蒼の男は死神である   作:勝石

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どうも勝石です。
新しい感想を書いてくれた方、ありがとうございます。
今回の話でラグナは讃州中学に入学するわけですが、彼は溶け込めるだろうか。
それではどうぞ。


Rebel19.死神、転校する

「えー、転校生を紹介します。お名前をどうぞ」

「…綾月洛奈。ラグナと呼んでくれ」

「ありがとうございます、綾月さん。他に質問は?」

「はい!」

「何だ?」

「好きなものは何ですか?」

「天玉うどん」

「はい!」

「どうぞ」

「嫌いなものは?」

「大…じゃなくて図書館」

「図書館?本が嫌いなんですか?」

「まあ…いい思い出はないな」

 

ラグナは讃州中学校二年生の教室で質問攻めされていた。なぜ彼がこんな状況に陥っているのか。その原因は先日のレイチェルの一言が発端だった。

 

『ラグナ。貴方、次の月曜から讃州中学に通うから』

 

初めの戦闘の後に勇者たちが讃州中学の所属していることと東郷の件を聞いたレイチェルがどうやら大赦とかけ合って彼が転校できるように手続きを済ませたようだ。因みに事態が混乱する可能性を考慮して東郷に自分が元勇者だったことを明かさないようにと言われた。

 

(早く終わってくんねーかな…)

 

ラグナが転校生の洗礼にウンザリしていると、先生がストップをかけて彼の席を指定した。場所は窓際の二番目後ろの位置だった。目立ちにくい席を手に入れたラグナは心の中で密かにガッツポーズをとるのであった。

 

「それでは新しく一緒に学ぶ仲間を迎えたことですし、今日も朝の会を始めましょう。日直の東郷さん、お願いします」

「はい。起立」

 

東郷の声に合わせて生徒が全員席から立つ。

 

「礼。神樹様に、拝」

 

前方に一礼した後、生徒たちは次に神樹様がいる方向を示す神棚に向かって拝んだ。これがこの世界の学校の一般的な一日の始まりだ。朝の会が終わると担任は連絡事項を告げて自分の授業のある教室へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業が終わるとラグナは友奈たちに勇者部の部室へ向かっていた。彼女たちによると自分たちが風にラグナの転校を伝えると連れてくるように言われたからである。特にすることもないし、ラグナは彼女たちに付き合うことにした。

 

「それにしてもびっくりしたよー。今日転校生が来るって聞いたから誰だろうって東郷さんと話していたらラグナさんがきたんだもん」

「まさか同年代だったなんて思わなかったわ」

「俺はウサギにいきなり転校の件を言われたことの方がびっくりしたよ…」

「ウサギ?」

「一応、今の保護者だ。シルエットがウサギっぽいからウサギって呼んでいる」

「そうなんだー、いつか会ってみたいな~」

 

友奈たちとそんな話をしていると三人は部室に着いた。扉を開けると風と樹がすでに中で待っていた。

 

「おぉ~、本当にあのラグナだわ。友奈、東郷。ご苦労」

「結城友奈!ラグナさんを無事、部室に連れてきました!」

「いや、無事っつーか何に襲われるんだよ?」

「え~と、バーテックス?」

「縁起でもねーよ!!」

「おやおやぁ、もう仲良くなったのかなぁ?」

「まあ、ユウナはなんか話しやすいっつーか…あんま壁を感じねーし」

「まあなんでもいいわ。ちょっと準備があるから待ってて」

「分かりました」

「おう」

 

風が一度部室の奥へ行くと、樹がさっそくラグナの分の席を用意し、東郷は茶菓子を用意し始めた。ラグナに部室のあれこれは友奈が説明してくれた。

 

「それでね、これは幼稚園で劇をした後に撮った写真なんだ」

「へー、そんなこともしてんのか。この部」

「ラグナさんはなにか部活とかクラブに入ってたの?」

「俺は入ったことないな。帰ったら師匠と修行三昧だったし」

「え?ラグナさん、何かの特訓をしているの?」

「まあ、右腕の制御と剣じゅ…!!?」

「?どうしたの、ラグナさん」

 

友奈は突然言葉を切ったラグナの様子を聞いた。ラグナは自身を射抜く視線が感じる方向へチラッと見る。そこにはこちらを見ながら優しく微笑む東郷だった。

 

「…」

(怖えぇぇぇぇ!!!なんであの笑顔からあんな殺気を感じるんだ!!?ニューとジン並じゃねーか!!)

