蒼の男は死神である   作:勝石

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どうも勝石です。
ハザマ大尉とかいうレクイエムクラスの爆弾を抱えた本作ですが、しばらくは平和です…多分。


今回はスタークラスター戦の後日談。満開の代償をあらかじめ知らされたこともあってまだダメージが低い状態の勇者部ですが、どうなっているのでしょうか?それではどうぞ

The wheel of fate is turning…


Rebel28.代償と意味

「検査は終わった、友奈?」

「はい!バッチリ血を抜かれましたー」

 

スタークラスターとの激闘を終えた勇者部は讃州市の病院で検査を受けていた。全員には大きな怪我は無く、数日をすればすぐに退院できるとのことだ。しかし、それでも異変はあった。

 

「あれ、風先輩?その眼帯は?」

「え、これ?ふふふ…」

 

風は左目を押さえながら演技をし出した。

 

「この左目は先の暗黒大戦で黒き獣と戦った時に付けられた…」

「怪我をしたんですか!?」

「ま、待って友奈。冗談だから…まあ、でも多分戻らないでしょうね、これ…」

「ラグナ君たちがあそこまで止めようとしましたからね…大変なことになるって…これが満開の代償なんでしょうか?」

「そうかもね…でもこれでアタシたちの戦いは終わったのよ。なにせバーテックスを12体倒したんだから」

「はい!」

 

友奈がそう言っていると樹が診察室の奥から出てきて、友奈たちと合流した。

 

「あ、樹ちゃん。大丈夫だった?注射されて痛くなかった?」

「…」

「樹ちゃん?」

 

友奈が話しかけてきても樹は返事をしなかった。不思議がる友奈に風は複雑な顔つきで訳を説明する。

 

「声が出ないの…」

「え!?」

「樹は…声が出なくなってしまったの…」

「そんな、樹ちゃん!」

 

友奈がショックで声を上げると樹は悲しそうな笑顔を浮かべながらも首を横に振った。自分は大丈夫だと言っているかのようだ。しばらくすると東郷が刃と夏凜と一緒にやってきた。

 

「東郷を連れてきたわよ」

「お待たせしました」

「東郷さん!大丈夫だった?」

「今のところは何ともないわ、友奈ちゃん」

「そっか…良かった」

「そういえばラグナはどうしたのよ?」

 

風の疑問に刃が答えた。

 

「兄さんはまだ医師の診察を受けている。しばらくは出てはこれないかもしれん」

「そんな!どうして…あ」

「察しがいいようだな、結城友奈。いうまでもなく、蒼の魔道書のせいだ。あれだけ大きな力を振るって体に何の異常もないなどあり得ん。まして、『あの技』を使った以上はな」

「『あの技』?もしかしてバーテックスを倒したときの技のこと?」

「そうだ、犬吠埼風。兄さんは以前、あの障害と戦ったときに同じ技を使って奴に致命傷を与えた。その後に…暴走している」

「まさか…今回もどこか悪くなったとか!!」

「いや…今回はあの全身が震えるほどの邪悪な気配はまだ『見えない』。どうやら、レイチェル=アルカードらとの修行とやらは功を奏したようだ。ただ…前歴がある以上、大赦も慎重になっているだろう」

「じゃあ…ちゃんと帰ってこれるってことだね!!」

「よかったわ…如月君がそういうなら綾月君も今のところは問題なさそうね」

「全く…そういうところはもったいぶる必要はないわよ。というか大尉、アンタなんか口調変わってない?バーテックスのことを屑から障害なんて言うようになって」

 

夏凜が自身の教官の口調の変化を指摘すると、東郷は何かに感づいたようで刃の方へと顔を向ける。それに気づいた刃はバツの悪い顔をしながら白状した。

 

「三好夏凜。貴様はアークエネミーのことを大赦からどこまで説明されている?」

「神樹様の精霊が宿った特殊な武器でしょ?使えば無類の火力と術式適性があれば年齢性別関係なく使えるっていう」

「だから如月君はバーテックスと戦うことが出来るんだね!!」

「そうだ。そして最近になって術式やアークエネミーには強化が施された。それが『術式強化(オーバードライブ)』だ。これは精霊を一時的に体の内に憑依させて力を完全に引き出し、強力な力を使用する際の体の負担を減らすための術式だ」

