蒼の男は死神である   作:勝石

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どうも勝石です。

今回の話はなんか書きたくなったので以前個人ページにあるネタ箱に投稿されたリクエスト回です。タイトルから誰が出るかは大体想像が付くと思いますが、あの男が来訪!!それではどうぞ

The wheel of fate is turning...Rebel...1...Action!!!


花結いの確率事象3.交わる紅刃

その日、樹海の中である青年が佇んでいた。青年は高校生か大学生くらいの年齢の男子でアホ毛の立った茶髪。右腕には奇妙な紋章が刻まれたアクセサリーを付けたグローブがある。

 

「今までいろんな場所に迷い込んできたけどさ……」

 

青年はプルプル震えた後に思い切り樹海で大声で叫んだ。

 

「ここ一体どこなんだよぉぉぉぉぉぉ!!!!?ようやく帰れると思ったらまた変な場所に来ちまったぞ!!?しかも街とかならまだ良いけどこんな根っこが雁字搦めの世界、どう情報を探せってんだぁぁぁ!!?」

 

通常このような場所に人間は現れることはないが、彼は何らかの事故でここに引き込まれてしまったようだ。

 

悲嘆していると青年の周りから星屑が集まってきた。異常に気づいた彼は敵を見ると見慣れないそれに驚く。

 

「なっ!?こいつら、一体なんだ!!?」

 

異形から敵意を感じると青年はファイティングポーズを取り、目の前の敵を凝視する。すると敵の頭上に何らかの文字列が浮かび上がるのを見えた。

 

「…人間よりはバカでけえが取り敢えず、『数値』から見るに倒せない敵じゃないな…けどこの数…あんまり悠長に相手してられないってか…」

 

そう呟くと青年は一気に駆け出す。それに対して星屑たちも襲いかかるが、青年のラッシュでどんどん蹴散らされていく。

 

「『バニシングファング』!!!」

 

多彩な体術で星屑たちを追い払うが、あまり効果的なダメージが見られない。『数字』から相手の力量をある程度把握出来る彼からすれば驚きの事実だろう。

 

「おいおい、今のならヴァルケンハインのオッさんでも少しはダメージが入るぞ!!?なんでピンピンしてんだ!!?」

 

彼の疑問に一言も敵は答えず、ただ彼を囲み始める。どうやら自分も出し惜しみをしている場合じゃないようだ。

 

「仕方ねえ……アレをやるか!!」

 

啖呵を切ると青年は腕を押さえながら爪の長い怪物を彩った紋章を浮かび上がらせる。

 

同時に彼の髪は『白く染まり』、目も黄金色から『紅』へと変わる。突然の変貌に敵が驚く中、青年は右腕から大量の血を纏わせ、包囲網を突き破って外に出た。

 

「どけ、『ディヴァインスマッシャー』!!!」

 

今度こそ敵はあっけなく崩れ去り、彼も逃亡の機を得る。走り去りながら青年は先ほどの敵について考えていた。

 

「なんだよ、『この世界』!!ここは人すら住んでない惑星Xか!?」

 

この状況でアレが火星人だと言われたら恐らく信じてしまいそうになる中、青年の前から別の怪物たちが現れた。『数字』から見るに恐らく先ほどの連中よりも強い個体だろう。

 

「不味いな…流石に『ブラッドエッジ』だけでこいつら全員を相手にすんのはキツイぜ…」

 

だがやるしかなさそうだ。そう思っていると上から一人の少女がパンチを振り下ろしながら怪物に突貫した。

 

「勇者〜…パーンチ!!!」

「おわっ!!?」

 

少女の攻撃によって怪物たちは瞬く間に消しとばされていき、徐々に援軍もやってきた。何が何やら分からないまま、青年が呆けていると彼の元に別の少女が現れた。

 

「貴方が神樹様に呼ばれた新しい勇者…というか衛士ね。いきなり『樹海』に飛ばされて大変だったでしょ?」

「あ、あの………!!?アンタ一体何者だ!!?」

「あーそういや言い忘れたわ。アタシ、犬吠埼ふ…て貴方どうしたの?すっごい青い顔してるわよ?」

 

風は特に何かしているわけではないが、青年は彼女を見て仰天した。それもそうだ。彼女と同年齢の人間なら絶対に出てこないはずの『数字』が見えてしまったから。

 