「ラグナさん、大丈夫?転校初日で疲れたなら保健室へ案内するけど?」

「だ、大丈夫だ!!というかそんなことしたら俺は保健室行きから病院送りにランクアップしちまう気がする!!」

「???」

「どうぞぼた餅です、綾月さん」

「お、おう」

 

ちょっと会わない間に彼女の身にいったい何があったというんだと頭を抱えるラグナ。自分が知る彼女は若干暴走するところはあったものの、それ以外は至って普通の女の子である。断じてあんな女版ジン=キサラギではない。そんなラグナの狼狽する理由が分からない友奈はポカンとしていた。樹はというと趣味のタロット占いをしていた。

 

「あ、樹ちゃん。何を占っているの?」

「いえ、ちょっと練習していただけですよ」

「占い?イツキはそんなことができるのか?」

「ええ。しかも樹ちゃんの占いは良く当たると評判よ」

「そりゃすげーな。なんだったらなんか占ってくれよ」

「ではラグナさんについてスリースプレッド占いで占いましょう」

 

樹が占いを行ってカードを3枚めくると左から順に出てきたのは皇帝、死神、そして審判のカードが出てきた。

 

「1枚メチャクチャ不吉なカードがあるんですけどー!!?」

「だ、大丈夫ですよ!中心の死神は逆位置ですので、新しいことの始まりとか転換が起こるということなんですよ」

「そ、そうなのか。まあ確かに転校したからな」

「あと皇帝の正位置が出ました。左側にあるということは過去ですね。ラグナさん、実は兄弟の中でもお兄さんだったりします?」

「!!ああ。弟と妹、一人ずついる」

「通りで他の人より大人っぽいと思ったよー」

「それにしてもスゴイわ、樹ちゃん。綾月さんの過去をあっという間に暴くなんて」

「そ、そんなことありませんよ」

「いや、正直ここまで当たるとは思わなかったぞ。こりゃ神樹よりイツキを拝んだ方がいいんじゃねーのか?」

「いいわねそれ」

「ちょ、ちょっとやめてよ二人とも!恥ずかしい!」

 

樹の占いの的中率を素直に感心するラグナが最後のカードについて聞いた。

 

「なあイツキ、この最後のやつはなんだよ?」

「これは審判のカードです。正位置の意味は復活や再開ですよ。もしかしたらラグナさんはこれから知り合いに会うかもしれませんね」

「…そうか」

「あれ、ラグナさん?昔の知り合いと喧嘩したの?」

「そんなことねーよ。お前が心配しているようなことは起こってねー」

「それなら良かった」

 

最後の結果を聞いた自分を心配した友奈にラグナは自身の平常を述べる。だが内心では少し複雑だった。そりゃ刃や沙耶、園子や銀には顔を見せたいが今の自分の立場上、自分からはそれができない。つまり相手が自分から会に来る可能性があるということだ。それは場合によっては樹海の中かもしれない。だがこれは芹佳が目を覚ます可能性も示しているかもしれない。それなら誰も被害には合わない、万々歳だ。

 

「ま、なるようになれだ。来た時に向かい打てばいい」

「結構一直線な人ですね」

「お~い、アンタら。そろそろ集合して~」

『はーい』

「おう」

 

風に呼ばれて四人は部屋の奥に集まった。今日はラグナが初めて来たことと依頼が今きていないことから、今日はかめやで歓迎会をやろうという話になった。そうしていると友奈の端末から精霊が出現した。

 

「おいユウナ。お前の精霊が勝手に出てきているぞ」

「うん。この子、牛鬼っていうんだけど外にいる方が好きなんだ」

「そうなのか…ん?」

 

ラグナが気づくと牛鬼は自分の周りを旋回していた。まるで興味深いものを見ているかのようだ。

 

「珍しいわね。精霊が主以外に興味を示すなんて」

「じゃあせっかくだし私たちもだそうよ、お姉ちゃん」

 

そう言って風たちも自分たちの精霊を出した。風の端末からずんぐりした犬の「狗神」、樹の端末からはモフモフした毛玉の「木霊」、そして東郷の端末からは以前の青坊主とさらに和装の狸、「刑部狸」と青い火の玉である「不知火」が出てきた。

 

「うおぅ、こんなにいるんだな…」

 

ラグナが近づこうとすると、精霊たちは自分たちの主の後ろに隠れたり、威嚇し始めた。以前の経験からこうなることは若干予感はしていたが、改めてやられると何とも言えない気持ちになった。

 

「どうして精霊は綾月さんを警戒するのかしら?」

「多分この右腕だろ?こいつは精霊にも作用するから俺が近くにいていい気がしないんだろ」

「そうですか…でもそれならおかしいわ。牛鬼はかなり懐いているように見えるのに」

「俺も分からねーんだよ。まあ、悪い気がしないが」

 