「まるで神降ろしだわ。そんなことをして体は大丈夫なの?」

「…聞いたところでは精神汚染の反動があると聞いたことがある」

「ちょっと!!それって如月、アンタ!!」

「言ったはずだ。これは、僕が選んだ道だ。これ以上追究するな」

 

そういう刃は少し恐ろしさを一瞬感じた。修羅のそれに近いだろう。これ以上話すつもりはないのか、刃はそれ以上言葉を続けなかった。しばらくしてラグナが白衣の女性と一緒に来た。女性は小さなパンダの髪飾りを付けたスタイルの良い眼鏡の美女だった。

 

「みんな、おまたせしました。綾月さんの診察が終わりましたよ」

「あ、ラグナ君!どこも問題なかった?」

「特にはねーよ。…そっちは大丈夫だったか?」

「うん。風先輩は左目、樹ちゃんは声、私と東郷さんはまだ分からないかな」

「…そうか」

 

それを聞いて申し訳なさそうな顔になるラグナ。

 

「でももう大丈夫だよ、ラグナ君。これでもう戦わなくてもいいんだよ」

「…いや、それはわからねー」

 

ラグナの言葉に対して勇者部は疑問に思う。

 

「あの人型のノッポ野郎…確か『二人で一つ』だったよな、ジン」

「ああ。奴が出なかった以上油断はできない。最も、次に現れたときは斬る」

「じゃあもうすぐ終わりなんだね…ああ、そうだ!ラグナ君!如月君がオーバードライブを」

「…ジン。お前は…まあ言う必要もねーか」

「ありがとう、兄さん。さあ早速」

「殺り合わねーからな」

 

兄弟二人が相変わらずのやり取りを行っていると、女医師は東郷に声を掛けた。

 

「それでは東郷さん。他の精密検査は後で行うから、今は友達と一緒にいても大丈夫よ」

「東郷さん、精密検査って…」

「心配しないで友奈ちゃん。元々の足の検査よ」

「よかった~」

「フフッ。いい友達を持ててよかったわね、東郷さん」

「ありがとうございます、『蘭苺(らいち)』先生。『呂伊(ろい)』先生にもよろしくと伝えてください」

「分かったわ。では、またあとでね」

「…あと、頑張ってくださいね」

「…!もう、東郷さん!あの人とはそういう関係じゃないから!」

「私がお二人を見ている限りではそのようには見えませんよ?」

「で、では私はこれで!それでは皆さん、ごきげんよう!」

 

そういって蘭苺は慌てて診察室の方へ向かった。それでも勇者部は赤くなった彼女の顔を見逃さなかった。

 

「へえ、大人の人でもあんな顔をするんだね」

「と、東郷さん?あの女子力高めな眼鏡のお方はどなたでしょうか?」

「私の担当医の『飛鈴蘭苺(あすれ らいち)』さんです。とても気さくな方で素晴らしい女性ですよ。少し風先輩に似た方ですので、お話も合うかもしれませんね」

「おお!!それは良いことを聞いたわ!!そのときはよろしく、東郷!!」

「フフッ、了解です」

 

その後、友奈は大量のお菓子やドリンクを持ってきた。お祝いは豪華に、とのことだ。それを聞いて勇者部は各々のドリンクと菓子を手に取って乾杯した。

 

「おや、夏凜が珍しくジュースを飲むのね。てっきり青汁かと思ったわ」

「良いのよ、たまには。今日はおめでたい日であることには間違いないし」

「ジンも今日はソフトドリンクなんだな」

「…今日だけだ」

 

勇者部のやりとりを見ていて微笑む東郷に対して友奈は飲んだドリンクに対してどこか違和感を感じていた。それに気づいた東郷はそんな彼女を不審に思った。そんな中、風は端末を差し出してきた。

 

「あれ?風先輩これは?」

「新しい端末。多分勇者システムの改良か何かで回収したんでしょ?まあラグナたちの言う通りならまた返ってくるわ」

「そっか…じゃあ牛鬼とはまた会えるんですね!よかった~、これでお別れだったら言いそびれちゃうところでしたよ」

「また俺は頭をかじられるのか…」

「な、懐いてるってことだよ、きっと!」

 

