今回のお話で洛奈君の運命が大きく動くこととなりますがはたして彼はどうなるのか・・・気になりますねぇ・・・(某諜報部並感)
それではどうぞ
「今日健康診断の日だってよー」
「まじかよ、俺体操着忘れちゃったよ」
「誰かから借りれば?」「それだ!」
今日は健康診断の日だ。それも四国全土の小学校に通う少年少女の健康状態を把握するためにほぼ同じ日時前後で行われているものである。
特に『四年生』は通常の身体検査や視力検査等の一般的なものだけでなくレントゲンや心電図、さらには血液検査が行われている。それは今年から四年生となり、これからそれが行われる体育館へと向かうことになる
刃はできれば注射を刺されたくはなかったものの、早く行って済ませようと考えていた。この検査は『神樹様』を祀る『大赦』が毎年行うようにと決められているので、ここで変に抵抗しても面倒ごとの先延ばしでしかないことは分かり切っていたからだ。
何より同じ学校に通う兄が去年受けており、その時の話を聞いたのだ。『特に大したことはしなかった』、兄の言葉の通りならそれほど大変なことにはならないだろう。刃はその言葉を聞いて幾分安心した。少し時間がたつと、「それ」は学校中に知らされた。
『それでは4年生の皆さん、体育館に向かってください。』
「・・・行くか」
自分たちの番を知らせるアナウンスとともに刃はクラスメイト達に囲まれながら体育館へと向かった。
「・・・で、どうだったよ?ジン?」
「どうって何、兄さん?」
検査のあった日の終わり、刃は兄妹である
「そりゃあお前、健康診断だよ。大丈夫だったのか?」
「なんでもなかったよ。兄さんの言う通りだった」
「そうか、そいつは良かったな」
嬉しそうにそう語る刃を見て洛奈も小さく笑った。この様子なら大丈夫そうだ。
「刃兄さま、兄さまに何か相談していたのですか?」
「う、うん。ちょっとね・・・」
兄二人が自分の知らないところで内緒話をしていたことを知って沙耶が刃に内容を聞こうとするが、刃の返事はどこか曖昧だ。そりゃそうだ。まさか自分が健康診断の検査が怖かったとか妹に言うわけには行かない。
そんな困っている刃を見かねてか、洛奈は沙耶の疑問に答えた。
「あぁ、それがジンのやつが宿題で分からねえところがあって、その部分を教えていたんだ。」
「あれ?兄さまが刃兄さまに勉強を?逆ならわかりますが…」
「…ジンがみせたのは俺の方が分かるところだったんだよ…」
妹に痛いところを突かれて若干苦い表情を浮かべる洛奈。というのも洛奈は別に勉学ができないわけではないものの、成績は平凡である。
それに対して刃は成績が非常によく、教科によっては自分よりも上の学年の勉強も理解できる。刃が洛奈に勉強を教えることはあっても逆は珍しいことは二人の普段の様子をよく見ている妹の沙耶が一番よく理解しているのである。
「と、とにかくそんな大したことじゃねーよ。なあ、ジン」
「うん。心配するほどのことじゃないよ、沙耶」
「むぅ~…」
二人の兄の言い分にどこか納得していないからか唸る沙耶。今の言い訳はちょっと苦しいか。洛奈と刃がそんなことを考えていると、
「分かりました。兄さまたちがそういうなら私はこれ以上は聞きません」
「ありがとな、サヤ」
「ありがとう、沙耶」
「良いですよ、ただちょっと寂しく思っただけです」
((あ、これ気にしてるな))
昔こそ病弱ではあったものの、沙耶は少しずつ学校に行けるようになってきている。数は少ないもののそれでも少しずつ世間話をする程の仲になった友達ができて、引っ込み思案も少しずつ改善されていった。
ただそれでも長年一緒に過ごしてきた兄妹と一緒にいる方が安心するようだ。だから自分が知らないところで兄たちが秘密を持っているのがちょっと拗ねている。
「まあ、なんだ。サヤも『来年』になればわかるって」
「そうですか…」
「ああ、わかるよ。といってもそんな大したことじゃねーけどな。それより早く帰ろうぜ。『巫女』が待っているだろうしな」
「兄さん、そろそろ『母さん』って呼んだらいいのに」
「何つーか、こっちの呼び方の方が自然と落ち着くんだよ」
洛奈は今でも義理の母親にあたる
ただ今までの習慣と自分の「夢」の中に出てくる「自分と瓜二つの少年」が芹佳ととてもよく似ていた女性を「シスター」と呼んでいたため、芹佳を母と呼ぶことにどこか違和感があった。
「兄さん、もうそろそろ家に着くよ」
「おっ、そうか。ありがとうジン」
刃の声と同時に三人は家の玄関前についた。
『ただいま!』
数日後、「それ」は起こった。
「・・・このような場所にどんな要件でしょうか?」
「今日こちらに来たのはこちらにお住まいの綾月 刃様とその御兄妹についてお話があってお伺いしました。」
「刃たちについて・・・?」
「はい。この度の検査から、刃様には高水準の適正があることが分かりました。」
「えっ!?でも刃は『男』ですよ!?」
「ジンが男であることがどうしたか、巫女?」