ラグナがそう言って頭に乗っている牛鬼に目をやる。しばらくこのまま好きにさせよう。だがそれは別の悲劇を生んだ。牛鬼が幸せそうにラグナの頭にしがみついていると

 

ガブッ

 

ラグナの頭にかじりつき始めた。

 

「うああああああ!!!?何してんだテメエぇぇぇぇ!!!!」

「あー!!牛鬼、ペッだよ、ペッ!!ラグナさんの頭を食べちゃダメだよ!!!」

「友奈ちゃん、ビーフジャーキーよ!!」

「ありがとう東郷さん!!ほらほら牛鬼~。ビーフジャーキーだよ~。ラグナさんの頭よりこっちの方が美味しいよ~」

「そんなもんで釣られるわけ…」

 

友奈が持ってきたビーフジャーキーを見ると牛鬼はラグナの頭から離れてそっちの方へ向かった。

 

「あったァァァァ!!?」

「よ~しよし。だめだよ牛鬼。人の頭をかじっちゃ」

「大丈夫ですか、ラグナさん?」

「心配すんなイツキ。これくらいなんてこたぁねえ」

「頭がベトベトよ。はい、手拭い」

「済まねえ、トウゴウ」

 

ラグナが東郷からタオルを受け取ると頭を拭いた。どうやら牛鬼も自分のことを警戒しているようだ。気のせいか顔の表情が少し残念そうに見えなくもないが恐らく嫌われているだろう。

 

「ごめんなさい、ラグナさん!この子、ちょっと自由な子で!」

「いや、気にすんなユウナ…お前が気に病むことじゃねー」

「と、とりあえずかめやへ出発しようか…」

『お、お~』

 

風が上手く話題をそらしたこともあってラグナたちはそのままかめやへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ~、やっぱ一日の終わりはうどんに限るわね~。おかわり!!」

「お姉ちゃん、それもう4杯目だよ」

「相変わらず風先輩はうどんをよく食べますねー」

「いや、食いすぎだろ」

 

かめやに着いた勇者部一同はそこでうどんを食べながら自分たちの活動について話し合っていた。ラグナがいつもの天玉を食べている間に風は実に4杯目のうどんを食し始めている。いつもの光景だからあまり気にしていなかったほかの部員だが、ラグナはさすがに驚いていた。そんな彼も2杯目に突入しようとしていたが。

 

「いいのよ。うどんは女子力を上げる完全食だからいくら食べても大丈夫なのよ」

「そういえばこの前の戦闘でもいってたな。その女子力ってなんだよ?」

「良い女が持つパワーよ!」

「ごめん、全く分かんねーや。具体的にどういうやつのことだ?」

「そうね、一番わかりやすいのは東郷かしら?あとアタシ」

「トウゴウとお前?」

 

ラグナはそういって東郷と風を交互に何度も見比べた。流石に何度も男であるラグナに見られて東郷は少し恥ずかしがる。しばらくするとラグナは悩んだ末に答えをだした。

 

「…違いすぎて分からん」

「もう。要は家事ができて品格があり、強く美しい女が持つパワーよ」

「二人が強くて別嬪なのは認めるけど、4杯もうどんをガンガンおかわりするやつに品格言われても説得力ねーよ」

「なにおう、こいつめ!」

「おい!頭グリグリしてんじゃねー!」

 

ラグナが風を追い払ったあと、2杯目の天玉に手を付けた。しばらくすると勇者たちがラグナに呼びかける。

 

『ラグナさん』「ラグナ」「綾月さん」

「なんだ?」

『ようこそ、勇者部へ!!!』

「…ああ、よろしくな」

 

あと、とラグナは言葉を続けた。

 

「『さん』はいらねーぞ。肌に合わねーし、そもそもほとんど同じ年だろ」

「じゃあよろしくね、ラグナ君!」

「これからもよろしくね、綾月君」

「よろしく頼むわ、ラグナ」

「よろしくお願いします、ラグナ先輩」

「おう、これからもよろしくな」

「じゃあラグナの入部を祝して乾杯!」

『乾杯~!』

 

風の号令に合わせてラグナを含めた勇者部は乾杯した。話題はラグナについての話になった。

 

「そういえばラグナ君には弟妹がいるんだよね?どんな人たちなの?」

「ああ、今はちょっと事情で大赦で働いているはずだ」

「あら?じゃあアタシも会ったかも知れないわね」

「なんていう名前ですか?」

「ああ、名前は弟がジン、妹がサヤだ」

「ジン…ですか」

「ブッ!!?」

 

