蒼の男は死神である   作:勝石

32 / 133
どうも勝石です。

たとえ話が難産になっても主要キャラのBGMとか聞くとやっぱ閃くものかなーと思うこのごろです。ここ最近は余りテレビでアニメとか見なくなったけどみんなはどうなのかな?

今回の話で犬吠埼姉妹がテイガーと遭遇!!果たしてどうなるのか?

The Wheel of fate is turning…Rebel…1…Action!!


Rebel24.第七機関

犬吠埼姉妹は狭い路地裏などを走り抜いていた。理由は先刻に遭遇した巨大な鬼から逃げるためだ。どうやら鬼の目的は自分たち、勇者のようだった。

 

「樹、大丈夫!?」

「はぁ…はぁ…大丈夫だよ…」

 

樹はそういうがその顔には疲れが見え始めている。このままではいつ鬼に追いつかれてもおかしくはない。風は悩む。どうすればあの鬼を追い払えるのか。どうして鬼は自分たちを追うのか。それがわからなかった。

 

(そういえばアイツ、『第七機関』とか言ったわね…そんな部署、大赦にあったかしら?)

「お姉ちゃん、どこに向かっているの!?」

「人の多いとこ!そこならアイツだって来れないはずよ!!」

 

2人が路地を走っていると、大通りへと繋がる道を見つけた。そこへ2人は迷わず向かった。

 

「良し!ここなら…って」

「嘘…誰もいない?」

 

せっかくの広場には誰もいなかった。この異常事態に風は焦る。普段ならばこの大通りにはまだ買い物をしている主婦や学校帰りの子供がいるはずだ。

 

「流石は九重だ。座標を示してからこれだけ早く人避けの結界を張るとは」

 

後ろから衝撃とともに鬼、テイガーの声が耳に入ってきた。最早どうしようもなくなってしまった風は端末へ手を取る。しかしそれを読んでいたのか、テイガーは腕の電気を放出した。すると風、そして樹の端末までもが彼の方へ引き寄せられてしまった。

 

「そんな!!」

「ここで変身されてしまっては敵わんのでな。悪いがそれは使わせんぞ」

「くっ!!」

「もう一度言う。我々には君たちと敵対する意思はない。此方の要求に従ってくれれば危害を加えるつもりもない」

「…目的はなんなの?」

「君たちの勇者システムなどについて話がある」

「…アンタたち、大赦の関係者じゃないわね。こんなデカイ図体しているやつがいたら嫌でも覚えているはずよ」

「生憎ながら『元』大赦関係者だ。『2年前』に瀕死になったところを助けられて以降は抜けたがな」

「アタシだけならともかくこの娘には手を出さないで。それなら話を聞くわ」

「ダメだ。妹さんと同伴で、と上司からの御達しだ」

「そう…ならアタシの答えはノーよ!!」

 

そう言って風は樹の前に出た。対するテイガーも仕方なく戦闘態勢に入る。

 

「…悪く思うなよ」

 

テイガーは腕から発生される磁力の力をさらに強くした。するとありとあらゆる金属が彼の元へ引き寄せられていった。どんどん風たちも引き寄せられ始めた。

 

「これって!?」

「残念だが君たちは力づくで連れていく。転送の準備をしてくれ、九重」

『分かった。そっちのじゃじゃ馬娘どもは任せたぞ、テイガー』

 

九重と呼ばれた上司らしき人物との意味深な会話が鬼の方から聞くと、風は樹の腕を捕まえて辛うじて道路標識に掴まった。それでもいつ引き剥がされるか分からない。それが分かったのか、テイガーが姉妹に近づいてきた。そこへ鎌の一閃が何処からか飛んできた。

 

「ブラッドサイズ!!!」

「なっ!?『スレッジハンマー』!!!」

 

鎌の一撃を咄嗟に鋼鉄の腕で弾くテイガー。ダメージは負わなかったが、これで磁力は解除されてしまった。鎌を持った男は風たちの前に着地すると剣を彼に向けながら2人の無事を確かめた。

 

「ウサギがテメェらがピンチだっつーから来たけど…テメェら。エライのに目ぇ付けられたな。何したんだよ」

「知らないわよ!!いきなり連れて行きたいとか言って断ったらアタシたちを追いかけてきたのよ!」

「そうかよ…にしても」

 

赤コートの男、ラグナはテイガーの方へ振り向いた。

 

「まさか、第七機関の『赤鬼』まで『ここ』にいるとはな…」

「ラグナ先輩…知り合いなんですか?」

「『こっち』の赤鬼は知らねーが…もう1人は知っているぜ…オラ、出てこいよ。どうせ見てるんだろ、『ココノエ』!!」

 

