さーて、満開の時間ですよー(吐血)
この戦いもまた彼女たちの試練となりますが、果たしてどうなるのでしょうか?それではどうぞ。
The wheel of fate is turning…Rebel … 1…Action!!
「先陣は私が切るわ!!」
夏凜は前に出るや否や前方のアリエス・バーテックスに斬りかかった。一撃で斬り伏せられたバーテックスをすぐさま勇者たちは取り囲み、封印の儀を行うためだ。
出てきたアリエスの御魂は出てくると高速回転を始めたが、そこを友奈が躊躇うことなくパンチを食らわす。それによって動きを止められた御魂をすかさず東郷が撃ち抜いた。
「ナイス連携!!」
「ありがとう、東郷さん!!」
2人を讃える風。しかしとどめを刺した張本人である東郷はその死に様に疑問を持った。
「倒せてよかったけど…あの動き…まるで叩いてくれと言わんばかりのものだった…一体なぜ?」
少し思考して、敵の思惑に気づいた東郷だったが、時はすでに遅し。タウラス・バーテックスが頭上の鐘を鳴らして怪音波を響かせる。その騒音に勇者たちはたまらず耳を押さえてしまう。
「うわっ、耳が!!」
「何よ、この気持ち悪い音!!?」
仲間たちのピンチに東郷も援護に入ろうとする。しかし、彼女の方にも危機が訪れる。地中に潜り込んでいたピスケス・バーテックスが東郷のいる位置までたどり着いてしまった。
「東郷さん、逃げて!!」
「デッドスパイク!!!」
「氷翔剣!!!」
親友の危機に思わず叫ぶ友奈だが、そこをラグナと刃の遠距離技で何とかピスケスを追い払うことに成功した。しかしそれはピスケスがいなくなったというわけではない。その時、ラグナはジンに向かって叫ぶ。
「おいジン!!テメェならあの魚野郎と相性がいいだろ!!行ってくれ!!」
「分かったよ、兄さん!!」
刃は霧槍尖晶斬で東郷の元へ急行する中、樹が力を振り絞る。
「音はッ…みんなを幸せにするもの…こんな音は…こんな音はァァッ!!!」
「樹!!」
瞬間、樹はワイヤーでタウラスの鐘を縛り上げて封殺。その隙にラグナと風はアクエリアス・バーテックスとライブラ・バーテックスに攻撃を仕掛けた。
「『ベリアルエッジ』!!!」
「『逆乙女回し』!!!」
ベリアルエッジを放ったラグナはアクエリアス諸共地面に突っ込み、風はライブラに大剣の横一閃をかます。タウラスはなんとか樹のワイヤーから脱出したものの、他のバーテックス同様にダメージを負っていた。
「お姉ちゃん!これなら行けるよ!」
「気を抜かないで!まずは3体に纏めて封印の儀を行なってから…!?」
「何だ…」
一度ダウンした後、3体のバーテックスはラグナたちから離れ、レオの方へと集まった。これにはラグナと刃も驚いた。これまで一度もバーテックスが自分たちの意思で一箇所に集合することなどなかったからだ。
4体の周りが光りだすと、そこから基となったそれぞれのバーテックスの特徴を持った、更に巨大なバーテックスが現れた。名前の由来が星座であるバーテックスが集まったことで星団を形成。大元がレオであることから「レオ・スタークラスター」と呼ぶべきか。
「おいおい、冗談じゃねーぞ…アイツら合体なんかできんのかよ…」
「構うことはないわ!むしろ纏めて殲滅出来る分、好都合よ!!」
「それならすぐに封印の儀を始めましょう、風先輩!」
「良し、みんなやるわよ!!」
風は封印を行う号令を出すが、敵も甘くはなかった。スタークラスターは無数の火の玉を円陣状に展開すると、それを乱れ打ち始める。何とかそれを勇者たちは躱そうとするが、玉には追尾能力があるようで、風と樹は直撃を食らってしまった。
