蒼の男は死神である   作:勝石

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どうもお久しぶりです。勝石です。

お気に入り40人突破、そして感想を送ってくださった方、ありがとうございました。中々執筆ができませんが完結できるように頑張りたいです。

今回の話はゆゆゆ原作2話にあたる話です。9000字クラスで本当に済まない。今回の話でラグナは勇者部と本格的に共闘するようになりますが、果たしてどうなるのでしょうか?

それではどうぞ

The wheel of fate is turning...



Rebel18.青と蒼

「テメェ…なんつー無茶しやがるんだ」

「だって…あのまま放っておけないし」

「友奈、アンタ…」

「友奈さん…」

「風先輩…私も戦います!!」

 

風、樹、そしてラグナは先ほどヴァルゴをぶち抜いた友奈へと集まっていた。友奈には特に問題はなさそうだった。

 

「よーし!みんな、『封印の儀』に入るわよ!」

「『封印の儀』?なんだそいつは?」

「最近になってバーテックスには『御魂』と呼ばれる核を持っていることが確認されたのよ。それをバーテックスの中から取り出して破壊できるようにしたのが、『封印の儀』よ」

「へ〜。それでアイツを倒すことが出来るってわけか」

「そう。友奈、樹!アタシが指示した場所に向かって!」

「俺はどうすりゃいいんだ?」

「アンタは御魂が出てきてからが出番だから今は待機」

「おし、分かった!」

「了解しました!」

「分かったよ、お姉ちゃん!」

 

そう言って友奈と樹がバーテックスを囲って、スマホに記された祝詞を読み上げる。しかし祝詞が長いことと言い慣れない言葉を使っていたためか、読み上げるのに苦労していた。そこへ風がバーテックスの周囲を大剣で叩いた。

 

「大人しくしろー!!」

『えー!?それでいいの!?』

「要は魂がこもっていれば良いのよ」

「いや、そういう問題かよ!?」

 

兎にも角にも封印の儀が始まるとバーテックスの周囲が花びらに囲まれた。その真下に展開時間を示す漢数字が記された方陣が展開され、ヴァルゴの頭部らしき場所から核らしき四角錐が出現した。あれがバーテックスの御魂のようだ。

 

「私、行きます!!」

 

そう言って友奈は勢いよく跳んで御魂にパンチを打ち込む。しかし

 

「…かったーい!これ固すぎるよ〜!」

 

御魂は想像よりも頑強でダメージはおろかかすり傷すら入っていなかった。今度はラグナが攻撃したが

 

「あががががッ」

 

思いっきり大剣で殴った衝撃が腕に伝わって全身が震えてしまった。それでも何度も御魂にしつこく攻撃を加える。

 

「くそッ!鉄板かよこれ!」

「代わって、友奈!!死神!!」

 

風の声を聞いてラグナが退がると、風がラグナのものよりも大きいと思われる大剣で御魂を叩く。それでもまだ御魂に変化はない。倒すのに時間がどんどん過ぎていくことに風が焦りを覚える。

 

「だったらアタシの『女子力』を込めた渾身の一撃をー!!」

 

風が一度跳んでヴァルゴの頭部を蹴った後に回転しながら御魂の端に攻撃を加えると、御魂にようやくヒビが入った。しかし風はそのまま地面に落下した。

 

「お姉ちゃん!樹海が枯れて行っているよ!」

「言い忘れてた!あんまり封印に時間がかかると樹海にも悪影響が出てしまうんだった!!」

 

このままでは神樹にも現実世界にも悪影響が出る。そのときラグナが右腕を構えてその言葉を紡ごうとする。しかしその前に友奈が御魂に向かって跳躍して拳を振り絞る

 

(痛い…怖い…)

 

友奈とて少し前までは普通の女子中学生だった。戦いなんてできればやりたくない。痛いのは嫌だし、戦って死ぬことにも恐怖はある。

 

「でも…大丈夫!!!」

 

自分は風、樹、そして東郷とともに過ごす日常が好きだ。そして目の前の怪物はそれを壊す存在だ。なら戦う。今の自分は勇者。勇んで人のためになることをする者だから。友奈のパンチが御魂に命中すると、ヒビが一度大きくなった後に数秒ほどで御魂の砕ける音とともにヴァルゴは砂となって崩れていった。

 

無事に敵を倒した友奈の周りに勇者たちが集まった後、ラグナの方へ顔を向けた。

 

