじゃないですか刃さん。如月刃ランキングだって〉

「僕には全く身に覚えのないランキングだったが…」

「一体何のランキングだったの?」

〈ええ、ただいまのランキングは如月刃の『再開してもぶっちゃけどーでもいい、けど見ててなんかイライラする精霊』ランキングでしたー!!〉

「なるほど…道理で奴らの顔を見ていて不快になる訳だ」

「青坊主のこと、そんなに嫌いだったの?」

「別に、いてもいなくても同じであることに変わりはない」

 

さて、と刃は再び島に聞いてきた。

 

「もう一度だけ聞くぞ。ここは何処だ?返答次第ではこの島を永久凍土に変えてもいいんだぞ…」

〈おうふ!刃さん、容赦のない脅しですねー!というか今ので分かったでしょう?〉

「何が?」

〈ここは島に来たものの『心を映し出す』んですよ。つまり貴方たちの思念がこの島では具現化される訳です〉

『はー!?』

 

島の話を聞いて東郷と刃は絶叫した。この島はどうやら自分たちの心の中にある思念を具現化させる特殊な場らしい。今のランキングのように普段意識していない部分すら赤裸々に出てくるということはこの島では隠し事は不可能ということになる。

 

〈さあ、どんどん参りましょうか!〉

「チッ!!目障りなヤツめ!!」

「いい加減にしてください!!私たちを友奈ちゃんたちのところへ返して!!」

 

刃が歯を食いしばりながら舌を打ち、東郷は思わず地団駄を踏んだ。すると島が悲鳴を上げ始めた。

 

〈いったい!いったーい!!弁慶の泣きどころを踏まないでー!!〉

「だったら私たちを解放して!それから貴方が私を名前で呼ばないで!!」

「しょうがないですねー、ではこうしましょうか」

 

島がそういうと刃と東郷の前に煙が発生した。2人が警戒していると、煙の中からある人物が現れた。

 

「ヤッホー、東郷さん!私だよ!」

「ゆ、友奈ちゃん!?どうしてここに!?」

 

友奈の登場に東郷は動揺する。もしや島は自分たちを落ち着かせるためだけに友奈をこんな危険な場所へ呼び寄せたのだろうか?それを考えると東郷の怒りは頂点に達した。

 

「おのれ悪霊!!私と刃君に飽き足らず友奈ちゃんにまで手を出すなんてただで済むとは思ってないでしょうね!!!」

「えっ!?東郷さん、待って!!」

 

何故か手にあった勇者システムを起動させてライフルを島の奥地に向ける東郷。その目つきは島を壊滅させんと使命に燃える目だった。だが島が火の海になる前に友奈が大急ぎで彼女を止めた。

 

「待って待って東郷さん!!私本物じゃないから!!連れ去ってないから!!」

「へ?」

 

友奈の言葉の意味が分からず、銃を下ろすと友奈が説明した。

 

「さっきも島さんも言ってたでしょ?ここは心を映し出す島。だから今ここにいる私は東郷さんの心が映し出した私なんだよ」

「つ、つまり本物の友奈ちゃんは…」

「ここにはいないよ。でも大丈夫!私がいるからね!」

 

友奈の言葉を聞いて東郷は一安心すると、こんどは刃が友奈に別のことを確認した。

 

「つまりだ、結城友奈。ここなら思いさえあればその人間を呼び出すことができる、ということだな?」

「ちょっと違うけど…まあ同じようなことかな?」

「それならば…うおおおっ!!!」

 

それを聞いて刃は唸りながら何かを念じるようにした。しばらくして別の場所から煙が出て友奈とは違う人影が現れた。

 

「ったく、マジでしつけーな。ジン」

「兄さぁぁぁん!!!」

「おいこら!!ユキアネサをこっちに向けんじゃね!!あぶねーだろうが!!」

「はぁ…はぁ…ごめん。兄さんの顔を見たら、つい殺したくなって」

「ついでに殺すな!!」

 

刃が出現させたのはやはりラグナであった。どうやらこの島では島自身ではなくても意志の力で思っている人を出現させることができるらしい。

 

「ったく。どんだけデケェんだよ、テメェのその俺に対する思いは。殺意さえなきゃ可愛いもんだってのに」

「感動だよ、兄さん!!兄さんの僕に対する思いをこんなところで聞けるなんて!!!」

「いや、褒めてねーよ」

「問題ないよ、兄さん!!僕は今興奮がマックスだー!!!」

 

荒ぶる刃を他所に東郷はというとやはり状況を芳しく見ていなかった。確かに友奈がいてくれたことでなんとか落ち着いたが、それでもまだ自分たちには元の世界に戻る手掛かりがない。

