蒼の男は死神である   作:勝石

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どうも勝石です。

ゆゆゆい二周年おめでとうございます。くめゆ組のドレス姿、とても可愛いかったですですね。個人的にはしずくちゃんが一番良かった。

さてそんなくめゆの主要人物の1人がゲストとして登場する今回の話は1万字越えです。ブレイブルーキャラも登場しますよ!それではどうぞ


The wheel of fate is turning…


Rebel25.臆病と勇気の境

ある平日の昼、1人の少女が電車で香川の讃州市に向かっていた。普通ならこの時間は学校があるので彼女は学校をサボったであろうことは明白だった。それでも少女は讃州市にあるものについての興味を消せなかった。

 

「勇者様ってどんな人たちなのかな…きっとものすごい超人だったりして…それとも怖い人たちなのかも」

 

少女の名は『加賀城雀(かがじょう すずめ)」。つい最近までは勇者部と同様、勇者になる素質を持った少女たちが集まった同好会に所属していた女の子である。その会も現在は会員が勇者として覚醒しなかったということで解散した。

 

(それになんか凄く危ない男子もいるらしいし…部長が言ってた『死神』だっけ?どう聞いても嫌な予感しかしないよ〜)

 

取り敢えず見つかるのは厳禁。そう誓う雀だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いざ讃州中に着いた雀だったが校門の中へ入れずにいた。勇者たちの様子を探りにきたのはいいが、間違って勇者と遭遇したら何をされるか分からないからだ。増して死神には絶対に会いたくない。殺されるに決まっている。そんな一心で雀は近くの女子生徒に彼女らの居場所を聞いてきた。

 

「あ、あああの…犬吠埼風様は何処にいらっしゃるのでしょうか?そ、そそ、それか東郷美森様、結城友奈様、犬吠埼樹様、もしくは三好夏凜様はいらっしゃるのでしょうか?」

「犬吠埼さん…ああ、勇者部のこと?」

「え?」

 

女子生徒の口からは全く勇者への畏怖を感じないことに雀は驚いた。生徒はさらに言葉を続ける。

 

「そうね…あの娘たちなら学校の周囲とかにもいることがあるけどまだ『あれ』が始まってないから今は…あ、『今日』も始まったから今部室ね」

「え、何が始まるんです?」

 

雀の疑問に答えるように女子生徒が校舎の内の窓の一つを指差した。ガラッと開いたそこから2人の男子生徒が飛び出してきた。1人は制服の上に赤コートを着た男子、もう1人は白袴の上に青い羽織を着た男子だった。2人は刀と大剣と武器を所持しており、それを構えると青い服装の男子の声が聞こえた。

 

「さあ、兄さぁん!!今日も殺し合おうよ!!!」

「今度こそぶった切ってやるよ、このクソガキが!!!」

 

明らかに穏やかではない会話を繰り広げた後、2人は武器を持って戦いはじめた。世紀末にしか見えないその光景にビビる雀を他所に女子生徒は見慣れているからか、温かい目でそれを見守っていた。

 

「ちょっとーー!!何ですかアレーー!!?」

「ああ、気にしないで。ここ最近のいつものやり取りだから」

「いつもって何!!?毎回あんなバカなことしてるんですか!?頭のネジ飛んでません!?」

「あれはあの兄弟なりのスキンシップですよ。ほら、よく聞くと仲良くしてるのが分かるじゃないですか」

「ぶっ潰れろ、ジン!!!」

「終わりだよ、兄さぁん!!!」

「ちっとも仲良くねーーー!!!」

「心配ないですよ。毎回綾月さんが勝つ流れですし。あ、如月さんにいいカウンターが入りましたね」

「いや実況してんじゃないよ!!?止めないと誰かが巻き込まれて死んじゃうかも知れないじゃないですか!!!」

「もうみんな、あの光景に慣れてきて…いつ戦い出すのか分かってくるからその時に安全な下校時間も安全ルートも分かっちゃうんですよ。お。今の綾月さん、ちょっと不利ですねー」

「適応した挙句戦況すら分かり始めた!!?やっぱりここ普通の学校じゃなかったよー!!!」

 

