蒼の男は死神である   作:勝石

34 / 133
どうも勝石です。

2周年イベのトリプル友奈ズが可愛いすぎてテルミのごとくヒャッハーと叫びそうになりました。特にたかしーのあの顔はずりー。

そんな中、今回は日常回。初っ端からラグナと峡真ことハザマが邂逅してしまったが、どうなるのか?

それではどうぞ


Rebel25.花壇の中の顎

「『ユウキ……テルミ』…!!!」

「あら?てるみさんですか?はて、そのようなお方は存じませんが」

 

峡真の飄々とした声がラグナの神経を逆撫でする。忘れもしない。『あの世界』でシスターを殺し、自分からジンとサヤを奪い去った…不倶戴天の敵。ハザマと呼ばれる『器』に身を潜めながらマスターユニットアマテラスを破壊するために『蒼』を求めた宿敵。

 

それが今はハザマの姿とはいえ、再び目の前に現れた。世界の垣根を超えて。明らかに様子がおかしくなっているラグナに樹は声をかける。

 

「ラグナ先輩、本当に大丈夫ですか?凄い汗ですよ」

「うわ、グッショリじゃない!どうしたのよ、急に?」

「どうも私を見てから様子がおかしくなったようですねー。彼とは初対面のはずですが」

「…テメェ、何を企んでやがる」

「はい?意味がわかりませんね?私は友奈さんのお父さんの代わりにお迎えに上がったと」

「そんなことじゃねえ!!!」

 

珍しく本気の怒りで怒鳴り散らすラグナを見て、勇者部は怯む。彼は確かに声を上げることは多いが、ここまで一方的に誰かに対して怒鳴り散らすのは刃ですらないのだ。しかし、それに対しても峡真は全く動じることなく軽口を叩く。

 

「ちょっとやめて下さいよ〜。私、戦闘は専門外ですので貴方のような強いお方に絡まれでもしたら、なすすべも無く半殺しにされちゃうじゃないですか〜」

「え?峡真伯父さんって時々お父さんと一緒に私と武術の訓練をしてくれるよね?」

「友奈さん…出来ればあまりそういったことを今言って欲しくはなかったのですが…」

 

友奈の指摘によってあっさりと自身が戦闘ができることがバレてしまった峡真。『あの世界』では決して見れなかった光景に少し拍子抜けするラグナだがすぐに気持ちを切り替えた。

 

「…テメェがユウナの伯父ってのは理解した。だがそれ以外にも聞きてーことがある。テメェ…『碧の魔道書』はどうした?」

「『碧の魔道書』?何のことか分かり兼ねますが」

「とぼけんな!!アレはお前の軀なんだろ!!どうしてそれが知らねーなんて言えるんだ!!」

「…先程から随分と失礼ですね、貴方。言っておきますが私はなーんの変哲も無い、ふっつーの人間ですよ?」

「…は?」

 

峡真の言葉を一瞬ラグナは理解できなかった。普通の人間?碧の魔道書を知らない?そんな訳あるか。そんなことがあってたまるか。自分の知る限り、この男は蒼を追い求めていた筈だ。そしてここにいたかつての知り合いの多くは形は違えど『あの世界』と似た境遇に置かれていた。だからこの男もそうに違いない。それなのに全くそのような気配を見せないのだ。

 

(これもお人好しのユウナと接していることと関係しているのか?)

「綾月君、峡真さんが困っているわ。これ以上は控えてあげて」

「…ああ」

 

東郷に注意され、渋々と下がるラグナ。正直まだ納得はしていないがこれ以上追究しても峡真は知らぬ存ぜぬを貫くだろうし、一応部員の親族を必要以上に攻撃するのも良くないと判断したのだ。

 

「それでは我々はここで失礼するとしますかね?友奈さん、忘れ物はないですか?」

「と、特にはないよ。東郷さんは?」

「私もないわ」

「それでは出発するとしますかね」

 

そう言って峡真たちは保健室を出た。風たちもその日は解散して、部位はそれぞれの家へ帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、ラグナは机で考え事をしていた。理由はやはり峡真のことだ。『あの世界』だとあの男は間違いなく危険な存在だったが、こっちでもそうとは限らない。

 