その後、勇者たちは一夜の宴を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宴が終わったあと、友奈は東郷を病室へ連れて行っていた。二人は楽しそうに会話していた。

 

「私の退院、明後日なんだって。早く学校に戻りたいな~、病院って退屈だもん」

「私はまだ退院日が決まっていないけど、分かったらすぐに連絡するね」

「でもできたら一緒に退院したかったな~。東郷さんのいない学校なんて楽しみが3割減だよ」

「結構大きく下がるんだね」

「うん!」

「…ねえ、友奈ちゃん。さっきの宴会のときはどうしたの?」

「え?さっきって?」

「綾月君のいうように体のどこか、おかしくなってない?」

「…あはは。東郷さんには隠し事はできないな」

「話して…何があったの?」

「…味がしなかったんだ。お菓子も、ドリンクも」

「まさか味覚が…」

「でもきっと大丈夫だよ!次のバーテックスは一度戦ってるし、一体だけだからきっと楽勝だよ!」

「そうね…」

「でもお菓子の味が分からなくなるなんて人生の半分は損だ~」

 

友奈が明るくそういうのに対して東郷の顔の表情は曇った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、勇者部は東郷を除く全員が皆普通の学生生活へと戻っていた。現在部室にいるのは友奈、風、樹、ラグナの四人であった。因みに風は自身の眼帯を黒いものに変えていた。

 

「今日は夏凜ちゃんと如月君はいないんですね」

「あの二人、さてはサボりね。あとで罰として腕立て伏せ百回でもやらせようかしら?」

[夏凜さんや如月先輩なら本当にできそうだね]

「おいイツキ、そのカンペなんだよ?」

[お姉ちゃんの提案で、これなら話せます]

「そうか。なんかあったらスマホで呼んでくれ。いつでも手伝うぜ」

[はい!]

「ありがとね。とりあえず今日の活動なんだけど…四人でどうしようか」

[この人数じゃあ学園祭について話せないね]

「他の部から依頼も夏凜を稽古相手として指名してくれた剣道部しかいないのよね」

「ホームページも東郷さんしかやり方は知らないから活動記録の更新もできませんね…」

「仕事…ねーな」

 

しかしラグナの言葉に反して、部室の扉が急に開いた。

 

「おーい、風、樹!!瑠奈がジューベーさまを連れてきたぞ!!」

「お世話になりますー」

「あら、瑠奈に瀬奈じゃない!良く来たわね!」

[いらっしゃい、ふたりとも]

「あり?なんで樹お前そんなもんを持ってるんだ?」

「ちょ、ちょっと突発的な失語症で」

「変な病気もあるんだな。瑠奈は知らなかったぞ」

「早く治るといいですね」

「ええ、そうね…」

[じゃあ猫のお世話の仕方、やってみようか]

「オッケー!!」

「よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたの、東郷?」

「風先輩、少しお話があります」

 

依頼を終えたその晩、東郷は風に電話を掛けてきた。内容は満開をした勇者はやはり皆体のどこかしらの機能が消失していることだった。

 

「東郷は左耳で、友奈は味覚…でもあの娘はそんなこと一言も言わなかった…」

「おそらくみんなに、特に綾月君や如月君に心配を掛けまいといわなかったんだと思います」

「…ごめん。こんなことになって」

「風先輩は何も悪くありません。それにみんな事前には知らされていました。こうなる可能性は…十分に考慮できていました。それより大赦からは何か?」

「今のところは何も言われていないわ…」

「そうですか…分かりました。もう時間も遅いですし、もう切りますね。おやすみなさい」

「お休み」

 

東郷からの電話を切ると風は考え込んでいた。

 

(そうだ…次で最後なんだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も友奈は東郷の見舞いをしたりしながら数日過ごしていった。しかしそれでも夏凜も刃も中々勇者部に姿を見せない。友奈は少しずつ心配になって行った。再び4人で静かに作業していると、突如ラグナの頭の上にレイチェルが転移してきた。頭の上に乗っている彼女にラグナは怒鳴り散らした。

 