ラグナと刃の戦いを見てしまい、来てしまったことを激しく後悔し始めた雀だが、ここまで来た以上収穫無しはあんまりである。取り敢えず2人が暴れるのをやめるまで待ってから見に行こう。

 

 

 

 

 

 

激しい攻防の末、今日も勝ったラグナが刃を引きずって校舎内へ戻った後、雀は教えてもらった勇者部の部室へと向かった。正直勇者への恐怖はまだ残ってはいるが、先刻の2人の危険性に勝ることはないだろうという判断からなんとか部室へ赴くことができた。

 

部室のドアの隙間から覗き見るとそこには5人の少女と驚くことに先ほど戦っていた男子たちがいた。青い方は傷の手当てをされているのに対して赤い方は何事もなかったかのように傷が見当たらなかった。強いて言うなら服が少し土が被ったくらいか。

 

「さあ、今日も入ってきた依頼をじゃんじゃん解決していくわよ!!」

「はーい!」

「お任せ下さい」

「うん!」

「おう」

「いや、ラグナ。アンタ、さっき大尉といつものアレをしてきたばっかりで疲れてるでしょ?今は休みなさい。」

「心配すんなカリン。ジンの野郎に比べりゃ大したことじゃねー」

「如月君もあまりボロボロになる程戦わないで欲しいけどね。包帯が無くなってしまうわ」

「それは無理だ」

「無理なんですか…」

「夏凜も如月も随分と馴染むようになったわねー。前はあんなにトゲトゲしてたのに」

「う、うっさいわよ!!」

「全く…口の減らない奴だ…」

「というわけでそろそろ本題に入るわ!まずはこれ!!」

 

その後に風は様々な依頼を説明し始めた。1つ目の園芸部の花壇整備は友奈と樹、2つ目の図書委員からの依頼は東郷、3つ目は剣道部の指導に刃、4つ目は教師陣から配布される牛乳の運び込みの依頼をラグナ、そして5つ目は一般人から校内にいると言われる子猫の捜索の依頼を風と夏凜が受け持った。

 

このことは雀にとって意外なものだった。彼女の中の勇者とはまさに天上の存在、常人を超えた存在だった。でも実際は違った。勇者たちは他の生徒たちと対等に接しており、寧ろ逆に自分から誰かのために行動しているように見えた。

 

彼女たちが所属している勇者部も未成年者で構成されたボランティア集団のようなものだろう。まあ、明らかに様子の違う男子はどこか他とは違う雰囲気を感じていたが。

 

(勇者様って…意外と普通の人なのかな?それに対して男子たちはなんかヤバそう…絶対カタギじゃないよー)

 

依頼を終えてから一度終えてから再び部室に集合した勇者たちの様子を雀は見ていた。今度は主に男子たちの様子を観察していた。

 

(赤コートの人は不良っぽいけど何だかんだ頼れそうな人だなー。でも何でだろう…特にあの『右腕』が凄く危険な感じがする…下手に関わったら死んじゃうかも…)

 

ラグナを心の中で評価した後、今度は刃の方へ向いた。

 

(あの人は見た通り、凄く厳しそう。死神ってあの人かな?しかもさっきの喧嘩の時の台詞といい、絶対典型的なヤンデレだよー。対象はあの赤コートの人だよね?…え、これ、アレじゃね?アレでアレ的なアレじゃね?)

 

どうやら雀の中の刃のイメージは早くも関わったらヤバイというものになってしまった。そろそろ立ち去ろうとしたが、何故か足が動かなかった。

 

(え!?何これ、氷!?)

「どうやら、悪い虫が嗅ぎまわっていたようだよ。兄さん」

「まさか、また第七機関の連中が!!」

「第七機関ってこの前の赤い鬼といた奴ら!?」

「そんな!学校にまで来るなんて!」

(いやー!!なんか勘違いされてるー!!誰か助けてー!!!私死ぬーー!!!)