「キャー!!」
「うわッ!!」
夏凜と友奈は何とか回避しきり、ラグナは自身に飛んでくる火の玉を全て叩き落としていった。
「風!樹!」
「クソッ!どんな改造すりゃあんな怪物になるんだ!?」
「止まれぇぇぇ!!勇者…パーンチ!!!」
活路を作ろうと友奈はスタークラスターに突っ込む。テイガーにすら損傷を与えたその鉄拳ならば、いくら合体していたとしてもバーテックスにダメージを与えることができるはずだ。
「キャッ!!!」
しかし、彼女に気づいたスタークラスターは火の玉を彼女に集中させる。火の玉嵐に阻まれてしまった友奈は成す術なく吹き飛ばされた。
「止まれー!!!」
「やめやがれ!!ナイトメアエッジ!!!」
彼女の危機に夏凜とラグナは上空から敵に一太刀を浴びせる。しかし大したダメージを負わせることができず、夏凜は寧ろ刀の方がへし折れてしまった。これには夏凜もラグナも苦虫を噛んだような表情になった。
2人の横から爆発音が聞こえた。東郷と刃が援護してきたのだろう。しかしそれでも効果が見られなかった。そんな彼女らにスタークラスターはお返しと言わんばかりに何発もの火の玉をぶつける。
リボンによる跳躍移動しかできない故に機微に回避が出来ない東郷の前に刃が出てくると複数の火球を素早い斬撃で叩き落としていく。
「『
辛くもほぼ全ての火球を斬り払った刃だが、これによってピスケスから完全に注意が背けてしまった。待ってましたとばかりにそこを白い大魚が地中からその姿を現し、2人を宙へ放り投げた。
「ぐぅあッ!?」
「きゃー!!」
「ジン!!」
「東郷!!」
襲撃された2人にラグナと夏凜は声をかけると、すぐに敵も彼らに火球を放つ。反応できなかった2人は直撃を喰らい、樹海の根へ叩き伏せられた。
敵が強大過ぎる。このままいけば、勇者部も全滅を免れないだろう。それを悟ったラグナは立つと右腕を翳す。グローブの装置から蒼い光が一瞬輝くと魔道書発動のトリガーを引いた。
「やるしかねえ…第666拘束機関、開放!次元干渉虚数方陣、展開!!」
周りの方陣を見て、スタークラスターも火球を展開する。あれにとっても蒼の魔道書は脅威らしい。ラグナは言葉を続ける。
「見せてやるよ…これが…『蒼』の力だ!
眩い蒼い光が放たれると同時にスタークラスターの火球はラグナに迫るが、それも魔道書発動による衝撃波でかき消されてしまった。ラグナは剣を大鎌に変形させると、そのままスタークラスターに飛びつく。
「ブラックザガム!!!」
巨大な黒刃とかした大鎌による連続攻撃をスタークラスターに浴びせて、ラグナはどんどん敵を押し返していく。その姿に勇者たちは呆然とするしかなかった。
「ラグナ君、こんなに強かったんだ…」
「嘘…あれだけ巨大な敵を…たった1人で…」
「これが…死神と恐れられたアイツの力…どんな訓練してりゃああなるのよ…」
「流石…としか言いようがないね、兄さん…」
「アイツ…無茶するわね、ホント!」
「早く…合流しないと…」
斬撃を受けたバーテックスの身体は再生が困難になり始め、所々砂が漏れているように見える。ラグナの猛撃は続き、最後は鎌で敵を叩きのめした。
「ブラッドサイズ!!!」
ソウルイーターにより力を魔道書へと取り込まれていくスタークラスター。しかし流石元がレオだったからか、並みのバーテックスならばいとも容易く葬られただろう攻撃を受けてもまだ健在だった。
「これで終わりだぁぁぁ!!!」
鎌を剣に変えてベリアルエッジの構えを取り、最後の一撃を加えんと迫り来るラグナ。しかしここで彼に予期せぬ事態が発生した。スタークラスターからレーザーのような高圧水流がラグナに迫ってきた。慌てた彼は咄嗟に剣を盾にガードしたが、そのまま押し返されてしまった。