ラグナの声に反応してテイガーの前にスクリーンが出現した。そこからは眼鏡をかけたピンク髪の女性が映ってきた。女性は何かを口に加えており、目の下は酷いクマができていた。如何にもイライラしてます、と言わんばかりの顔つきでこちらを睨んでいると遂にその口が開いた。

 

『久しぶりだな、ラグナ。ここ最近は見ていなかったが、随分とデカくなったじゃないか』

「そう言うテメェは相変わらず研究づくしかよ」

『黙れ。お前に私の生き方をとやかく言われる筋合いはない』

 

風と樹は混乱した。いがみ合ってはいるが、話の限りでは九重と呼ばれた女性とラグナの間には浅からぬ縁があるようだ。

 

「こいつもアンタの知り合いなの!?」

『知り合いどころか、そこのバカは私の義理の従弟だ』

「おい!バカは余計だろーが!!」

 

まさかの家族だったことに驚きを隠せない姉妹。この男は後どのくらいの濃い知り合いがいるというんだ。

 

「ッチ!ンなことは今どうでもいい!おいココノエ、こいつらになんの用だ!」

『もうそいつらにはテイガーが説明したはずだが』

「はい、なんでも勇者システムについて話があるって」

「…だったら今ここでしろ。ワザワザ連れて行く必要はねーだろ」

『馬鹿者。こっちに『そのポンコツ』を持って来なければ見ることもできない上に、改造した後に機能の説明もしなければならないだろ?これでも親切心で連れて行こうとしているんだ。それが嫌なら最悪、端末だけ拝借すればいいだけだからな』

「アンタね!その勇者システムには何重もセキュリティが掛かっていて誰だろうと外からいじることなんて」

『私は元とはいえ、その何重もセキュリティが掛かったシステムの開発者様だが、何か?』

「うそーん…」

 

まさかの勇者システム開発者本人に召集されていたなんて夢にも思わなかった風はただ呆然とするしかなかった。九重はまだ話を続けた。

 

『最もそいつには重大な『欠点』があるがな。だから他の武装を開発したいところだが大赦のジジイどもめ…もっと勇者システムを強力にしろとか、バーテックスを鎮花の儀も満開も無しで倒せるようにしろとか…クソッ!こっちはこっちで色々忙しいというのに!!そこまで『勇者』に拘るか、あのバカどもは!!』

「他の武装って…まさかアークエネミーの事か?」

『それもあるが、いつまで経っても不安定な精霊の力なんぞに頼れるか。私が今手に付けているのは完全な科学技術で神樹の力を行使できるものだ』

「…そいつはまさか」

『そうだ。『模倣事象兵器』だ。勇者システムの開発に携わっていた合間にプロトタイプだけでも作っていたが、大赦から離れて以降は本格的に取り組むようになった』

 

そして、と九重は更に自身の研究について話す。

 

『それらの研究と勇者システムを組み合わせることでとうとう勇者システムに匹敵するシロモノを開発することに成功した。精霊は使わないからバリアは張れんが瞬間火力なら満開にも遅れは取らん』

「そんな強力なものを…」

『そんな時にお前たち勇者が再び活動するようになったと聞いてな。どんな連中かを知る為、テイガーにお前たちを監視するように仕向けたんだ』

 

九重の話によると大分前から自分たちはテイガーを経由して彼女に目をつけられていたらしい。

 

「それでココノエ、テメェの目的は何だ?」

『今開発している新武装完成のためにお前たちの勇者システムに記録された戦闘データをもらう。ついでにお前たちの生体データもな。そして奴らを…バーテックスを殲滅する。心配するな。少し体のあちこちをスキャンしたり、生体組織のサンプルを採取したりするだけで体を改造するつもりはない』

「何でそこで体の改造の話が出てくるのかアタシが聞きたいわ!ていうか本当の目的、後半の方だよね!!」

 

どう聞いても九重の提案は穏やかなものではなかった。このままでは自分たちは訳もわからずに身体中を調べ尽くされるかもしれない。

 

『さあ、どうする?今なら私もテイガーも荒事をせずに済むのだが』

「そんなもの決まったんでしょ!アンタのようなマッドサイエンティストのところへは行かないわ!!」

『まあ、そうくるだろうな。テイガー、遠慮はいらん。勇者を回収しろ。邪魔をするなら死神は片付けておけ』

「いいのか、九重?義理とはいえ死神はお前の従弟だろ?」

『遠慮するな。そいつは生命力だけならバーテックスをも凌ぐようなやつだ。多少荒く扱っても死なん』

「それもそうか。何せあの最強の魔道書、『蒼の魔道書』を持っているからな」

 