その数字の値は実に200万。自分の世界のヴァルケンハインほどではないが、明らかに人間離れしたものだった。青年は思わず警戒して構える。

 

「おいアンタ…一体どういうことだ……その『数値』から見て相当強いみたいだけどよ…」

「へ?数字?何のこと?」

「……少なくともアンタはそこらの人間じゃあ有り得ないほど強いってことだよ」

「……これにはちょっと事情があってね。でも聞いて。アタシたちは貴方の敵じゃない」

「………分かったよ…はあ、どうしてその『眼』で言われちまったら逆らえねえんだ、俺は…」

「うん?どうかしました?」

「何でもねえよ。説明してくれ」

 

青年が構えを解くのを見て、風はかくかくしかじかと説明し始めた。今自分が神樹と呼ばれる神様の中の世界にいて、現在造反神と戦う勇者たちの味方になるように呼ばれた、と。

 

「……あのさ。一ついいかな?」

「何よ?」

「俺の記憶が正しければ、バーテックスも神樹もそもそも存在しないはずなんだけど……」

「え!?じゃあアンタ、全然関係ないところから来たの!?」

「気にすんな…なんていうか、もう毎度のことだから…」

 

あまり自分に気を使わせないようにしているが、頭を抱えている点から困惑しているのが丸わかりだった。しばらくすると桜色の髪をした結城友奈が風たちの方へ来るのが見えた。

 

「風先輩!こっちは片付きましたよ、ってあれ?君、どこかで見たような…」

「……もう突っ込まないぞ。どうしてこんな『バカ高い』数値が見えたのか、俺は絶対突っ込まない!!」

 

さっきから生命力のインフレが激しいことになっていることに青年が狼狽している中、樹海化が解けて彼らは現実世界へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、あんず。あの二人を見てどう思う?」

「かなりよく似ている、よね」

 

勇者部部室に帰ってくると青年とラグナはお互いの顔を突き合わせながらメンチを切り合っていた。

 

二人の間にはピリピリと火花が飛んでおり、正直に言ってあまり関わりたくはない。最初に口を開けたのはラグナだった。

 

「まさかここでテメェにまた会えるとは思わなかったぜ…『クソガキ』」

「俺も…若くなったとはいえ、アンタにこんな形で再開するとは思わなかったよ、『白髪野郎』」

 

明らかに険悪な雰囲気になっている中、最初に口を開いたのは結城友奈だった。

 

「あの、すみません。もしかして、『黒鉄(くろがね)ナオト』さん、ですか?」

「君、俺のこと知ってんの!?」

 

まさか自分を知っている人物がここにいるとは思っていなかった青年、ナオトは彼女に話を聞き始めた。

 

「教えてくれ、どうして俺のことを知っているんだ?どうしてこいつがここにいる?だってこいつは、あの時…」

「えっと、ちょっとかくかくしかじかで…」

 

一応勇者部のみんなはラグナが異世界から来た人間であることは教えている。初めは戸惑いもあったが、今は誰もそれほど気にしていない。

 

他にも友奈が自分が『眼』の力でラグナたちの世界を見てきたことも教えると、ナオトはようやく納得したようだった。

 

「そうか…取り敢えず事情は分かった。要はアンタたちがあのウジみたいな連中と戦ってたのは、この世界を守るためなんだな」

「はい!でもナオトさんは良いの?元の世界で待っている人がいるんじゃ…」

「世界を移動するのは今に始まったことじゃないし、そんな話を聞いたら尚更帰れないしな。俺も出来る限り力を貸すよ」

「ホントに!?やったーー!!」

 

ナオトが力を貸してくれることに結城友奈は無邪気に笑った。一先ず安心したナオトは自己紹介をし始めた。

 

「じゃあ、自己紹介か…俺は黒鉄ナオト!色々訳あって世界を飛びまくってるんだ!タメ語でも全然構わないから、気楽に話しかけてくれ!」

「そういえばナオトって私たちよりも年上だったんだな…年齢によっては萬駆より上かも」

「それでもレイチェルさんよりも年上になることはないっすよ、銀さん」

「あら、小さい方の銀。貴女はお仕置きがご希望かしら?」

「ひえー!?ご勘弁をー!!」

 

銀が要らない失言でレイチェルの暗黒微笑の餌食になっていると、風が別の質問をナオトにしてきた。

 