 

刃がドアを開けると足が氷で床に釘付けられている雀を発見した。ある意味最も捕まりたくなかった人物に睨まれてしまい、雀はガクガク震えながら今にも泣きそうだった。

 

「貴様…何者だ。まさか第七機関の連中ではあるまいな」

「な、何のことやら…」

「貴様…ふざけているのか?それとも氷漬けになりたいのか?」

「ちちち違います!!!そもそもその何とか機関って何なんですか!?」

「凍てつけ…」

「いやーー!!!」

「こらジン。そこまでにしておけ」

「ああ、泣いてしまっているわ。可哀想に…」

「まさかもう忘れたのか兄さん、東郷美森。奴らは勇者を狙っている。この女もひ弱さを装っているだけで奴らの刺客かも知れないんだぞ?」

「あのココノエがこんな目立つ場所で事件沙汰なんざ起こさねーよ。そもそもあいつの部下かどうかは簡単に判別できるぜ」

「何?それは本当かい、兄さん」

「まあ見てな。おいお前、科学は神樹よりも優れていると思うか?」

「え?科学なんかじゃ神樹様には敵うわけないじゃないですか」

「確定だな。こいつは刺客じゃねー。そんなこと言ったらあいつに何をされるか分かったもんじゃねーからな」

「その人怖すぎない!?」

 

どうやらラグナのおかげで雀への誤解は解けたようだ。部室内へ案内された雀は席に正座している。未だに警戒を解かない刃はユキアネサを出したまま雀を睨んでいる。

 

「それで?この娘なんなの?」

「新入部員希望の人かな?それともラグナ君が前に言っていた妹さん?」

「こいつはサヤじゃねーよ。アイツなら俺たちも気づくだろうしな」

「そういえば制服が私たちとは違うものみたいですが、もしかして他校から来た方ですか?」

「は、はい!私、加賀城雀と言います。その、勇者部の噂を聞いて愛媛から来たんです」

「おおっ!遂に他県にまで我が勇者部の名が広まったか!!アタシの女子力が疼きだすー!!」

「疼きだしそうなのは寧ろラグナ先輩の腕の方だと思うよ、お姉ちゃん…」

「出来ればそれは勘弁だぜ、イツキ…」

「よろしくね、雀ちゃん!私たちは人のためになることを勇んでやる部、勇者部だよ!主な活動は依頼の解決とかなんだ」

(やっぱりそうなんだ…)

 

友奈から聞いた話から自分の予想がある程度正しかったことが分かった雀。その彼女に東郷が訪問の理由の詳細を聞いてきた。

 

「そういえば加賀城さん、他県からわざわざ来てくださったということは何か依頼があるのですか?」

(ま、全く考えていなかったーーー!!!)

 

それに気づいた雀は思考を巡らせた。今下手に帰ったらおそらくまたそのほにゃらら機関についての疑惑がかかるだろう。特に目の前で刀を持っている刃は決して自分を逃がしたりはしない。そう思って雀は思いついたことを口にした。

 

「あの!…私、昔から凄い臆病者で…だから、もう少しでもいいから…勇気を持てるようになりたいです…」

「分かった!」

「え?」

「勇気を持てるようになりたい人を放っておいたりなんてしないよ!ね、風先輩!是非力になりましょう!!」

「そうね。それじゃあ話し合おっか!」

 

そう言って風が部室の奥の黒板に雀の依頼を書くとそれについて話し合い始めた。

 

「今日はアタシと夏凜以外の依頼は予定よりも早く終わったし、捜索はまた後でやるから問題ないけど臆病を治すか…そういう精神的な問題ってどうすればいいかしら?」

「やはり心理学に関係するのでしょうか…少し調べますね」

「私、図書館に行ってそういう本がないか、探してみるよ」

「勇気を出したいなら煮干しを食べなさい。あとサプリ」

「あ、ありがとうこざいます」

「雀さん、やっぱり怖いという感情は分からないことに対して起こるものですから占いを学ぶのはどうでしょうか?良かったら教えますよ」

「如月君はどう思うかしら?」

「…鍛錬して強くなる。そうすれば何者にも恐れる必要もない」

「アンタらしい意見ね」

「皆さん…」

 