洛奈たちが朝食を食べていると突然呼び鈴が鳴り、芹佳が対応をしに行った。芹佳がすぐに帰ってこないことを気にかかった三兄弟は様子を見るのに玄関に向かうとちょうど刃の名前が出てきた。
何かがおかしいと感じた洛奈は万が一のため刃に体調を崩した沙耶の看病をさせるために部屋へ行くようにと伝えた。
「彼は?」
「洛奈…息子です」
「…あんた誰だよ?少なくともこの辺じゃ見かけ…!」
洛奈が相手の顔を見ると警戒心を一気に高めた。前方に何人かの白装束の男女がおり、全員が一本の木が描かれた仮面をつけていた。この服装はこの四国で最も影響力のあり、数日前の「健康診断」を行わせている組織のものだった。
「『大赦』の連中が家に何の用だ!?」
「ラグナ、ダメだよ。今は落ち着いて」
「けどよ巫女!」
「この人たちの話はまだ全部終わっていないわ。まずは話を聞いてからにしましょう」
「……巫女がそういうなら」
芹佳に諭された洛奈はなんとか気持ちを落ち着かせ、話を聞ける態勢になった。
「…話を戻しましょうか。どうして男子である刃に適正があるんですか?『勇者』や『巫女』は幼い少女しか選ばれないはずなのに…」
「はい。おっしゃる通り、『勇者』と『巫女』の適正は幼い少女、それも神樹様が自ら選びになるため数が非常に限られています。ですが最近になって神樹様の持つ『精霊』を憑依させたコアを核として作成することで、適正があるならば性別や年齢関係なく使用することができ、かつ神樹様を害するものたちに対する有効な攻撃手段となる武装が開発されるようになりました。これは何なのか、貴女もご存じでしょう?」
「それは、まさかお姉ちゃんが…!」
「はい。貴女の姉である『
神官がそう告げると、話をつづけた。
「そして最近の研究によりますと、『術式』や『勇者』などの適正は『兄妹であれば同じ高さの適正値を出すことが多い』のです。」
「……つまり」
「これから洛奈様と沙耶様を至急大赦へと連れていき、『適正』がないかを調べたいのです。お願いできますか?」
「…残念でs「ふざけんじゃねー!!」ラグナ!?」
芹佳が断ろうとする前に洛奈が飛び出して芹佳を庇うように神官たちの前に立ちふさがった。
「要はジンとサヤが訳の分からねー連中と戦えるかどうかを調べて―だけだろうが!そんな『お願い』聞けるか!!」
「待って、ラグナ!」
「…洛奈様、御理解ください。これは『必要なこと』なのです」
「絶対するか!俺だけならともかく、あいつらを戦いに巻き込んでんじゃねーよ!でてけ!」
洛奈はそう言って神官の一人に体当たりして無理やり押し出そうとした。大人数人と子供一人。体格でも人数でも圧倒的に負けていた。
それでもなんとか押し負けなかったのは日頃の生活習慣の賜物だろう。大赦の神官はほとんど役所仕事だったからかあまり運動する機会がなく、よくて一般人並の身体能力だった。
それに対して洛奈は幼少期から猫の獣人にして義理の伯父である『師匠』に鍛えられていた。今では同年代での喧嘩ならまず負けることはなく、大人でも倒すことはできる。それでも時間が経つにつれて洛奈の方が押され始めた。
「離してください洛奈様!」
「だったらとっとと帰れ!」
「ラグナ危ない!」
押し合いの末、洛奈はとうとう他の神官引きはがされて押し返された。倒れされた洛奈は芹佳に受け止められて大けがは免れたものの玄関の靴箱に腕をぶつけてしまった。
「ラグナ、大丈夫?腕痛くない?」
「ああ、ありがとう巫女・・・」
肘関節の内側の骨を打ってしびれたが大事じゃない。そう思いながら洛奈は目の前の集団を睨みつけた。
「洛奈様、芹佳様、どうかご理解ください。これは『必要な』ことなのです」
「すでに息子が言ったと思いますがその要求には従えません。帰ってください」
「しかしそれでは世界は「兄さま?」」
神官が言葉を終える前に一つの声が割って入った。体調を崩して寝ていたはずの沙耶だ。どうやらさっきの騒ぎで起きてしまい、来てしまったようだ。
はじめに洛奈と芹佳、その後神官たちを2回交互に見て、その後神官たちを凝視する。その後に沙耶の不在に気付いた刃が彼女を連れ戻しに来た。
「沙耶、起きちゃダメだろ、まだ寝てないと…てこの人たち大赦の!?」
「………」
「お前らな…」
早く部屋へ戻れ、と洛奈が言う前にそれまで黙っていた沙耶が口を開いた。
「兄さまを傷つけたのはそこのおじさんたちなの、兄さまや私をどこへ連れて行くの…?」
「沙耶様、どうか我々とともに大赦へ「嫌だっ!!!」!?」
瞬間その場にいる全員の背筋が凍ったかのような錯覚に襲われた。今目の前にいるのは少女だ。そのはずだ。
でもその声は少女のものとは思えないほど低く、威圧感の籠ったものだった。この中で一人、洛奈だけは別の感情も持っていた。恐怖はもちろんあったが、この光景をみて同時に懐かしさのような奇妙な感覚に襲われたのだ。
(なんだこの感覚、まるで既に一度体験しているようなこの感覚…まさか!?)