「そういえばナオト。アンタ、さっき『数値』がどうとか言ってたわね。アレって何のことよ?」

「ああ、アレか。俺には『狩人の眼』って言う特殊な眼があってな。それに観測()たものの生命力が映るんだよ。さっき言ったのは風の生命力の数値だ。普通の人間は1万くらいなのに、まさか200万が出てくるなんて…」

「何ですって!!ねえ、聞いたアンタたち!!アタシの女子力、200万だって!!!」

「女子力じゃなくて生命力じゃあ…」

「えーい、女子はいつだって活動的じゃなきゃいけないから生命力に溢れている、即ち女子力に溢れているのよ!!」

「俺が言ったのはどっちかというと強さなんだけど…まあ良いか。喜んでいるみたいだし」

 

良く分からないが舞い上がっている風を見てナオトは苦笑しながらも嬉しそうに言った。そこへ水都が別のことを聞いてきた。

 

「あの、ナオトさん。もう一つ聞いても良いですか?」

「良いよ。何か気になることがあるのか?」

「はい。その右腕ですが、私にはタダならない気配を感じるんです。それについても詳しくお話をしていただけませんか?」

 

水都からすればナオトの腕はかなり異質なものに感じたのか、少し警戒しているようだった。彼はまあそうなるかと思いつつ、説明し始めた。

 

「俺、高校生くらいの時に右腕を切り落とされてさ。その時に『ラケル』…そこの『レイチェル』と似た娘なんだけど、そいつが俺の命を救うのと一緒にこの腕を造ってくれたんだ」

「何というか、ラグナに似た境遇だな」

 

球子の指摘に対して、多くの者たちが頷く。ナオトもラグナもどこかウンザリしながらも否定はしなかった。

 

「まあそう言われても仕方ねえよな。何せこいつのドライブは…『ブラッドエッジ』だからよ」

『えーー!!!?』

「それだけじゃねえ…こいつのドライブ…『ソウルイーター』は俺の妹、『サヤ』の物と同じなんだよ」

『そうだったの!!?』

「らしいぜ。少なくとも俺たちの妹は同じ名前らしい」

「目の前にいるこいつの妹が何よりの証拠だしな」

 

二人が沙耶に目をやった後、再びチリチリと激突し始めた。

 

「言っておくが、サヤに手ェ出すんじゃねえぞ」

「誰が出すか、誰が。そっちこそ知らねえ内にギャルゲーの主人公みてえな状況にハマりやがって」

「ギャルゲー男はテメェで十分だろうが!!」

「どうしてその呼ばれ方を知ってんだよ!!?つーかギャルゲー男じゃねえし!!!」

「偶然だったんだけど……」

 

ギャーギャー言い争いをする二人を余所に高嶋友奈はさり気なく千景に話を聞いてきた。

 

「ねえぐんちゃん。ギャルゲーって何?」

「……女の子に告白して攻略するゲームのことよ」

「そうなんだ!じゃあ私もぐんちゃんに攻略されたってことかな?」

「それは…むしろ私…かな…」

 

有名タイトルくらいなら一網羅している千景だったが、友奈に二人の会話の意味を教えるのは流石に気が引いた。

 

(でもこんな下らないことで高嶋さんに変な知識を持たせる訳には!!)

 

何としてもそれだけは回避せねば。ぐぬぬと唸りながら方法を考え込んでいる千景とは別に結城友奈は二人の手を取ると笑顔で宣言した。

 

「でもやったね!これで『私』たちと同じだよ、高嶋ちゃん!」

「あ!言われてみればそうだね、結城ちゃん!」

「うん?二人ともどうしたんだ?」

「なんかめっちゃ嬉しそうだけどよ」

「それはそうだよ!だって」

 

二人の友奈が背中合わせでポーズを取りながら決め台詞を言った。

 

『二人は友奈!!って出来るのは私たちだけじゃなくなるからね!!』

『いや、意味わかんねえし!!』

「ほら、ラグナ君もナオトさんも『ブラッドエッジ』でしょ?」

「だからバーテックスが来た時に『ブラッドエッジ二刀流』!!とか言って決めポーズしたらカッコいいだろうなぁって!!」

「こいつと…」

「俺が…組む…ね」

 