 

そんな心配をしながら刃の方を見てみると、刃は次のアクションに移っていた。

 

「ちょっと刃君!?何をするつもり!?」

「見たらわかるだろう、鷲尾。僕は今、自分の限界に挑もうとしているんだ!!」

「限…界…!?」

「そうだ!この島は心を映す島!思いを映す島!だが、僕の兄さんへの思いが『たった1人』で満足するわけがないだろ!!?」

 

刃はそういうと全身に力を込める。島全体も少し振動し始めた。それを見て刃以外の全員が戦慄した。

 

「くそっ!一体何を企んでやがるんだ、ジン!!」

「見せてあげるよ、思いの力を!!はあっ!!」

 

島が光に包まれる。東郷が目を開けるとそこに広がっていたのは、

 

「ジン、テメェ何しやがった!!」

「ふざけんじゃねーぞ、このバカがっ!!!」

「テメェ、マジぶった切らせろ!!」

「どんだけテメェ俺を殺してーんだ、ジン!」

「ったく、しょうがねーやつだな。テメェは」

「ジン、ジン、ジーーーン!!!」

 

無数のラグナだった。それもありとあらゆる罵倒を繰り広げてくる。目の前の光景に東郷は立ち尽くしていた。

 

「こ、こんなことが」

「見たか、鷲尾!!これが僕の力だ!!」

「すっごーい!ラグナ君がいっぱいいるー!」

「ユウナ!感心するとこじゃねーだろ!?」

「幾ら何でもこれはやりすぎだと思うぞ、ユウナ!」

「つーかこれどうしてくれるだよ、ジン!!」

「あーもうメチャクチャだよ」

「ジン、ジン、ジーーーン!!!」

 

友奈の指摘に複数のラグナがツッコむ。それに対して刃はまるで勝ち誇ったかのように東郷の前に立っていた。

 

「これで分かったか、鷲尾!僕の兄さんに対する思いの強さに勝てるものはいない!!」

「…そんなことはないわ」

「ほう?」

「私の友奈ちゃんに対する思いは誰にも負けない!!それは何度も言ったはずよ!!」

「ならば同じことをやってみせろ。貴様にできるものなら、な」

「なら見せてあげるわ、圧倒的な思いの差というものを!!!ハアァァッ!!!」

 

東郷が啖呵を切ると刃同様全身に力を込める。島全体が刃の時より激しく揺れ、地震が起こっているかのようだ。ただ友奈が好きなだけじゃない。絶対に負けられない理由があるからだ。

 

「友奈ちゃん、受け取って!私の思い!!おおおっ!!!」

 

島全体が再び眩しい光に包まれ、光が晴れると先ほどの刃に匹敵する数の友奈が出現した。

 

「東郷さーん、一緒に部活行こー」

「東郷さん、大丈夫?立てるようになったばっかりだから気をつけてね」

「東郷さん…ぼた餅…欲しいな」

「あ…おはよう、東郷さん。ってあれ!?私、パジャマ着たまま!?」

「私は、勇者になーる!!」

「東郷さん、ウェブサイトどんな感じかな?」

「あーこら、牛鬼!またラグナ君に噛みついちゃダメだよー」

 

これには刃も驚いた。東郷の友奈との惚気話をそれなりに聞いていたが、まさかここまでとは思わなかった。

 

「…どうよ」

「見事だ…貴様もこの境地に至るとはな」

「いや、何激戦を繰り広げたライバル同士の会話みたいな感じにしてんの!?カッコよく見せてるけどやってることはアレだぞ!?」

 

ラグナが指摘するが、2人はすっかり自分の世界に入ってしまっているのか全く聞こえていなかった。刃の感心に対して東郷は更にとんでもないことを告げた。

 

「甘いわね、刃君!私が思ったのは友奈がいること『だけ』ではないわ!!」

「何だと!?」

「例えばこの椰子の木!!」

 

東郷が側にあった椰子の木に近づいて揺らすと、椰子の木から声が聞こえてきた。

 

「しょうがない人だなー、東郷さんは」

「そしてこの漣も!」

「とーごーさーん、だーれだー?」

「このように、この島全てを友奈ちゃんに染めることなど造作もないわ!!」

 

高笑いしながら東郷は自身の勝利を宣言した。だが刃も譲るつもりもない。彼だってラグナに対しては並ならない思いを持っているからだ。

 

「まだだ…まだ終わってないぞ!!」

「いえ、もうあなたの負けよ。いい加減潔く認めなさい」

「ほざけ!!これを見てからにしてからにしろ!!ハァァっ!!!」

 