しかしテイガーのその言葉に対する九重の返答に姉妹は驚く。

 

『『最強』だと?笑わせるな。あんな『最弱』の『欠陥』魔道書など大したものではない』

「嘘っ!?」

「最…弱!?」

 

風も樹もラグナの魔道書の力を知っている。その力が開放された時の威圧感も、樹海に悪影響を与えたあの光景も覚えている。それにも関わらず画面に映っているこの女ははっきりと弱いと言い切ったのだ。

 

「…テメェ、やっぱこいつがどういうもんなのかを知っているようだな」

『ほお、お前にしては冷静じゃないか。もっと怒るかと思っていたぞ』

「こいつが最弱なのは使うのに明確な欠点があることと弱点があるからだろ?それくらいなら知っている」

『流石は蒼の魔道書に選ばれただけはあるか…これ以上は語るつもりはない。やれ、テイガー』

「了解した」

 

九重が通信を切った後、テイガーはラグナと対峙する。2人の体格差は一目瞭然。睨み合いの末に動いたのはラグナだ。

 

「行くぜ、赤鬼!!ガントレットハーデス!!!」

 

飛びかかるラグナを見ても動じないテイガーは腕から再び磁力を発生させ、ラグナを空中で掴んだ。もがくラグナはそのまま地面に叩きつけられた。

 

「『アトミックコレダー』!!!」

「ぐあああっ!!?」

『ラグナ(先輩)!!!』

 

一撃でラグナは意識が飛びかけてしまった。何とか平常に戻るとなんと今度はテイガーが今にも自分にのしかかろうとしていた。

 

「『グレンパニッシュ』!!!」

 

すぐさま後ろへ躱したラグナがいた場所にテイガーが落下してきた。あまりの重量からか地震が起こったかのようだ。起き上がろうとするテイガーにラグナは容赦なく大剣で攻撃する。

 

「うおおおっ!!!」

 

何度も剣を打ち付ける。凄まじい猛攻にテイガーも反撃することもできなかった。最後にラグナは大技で鬼を吹き飛ばす。

 

「カーネージシザー!!!」

「ぬおっ!」

 

ラグナの技でテイガーは店の一つと激突した。今のは相当なダメージだっただろう。しかしそれでもラグナは安心できなかった。先ほどのラッシュでも今の攻撃でも自分は鉄柱を殴っている感覚で、体力が削られていっているのは寧ろ自分の方のように感じた。事実、テイガーを吹き飛ばした後、あまりの重みで腕が震えている。

 

しかし息を吐く余裕もない。次の瞬間、瓦礫の中から光弾がラグナに向かって放たれた。咄嗟に剣で防御したが、そのままラグナは吹き飛ばされた。

 

「『スパークボルト』!!!」

「ぐはっ!」

 

瓦礫の山から出現したテイガーは土埃などが掛かっていても、外傷はほとんど無かった。しかも全く疲れている様子も見せていない。相手のタフさは知ってはいるものの、これには流石のラグナも舌打ちをせざるを得なかった。

 

「どうした、それでも第一級危険人物か?」

「クソがッ!相変わらず半端ねー硬さだ!体、何でできてんだよ!!」

「悪いがここまでだ。もう逃れられんぞ」

 

そう言ってテイガーは磁力を発生させる。するとラグナは先ほど風たちよりも簡単に引き寄せられてしまった。そのままラグナが掴まれるとテイガーは大きく跳躍した。

 

「まさか…あの高さから落とすつもり!?」

「もうやめて下さい!!ラグナ先輩が死んでしまいます!!」

「『ギガンティックテイガー…』」

 

テイガーは重力に従ってラグナを持ったまま落下してきた。この攻撃が決まればラグナは無事では済まないだろう。誰もがそう思う時だった。

 

「勇者…アッパーーー!!!」

 

乱入してきた友奈がテイガーの顔面に渾身のアッパーを決めたのだ。手甲はほとんど砕けたが、怯んだテイガーから端末とラグナを奪い取ることができた。

 

「ラグナ君、しっかりして!!!」

「ゲホッ、ゴホッ…ユウナ、テメェ…」

「良かった、生きてる…風先輩、樹ちゃん!!怪我はないですか!?」

「友奈!!?」

「友奈さん…友奈ざーーん!!」

「樹ちゃん、もう大丈夫だよ。みんな来てくれたから」

 

よく見ると友奈の後ろから東郷、夏凜、そして刃までもが駆けつけていた。新手の出現にテイガーも九重に通信を取る。

 