ちょっとだけ不服気味だが、二人はお互いの実力を知っている。こんな状況である以上、手を取り合うしかないだろう。

 

そう思っているうちに樹海化警報が鳴り出した。どうやら間も無く戦いが始まるようだ。

 

「どうやら早くもナオトの出番が回ってきたわね。頼りにしてるわよ!」

「任せておけ、風!」

 

光に包まれた後、樹海の向こうから新たな来訪者が現れた。今度は赤嶺友奈だ。

 

「ヤッホー勇者のみんな〜。楽しんでるかな〜?」

「なっ!?誰だこいつは!?しかも結城と高嶋に顔がめちゃくちゃ似てるぞ!!?」

 

友奈たちについては殆ど知識がないナオトの言葉の代わりに他の勇者たちが反応する。

 

「また来たのね、赤嶺友奈!!」

「今度こそ倒してみせるわ!!」

「うわ〜今日は血気盛んだね〜。何かあったのかなぁ?」

「確かに東郷と千景は友奈ズのやり取りを見て昇天しかけてたわ」

「君たちは毎回おかしなことをしているね…」

 

赤嶺が冷めた感想を述べていると結城友奈が前に出てきて、ワクワクした顔で彼女に力強く言い放った。

 

「赤嶺ちゃん!!今度は話を聞かせてもらうよ!!」

「どういうことかな、コーハイちゃん?まだ戦いは始まってもないよ?」

「今回から友奈だけが二人じゃない!赤嶺ちゃんもきっと喜ぶと思うよ!!」

「ふぅーん。ま、どうせ下らないことだろうけど、やってみてよ」

「それじゃあ、二人とも!お願いします!」

「おいユーナ…本当にやるのか?」

「お願いラグナ!今回だけで良いから!赤嶺ちゃんはラグナに懐いているし、二人もブラッドエッジがいれば話を聞いてくれるかも!」

「……分かったよ。始まったもんは仕方ねえ!!覚悟を決めてやらぁ!!」

「…俺と面識がないなら通用しないと思うけどなぁ…まあ、ここまで来た以上仕方ねえ!やりますか!」

「あの〜、早くしてくれない?」

「おう、待たせたなアカミネ。行くぞ!!」

 

力強いお兄様の声が聞こえた赤嶺が少し期待し始めると、二人は樹海の根の上に飛び移って叫んだ。

 

『二人揃ってブラッドエッジ二刀流!!テメェの魂を俺たちが刈る!!!!』

「………」

 

安っぽいヒーローショーみたいなものを見せられたからか、赤嶺は二人を凝視しながら絶句した。他の友奈たちからすればこれが理想通りだったようで目をキラキラさせながら見ており、他の勇者たちは静かに合掌していた。

 

「……殺せよ……いっそ殺せよ…」

「無視すんなよ…なんか言ってくれよ…」

「とっても良かったよ、二人とも!!」

「全然そんな風に見えねえよ……」

「やべえよ…これ、絶対黒歴史確定だぞ……」

「そんなことないよ!!カッコよかったよ!!」

 

本気でそう思っている友奈二人はともかく、問題の赤嶺はプルプル震えながら立ち位置から微動だにしない。

 

これは笑われてんなと考えていたラグナたちだが、実際は全く違った。何を思ったか、赤嶺はすぐさまナオトの方へ駆けつけ、彼の顔を思い切り近づけた。

 

何が起こったのか良く分からないまま、ナオトが狼狽えていると赤嶺の口から衝撃の事実が出てきた。

 

「な……」

「お、おいアンタ!いきなり何すんだよ!?」

「『ナオト先輩』!!?どうして先輩までこの樹海に来てるんですか!!?」

「………え?」

 

何故か自分を知っている体で話しかけてくる赤嶺にナオトだけでなくその場の全員が驚愕のあまりに絶句していた。

 

そんなことに構わず赤嶺が彼を問い詰めてくる。

 

「気づかない間にまた変なことに巻き込まれて!!ここがどんな場所か分かってるんですか!!?早く出て行って下さい!!!」

「おいおい、待て待て!!君は俺を誰かと勘違いしてないか!?」

「じゃあ名前を言って下さい!!」

「く、黒鉄ナオトだけど」

「ほら、本人じゃないですか!!!」

「だから人違いだってば!!」

 