「協力に感謝するわ、死神」

「礼なんかいらねーよ。俺、ほとんど何もできなかったし」

「ありがとうございます、死神さん」

「ああ。お前も大変なところ、よく戦ったな」

「はい!」

「本当にありがとう、死神さん!」

「そりゃこっちのセリフだ。さっきのパンチのおかげで野郎を倒せたんだからよ」

「ううん。私の方も、東郷さんや風先輩、樹ちゃんを守ってくれてくれたから。だからその分も含めて、本当にありがとう」

「…そうか」

 

そう言われるとラグナはつい友奈から顔を背けた。キョトンとしている友奈に対してラグナは少し複雑な顔をしていた。

 

(なんか慣れねーな、こういうの…)

 

しばらくすると樹海全体から花びらが立ち始める。樹海が解ける前兆だ。

 

「じゃあな、アンタら。また会おうぜ」

「あ…あの、すいません!!」

「ん?何だよ?」

 

ラグナが立ち去ろうとすると友奈が自分に呼びかけてくるのを聞こえた。友奈は徐々に視界が見えにくくなる中、ラグナに話しかける。

 

「死神さん…貴方の名前は何ですか?」

「…ラグナだ」

「ラグナ…ラグナさんですね!私、結城友奈です!ありがとう、ラグナさん!!」

「おう。またな、ユウナ!」

 

ラグナの一言を最後に勇者たちは現実へと引き戻された。

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日、讃州中学勇者部は部室に集まっていた。改めて勇者部、いや勇者とはどういう存在であるか、そして敵であるバーテックスが何者かなどを風が説明するためだ。

 

説明が終わった後、その話に思うところがあって思わず風を糾弾した東郷は一人、部室から出て通路の方へ行った。それを追いかけて友奈も部室から退室した。

 

「東郷さん、はいこれ。私からの奢り」

「友奈ちゃん?そんな、悪いわ。私に御礼をもらうようなことなんて…」

「あるよ。だって東郷さん、私のために起こったんでしょ?」

「…何だか友奈ちゃんが眩しいわ」

 

東郷は顔を赤らめた。自分にいつも元気を与えてくれる友奈がとても尊く見えたのだろう。

 

そのあと、東郷は少しずつ話し始めた。自分が変身できないまま勇者部の足手まといになる不安。親しい者たちが傷つくかもしれないという不安。そして、それでも消えない戦いに対する恐怖。そして、あの赤コートの男について。

 

「友奈ちゃん。あの人を見たときに私が泣いていたこと、覚えてる?」

「覚えてるよ。あのときの東郷さん、いきなり泣いたからびっくりしたよー」

「私ね。あのとき、あの人を見たときになんでかは分からないけど、少し安心したの」

「安心?どうして?」

「なんでなのかは分からないわ。ただ…あの人なら、あの状況を変えられる…そんな気がしたの」

「あははッ。まるで正義のヒーローみたいだね」

 

友奈は思い出す。あの戦いでラグナが来たとき、どういうわけか自分も彼の顔がとても懐かしく感じていた。

 

「正義の味方…それなのにあの人は死神と呼ばれている…」

「東郷さん。死神じゃなくて、ラグナっていう名前らしいよ」

「らぐ…な。風先輩が彼の名を調べたの?」

「ううん、直接樹海で聞いてきた!」

「あら、それ以外の話は?」

「それ以外は特に何も」

「そう」

「でも、東郷さんがそこまで突き動かされるならその人、もしかして昔の知り合いだったりして」

「そうね…でもなぜなのか、私を見たときは凄く怒っているように見えたわ」

「あれは多分、東郷さんのことが心配だったんじゃないかな?きっと悪い人じゃないよ」

 

そんな憶測を立てていると不意に周りの時間が止まった。つまり

 

「樹海化!?」

「もう来たんだ…バーテックスが」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい…冗談でもキツイぞ…」

 

ラグナの額に嫌な汗が浮かぶ。目の前の敵は三体。それぞれは青い勾玉のサジタリウス・バーテックス、赤い海魔のキャンサー・バーテックス、尾針の長い黄色のスコーピオン・バーテックスだった。

 

「『この組み合わせ』…奴らも本気ってわけか。」

 

ラグナは右腕を見やる。前回は見知らぬ勇者たちや樹海への影響も考慮して、魔道書をほとんど使わなかったが、今回はそうはいかない可能性がある。何故なら

 