知っている。この威圧感を自分は知っている。そんなことを考えていると、
「兄さまも私も…ここから引き離すなら…」
「ひっ…!」
「…許さない」
問答無用で神官たちの言葉を遮った沙耶の体から黒い瘴気が発生する。膝をついて両腕で体を抱きしめながら苦しんでいる内に体にも変化が現れるようになった。
綺麗だった金髪は濃い紫色に、瞳も碧から赤へと変色する。変色が終わると瘴気をまき散らしながら小さな爆発を起こして洛奈などの家族を含む全員を巻き込みながら神官たちを外へと追い出した。しかし、それでも「まだ終わりではなかった」。
外見も人格もほとんど変化した「沙耶」が近くの神官の一人に目を向ける。普段のどこか弱弱しくて穏やかな目つきから相手に一切の慈悲を与えない鋭いものに変化していた。
その眼光に神官は完全に腰を抜かしてしまった。何が起こっているのかがさっぱり理解できていない洛奈と刃はただ見ることしかできなかった。しばらくしてただ見つめるだけだった「沙耶」が動き出した。
「あ…ああ…」
「…往くぞ」
その言葉を発した直後、「沙耶」は神官の装束の襟首を掴んで、思いっきり投げ飛ばした。
『普通』ならば小学3年生の女子が大の男を投げることはおろか動かすだけでも大変だ。だが今の「沙耶」はもう『普通』ではない。まるで枕投げを遊ぶ無邪気な子供のように神官を何度も投げまくっている。柵に激突しようが、泥だらけになろうがお構いなしである。
「其処にも居るか…」
「!!」
他の神官たちの気配を察知した「沙耶」は先ほどまで投げまくっていた男を興味を失ったオモチャを捨てるように手放して宙に飛ぶと、足元に方陣を展開して空を浮遊しながら高速で向かった。あのスピードでは人の足はもちろん、下手すれば自動車に乗っても追いつかれる。
「おいおい巫女、ありゃいったいなんだよ!沙耶の体にいったい何が起きたんだよ!?」
状況についていけない洛奈は芹佳に聞いた。今の「沙耶」は明らかにおかしい。早く何とかしないとこのままでは人を殺してしまう可能性がある。それだけは絶対に阻止しなければならない。
「…今あの子は自分の体に精霊を憑かせている状態だと思う。でもまさか勇者システム無しでそんなことができるなんて…」
「勇者システム?そいつはなんだ?」
「神樹様は無垢な少女を選び、その子たちに自身と四国を外の世界からやってくる脅威から守る『お役目』という使命に就かせるの。この『お役目』についた少女たちは『勇者』と呼ばれているわ。」
「そうか、勇者システムはその子が使うものなんだね!」
「そうよ、刃。勇者システムとは神樹様の力と人間の科学力や呪術を合わせて作った勇者の武装のことよ」
「おい、それって…『術式』や『
「よくわかったね、ラグナ。実際『術式』は勇者システムを参考に作られたものなの。最も術式は勇者システムに比べて人の手がより多く加えられたものだから防御力は勇者システムより低いけど」
「なるほどな、そいつがどんだけスゲーものかは分かった。じゃあ…」
洛奈は「沙耶」のいる方角へと目を向ける。
「ありゃどういうことだ?サヤは勇者って連中とは関係ねーだろ」
「そうね…体に精霊が憑いているとはいえ勇者でもあそこまで力は高まらないはずなのに…」
「『師匠』には…!」
「『獣兵衛』さんならさっき連絡が取れてすぐにこっちに向かっているわ」
「それなら…!?」
自身の師匠が来ると聞いて安心するのもつかの間、街の方から悲鳴が聞こえた。振り向くと商店街の方で煙が上がって逃げ出す人も出始めた。どうやらそこまで待つ時間はなさそうだ。
「…待つ時間もねーってかっ!クソっ!」
「あ、ちょっと待って、ラグナ!早まっちゃダメ!」
「兄さん!!」
芹佳と刃の制止を振り切って洛奈は急いで沙耶のもとへ向かった。
…やべぇ、これ沙耶怖くしすぎたかな?
察しのいい方は分かってしまうかもしれませんが沙耶の性格の設定などは素体組、イザナミ、原作のサヤを統合したもの(大部分がノエルとイザナミだが)です。いきなりボスキャラとかありかよなどがあるかもしれませんが、このスタンスで進行させていただきます。
また、セリカはこの世界では洛奈と同年代ではありません。なぜって?そりゃ彼女が同年代になったらただのブレイブルーin 四国になっちゃうからです。
次回はできればゆゆゆのキャラと絡めるようにします。