予想外の出来事に流石の友奈たちも困惑。それに対してラグナと赤嶺がお姉様と慕う古波蔵棗はどこか温かい眼差しで二人を見ていた。

 

「お、お姉様にお兄様!!?こ、これはその!!」

「いや、良いんだって。何も言わなくて良いぜ。結構酷え口調だが、実はそいつが心配で仕方ねえんだろ?分かってるって」

「なるほど、赤嶺と黒鉄はかなり近い間柄なのか。これは失礼した。我々では邪魔になるだろうからそっとしておこう」

「やめて、お姉様にお兄様!!!そんな保護者みたいな目で見ないで!!!」

「いや、だから君は一体誰なんだぁぁ!!?」

 

まさかのところで『この世界』の黒鉄ナオトの立ち位置が割出てしまった。大方こちらではこのナオトほど大変な目には遭っていないようだ。

 

なんとか彼女を振り切ったナオトはすかさず赤嶺から距離を取る。知り合いの登場でどこか感情的になった彼女は容赦を見せない。

 

「お兄様やお姉様はともかく…先輩は力づくてでも帰ってもらいますよ…大丈夫、ここで倒されても本当に死にはしませんから…」

「待って〜、あの娘からとんでもなく病んだニオイがしてきたぞ〜!どういうことだ!!?」

「こっちでもギャルゲーって奴みてえな人生を歩んだテメェを恨むんだな」

「俺関係無くね!!!?」

 

そんな漫才をやっていると赤嶺が二体の大型バーテックスが召喚した。周りには雑魚に当たるものたちもワラワラいる。

 

「ラグナ君!他のバーテックスは私たちに任せて、あの大きいのをお願い!!」

「分かったぜ、ユウナ!!遅れんじゃねえぞ、ナオト!!」

「上等!!テメェより先にカタをつけてやる!!」

 

二人は大型バーテックスに攻撃を仕掛ける。ラグナは大剣に瘴気を纏わせながら切りつけてくるのに対して、ナオトは格闘で敵の攻撃をパリィしながら右腕の血で形成した剣などで攻撃する。

 

その様子に赤嶺は脱帽していた。どうやらこちらの世界のナオトはブラッドエッジを持っていないようだ。

 

「体術の強さは教わってたから知っていたけど…まさかここまでだったなんて!!」

「そう簡単に倒されてたまるか!!ここで倒されたらアイツに笑われる!!」

「まだ本番はこれからだ!行くぜアカミネ!!」

 

そう言いながら二人は右腕を押さえながらオーバードライブを発動させる。

 

ラグナの周りには黒い瘴気が、ナオトからは腕を中心に血液の渦が生じていつでもドライブが使える状態になった。特にナオトの姿に多くの者たちが驚く。

 

「黒鉄ナオト…貴様…その姿…」

「ここまで来ると…友奈たちと同じというのも頷けるな」

 

若葉の指摘通り、ドライブを発動させたナオトは白髪紅眼となり、見た目はかなりラグナに近いものになった。これには赤嶺も戦慄する。

 

「あの姿…まるでお兄様…!!」

「これで終わりだ、デカモツ野郎!!!」

「こいつを食らって立っていられると思うなよ!!!」

 

それぞれの刃が敵に命中するとラグナは大剣を大鎌に変形させ、ナオトは大量の血液で同じく鎌を造り出した。

 

「ブラックオンスロート!!!」

「『 E・O・E (エッジ・オブ・エタニティ)』!!!」

 

二人による鎌の猛烈な斬撃に大型はたちまちバラバラに切り裂かれていく。二人のセリフも重なっていく。

 

「見せてやるよ、蒼の力を!!!」

「その眼に焼き付けろ!!!血の斬撃を!!!」

「地獄はねえよ!!!」

「あるのは無だけだ!!!」

 

二人が一気に力を高めていくと最後にラグナは渾身の力で敵を貫き、ナオトは血潮の波で敵を刈り取る。バーテックスは成す術も無く倒されていった。

 

『闇に……喰われろ!!!』

 

トドメを刺されて瞬く間に灰へと化したバーテックスを後ろに、二人は振り返る。その時にラグナの後ろからは赤黒い翼が、ナオトは血染めの翼が手から出現した。

 

『これが…ブラッドエッジ二刀流の力だ!!』

「なんか無駄なカッコよさを醸し出し始めた!!?」

「うおおお!!お前らメチャクチャ決まってるぞ!!!10タマポイントくれてやるぞ!!」

 