「…あの『青い野郎』。嫌なことを思い立たせやがる…」

 

自分の腕を吹き飛ばし、そしてこの戦いに本格的に参入する原因となったサジタリウスがいるからだ。ちょうどその頃、勇者たちが自分の後ろに現れたことを確認した。

 

「よう、また会ったな」

「また会ったね、ラグナさん!」

「友奈?そのラグナって何?」

「名前ですよ、風先輩。この人の名前はラグナっていうんです」

「ま、好きな方で呼べ」

「よろしくお願いします、ラグナさん。犬吠埼樹です」

「犬吠埼風よ。よろしく、ラグナ」

「よろしくな、イツキ、フウ」

 

樹の挨拶に返事をするとラグナは後ろにいる東郷の姿を捉えた。やはり勇者適正のある彼女もここへ連れてこられてしまったようだ。

 

「…お前も来たのか」

「はい…あの、貴方は」

「なんだ…」

「やはり、貴方は私を知っているんですか?」

「…」

 

ラグナは少し悩んで、その後東郷の質問に答えた。

 

「…ああ。知っている」

「!!」

「だけど、詳しくは話せねー。俺は『あいつら』と比べたらお前とはそれほど近い間柄じゃねー」

「でも!」

「ただ俺がお前について言えんのは…お前はドえらい真面目野郎で、泣き虫野郎で、」

「ちょっと待って、罵倒にしか聞こえないんだけど」

「あと…まあ良くも悪くも…好きなものはとことん好きになる、そこらへんの普通の女だ。俺が言えんのはここまでだ」

 

東郷にそう告げると、ラグナはそのまま敵の方へと歩を進めた。

 

「待って!!私も…ッ!!」

「東郷さん」

 

そういって友奈は東郷の両手を取り、東郷の目を真っすぐ見た。

 

「大丈夫だよ。あいつらをやっつけてくる!」

「お前が戦う必要はねえ。そこで待ってろ」

 

友奈とラグナがそう言葉を残すとバーテックスの方へと駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…本当に俺と戦うのか?多分危険しかねーぞ」

「いいわよ。アンタ、一応信用できるし」

「そうかよ…まあ、頼るときは頼らせてもらうぜ」

「…アンタ。本当に第一級危険人物?」

「そう呼ばれてんならそうだろ?そんなこたぁどうでもいいからアイツらを倒すぞ。できるならあの青い奴から仕留めてー」

「うん?その心は?」

「あいつは遠距離型だ。放っておいたらこっちが後ろから蜂の巣にされかねねー」

「分かったわ、じゃあみんな!行くわよ!」

 

 

犬吠埼姉妹と合流して目標を決めた後、勇者たちとラグナは東郷を置いてサジタリウスの方へと駆け出した。その前をキャンサーとスコーピオンが立ち塞がる。だがラグナは一切減速することなく、逆に技の構えに入った。

 

「カーネージシザー!!!」

 

ラグナがアラマサで二体を切り払って分断させた。そのまま一直線で向かえばサジタリウスの居場所まで着く。するとサジタリウスが口を開けて大量の矢を射出した。

 

「ッ!!…あれ?アイツ、どこ狙ってんだ?」

「ラグナさん、後ろです!!」

「なッ!?」

 

樹の声に反応してラグナは後ろを振り向くと大量の矢が降りかかってきた。すかさず樹海の陰に逃げ込むがしつこく攻撃が迫ってくる。

 

「どうして軌道が急に変わったんだ!?全然違う方向に撃っているのによ!」

「あれです!あのバーテックスの板で矢を反射してるんです!!」

「なんだと!?」

 

ラグナはキャンサーの方へと顔を向けると敵が展開した板に反射されながらこちらに向かっていた。様々な角度から不規則に反射される針の雨のせいでラグナの動きが封じられてしまった。

 

「クソッ…!!」

 

しかも逃げ込んだ場所を狙ってスコーピオンまで彼に追撃してきた。今では三体のバーテックスはラグナに対して集中的に攻撃していた。以前の戦いで勝てたのは銀の存在、そして相手がこの連携を使わせる間もなく倒したことが大きく、一人ではやはり劣勢だった。

 

「まずいわ!!精霊がいないあいつがあんな攻撃を喰らったら本当にオシマイよ!!」

「それなら、私が行きます!!」

 

友奈が拳を振り絞って攻撃の場を作っているキャンサーに迫った。だがその接近に気付いたスコーピオンが尾で友奈を吹き飛ばした。

 