刃は恐らくユキアネサの影響で自分と毎日殺し合いをしているが、前の世界に比べれば人の話は聞くため、幾分マシではある。沙耶もテルミには攫われた訳ではないし、シスターに当たる芹佳も意識不明だが死んではいない。これだけでも「あの世界」とはズレがあることがわかる。

 

(それでも…どうもテルミ…いや、ハザマを信用できねー…けど流石にあれはやり過ぎたよな…)

 

ラグナが悩んでいると教室の扉が開いた。友奈と東郷だ。

 

「おはよう、ラグナ君!」

「おはようございます」

「ああ、おはよう…ユウナ」

「ん?何?」

 

友奈がきょとんとしているとラグナは頭をさげた。

 

「昨日は済まねえ。頭に血がのぼってお前の家族を責めちまった」

「え!?ラグナ君、顔をあげてよ!私は気にしてないよ。峡真伯父さんに胡散臭いところがあるのは知っているし」

「…それでも謝りたかったんだ」

「そっか…あ、そうだ!この後の部活の依頼でテニス部に草むしりを頼まれたんだけど、ラグナ君も手伝ってくれたら嬉しいな!」

「あ、ああ」

 

後ろから物凄い圧を感じつつも友奈の提案を飲んだラグナは放課後、刃とまた戦い、東郷を部室に送ってから2人は学校のテニスコートへ向かった。

 

『はあ…』

「今日は暑いですねー、気温は35度らしいですよ…って全然聞いてないや」

「ちょっと2人ともー。寂しいのは分かるけどいつまでもそんな女子力の欠片もない目にならなーい。如月、ちょっとユキアネサ出してー」

「僕のユキアネサは冷房ではない…」

「ありゃー、あの如月ですら覇気が全然ないや…そんなに落ち込むことないでしょ、2人がちょっと一緒に依頼に出ているだけだから」

「おのれ、結城友奈…兄さんと一緒に過ごしているなど…兄さんを殺すのは僕だって決まっているのに…」

「友奈ちゃん…まだ来ないのかしら…はあ…」

「ここまで綺麗に同じような反応を示すなんてね。案外気が合うんじゃないかしら?」

「寝言は寝ていえ三好夏凜。僕にとっての一番は常に兄さんだ。結城友奈では足元にも及ばん」

「そんなことはないわ如月君。友奈ちゃんは誰よりも素晴らしい人間よ。綾月君も良い人なのは理解できるけど友奈ちゃんには敵わないわ」

「…ほう。言ってくれるな。兄さんが奴に劣ると?」

「いえ…でも私の中では友奈ちゃんが一番なの」

『…』

 

2人の間でバチバチと火花が飛ぶ。

 

「いいか東郷美森。兄さんは後先考えずにとにかく突撃するようなバカだけど、そこが最高に可愛いんだ!いつも頼もしいけど時々見せる間抜けな面が良い!そんな兄さんが最高なんだ!!」

 

刃の言葉に東郷も負けじと言い返す。

 

「それは友奈ちゃんも同じよ、如月君。友奈ちゃんはね、いつだって太陽のような笑顔で私たちを包み込んでくれるのよ!いつも朗らかに笑う友奈ちゃんを見て私たちは今日も御国の為に頑張れる活力をもらえるの!」

 

だがそんな東郷に対して刃は鼻で笑った。

 

「笑うだと?ハッ!残念だったな、東郷美森!兄さんも笑う顔が最高なのは最早説明するまでもないことだが、一番ゾクゾクするのは殺し合うときのあの歪んだ顔だ!!こっちを睨んでくる目、つり上がった眉、罵倒を浴びせてくる口…ああ、何もかもが最高だよ、兄さぁん」

 

恍惚の表情で1人トリップしている刃に対して東郷は小さくほくそ笑む。

 

「友奈ちゃんの真髄を分かっていないようね、如月君!友奈ちゃんが初めて私のぼた餅を食べたときの弾けるようなあの姿を見せてあげたかったわ!体全体を使って喜びを表す友奈ちゃんは最早人間の領域を超えていたわ!!天から舞い降りた存在よ!!」

 

キラキラした笑顔で東郷がそう言っていても刃は食い下がる。

 

「フン、それを言うなら兄さんだって本当に人間かどうかが分からん領域に片足を突っ込んでいるぞ!!どんな状況に陥っても絶対に諦めないあの鋼の精神!!!何度殺そうとしても絶対に倒れないあの様には頼もしさしかないよ!!!」

 