「おい!何勝手に乗ってやがるんだウサギ!!」

「貴方たちの様子を見に来たのよ。後、少し戯れにも来たわ」

「要は退屈だからもてなせってことじゃねーか!!」

「いらっしゃい、レイチェルさん!久しぶりですね!」

「今日も元気そうね友奈さん。そこの駄犬とえいゆうさんは少しは助けになっているかしら?」

「駄犬だなんてとんでもないですよ!本当にラグナ君や如月君にはお世話になってばっかりで、この前も助かっちゃいました!!」

「それは良かったわ…あら?風さん、その眼はどうしたのかしら?」

「まあ、名誉の負傷ってやつです」

「…そう。使ったのね、あれを」

[はい。ラグナ先輩からも危険性は聞きました]

「分かった上で使ったわけね…ならこれ以上はいわないわ」

 

レイチェルはラグナにアイスティーを用意するようにいって5人でティーパーティしていると、話の話題は刃たちになった。

 

「そういやラグナ、アンタ刃からなんか聞いてないわけ?」

「ジンなら大赦関係の仕事で部活に来る時間がねーってさ」

「そう…じゃあ友奈。夏凜は?アンタとラグナと同じクラスなのよね?」

「終わった後にすぐ帰っちゃうんですよ。夏凜ちゃん」

「あの娘も満開したのかしら?」

「ううん。してなかったと思います」

「そう」

 

レイチェルが夏凜について何かを考えていると、友奈は席を立って部室を出ようとした。

 

「私、夏凜ちゃんを探してきます!」

 

廊下の外へ駆け出すその背中をどこか頼もしく見ているレイチェルだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「満開したみんなが体の機能を一部失ってるって…それって友奈や東郷もって事よね?」

 

いつも鍛錬している夕方の海岸で夏凜は再びスマホのSNSにある風からの連絡を見た。そこには満開したメンバーは全員の現状と自分を心配した旨のテキストだった。

 

「…なんでここに来たのかな。私」

 

自分は長い間訓練をして、ようやく勇者の資格を得て、大赦から使命を課せられてこの讃州中学にきた。有体に言えば自分は勇者として戦うという目標は明確だったが、戦いの後にどうするのかは全く考えていなかった。しかも満開をしていない以上、自分はほぼ無傷だ。最後に敵は残っているらしいがそれだってはっきり言うと取りこぼした雑魚を片付けるだけ。自分がいなくてもどうにかなるものだ。

 

「こんなの…まるで一番役に立ってないみたいじゃない…私がここに来たのは戦うためなのに…大赦から選ばれた勇者なのに…」

 

目元を押さえる夏凜だが、すぐにまた訓練用の二振りの木刀を振るう。体に染みついた習慣はどうやら今更取れたりはしないようだ。数分剣を振るっていると、友奈がこちらに走ってくるのが見えた。

 

「かーーりーーんちゃーーん!」

「ゆ、友奈!?どうしてここに!?」

 

夏凜が友奈の登場に驚いていると、友奈がこけて顔から倒れてしまった。流石に放っておくことができない夏凜はすぐに彼女のもとへ駆けつけた。

 

「ちょっと、大丈夫なの!?」

「いたた…夏凜ちゃん、そこは受け止めてよー」

「無茶ゆーな。ほら、手」

「ありがとう」

 

夏凜の手を取った友奈は一度服に着いた砂を払ってから夏凜の方へと向き直った。

 

「それで…何の用よ」

「あんまりにも部活をサボっている夏凜ちゃんに部活へのお誘いに来ました!」

「うっ」

 

友奈にはっきりいわれて言い返せない夏凜。実際自分はあの戦いの後から勇者部へ行くことを避けるようになった。友奈はさらに言葉を続けた。

 

「このままだと、如月君と一緒に腕立て伏せ2323回、スクワット8604回、腹筋23564回させられるんだけどー」

「ちょっと待って、何その不吉な数字!!つーか桁!!」

「因みに風先輩は如月君限定でお兄さんとのじゃれあい一か月禁止っていう案もあったけど」

「多分それ実行したら風の方が罰ゲームになりそうよ…」

 

そんなことを冗談でも自分の知る如月大尉に発言したらどうなるのかが大体想像できる夏凜が空を仰いでいると、友奈はでも、と言いながら

 