『友奈(さん)!!!』

 

友奈が吹き飛ばされたことで意識がバーテックスから離れてしまった勇者たちだが、そこを他の邪魔者に気付いたキャンサーが反射板を調節させて風と樹にも矢を向けた。スコーピオンの方は友奈の方へと進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「友奈ちゃん、もうやめて!!これ以上はもう無理よ!!」

「う…東郷さん」

 

自分の方へ吹き飛ばされた友奈へ近づきながら東郷は叫ぶ。だがそこを一本の巨大な針が友奈を襲った。スコーピオンの針は友奈の腹を抉ろうと何度も攻撃する。何とか精霊である「牛鬼」が防いでくれているが、それもいつまで持つのかは分からない。もし破られれば…友奈の命はないだろう。

 

「やめろ…」

 

東郷の頭にこれまでの友奈との思いでが去来する。この街にきた初めての日に会ってから、その少女の笑顔に自分はいつも救われた。なのに自分は今、その少女の危険に対して何もできていない。もう一つ、別の記憶が写った。こちらは友奈との鮮やかな思いでと比べて、ひどく混濁したものだった。映像はモノクロでピントが合っていないようなのかぼやけて見える。時々発生する砂嵐が余計その詳細を隠している。

 

そこに見えたのは一人の少年だった。少年は地面に蹲るように倒れており、右半身はひどく傷ついていたからか、血の湖が少年の周囲にできていた。よく見ると周りにも人、小学生くらいの男女が少年を取り囲むように立っていた。声や表情は全く分からないが、泣いているように感じた。

 

「やめろ…!!」

 

このまま状況が好転しなければ友奈の運命はあの少年と同じものになるだろう。そんなことは絶対に嫌だ。自分の無力のせいで大切な親友を失うのは、嫌だ。

 

「友奈ちゃんを…虐めるなァァァァ!!!!」

 

東郷が叫ぶとスコーピオンは攻撃の矛先を彼女に向けた。だがその一撃を東郷の精霊、『青坊主』が防いだ。端末を握る東郷の手の力がさらに強まる。

 

「私…いつも友奈ちゃんに守ってもらってきた…」

「東郷さん…」

「だから今度は私が…友奈ちゃんを守る!!!」

 

東郷が端末から勇者システムを起動させる。青い光に包まれると、そこからアサガオを思わせる青い勇者服に身を包んだ東郷が出てきた。動かない足を補助するためか、頭から伸びたリボンで体を支えていた。友奈が彼女の姿に見惚れていると東郷の手からハンドガンが出現した。

 

(なんでだろう…変身したら落ち着いた。武器を手にしているから?)

 

手にした銃に目を向けているとスコーピオンが尾を振りかざして襲おうとした。だがその武器である尾針はすぐに東郷によって打ち砕かれた。

 

「もう、友奈ちゃんには手出しはさせない!!!」

 

東郷はもう一丁の銃を取り出してどんどんスコーピオンを撃つ。その猛攻で怯んだスコーピオンは少しずつ後退し始めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クッ…キリがねー!!」

「ラグナ、こっちよ!!」

 

スコーピオンが友奈の方へ進んでいる頃、ラグナたちは未だにキャンサーとサジタリウスの連携に苦しめられていた。なんとか打開策を見出そうと一旦集合を掛けた風のもとへ集まると、三人が隠れている陰に向かってバーテックスたちが攻撃してきた。

 

「まったくしつこいわね。こういう男は嫌われるから気をつけなさいラグナ」

「なんでお前に俺の男女関係をとやかく言われなきゃならねぇんだよ!?」

「モテる女の人みたいなことを言ってる場合じゃないよ、お姉ちゃん」

「そうだけどどうすりゃいいのよ、これ…」

 

風と樹がそんなことを話している間にラグナが自分の右腕を見やる。どうやら状況を改善するには、これを使うしかなさそうだ。

 

「フウ、イツキ。少し時間をくれ」

「おッ!なんかいい考えが思いついたの?」

「…とびっきりにリスキーなやつだがな」

「どういうことですか?」

「…俺がここにいる原因を使う。あんま近づくなよ」

 

するとラグナは右腕を構える。グローブについている装置が起動すると蒼い光が放たれ、同時に瘴気が手の甲に集まる。ラグナはついに、その祝詞を唱える。

 

「第666拘束機関、解放!」

 