「済まない、九重。こちらの分が悪くなった」

『何があった』

「増援だ。中には大橋の英雄もいる」

『刃もいるのか…しかもあれは『歴代最高』の勇者適性を持つ結城友奈…やつ1人ならともかく、これ以上やるのは面倒か。テイガー、転送を開始する。準備しろ』

「了解した」

「誰なんですか!!風先輩たちにこれ以上酷いことをするなら私が相手だよ!!」

「それ以上近づかないで。蜂の巣にするわ」

「アンタ、こんなことしといてタダでも済むなんて思ってないでしょうね…」

「その顔…噂に聞いた第七機関の赤鬼か。貴様、楽には殺さんぞ…!!!」

 

怒り心頭の友奈たちを無視して、テイガーの周りに黒い光が発生し、鬼の体は消失した。取り敢えず一難は去ったようだ。戦闘態勢を解いた友奈たちはすぐに風たちの元へ駆けつけた。

 

「アンタたち、どうしてここに来れたのよ?」

「それは私が呼んだからよ」

 

虚空から声が聞こえるとレイチェルが転移してきた。レイチェルはラグナの元へ寄ると彼の顔元へしゃがんで近づいた。

 

「情けない姿ね、ラグナ。それでも死神なの?」

「うるせー…今日は偶々調子が悪かったんだよ…」

「全く…あれだけ叩きのめされたのにまだ息があるなんて大したものね。ゴキブリ並のしぶとさではなくて?」

「喧嘩なら買うぜ、ウサギ…」

「…その様子なら問題なさそうね。貴女たちは?」

「あいてて…手がちょっと切れたみたい。あの人、最初に戦ったバーテックスよりも硬かったなー」

「友奈ちゃん、怪我したの!?」

「心配しないで東郷さん。あとで絆創膏を貼れば問題ないよ」

「アタシなら問題ないわ。樹、アンタは?」

「大丈夫だよ。でもあの人たちは一体…」

 

樹の疑問にレイチェルは答えた。

 

「あの2人は『第七機関』に所属している赤鬼さんと九重博士。貴女たちが使っている勇者システムを開発したのも九重よ」

「そうだったのね…でもそれならなんで風たちを襲ったのかしら?」

「あの子は今樹海で使用できる勇者システム以外の武装の開発を主に研究しているわ。そのためのデータを得るために貴女たちのシステムを手に入れようとしたのでしょう」

 

レイチェルは空に顔を向けて呟く。

 

「まだ母のことを引きずっているのかしらね…あの娘」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらテイガー。今帰還した」

「ご苦労。世話をかけたな」

 

テイガーが九重のラボへ戻ると九重が出迎えた。普段はテイガーの腕の器具やエネルギーの補給を行うためだ。だが今回はそれに加えて別の手間が必要だった。

 

「済まないが九重。頭部の損傷が些か他の箇所よりも大きい。修理するならこちらも頼む」

「結城友奈にやられた部分か…まさかこれほどとはな…」

 

九重が2年前、当時の持てる技術の全てを使って蘇生し、改造したのがこのテイガーだ。少なくても頑強さには誰にも負けない自信はあった。だが上には上がいたようだ。

 

「やはりあの『名前』をつけられた少女なだけはあるな。こちらでモニタリングしていた時の数値も他のものよりも段違いに大きいものだった」

「勇者システムの奪取はどうする?」

「諦めるつもりはない。だが…お前が結城友奈と戦ったおかげでそうしなくても良くなる可能性はある」

「それはどういうことだ?」

「お前がやつと戦った時の映像データから分析すればやつの身体情報もある程度分かる。あとは…ん?おい、ちょっと待て」

 

九重がテイガーの顔の横を見る。よく見ると血が付着した破片が付いていたようだ。それをみて九重は少し悪い笑顔を浮かべた。

 

「テイガー、どうやらもう勇者システムを取る必要は無くなったみたいだぞ」

「ん?なにかあったのか?」

「あったさ、超ド級のデータがお前の顔にな。どうやらお前を攻撃した時についたんだろうよ。何はともあれ、でかしたぞテイガー!!」

「そうか。なら私は休もう。『あの子』が来たら今私は休息を取っていると伝えてくれ」

「あの騒がしいお節介焼きがか…分かった。あとのことは任せろ」

 

九重が破片を採取してからテイガーが部屋を後にした。対する九重はパソコンを開き、早速友奈のデータを解析し始めた。しばらくすると1人の少女が入ってきた。

 

「九重さん、ご飯が出来たぞー」

「…」

「九重さーん?…ダメだこりゃ、聞いちゃいない」

 