雀は自分のためにここまで行動してくれている勇者部を見て疑問に思った。自分の悩みは彼女たちには関係ない、取るに足らないもののはずだ。なのに彼女たちは真剣に自分の悩みに向き合ってくれていた。

 

(どうして…ここまで)

「スズメ、って言ったか」

「な、何でございましょうか?」

 

ラグナは雀の側に立ちながら話しかけてきた。

 

「お前、ちょっと考えただろ?なんでこいつらがこんなにも真剣に自分と向き合ってくれるんだってな」

「ひぃっ!?」

「そんなに怖がんなって。怒ってる訳じゃねーし。まあ、一言で言っちまうと…こういう奴らなんだ、としかいえねーんだよ。命知らずとかじゃなくてこう…他の奴が困っているのをただみているだけってのが我慢できねー普通の女子の集まりだ。それでも…そんな奴らだからこそ、助けられた連中がいるんだよ」

「…それでも凄いですね。私じゃあとても」

「…別にいいんじゃねーの?」

「え?」

「臆病って要は何が危ねーかが人一倍分かるってことだろ?別に悪ぃことなんてねーじゃねーか」

「…それが媚を売ったり、守ってもらったりするほどでも…ですか?」

「あ?」

 

小さく呟いた雀のその言葉をラグナは聞き逃さなかった。雀の口から少しづつ言葉が漏れ出てきた。

 

「私…小さい頃から痛いのも辛いのも本当に嫌いで…だから強い人に取り入ったり、嫌なことを避けたりするんです…」

 

それを聞いてラグナは少し黙った。

 

「だから…それで周りからダサいとかカッコ悪いとか言われて…そんなのは自分でも分かってるんです。そんな自分も嫌いです。でも、やっぱり怖い」

「…」

「この前も世話になった先輩のことをあることで悪く思っちゃったんです。でもすぐにその先輩に下心いっぱいで接してきた自分に気づいて…それで自分を…情けなく思って…」

「…お前」

 

雀はそう言い終えた後、俯いてしまった。ラグナは少し考え込んだ後、

 

「なんつーかよ…お前も大変だったんだな…色々と」

「…そう言ってくれる人がいると思いませんでした」

「アイツらだってこう言ったさ。ジンはどうかは分からねーけどよ。まあでも、それがお前が正しいと思った生き方ならそいつを貫きゃいいんじゃねーか?他の奴の言うことなんて結局横から茶々を入れられているだけだしな。それでも媚を売っちまうなら、今度は媚を売った相手を具体的な行動で助けりゃいいだろ?」

「媚を売った人を…助ける?」

「そうすりゃ少なくてもお前はただ媚びて守ってもらっているだけじゃねー、お前もその誰かの力になれるんだ。そうすりゃ…まあ、少しは自分のことを好きになれるし、その時に行動したお前は勇気を得ただけじゃなくて誰かに勇気を与えることができたってわけだしよ」

「…臆病者でも?」

「臆病者だからこそ助けられるもんもあると思うぜ」

「雀ちゃーん、本が見つかったから一緒に読もう」

「ほら、行ってこいよ。アイツらが待ってるぜ」

「は、はい。…ありがとうございます」

 

ラグナに一礼してから友奈たちの方へと向かった雀は友奈たちと本を読んだり、占いの方法を教えてもらったりしていると時間は過ぎていった。流石にこれ以上いるわけにはいかないと考えた雀は帰る旨を伝えようとした。

 

「あの、今日はありがとうございました。これで勇気を持てたと思います。でももうそろそろ帰らないといけないので…それじゃ!」

 

そう言って部屋を退去しようとする雀だったがその時窓から向かい校舎屋上の縁に子猫の姿が見えた。

 

「あれ…猫?」

「あ!!あの子、依頼が言ってた迷子の子猫じゃない!!お手柄よ、加賀城さん!」

「うん?あの猫、何処かで…」

「すぐに向かいましょう!あのままでは危険です!」

「雀ちゃん、私たちも行こ!」

「え、あ、はい!!」

 

部室から出て行く勇者部につられて雀も子猫がいる屋上へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「写真で見た時も思ったけど、随分と変わった猫ね。こんな猫いたかしら?」