突然の膨大なエネルギーの発生に驚く姉妹を無視してラグナは次の段階に入る。

 

「次元干渉虚数方陣、展開!!」

 

足元に封印の儀のものとは異なる巨大な方陣が出現した。そして、ラグナは右腕の力を完全に発揮するためのトリガーを引いた。

 

蒼の魔道書(ブレイブルー)、起動!!!」

 

後ろに紋章が浮かんだあと、ラグナは一度息を整えて自分の考えた策を伝えた。

 

「まずはあのカニ野郎を無力化する。俺が攻撃したらイツキ、お前のワイヤーで板ごとあいつを拘束してくれ」

「その後はどうするんですか?」

「そのまま俺とフウであいつをぶん殴って倒す!!」

「わかったわ!!その方が分かりやすいし!!」

「女子力の欠片もない作戦だけど、お姉ちゃん!!?」

 

樹はラグナの作戦に若干戸惑いをまだ覚えていたが、二人は作戦を決行した。まずラグナが木陰から出てすぐに行動に移った。

 

「デッドスパイク!!!」

 

ラグナの大剣を振り上げるとそこから巨大な怪物の頭のような衝撃波を発生させて針を意に介さずキャンサーに突っ込んだ。それを見てキャンサーは板を手前に戻して防御態勢に入った。

 

「今だ!!」

「えええいいいいいい!!!」

 

その時に後ろから樹が現れると、ワイヤーを出現させてキャンサーを拘束させて自分たちの方へとできる限り引引き摺った。身動きの取れないキャンサーをラグナと風が襲い掛かる。

 

「ナイトメアエッジ!!!沈め!!!」

「『潰滅・大和撫子斬り』!!!」

 

技が決まってキャンサーがグロッキー気味になると、傍にスコーピオンも投げ込まれていた。何事かと振り向くと友奈が手を振りながらこちらに駆けてきた。

 

「あのエビ、連れてきたよー」

「サソリではないかと…」

「…あれは!」

 

友奈が着くより少し遅れて東郷も到着した。

 

「東郷…アンタ、一緒に戦ってくれるの?」

「はい。援護は任せてください」

「心強いわ。ありがとう、東郷」

「…大丈夫なのか、お前?」

「心配をかけてすみません。もう大丈夫です。それから」

 

東郷はラグナに笑いかけながら続けた。

 

「私の名前は、東郷未森。できれば苗字で呼んでほしいわ」

「ラグナだ。背中は預けたぜ、トウゴウ!!」

「はい、ラグナさん!!」

 

二人が言葉を交わし終えると全員それぞれの敵の封印を始める。東郷がサジタリウスに牽制している内に風と友奈はキャンサー、ラグナと樹はスコーピオンを担当することになった。

 

「うおおおッ…あれ!?」

 

封印の儀で出現した御魂を攻撃しようと友奈が殴り掛かるが高速で避けられた。この御魂は攻撃を受ける直前に素早く回避するタイプのようだ。風が友奈と交代して大剣を振り下ろす。またもや逃げられたが、風の攻撃はそれだけではなかった。

 

「点の攻撃を避けられるなら…」

 

そう言いながら風が再び剣を振り上げると大剣がさらに巨大化し、横に薙いで御魂を打ち上げた。

 

「面の攻撃で…押し潰す!!!」

 

空中に上げられて無防備になった御魂を風が広くなった剣身でプレス機のように押し潰した。御魂はそのままあえなく破壊された。

 

「これで…一つ!!」

 

キャンサーを撃破したころにラグナと樹も封印を始めていた。スコーピオンの御魂は出現すると、分裂して本体を隠蔽した。最もそれはラグナと樹には全く関係のない話だった。

 

「私が一か所に集めます!!そこをラグナさんが攻撃してください!!」

「分かったぜ、イツキ!!ブラッドカイン!!!」

「全部まとめてぇー!!」

「闇に喰われろ!!!」

 

ラグナがそう叫ぶと腕から漏れ出る瘴気があの獣のような腕を形成する。みるみる腕が巨大になっていくとラグナはそれで樹が捕らえた御魂に掴みかかる。出現した分身らしき御魂を包み込むと、そのまま御魂はラグナによって握りつぶされた。

 

「これで…二つ!!」

 

ラグナがスコーピオンを撃破したことで残りはサジタリウスただ一匹となった。東郷が端末を取り出すと風に電話を掛けた。

 