刃が再び唸ると今度は島の木や岩がラグナに変化した。先ほどの東郷の技を応用したらしい。

 

「なん…ですって!?」

「さあ、決着をつけようじゃないか!!鷲尾!!」

「そうね…貴方とは白黒はっきりつけるべきだわ!!刃君!!」

 

両者の間に火花が走る。もう誰も2人を止めることなどできない。そう思われていた。

 

「おい、テメェら!!そろそろそのへ」

 

ラグナが言葉を言い終える前に突然光って爆ぜた。それを皮切りに他のラグナと友奈たちも爆発していった。

 

「ゆ、友奈ちゃぁぁぁん!!!?」

「兄さんたちが…爆発した!?」

 

急にラグナたちが消えたことに動揺する2人。刃はすかさずその原因を知っているであろう島に向かって怒鳴った。

 

「おい!!何故兄さんたちが急に爆発したんだ!!」

〈いや、あのですね〉

「あら、どうしたのかしら?」

 

島がモジモジしたように話していた。島の様子がおかしいことに東郷が気づくと、浜辺の向こうから園子がやってきた。

 

「わっしー、ジンジーン!早くこっちにきてー!」

「そのっち!?」「園子!?」

 

思いがけない園子の登場に2人は驚く。これも島が映し出したものなのか。

 

「おい貴様。園子を出現させたのは貴様か?」

「何言ってるのー、私は2人を助けにきたんだよー」

「じゃあ、さっきの爆発は?」

〈それは貴方たちが原因ですよー〉

『え』

〈貴方たちが綾月洛奈と結城友奈への思いを余りにも注ぎ込むものだから…注ぎ込んじゃうものだからッ〉

 

そう島が言うとどんどん島がグツグツと茹だった鍋のように熱くなっていった。地面も徐々に橙色になり、溶けていくのが分かる。

 

「あまりの思いの強さに、島が耐えきれなくなったのね…」

「ふん、僕たちの思いを受け止めきれないならそこまでだったということだ」

「いいから早く来て!!そんなところにいたら危ないよー!」

 

園子が救助用の縄を東郷たちの方へ投げようとしたが、2人は…それを断った。

 

「園子、僕たちに構うな。貴様は1人で戻れ」

「えー!?ジンジン、何いってるの!?」

「いい、そのっち。この島は今私たちの友奈ちゃんたちへの思いで溶けてしまったの。つまり、無数の友奈ちゃんたちが眠っているの!!」

「わっしー!?そんなこと言ってたら死んじゃうよー!?」

「友奈ちゃんに包まれながら死ねるなら本望よ!!!」

「流石だな、鷲尾。僕と渡り合えただけはあるよ」

「褒められても何も出ないわ、刃君」

「2人とも頭おかしいのー!!?」

 

園子の絶叫を無視して2人は悦に浸っていた。足からどんどん島の中へ沈み込んでいき、気づけば腰ぐらいまでに2人は沈んでいた。それでも2人は満面の笑みを浮かべていた。

 

「あ〜、いいよ兄さーん!!もっと頂戴!!もっと熱いの、たくさん、頂戴よー、溶けた兄さーん!!!」

「あ〜、友奈ちゃん!!どこから来てもいいわ!!私を奥の奥まで友奈ちゃんに染め上げて〜!!」

「いやいや、色々ダメだよー!!カムバーック、ジンジン、わっしー!!!」

 

園子の呼びかけも虚しく、2人はサムズアップしながら溶岩の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という夢を見たんよ〜…」

『…』

 

先ほどの出来事は全て園子の夢だった。余りにもカオスな夢を見てしまった彼女はつい友人の東郷と護衛の刃に話してしまったのだ。

 

「…そのっち」

「…園子」

「な、なにかな?」

 

話を終えてからしばらく黙り込んでいた2人が自分に話しかけてきたことに対して恐る恐る返事をする園子。その時の2人の言葉を彼女は忘れないだろう。

 

「その島、どこにあるのかしら」

「その島、一体何処にあるんだ」




いかがだったでしょうか?

というわけでブレイブルー カオスシナリオ、『兄島編』を元ネタにした話に東郷さんを入れるという暴挙を行ったのがこの話です。もう一つの話は別の機会があればあげますので気長に待ってくれるとありがたいです。

筆者は東郷さんやジンのことが嫌いではありません。寧ろ好きなキャラの部類です。ただどうしても2人がネタに走る傾向にあるだけです。特にジン。

次回からは少し忙しくなってしまうので更新が空けると思います。楽しみにしてくれた方、申し訳ありません。

それではまた
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