「いや、こいつ…」

 

現在勇者部から友奈が屋上の柵を越えて寝ている子猫を回収しようとしていた。ただ、その子猫は少し異様で、しかしそれはラグナにとって見覚えのあるものだった。

 

「『カカ族』じゃねーかよ!!こいつらも四国にいたのか!?」

「カカゾク?それはなんだい、兄さん?」

「俺の知っている限りじゃあ確か師匠の細胞から作られた生体兵器の末裔…だけどな…」

 

そこまで悪どいことを大赦がやっている可能性を頭の中で否定するラグナであった。色々納得できない点はある組織だが、『あの世界』とは違って禁忌に触れるようなことをするとは思いたくなかったのだ。

 

「友奈ちゃん、どうか気をつけて」

「大丈夫だよ東郷さん。猫さんを起こさないよーにそーっと…」

 

寝ているチビカカを無事抱き抱えると友奈はそれを柵の向こうにいる樹に渡した。

 

「やった!これで依頼完りょ」

 

そういうのもつかの間。突然強い風が吹いて来た。風に煽られてしまった友奈はバランスを崩してしまい、屋上から落下してしまった。

 

行動に移ったのは意外にも雀だった。彼女は柵から身を乗り出し落ちて行く友奈の手を捕まえた。しかし引き上げることが出来ず、自分も引きずられて落ちてしまう。

 

(あれ…何やってんだろう。私)

 

危ないことや死ぬことが誰よりも怖いはずの自分がこんなことするなんて、全然らしくない。ラグナの言葉を聞いたからなのか、それともここまで彼女たちを付き合わせたことに対するケジメなのか。これから死ぬであろう雀は思考を放棄して友奈を抱きしめた。

 

自分たちの名前を必死に叫ぶ勇者部の顔が見える。ラグナに至っては自分から柵を越えようとしていた。そんな中聞き覚えのない声が木霊した。

 

「ウーーニャーーーース!!!」

 

突然雀は自分たちが強い力で横へ引かれていくのを感じた。2人を捕まえた何者かはそのまま不規則に跳躍しながら最後には屋上にいる勇者部の後ろに着地した。

 

「いやー、他のチビたちが見つかったからここのチビを探してくれてる『ゆーしゃぶ』ってひとたちに会いに来たニャスけど、あぶにゃいことになってたニャスね。大丈夫ニャスか?」

「わ、私たち生きてるーー!!よがっだーーーー!!!」

「う、うん…あれ、わたしたち、落ちちゃったんじゃ?」

「結城さん!!私たち助かったんです!!えっと…この人?に助けられて」

「友奈ちゃーん!!」

「取り敢えず保健室へ行きましょ!えっと、貴女も来てくれるとありがたいですが」

「もちろん!ついていくニャス!!」

 

全身をクリーム色のフード付きパーカーで覆った尻尾を持つ少女は勇者部と保健室へ同行した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「取り敢えず大事はなさそうで良かった…本当、友奈の身に何かあったらどうしようかと思ったわ…」

「友奈ちゃんの側にいながら私は何という不覚を…こうなったら切腹するしか」

「お前は落ち着け、東郷美森」

 

保険の教諭の話によると友奈たちには軽い打ち身以外は異常がないとのことだった。それでも念のため親御さんに迎えてもらうように、とのことだ。今は第七機関のこともあり、友奈たちはそれを承諾した。

 

「雀ちゃん。あのとき、私を助けようとしたんだよね。本当にありがとう!」

「いや…私は何も…」

「ンなことねーよ。お前がいなかったらもっとヤベーことになってたかもしれねーし」

「…でも結局何も役に立たなかった」

「そんなことないよ」

 

友奈は雀の手を取る。

 

「雀ちゃんが私を助けてくれようとして嬉しかったよ。それに雀ちゃんは自分が臆病だーって言ってるけど、さっきはすっごく危なかったのに助けてくれたよね。それってとっても勇気のある行動だと思うんだ」