「風先輩、部室では言いすぎました。ごめんなさい」

「東郷…」

「精一杯援護します!!」

「分かったわ、東郷。アタシも」

 

風が言い終える前にサジタリウスが容赦なく撃たれていく様が見えた。誰がやったのかは説明するまでもない。

 

「あ、いや…ホントスイマセンデシタ」

 

サジタリウスがやられていく様を見て風は改めて東郷の恐ろしさを再確認してしまった。そのまま封印の儀に入った。サジタリウスの御魂は口から出て体の周りを高速で旋回し始めた。だがそれを東郷は一撃で打ち抜いた。

 

「東郷さん…スゴイ」

「一発とはな…」

 

彼女の狙撃能力の高さを素直に関心するラグナと勇者部の面々だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘を終えたラグナたちは一度集合して、お互いの無事を確かめた。初めに切り出したのはラグナだ。

 

「これで全部倒せたな。お疲れさん」

「ラグナさんもお疲れ様!」

「そういえばラグナさん、あの腕…なんなんですか?」

「そうよ。あんなスゴイ切り札があるならすぐに使えばいいのに」

「…こいつは蒼の魔道書といって、かなり危険な代物でな。樹海の方をよく見ろ」

『え?』

 

ラグナに促されて少女たちが樹海に目をやる。そこには広範囲で色が少し薄まっている部分があった。そこはすべてラグナがいた場所だった。完全には枯れていないものの、樹海が弱っていることが分かる。

 

「そんな…これって!?」

「樹海が弱ってるというの!?」

「…これが俺が死神と呼ばれる原因の一つだ。この腕は周りの命に作用する。バーテックスにも、勇者にもだ。場合によっては、暴走することがある」

『!!!』

「だからできる限りこいつを切るようなマネは避けたいんだ。まあ、今回は相手が相手だから使ったが…」

 

ラグナがそう告げると樹海化が解け始める。東郷は彼にこの事実を伝えた意図を問いだした。

 

「何で…こんなことを教えたんですか?」

「どのみち神樹が俺をここに連れて来る以上、俺はあのバケモンどもと戦わなきゃならねー。そのときはお前らとも会うだろうから危険性を話さなきゃダメだろ?特にお前にはな」

「うっ」

「それにフウは大赦から来たっつーことは俺の監視も兼ねてんだろ?だったらこれは俺と共闘するときの判断材料にもなる」

「そうね…」

「東郷さん、風先輩、樹ちゃん。多分大丈夫だよ」

『友奈(ちゃん)?』

 

ラグナから告げられた事実で勇者部に暗い雰囲気が立ち始めたがそれを払拭するかのように友奈が言う。

 

「ラグナさんは…信頼できる。バーテックスとの戦闘でも、東郷さんのことでも、ラグナさんはいつだって必死だったもん。できる限り前に出て戦いに慣れていない私たちを庇おうとしたし、東郷さんのことも…戦いから遠ざけようとした」

「友奈ちゃん…」

「友奈…」

「友奈さん…」

「それに東郷さんが来たときのラグナさんの顔、ちょっと不安そうだったよ」

「…」

「だから、やっぱり悪い人じゃないよ」

「お前、とんでもねえお人好しだろ。こんな話を聞いて、俺を危険だとは思わねーのか?」

「だってラグナさん、なんだかんだ良い人ですし」

「…なんだかんだは余計だ、ったく」

 

曇りのない目で言われたものだからラグナはまた返答に困った。しばらくすると樹海に花びらが舞い上がる。

 

「もう時間か…次に会うのも時間が経ってからだろうよ。またな」

「またね~」

「じゃあねー」

『さようなら』

 

樹海全体が光に包まれると彼女たちと別れを告げたラグナは小さく笑いながら丸亀城へ戻る。少しおかしな、しかし一緒にいて悪い気のしない連中と次に会う日を楽しみに思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラグナ。貴方、次の月曜から讃州中学に通うから」

「いきなりすぎんだろ、ウサギぃ!!!!!」

 




いかがだったでしょうか?
なんか長兄と長姉が脳筋思考のように見えるけど大丈夫かな?まあ、ラグナは細かく考えるタイプじゃないし、風先輩は女子力云々の話の時点でまあ、ねえ…

サジタリウスはすっかりラグナの苦手バーテックスになっちゃった。いつかリベンジができるといいな


さて次回はオリジナルの日常話。ラグナ、転校する。お楽しみに

それではまた
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