大将が討ち取られたことで他のバーテックスも散り散りになり、あっという間に勇者たちによって駆逐された。

 

赤嶺は二人を睨みつける。手を打ち尽くしたようで、もうこれ以上の増援は見られなかった。

 

「……今回は退散させていただきますよ。でも必ず、必ず二人は倒します…それまで…待っていて…」

「赤嶺ちゃん……」

「だったら…俺も何度でもアンタを倒すよ。そして訳を話してもらう!!」

 

去っていく赤嶺を見ながら、ナオトはそう彼女に告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は色んなことがあったね〜…」

「ええ…まさか赤嶺友奈の知り合いがこっち側に付くなんてね…世界は違うみたいだけど…」

 

高嶋友奈と郡千景は就寝前に今日の出来事を部屋で話していた。彼女たちにとって今日の赤嶺は中々衝撃的だったようだ。

 

「ナオト君…違う世界から来てるから赤嶺ちゃんのことを知らないんだよね…こっちの世界のナオト君もいつか来るのかな?」

「そうね…園子ちゃんたちみたいなことが起こっているから案外会えるかもしれないわ」

「そうだったら赤嶺ちゃん、喜ぶかな?」

「あの様子を見ればそこそこ黒鉄君のことを思っているみたいだからきっと喜ぶわよ」

「だったら会えると良いね!」

 

高嶋友奈がそう明るく言っているのを見て、千景は少し辛そうだった。

 

実は自分たちもこの世界に来たときに赤嶺とほぼ同じような体験をしている。自分たちの良く知る姿よりも少し若いラグナに出会えたが、彼はまだ自分たちを知らないようだった。

 

そして彼女たちの中で友奈は彼のあの姿を知っているため、尚更ショックだったのだろう。今は彼の方も慣れたこともあって名前で呼んでくれているが、それでも少し距離を感じているように見えた。

 

(恐らく結城さんに気を遣っているでしょうけど、本当は自分ももっと話しかけたいのよね…)

「どうしたの、ぐんちゃん?難しい顔をしちゃってるよ?」

「……高嶋さん!」

 

友達を元気づけねばという使命感に駆られるままに千景は少し彼女から離れると、武器を取り出した。何が始まるんだろうと高嶋が疑問に思っていると千景はそれを持ってポーズを決めた。

 

「わ、我が名はチカゲ=ザ=ブラッドエッジ!!貴女を無限の闇へ誘う者!!…なんちゃって…」

「……」

「………あの二人は鎌を使うから私もそんな感じにした方が良いかな……って」

「ぐんちゃん、可愛いよ!!!」

「た、高嶋さん!!?」

 

どうやら千景のモノマネが功を奏したのか、高嶋友奈は嬉しそうに彼女に抱きついた。至福の感覚に千景が襲われている間に、高嶋友奈はそっと礼を述べた。

 

「…ありがとう、ぐんちゃん。励ましてくれて。でも私は大丈夫だよ。みんなが笑っているなら、それだけで私は十分嬉しいよ………あれ?ぐんちゃん?」

 

返事が返ってこないことに気づいた高嶋は千景の方を見ると、そこには頭から煙を出しながらニヘラ顔で気絶している彼女がいた。幸せそうな表情を浮かべながら果てていた。

 

「ぐんちゃん!!?しっかりして!!!ぐんちゃぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」




今回は番外編だからなのかぶっ壊れ気味だなぁ。

というわけで今回のゲストキャラはブレイブルー ・ブラッドエッジ・エクスピリエンスの主人公、ナオト=クロガネ登場!!こちらでもラグナとちょっといがみ合いがちになるけど、そこはコミュ力の高い友奈ズでカバーするだけさ!!

そして安定のギャルゲー男っぷりです。彼、ラッキースケベ体質らしいんですが…ゆゆゆの元の世界ではどうなってたんでしょうねぇ?

本編を楽しみにしている方には申し訳ございませんが、もしかしたらまだ番外編を書くかもしれません。アイデアが湧いてくるんだ、仕方ない。リクエストの方ももお待ちしていますよ。

それではまた


「あのぉ…(わたくし)の番外編での出番はまだですかねぇ?」

(多分まだ)ないです。

「そんなぁ」

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