「あれは…反射的に身体が…」

「そういうものだと思うよ、勇気って。私も痛いことや辛いことがすごく怖い臆病者だけど…友達がそういう目に遭っていたら助けたいと思うんだ。さっきの雀ちゃんみたいにね」

 

笑顔でそう言いながら自分に感謝する友奈を見て、雀は先ほどのラグナの言葉を思い出した。

 

(臆病だからこそ助けられる…か)

 

そんなものもあるのかと考える雀だった。すると横で話を聞いていたフードの女性が話に入ってきた。

 

「あのときはちょーっと動きが止まったから『タオ』は間に合ったニャス。それに離れていたらもっと大変だったと思うニャスよ」

「そういえば、アンタ何よ?」

 

夏凜がそう聞くと風はフードの女性へ向く。顔がよく見えない上に手すら隠されているが、先ほどの話からするに彼女が依頼人なのだろう。

 

「貴女が『タオ』さんね。友奈と雀を助けてくれて本当にありがとうございます」

「タオも助けてーって頼んだからタオもゆーしゃぶを助けただけニャス!」

「それでも助かったぜ、タオ」

「ありがとね、タオさん!!」

「こっちもチビを助けてくれてありがとニャス、『いい人』、『お花の人』!!」

「私からも、ありがとうございます」

 

タオは礼をしてきた東郷を見る。いや、正確にはある部分を凝視していると、突拍子もなく言い出した。

 

「肉まんが2つニャスー」

「え?え?」

「ちょっとお触りするニャース!!」

「きゃーーー!!!?」

「タオさん!?いきなりどうして東郷さんに飛びつくの!?」

「うーん、フニフニでポヨヨ〜ンとしたこの感触。お前は『乳の人』ニャスね」

「ち…乳って…しかもどこ触ってるんですか!?」

「こらー、男子たち!!こっち見ない!!」

『見るか!!』

 

とにかく暴走したタオを東郷から引っ剥がした勇者部。騒がしくも温かいその風景を見て雀は心の中で思った。この勇者部にいる勇者たちは意外にも身近にいる、ごく普通の人間なんだと。雀は改めて感謝を述べた。

 

「勇者部の皆さん!今日は本当にありがとうございました!!」

「気にしないで雀ちゃん!それが私たち、勇者部だから!」

「あと、『何だかんだ先生』!!」

「誰が何だかんだ先生だ!!…で、どうした?」

「色々な話を聞かせていただいてありがとうございます!」

「…それならよかった」

「あれ〜?ラグナ、アンタいつのまに加賀城さんとそんなに仲良くなったの〜?」

「バカっ、フウ!!今それを言ったら…!!」

「あ…」

「貴様…兄さんと何があった…」

「不味い!!みんな、ジンを止めろーーー!!!」

 

その後、ラグナが刃と再び外で戦うことになったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刃が落ち着きを取り戻してタオカカと雀が帰った後、友奈は自分の迎えを仲間たちと待っていた。夕方の少し遅い時間帯になっても中々来ないものなので友奈の親と面識のある東郷が少し心配し始めた。

 

「おかしいですね…友奈ちゃんのご両親がこんなに遅れるなんてことあるのでしょうか?」

「今日2人とも仕事のある日だから仕方ないよ。そう言えば東郷さん、今何をしているの?」

「風先輩に頼まれたホームページの更新よ。もうそろそろできると思うけど…はい、これで完成」

「本当に大したもんだな。どうやって作ってるんだ?」

「こんな感じよ」

 

東郷はラグナにウェブサイトの作成する際のパソコン画面を見せた。そこにあったのは大量の数字と文字の羅列でこういった細かいものが苦手なラグナには理解するのにお手上げだった。

 

「おう…俺には向いてなさそうだな…」

「私もどんなに見ても分からないや…」

「フフッ、慣れれば2人にもきっと出来るわ」

 

そんなことを言っていると友奈の端末が鳴った。彼女が画面を確認すると嬉しそうに仲間たちへと振り向く。

 