「あの屑…自分を構成しているバーテックスの能力ならどれも使えるというのか!?」
「そんな!?」
刃の指摘は正しかった。事実、先ほどのスタークラスターが使った攻撃は元はアクエリアス・バーテックスのものだ。ラグナはこの個体のことは知識としてしか知らない上に、先ほどからスタークラスターがレオの火の玉でしか攻撃してこなかったため、ほかの可能性を予測することができなかったのだ。
「ガハッ!!」
「ラグナ!!」
落下したラグナの安否を確認するために風が駆けつけようとするが、起き上がったスタークラスターは次に自身の身体を回転させて自分を中心に竜巻を発生させた。前衛の勇者たちはたちまち風によって巻き上げられ、空中で弄ばれていた。
「友奈ちゃん!!みんな!!」
「待ってて兄さん!今すぐそっちに…邪魔だ、屑!!」
急いで前衛と合流しようとした刃だが、ピスケスがその進行を阻む。舌を打つ刃は振り向かずに東郷に告げた。
「…東郷美森、兄さんたちを助けるためにもこの屑をここで滅する。合わせろ!」
「分かったわ!」
「行くぞ!!『オーバードライブ』!!!」
刃がユキアネサの力を開放すると刃の後ろに方陣が出現し、周囲は猛吹雪が発生した。居合の構えに入りながら凶悪な顔つきをした刃は眼前のモノに叫んだ。
「僕の、僕たちの前から消えろ!!この『障害』がーーー!!!」
突貫してくる刃にピスケスは迎え撃つが、それを東郷がライフルで容赦無くピスケスにヘッドショットを食らわせてその突進の勢いを殺す。それでもなんとか刃の進行を止めようとするピスケスだが、攻勢に回る直前に刃が加速した。
「『
加速した刃にピスケスが触れるとその身は凍りついた。そこをさらに刃が追撃として斬りかかり、凍りつかなかった部分は東郷がハンドガンでダメージを与えていく。斬られた部分は凍りついており、それによって再生が阻害されていた。
「今だ!ヤツを封印しろ!!」
「了解!」
東郷が単独ですぐに封印の儀を開始し、ピスケスの御魂を出現させた。それを刃が攻撃するが、弾かれてしまった。どうやら凄まじい弾力を持った御魂らしい。
「ならばこれで終わりだ!!!」
しかし、その程度で諦める刃ではない。彼はユキアネサを地面に突き刺すと御魂は氷に閉じ込められ、やがて凍りついた。それを刃が剣の連撃を加える。
「虚空刃奥義…月下氷楼!!!」
とどめの一閃でピスケスの御魂は砕け散り、身体は砂となって消滅した。
「いつ見ても妙な散り方ね…」
「構うな、それよりも兄さんたちと…あの光は!?」
「冗談じゃないわよ…」
風は風に煽られながら歯をくいしばる。自分はここまで目的のために他の部員、そして自分の妹を巻き込んでしまった。風はラグナから聞いた満開を使う危険性を思い出す。しかし今自分たちは危険な状況に置かれていた。それは看過出来ない。
「それでも…ダメ…樹を…みんなを巻き込んで…ここでくたばるなんて…できるわけないでしょーーー!!!」
風の咆哮が木霊すると彼女の周りに光が集まり、大輪のオキザリスの花が咲いた。それと同時にスタークラスターも吹き飛ばされ、風も止んだ。勇者たちが着地して花の方を見ると、中心には衣装の変わった風がそこにいた。
「お姉ちゃん…まさか…」
「風先輩…」
「使っちまったのか…」
「あれが…満開…」
風は自身の姿を見る。全身から力が湧き上がってくることが身にしみて理解できた。新たな姿へと変身した風を見てスタークラスターは火の玉をぶつけようとするが、寸前に躱されてしまった。
「これなら…いける!!」