少女は一度皿を置くと、九重の後ろを忍び寄って肩を叩いた。何事かと九重が叩かれた方と逆の方へ振り向くと、少女は人差し指で彼女の頬を突いていた。

 

「おい!!」

「残念、引っかかったー」

 

少女はそう言って後ろに下がりながら引っ掻いてくる九重を避けた。イライラした顔で九重は少女に詰問する。

 

「何のつもりだ。今の私は忙しいから遊ぶなら他所でやれ」

「違いますよ。もう夕ご飯ですから持ってきたんです」

「私は『こいつ』を舐めていれば大丈夫だ。テイガーにでもやれ」

「そんなこと言ってると体壊しますよ九重さん。ほら、クマも酷いから早く食事と睡眠を取ってください」

「えーい、煩い!!このお節介娘が!!お前は私の母親か!?」

「普段の御礼ですよ。今は外には簡単に出られないからやることないし。だったら2人の手伝いをした方が時間は有益でしょ?」

「全く…これがやつの『娘』だというのか…」

「『父さん』だって普段言わないだけで九重さんのことを心配していますよ。もう少し身体を大事にしてください」

 

少女にそう指摘されて九重は苦い顔をする。そこまで言われては反論のしようがない。

 

「…わかった!食えばいいんだな、食えば!!」

「良かったー!」

 

少女はそれを聞いて食事の皿を持ってくる。どれも美味しそうだ。九重はそんな彼女に聞いた。

 

「そういえばお前、右腕と左足の調子はどうだ?何処か問題があるなら改良する」

「心配要りませんよ。ほらこの通り」

 

少女はそう言って右手を挙げて開けたり閉めたりして見せた。それをみて九重は少し安心した。

 

「大丈夫そうだな…だが気を付けろ。その擬似勇者システム(イデア機関)はまだ開発したばかりの代物だ。戦闘も可能だがまだデータが不足しているから何処か異常が見つかったらすぐに言え」

「心配しすぎですよ、九重さん。アタシなら平気です。それにこれの応用が利けば『園子』も動けるようになるんだろ?」

「…そう言えばやつとは度々会っていると言ったな。その通りだ。だが、まだ小型化するには難しい。手足ならともかく、眼球や内臓に入れるには大き過ぎる上に小型にした時の出力も足りん」

「それだけでもアイツは喜ぶと思いますよ」

「…そうか」

 

そこまで言われて悪い気はしないが、やはり慣れない。九重は話題を変えた。

 

「今日、ラグナの奴と交戦した」

「…そうなんですか」

「1人でも現在の勇者のデータがあればイデア機関の精度も格段に上がる。そして勇者システムは手に入らなかったが、それよりも希少なサンプルを手に入れた。これでもっと研究が捗る」

「…九重さん。ラグナたちと戦って悲しくなかったんですか?」

「母が亡くなったあの時から私はバーテックスを殲滅することを決めている。そのためには手段を選ばん。お前だって利用されているだけのようなものだぞ」

 

九重がそういうと少女は首を横に振った。

 

「九重さん、アンタは必要以上に気張りすぎだ。アイツらに本当のことを言ったら協力してくれると思いますよ」

「…少しは考えておいてやる」

 

そう言って九重は皿を片付けた後に再び作業に戻った。お気に入りのキャンディ、『マタタビチャップス』を口に咥えて、だ。

 

「そういえば九重さん?『父さん』は?」

「ああ、アイツか。今はいつもの部屋で休息を取っている。邪魔するなよ」

「分ッかりましたー!じゃあ後で持ってきます」

 

そう言って少女は残り物をラップで包んでテーブルの方へもっていった。それを見届けて九重は彼女の名前を呼んだ。

 

「おい、『銀』!!そっちに行くならポテチも持ってきてくれ!!」

「それくらいは自分で持ってきてくださーい」




…やっちまったよ。とんでもない原作設定改変を行なったよー。でもなんかいけそうな気がしたからやった。

友奈に関してはバーテックスなどの攻撃から受けた時に精霊が守ってくれるけど、ヴァルゴを殴った時に痛みが生じたり、擦り傷?のような描写があったりするので自分からの反動や軽い傷なら防がないのかなと思ったから。

テイガーと銀のアレは…まあ、テイガーさんを出すなら何故かこうなった。銀の親父は原作(というかアニメ)にもいるけど彼はココノエに改造されてしまったんや…本当にすまん。

次回は日常回。まだレオとの戦いはやりません。それではまた

どれが見たい?

  • モテメガネonラグナ
  • モテメガネon風
  • モテメガネon友奈
  • 原作通り勇者たちの恋バナ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。