「お父さんから連絡が来たよ!なんでも2人とも今どうしても離せない仕事があるらしくて、丁度時間のある『伯父さん』に迎えてくれるように頼んだって!」

「友奈さんの伯父さんですか、どんな人なんでしょうか?東郷先輩は知っているんですか?」

「何度か会ったことがあるわよ、樹ちゃん。少し飄々としているけどとても丁寧な人だったわ」

「ふーん、まあ友奈を見れば大体どんな人かは予想がつくわね」

「あ。伯父さん、もう着くって」

 

友奈がそう言ってしばらくするとその男は入ってきた。

 

「お待たせしましたね友奈さん。迎えに来ましたよ」

「ありがとう、伯父さん!」

「あのですねー、(わたくし)、まだそこまで年をとっていないのにその呼び方はないですよー。せめて『お兄さん』と呼んでください」

「あはは。ごめんね」

 

友奈が楽しそうに男と話しているようだ。男はやれやれと言っているかのように肩を竦めながら話を続ける。

 

「あらら。もしかして友奈さん、先ほど猫と触れ合ったりしていませんでした?」

「あ…そういえば猫アレルギーだったよね。私、ちょっと毛を落としてくるよ」

「ま、今はいませんから構いませんよ。とにかく大事が無さそうで安心しました」

「迎えに来て下さって本当にありがとうございます」

「あまりこの娘を甘やかさないで下さいね、東郷さん。電話が掛かったら姪が病院の中なんてあったら嫌ですよ、私」

「甘やかしているつもりはありません。それなりに厳しい時もあります」

「東郷さんは優しさと厳しさが紙一重だからねー」

「もう、友奈ちゃんったら」

 

楽しげに話す3人の様子を見てほかの部員はやってきた男についてそれぞれの感想を言う。

 

「あの人が友奈さんの伯父さんですか…」

「なんていうか…丁寧っていう割には結構フランクな人ね」

「ま、悪い人じゃなさそうだし。東郷の話通りの丁寧な人じゃないの?…ずっと笑っているのがちょっと気味悪いけど」

「あー言う類は簡単に信用しない方がいい。何を考えているのかが分からんからな。そう思うよね、兄さぁん…兄さん?」

 

刃が兄の方へ向くとそこには顔面蒼白のラグナがいた。

 

男の姿を見た瞬間、ラグナは全身の機能が一瞬止まったかのような錯覚に襲われた。その顔を見ると悪夢のような記憶が呼び覚まされる。心臓の鼓動が急激に上がる。呼吸も不規則になっていく。

 

「兄さん!?どこか痛いのかい!?」

「て…て…」

「おや?あまり見慣れない方々もいらっしゃいますねー」

 

男はこちらへ近づく。ラグナの心の内に忘れていたはずの怒りと憎悪、そして恐怖が湧き上がってくる。もしここに勇者部のみんながいなければ男に切り掛かっていただろう。

 

黒いスーツに身を包んだ細目の男は勇者部の前へ来ると、男の緑髪を隠していた帽子を取って一礼しながら挨拶した。

 

「どうも、お初にお目にかかります。友奈さんの伯父の『結城峡真(ゆうき はざま)』と申します。どうぞお見知り置きを」




穏やかな日常が繰り広げられる中へ容赦なく絶望という名のメギドラオンでございます。

さてさて今回登場したゲストの1人目は加賀城雀ちゃん!臆病ですがスコーピオンの攻撃を防ぎきる実力の上に鋭いツッコミが出来る彼女は見ていて楽しいです。でも彼女、ブレイブルーの世界に迷い込んだら大変そう。バングとかラグナなら助けてくれると思うけど。

2人目はブレイブルーの中でもかなり平和的なキャラ、タオカカ!自由奔放に生きる彼女は友奈とは特に相性が良さそうです。決してにゃす的な意味ではない。

そして最後の1人…ブレイブルーで最も危険なキャラクターの1人、ハザマ大尉、とうとう参戦!因みにこのssのハザマは人間です。だからテルミとは一緒ではありませんし、碧の魔道書も持っていません。それなのに不安しかねー…。

次回はハザマとラグナ遭遇!それではまた

どれが見たい?

  • モテメガネonラグナ
  • モテメガネon風
  • モテメガネon友奈
  • 原作通り勇者たちの恋バナ
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