そう言って風はスタークラスターに体当たりして倒そうとする。それを見てか、スタークラスターの方も動きを見せた。傍にある2本の角が突如震えだし、そこから怪音波を再び発生させる。
だがそれもラグナたちの後ろから青い光が発せられると、猛烈な砲撃がスタークラスターの角を破壊されたことですぐに止んでしまった。それによって風の攻撃が当たり、敵も後退した。
「この砲撃…まさかあいつも!?」
「東郷さん!!」
そこではアジサイの花の光を後ろにして戦艦のような飛行ユニットに乗った東郷がガイナ立ちしていた。よく見ると刃もそこにいた。
「貴様…良かったのか?」
「ええ…友奈ちゃんを守るためなら!」
「フン…ならば行くぞ!!」
「我、敵軍に総攻撃を実地す!!」
どこからか取り出したハチマキを巻いて気合を入れなおす東郷。それに対してスタークラスターも火球を乱れ撃ってきた。それらは全て東郷に撃ち落とされた。
その後に友奈たちがいる前線と合流するべく東郷たちも前進しようとする前に最後の敵である双子座のジェミニ・バーテックスが遂に姿を現してきた。それに気づいた東郷はすぐにジェミニへの攻撃を始めたが、身軽なジェミニはそれらをひらりと躱した。
「そんな!なんて素早いの!」
「ならば…氷翼月鳴!!!」
東郷の砲撃に紛れて刃も大技でなんとか敵を捕らえようとする。しかしこれも回避されてしまった。打つ手なしかと思ったその時、十時の方向から鳴子百合を模した光が現れ、そこから樹の姿が見えた。
「私たちの日常を…壊させない!」
「樹ちゃん!」
「犬吠埼樹!」
「そっちに行くなーーー!!!」
樹が叫ぶと周囲から大量のワイヤーが飛び出し、雨のようにジェミニへと迫った。ジェミニはそれに捕まると樹の方へ引き寄せられ、締め上げられた。
「『草花鳴りの結界』…悪い子は、おしおき!」
限界まで締め上げられたバーテックスはそのままワイヤーに切断され、その中にあった御魂も樹のワイヤーに貫かれて消滅した。
「よーし!これであとはあのでかいのだけよ!」
「張り切っていこー!!」
残る敵がスタークラスター一体を残すこととなり、希望が見え始めた。しかし、それもスタークラスター自身によって雲行きが怪しくなってしまった。
「ちょっと、なにあれ?」
風は思わず敵の次の一手に対して渇いた笑いを出してしまう。それもそうだ。今度の火球はそれまでよりも遥かに大きいものだった。ラグナはその様を見て一瞬『
だが、それでもあれだけ大きな攻撃なら撃つ前にどうにかできるかもしれない。そう思ったラグナはスタークラスターの懐に潜って、自らの最大の大技を使った。
「そうはさせねー!!ブラックオンスロート!!!」
大剣で切り上げたあと、ラグナは素早く剣を大鎌に変形させ、魔道書の力を大幅にあげた。
「見せてやるよ…『蒼』の力を!!」
鎌全体が右腕から出る黒い瘴気に纏われる。赤黒く輝く鎌の刃は禍々しく見えた。
「恐怖を教えてやる…」
その鎌で再び鋭い斬撃をスタークラスターに浴びせるラグナ。バーテックスの身体は徐々に切り刻まれ、周りの部位も切り落とされていく。
「地獄はねーよ…あるのは『無』だけだ…」
最後に鎌を振り上げると、ラグナの右手に一層バーテックス、そして神樹の力が吸収されていく。そして収束させた力を全て乗せたラグナの最後の一撃はスタークラスターの体の半分以上を吹き飛ばした。
「これが…『蒼』の力だ…!!」
スタークラスターの身体の再生は著しく低下し、動きも沈静化した。しかし同時にラグナも力を使い過ぎたのか、その場に膝を落とした。そこへ東郷たちが到着した。
「兄さん!!!」
「はぁ…はぁ…まだやれる!」