自分の弟妹の名前が出た瞬間、風が食べていたうどんを思わず噴き出した。普段の部長とは異なる様子に他の勇者部部員は驚きを隠せない。

 

「風先輩!?何があったんですか!?」

「大変!テーブルが!」

「おいフウ!!あいつらがどうかしたのか!?」

「いや、アンタ嘘でしょ!!?『あの』如月大尉のお兄さんなの!!?」

「お姉ちゃん、その人がどうかしたの?」

「大赦に所属している衛士の中でもかなり腕の立つやつだと聞いているわ。何度か見たことあるけど滅茶苦茶怖そうな人だった」

「ラグナ君もちょっと見た目は誤解されそうだけどそんなことなかったじゃないですか?」

「いや、見た目だけならかなりの美男子よ。ただ雰囲気がね、ものすごく冷たかったのよ」

「まあ…あいつはそこまで大赦のことは好きじゃねーしな。ここ最近全く会ってねーけど、とりあえず元気だったのか?」

「まあ、病気の話とかは聞いたことがないわね」

「ならよかった」

 

風から弟の調子を聞けて一安心すると、ラグナは二人の弟妹に思いをはせていた。

 

(あいつら…今何してんだろうな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ついに…私の出番のようね」

 

一人の少女が浜辺で木刀を手に取りながら端末を見ていた。そこには大赦からのメッセージが表示されており、その旨は自分が戦う日時を示していた。この日のために努力してきた。過酷な競争を勝ち抜き、厳しい教官のもとでしごかれて来た。訓練も食事調整にも気を付けた。そしてこの日から自分は…勇者として戦う。

 

「見せてあげるわ…この『完成型勇者』…『三好夏凜(みよし かりん)』の力を!!!」

「何を騒いでいる。喧しいぞ」

「ちょッ!『教官』!アンタなんで人の後ろにいるのよ!!」

「気づかない貴様が悪いだろ。僕の気配ぐらいはつかめるようになれ」

「へー…それは悪うございました…ね!!」

 

そういって少女、花凜は端末を宙に投げて突然少年に木刀を振るった。少年は腰の刀を手に取って鞘に収めたまま夏凜の一撃をはじき返した。攻撃をいなされた夏凜はその後も4、5回打ち合った後に素早くバックステップして体勢を整える。それに対して動かない少年は涼しい顔しながら夏凜を見据えている。

 

「…相変わらず隙を見せないわね」

「あの程度で隙など見せるか」

 

落ちてきたスマホをキャッチした夏凜が木刀を下すと「教官」と呼ばれた少年は言葉を続けた。

 

「大赦から連絡が来た。貴様と同日に僕も行くことが許可された」

「へー、あの教官が私の心配をするなんてね。明日は嵐かしら?」

「貴様のためのわけがあるか。僕の目的は…死神だ」

「え、なんで!?大赦がマークしているっていう第一級危険人物でしょ!?」

「だからこそだ。死神がいる以上、僕も向かう」

「そう…ならいいわ」

 

そういって花凜は陸の方へと向かった。夏凜は少年と別れの言葉を交わした。

 

「それじゃ、よろしく頼むわね。教官」

「もう僕は貴様の教官ではない。その呼び方を使うなら『大尉』だ」

「わかったわよ。それならさようなら、『如月大尉』」

 

夏凜が去った後、少年、如月刃は水平線をみる。その顔に浮かんでいたのは決意の眼差しか。

 

「…ようやくこのときがきたね」

 

否。刃の顔に浮かんでいたのは狂気的な笑みだ。先ほどの冷徹な表情とは正反対の熱い炎に満ちた瞳が壁をみる。

 

「大赦の老人どものせいで会えなくなったけど、ようやく黙らせることができた。これでやっと会える。そしてまたあの獣になったら…僕が斬ってあげる…!『兄さん』を『殺して』いいのは…僕だけだ!!!」

 

刃の周りが凍り付き始める。彼の刀から発生する冷気が原因だ。そうして刃は月夜に向かって一人呟く。

 

「だから待っててね…死神(にぃさぁん)…」




いかがだったでしょうか?

終盤のシーンにLust Sinを聞きながら読むと雰囲気がよりそれっぽくなると思います。

さーて勇者部のやべーやつとブレイブルーのやべーやつが登場しましたが、これラグナに気の休む場所があるだろうか?それにしてもホントヤンデレに縁がありますね、この主人公。バーテックス以上に身内が怖い。

さて次回はにぼっしーこと三好花凜とやばいブラコンの如月刃が合流!教官の刃の豹変に対して花凜(と勇者部)の反応や如何に?

それではまた
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