そういう刃に対して東郷は更に意気込んで言う。

 

「私たちが勇者部の活動で疲れていてもバーテックスと戦うときでもいつだって友奈ちゃんは側に立って私たちを励ましてくれたわ!!!それだけでどれだけ勇気づけられたと思う!!?いい!!!元気八百万倍よ!!!」

 

そのまま延々と2人は友奈とラグナについての自慢話をし始めた。これ以上放置したら抑えが効かなくなると判断した風は2人を止めに入った。

 

「ほら、アンタたち。2人が友奈とラグナのことが好きなのはよーく分かったからそろそろさぎょ」

「邪魔をするな、犬吠埼風!!!」

「風先輩は割って入らないで下さい!!!」

「ア、ハイ」

「流石にあの中に入るのは無茶だよ、お姉ちゃん…」

「こりゃ当事者を待つしかないわね…」

 

夏凜は早く話題に上がった2人が帰ってくることを祈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ありがとうございましたー』

「またいつでも呼んで下さーい!」

「部活、頑張れよー」

 

草むしりを終えたラグナと友奈はテニス部と別れた後、部室へ戻っていた。

 

「今日は本当にありがとう、ラグナ君。おかげで本当に助かったよー」

「お前だってやってただろ?礼なんて言われるようなことなんてしてねーよ」

 

2人は階段を登って部室へ向かっている。するとラグナは友奈に質問してきた。

 

「ユウナ…一応聞いてもいいか?」

「もしかして、峡真伯父さんのこと?」

「…ああ」

「うーん。いつもいるわけじゃないから沢山は知らないけど…お父さんのお兄さんで、昔は結構荒れていた時期があって、ゆで卵好きで猫が嫌いなことくらいかな?あ、後今は大赦の方で仕事してるって聞いたことあるよ」

「お前には仕事の話もするのか?」

「うーん…そういう話はしたことないかな?伯父さんはあまり自分については話さないし」

「そうか…ありがとな」

「…ラグナ君。伯父さんと何かあったの?」

「…似たような面の知り合いがいて、そいつにかなり酷い目にあわされてな。だから…俺はどうしても、ハザマを信用できねー」

 

誤魔化しても仕方がないと考えたラグナは素直に事実を言った。それを聞いて友奈はラグナの左手を取った。

 

「ラグナ君、その峡真伯父さんのそっくりさんがやったようなことは起こらない。きっと大丈夫だよ」

「…ユウナ」

「それに私もラグナ君の友達だからね!困ったらこの前みたいにいつでも助けるよ!」

「…分かった。ユウナがそこまでいうなら俺もこれ以上は言及しねー。俺はお前を信じるよ」

「そっか…ありがとう!」

 

そういっている内に2人は部室の前に来ていた。中では刃と東郷がまだ言い合っている。やれやれと思いつつ、ラグナは部室に入り、その後を友奈が東郷に飛びつきながら入ってきた。

 

「東郷さーん、今日は如月君とそんなに熱心にお話ししているなんて珍しいねー。何かあったの?」

「あー、友奈ちゃん!!今如月君に友奈ちゃんの魅力を語り合っていたところよ!」

「へえ、ジンも誰かとそこまで話し込むなんてこともあんだな」

「勘違いしないで、兄さん。僕は兄さんについて余すことなく、語っていたんだよ。結城友奈について話していたのは東郷美森だけだ」

「そういえば夏凜ちゃんたちはどこにいるの?」

「ここにいるわよ…なんというか、近づいただけで火傷しそうだったからね」

「さっきまで気力がなくなった顔をしていたのに二人が話し出してから急に元気になり始めましたよ…聞いているこっちが熱でやられそうでした」

 

ラグナが声のした方向を見てみると、そこには暑さでグッタリした夏凜、樹、そして風がいた。

 

「お前ら、そんなに暑いなら扇風機をかけりゃ良いだろ?なんでかけねーんだ?」

「ラグナ先輩…扇風機先生はさきほどご臨終なさったんですよ…」

「ぶっ壊れちまったのか…飲み物を買いに行くってのはどうよ?」

「さっきから結構こまめに水分補給しているけど、全然涼しくならないのよ…」

「大尉がユキアネサを出して冷気を放出する案もあったけど大尉が断っちゃったからね…打つ手なしなのよ…」

「アークエネミーを便利な家電扱いする奴なんて初めて見たぞ…」

 