「アンタはまず休んで!他のみんなは今のうちに封印の儀を始めるわよ!」
『はい!!』
勇者たちは全員で半壊したスタークラスターを取り囲み、封印の儀を開始した。こちらの御魂もバーテックスの身体から露わになった。しかし、それは予想以上に巨大なものだった。
「大きすぎる…どうやってこんな…」
「そんな…最後の最後にこんなのって…畜生!」
「くそがッ、手間かけさせんじゃねーよ!」
「大丈夫!同じ御魂なら、今まで通りにやればいいんだ!」
「友奈…」
「それに私、力溜まっているから」
「ユウナ…テメェまで!」
「貴様、まさか使うつもりか?」
「うん…確かにラグナ君の話を聞いた後でちょっと怖いけど…それでも私は…みんなを守るためにこの力を使いたい。勇者って…そういうものだよね?」
「…本当にいいのか?」
「うん。私はもう決めてるよ」
言葉をかける男子2人の目を友奈は真っ直ぐ見る。彼女の気持ちが固いことを理解した2人はやがて根負けした。
「…絶対アイツをぶっ飛ばしてこい。決めるなら一発で決めるつもりでやれ」
「…そこまで言うなら僕は止めない。なら交代だ。今の僕では大した補助もできそうにないからな」
「うん!」
「分かったわ、友奈ちゃん!今の私ならアイツの元へ友奈ちゃんを運べる!」
「ありがとう、東郷さん!!」
「友奈さん、後は頼みました!」
「こっちのこいつは任せなさい!」
「行ったからには必ず帰って来なさいよ!!」
「行ってきます!!!」
「了解です!!!」
仲間たちのエールを胸に、友奈と東郷は御魂のある空へと向かった。他のメンバーは封印を保つために待機した。
「それにしても、この巨体でも拘束の時間が他のやつと一緒だなんて思わなかったわ」
「そりゃまあ、身体の半分が吹っ飛んだ挙句、そこもかしこも切り傷だらけだもの。抵抗しようと思っても出来ないのよ」
「いや、それだけじゃない」
刃はスタークラスターの切られた部分を指摘するとそこからは砂が溢れ、再生も行われていなかった。
「恐らく、あれが原因だ」
「ということはラグナ先輩の腕が原因ということでしょうか?」
「かもな。一応こいつはバーテックスにも通用するらしいし、力も奪われちまったんだろ?」
「取り敢えず、友奈と東郷が帰ってくるまでこいつを押さえないとね」
「頼んだわよ…友奈…東郷」
御魂の方へ近づいていくと無数の星屑が自分たちに向かって降って来た。自分たちの行く道を阻むためだ。
「東郷さん!!御魂が攻撃して来た!」
「任せて友奈ちゃん!迎撃するわ!地上には1つ足りとも落とさない!!」
星屑の弾幕を東郷が砲撃で応戦しながら2人は御魂への進攻を止めなかった。しかも降って来た星屑は1つも地上に落下することはなく、全て撃ち落とされた。何とか星屑の雨を突破はしたものの、途中で東郷がふらついた。どうやらかなり力を消耗してしまったようだ。
「東郷さん、しっかりして!」
「ごめんね、友奈ちゃん…ちょっと疲れたみたい…」
ふらつく東郷を抱きとめながら、友奈は彼女の手を握る。2人は目を合わせる。
「ありがとう、東郷さん」
「いいのよ、友奈ちゃん」
「見ててね、やっつけてくる!」
「いつも見てる…」
友奈は東郷の手を離すと彼女のユニットから跳んで勇者の切り札であるそれを呼ぶ。
「満開!!!」
光が友奈に集まっていくと満開のヤマザクラが映し出された。中心にいる友奈の両側には巨大な腕のようなユニットがある。彼女の腕の動きと連動するユニットが拳を握りながら友奈は御魂に一直線に突っ込む。
「みんなを守って…私はー…勇者になーーーる!!!」
友奈は御魂に突進し、東郷はその友奈に最後の援護に砲撃した。それは御魂に命中し、ヒビを作り出した。
「そこだぁぁぁぁ!!!!」
友奈は迷わずそこに鉄拳を抉りこむ。御魂にはクレーターが生じ、友奈はその中へ突入した。中に入っても友奈の勢いは止まらない。掘削機のようにどんどん御魂の中を掘り進む。やがて彼女のパンチは硬い何かに止められてしまった。
「硬い…って、うわぁー!!」
御魂が再生しようとしていたのか、中にいる友奈を押し潰そうとする。しかし彼女はまだパンチを打って突き進む。
「勇者部五箇条、ひとーつ!!なるべく…諦めない!!!」
自身の所属する部のモットーを叫びながら友奈は拳を振るう。
「そしてー、五箇条ー、もうひとーつ!!成せば大抵…なんとかなーーーる!!!」
拳を振るい続ける内に友奈は遂に御魂の中心部に到達し、それに最大パワーのパンチを叩き込んだ。花びらが舞う中、拳は御魂を見事に粉砕し、巨大な御魂はその姿を消した。
「やった…倒せたんだ…」
全ての力を出し尽くした友奈はゆっくりと落ちていくと東郷が作り出したアジサイのような足場の上に着地した。
「友奈ちゃん…お疲れ様」
「東郷さん…ごめん、美味しいところだけ持って行っちゃった」
「いいのよ…それとごめんね。最後の力でこれを作ったけど…地上まで持つかは分からないの」
「大丈夫、きっと神樹様が守って下さるよ」
「そうね…友奈ちゃんと一緒なら…きっと大丈夫」
足場は2人を包み込んで落下していく。中にいる友奈と東郷はそれぞれ神樹に祈っていた。
御魂の破壊を確認できた地上の面子が友奈たちを待っていると、空から2人を包んだらしきアジサイの蕾を見つけた。
「不味い!!あのままじゃあ地面に激突するわ!!」
「そんなことは絶対にさせません!!えーーい!!」
樹がワイヤーを展開して幾重もの網を作り出し、2人を受け止める態勢に入った。蕾の力に耐え切れず、何本ものワイヤーが千切れていくが彼女は諦めない。
「絶対に…絶対に助けてみせます!!」
最も頑丈に作り出した最後の網は見事に地面衝突ギリギリで友奈たちを受け止めた。夏凜はそれをやってのけた樹に賛辞を送った。
「やった!やったわよ樹!アンタがアイツらを助けたのよ!本当によく頑張ってくれたわ!!」
「ホントに…良かった…」
「えへへ…ありがとうございます…」
そう言って姉妹も力が抜けたかのように倒れた。4人の戦友が倒れたことにラグナ、刃、夏凜は大慌てで声をかける。
「おい、ユウナ!!トウゴウ!!フウ!!イツキ!!」
「しっかりしろ、結城友奈!!東郷美森!!犬吠埼風!!犬吠埼樹!!」
「友奈!!東郷!!風!!樹!!」
4人の名前を呼んでも返事が来ない。まさか、と思っているとふと声が聞こえた。
「…う、うん」
「…だいじょーぶだよー」
『なんとか…生きてまーす」
4人の生存が確認されて心から3人は安堵した。特に夏凜は心配で涙目になっていた。
「はー。取り敢えず、誰も死んでなくて良かったぜ…」
「全く…大した奴らだ」
「本当にもう…すぐに返事しなさいよ!!」
声が少し鼻声になった夏凜はそう言いながら座り込んだ。樹海も解けて勇者部が夕方の讃州中学の屋上に着くと夏凜はすぐに大赦に連絡を取った。
「バーテックスと交戦。負傷者4名。至急霊的医療班の手配を願います。なお、今回の戦闘でバーテックス12体は全て殲滅されました!私たち、讃州中学勇者部一同の勝利です!!」
夏凜は壁のある方を見ながら報告した。
「…へー、そうですか。勇者部の皆さんが…」
その夜、船に乗っている人物、峡真が端末で話しながら空を見ていた。
「あー、はい。今は病院の方に…ええ、わかりました。それではまたお願いしますねー」