ラグナからすれば割ととんでもないことを夏凜が発言した後、風は何かを思いついたのか、勢い良く席から立った。

 

「そうよ!!今こんな厚着しているからこんなに暑いのよ!!それなら水着に着替えれば万事解決じゃない!!」

「風、アンタ熱さで頭がやられたの?ここには男子が二人もいるのよ。大尉は別の意味で問題ないと思うけど、ラグナは気が散ってしょうがないでしょうが」

「そうだった…そんなことを言い出すなんてアタシがどうかしてたわ…て!この暑さじゃどうにかなりそうよ!!!」

 

絶叫する風に対して東郷が別の案を出してきた。

 

「なら、ここは怪談話をするのはどうですか?これなら涼を取れますよ。私も何個か話せますし」

「やめて東郷!!そういうは無しの方向で!!!」

「何言ってやがるトウゴウ!!冗談はそこまでにしろ!!!」

 

東郷の案に全力で拒否する風とラグナの様子を見て夏凜はあることに感づいた。

 

「アンタたち…もしかして…オバケとか怪談が怖いの?」

「な、なななななにいっているの、夏凜ちゃ〜ん?オバケなんて、こ、ここ怖いわけないでしょ!?」

「そ、そうだぞカリン。お前も人が悪りーぜ。お、おおオバケなんてい、いるわけ、ないだろ?」

「…図星ね。まあ、これ以上は指摘しないわよ」

 

 

その後、結局勇者部はかめやでざるうどんを食べることで涼を取ることにしたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、黒スーツの男は夜の歩道を歩いていた。先日保健室に来ていた、結城峡真である。

 

「あれが『蒼の魔道書』の所有者である死神。いや、『血濡れの刃(ブラッドエッジ)』ですか…いやはや聞いていた以上に短気な方でしたねー」

 

峡真が考えていたのは先日の男、ラグナである。実はのところ、峡真はラグナの蒼の魔道書や勇者たちの事情などについてはすでに知っている。そんな中、ラグナが話している言葉は支離滅裂で自分には理解できないものもあった。しかし新たな情報を得た峡真はラグナの態度を不快に感じることはなかった。

 

「しかし…『碧の魔道書』…実に興味深い話ではないですか。彼の話を聞くところからアレをこうして、更にこうすれば…それに九江博士が残したアークエネミーの研究資料から…あー、そういえば大赦が博士がいなくなった後になんとか開発できた『アレ』もありましたねー…いやー、これからもっと面白くなりそうですよー」

 

温和な笑顔を浮かべたまま歩を進めながら峡真は携帯端末が鳴り出した。彼がそれを手に取った後、応答した。

 

「はい、もしもし。『大赦書支部』の峡真です。…あーはいはい、アレですね。それなら今私も本庁に向かっていますので、少し待って下さい。それではまたー」

 

それだけ言って峡真は電話を切った。柔和な笑顔の上の眉を顰めながら。

 

「全く…これだから大赦のお偉いさん方は…あまり仕事を増やさないで欲しいですね。私だって暇ではないんですよ。雑草集団は所詮、雑草でしかありませんかねー」

 

友奈と一緒にいるときとは考えられないほど辛辣な言葉で静かに大赦を罵る。しかし、その後すぐに機嫌を直した。

 

「まあ、良いでしょう。無能な鳥頭は利用しやすいですし、おかげで『計画』についてもバレていません。書支部は情報も文献も溢れるほど得られますから調べ物にも困りませんしね」

 

峡真の口は横一文字に広がってニタリと笑う。そこには保健室で友奈を心配した伯父の顔はない。

 

「まあ、私の『計画』が成功するかどうかは貴女たちに掛かっていますからね。一応、微塵粉並みには期待しておきますよ」

 

そう言って大赦本庁へ向かう峡真の細い目から見える黄色の瞳は妖しく光っていた。

 

「だから、これからもバーテックス退治に精を出してくださいねー、勇者の皆さん(メスガキども)…」




友奈ちゃんのあまりにも良い子な分、ハザマのヤバさが余計際立ってしまった。どうなってしまうんだ、これ。

このssに出てくるアンチ、ヘイトの8割方がハザマのせいになりそうな勢いなんだけど、これでもまだ彼は本調子じゃないのが怖いぜ…

次回は樹ちゃんの歌についてのもう一つの回です。それではまた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。