端末からの連絡を切ると峡真は船の後ろの方を見ていた。そこには『鎖』で縛られた船長らしき人物が倒れていた。峡真は船長の方に歩み寄ってしゃがむと船員に話しかける。
「いやー、ありがとうございます。お忙しい中わざわざ船を『貸していただいて』。お陰でとっても助かりましたよー」
船長からの返事はない。虚ろな目をしながらブツブツとなにかを呟くだけだ。応答のしない船長を見ても峡真はさらに続ける。
「あれ?ひょっとして聞こえません?それとももう返事すら出来ないゴミになりました?それは少しかわいそうですねー、一体だれがやったのでしょうかねー?ま。『それ』は今使わせていただきますから少し失礼」
すると鎖は自分から船長の拘束を解いて峡真の周りをとぐろを巻くようにしていた。しかし、それでも船長は指を一本も動かさない。
「あらら、残念。少しは退屈しのぎの相手になるかと思いましたが抵抗もしないなんて。案外貴方もつまらない人ですねー」
その様子を峡真はケラケラと笑いながら嘲笑する。実はこの船長とは一悶着あったのだが、峡真が相手を武力で叩きのめした後、鎖で縛り上げて拷問していたため、最早人としては完全に死んでいた。鍵は船長から盗み取り、移動も鎖を使用して空から移動した。
「しかし、本当によくやってくれましたよ。あの子たちは。しかもまさか『奴ら』もこちらにとって好都合に動いてくれるとは思いませんでした」
峡真は薄ら笑いを浮かべながら先ほど電話していた時に見ていた場所を見る。そこは偶然なのか、丁度樹海で友奈に倒されたスタークラスターの身体があった場所だった。
「さてさて、そろそろ最後の『材料』を『回収』しますか」
そう言って峡真は手を翳すとその鎖の名を呼んだ。
「行きなさい、『蛇双・ウロボロス』」
峡真が命令すると、蛇の形をした鎖、『ウロボロス』は射出されると突然何かの空間の中へ移動した。
「私自身は『あそこ』には行けませんからねー。『アレ』についての文献を拝読させていただいたときはどう取りに行けばいいのか頭を悩ませたものですよ」
峡真はウロボロスを待っている間、聞いているわけがない船長に話しかけていた。
「でも丁度1年半くらい前ですかね?あのケモノ臭い九重博士が大赦に残したアークエネミーの1つがありまして。それが驚くほど私の目的と合致した理由で作られていたんですよ。全く、いくら勇者とは関係ないからと言って、少し管理体制が脆弱ではありませんかね?」
峡真はまだ話を続けていると、何かに反応した。どうやら目的のものを見つけたらしい。
「この鎖は相手の精神を攻撃することができるのですが、もう一つ、『異空間の移動が可能である』力を持っています。人間の精神という特殊な空間に対して攻撃ができるのはそういうためなのでしょうかね?」
しばらくするとウロボロスは光る何かを加えながらこちらに帰ってきた。虹色に輝くそれを見て峡真の顔は裂かれたように笑顔が広がる。普段の細目からもその邪悪な瞳が見える。
「これで前準備は終了ですね。書支部の文献にも『アレ』についての記録がありますから『製造』も可能です。全く、乃木家と上里家の関係者のみしか見れないなんて面倒な手順が必要でしたが、そこもなんとかなりました。後は…実行するだけです」
それを言い終えると峡真は讃州市、いや『讃州中学』の方を見る。
「さあて、最後の下ごしらえを始めますかねー」
勇者部逃げてー、超逃げてー。悪いヒャッハーが見てるー。
とまあ対スタークラスター戦はほぼ原作のままの展開になりました。若干変わったところもありますが。
次回、満開の後遺症に当たる勇者たち…それでは