「夏凜ちゃんが今部活に参加してくれたら夏凜ちゃんの分は全部チャラになります!さあ部活に入りたくなったでしょ?」

「ならない。そもそも私、部員じゃない」

「そんなこと…」

「それに、もう行く理由がないし…」

「理由って?」

 

友奈はそれを聞くと夏凜の木刀を握る力が強まる。

 

「私は勇者として戦うためにあの学校に、そしてあの部に行っていただけ!ほかの勇者と連携を取りやすくなるからよ!それ以外…理由なんて…ないッ…」

 

夏凜はさらに語気を強めて続けた。

 

「そもそも勇者部はバーテックスを倒すための部でしょ!!敵がいないならもうそんな部に意味なんてない!!」

「そんなことないよ!」

「ッ!?」

 

夏凜のどこか自暴自棄にも聞こえそうな暴言をきいても友奈はその発言を否定した。

 

「勇者部は風先輩がいて、樹ちゃんがいて、東郷さんがいて、ラグナ君がいて、如月君がいて、そして夏凜ちゃんがいてみーんなで楽しみながら人に喜んでもらうことをしていく部だよ。バーテックスがいるかどうかとか戦うとか戦えないとかなんて関係ない。勇者部はどんな時だって勇者部だよ」

「でも…私…戦う価値のない私なんて…もういる意味が」

「勇者部五箇条ひとーつ!『悩んだら相談』」

「え?」

「相談だよ。戦えるかどうかで夏凜ちゃんの居場所が決まったりするなんて…そんなことないよ」

「友奈…」

「夏凜ちゃんがいないと部室が寂しいし、私は夏凜ちゃんと一緒にいるの楽しいし」

「うっ…」

「それに…私は夏凜ちゃんのことが好きだから」

「す!!?」

 

友奈からまさかの告白まがいのことをいわれてしまい、夏凜は顔がトマトのように真っ赤になってしまった。そこまでいわれてしまい、夏凜は顔を背けつつも再び部室に向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結城友奈、夏凜ちゃんをつれて帰還しましたー」

「おう、おかえりユウナ、カリン」

「お、おかえり友奈。夏凜もおかえり」

「ゆ、友奈がどうしてもっていうから」

[二人ともおかえりなさい]

「おかえりなさい、友奈さん」

「あ。アンタは」

「お久しぶりね、夏凜さん。あれから楽しいことはあったかしら?」

 

こちらを楽し気に見つめてくるレイチェルに夏凜は少しぎこちなくも返事した。

 

「…ええ、あったわ」

「それは良かったわ。それならえいゆうさんの努力も報われるわね」

「おい、貴様。いつ僕はそんなことを言って良いといった」

「え?何のことよ?」

「ほらえいゆうさん。とっとと話して差し上げなさい」

「貴様に言われるまでもない」

 

愉快なものをみているかのようにほほ笑むレイチェルに対して苦々しい顔をしながらも刃は夏凜の前に出る。彼の姿を見た夏凜は少し緊張する。もしや大赦からの帰還命令でも来たのだろうか?

 

「三好夏凛。貴様は中学校卒業までこの讃州中学校に所属することを許可された。このまま勉学に励め」

「…え?」

「大赦からは以上だ。異論は受け付けん」

「ちょ、どういうこと!?」

「わからないのかしら?えいゆうさんは先の戦いの報告だけでなく、戦いの後に貴女がここに留まることができるように働いていたのよ」

「如月君、本当にありがとう!!」

「ジン。お前、成長したな!」

「アンタ、やるじゃない!!できる部員がいて、お姉さんは嬉しいゾ」

[よかったですね夏凜さん。こんないい上司がいて」

「ック!話は終わりだ!僕は帰る!」

「おいジン。ユウナが買ってきてくれたシュークリームは貰わなくていいのか?」

「そんなもの…」

「如月君!」

「なんだ、結城友奈」

 

部屋を出ようとする刃を友奈が引き止め、シュークリームを渡した。

 

「ありがとう、如月君。夏凜ちゃんの居場所を守ってくれて」

「…その女は戦い以外をあまりにも知らなすぎる。そんな奴が戦いのない世界を知るのにここが都合が良いだけだ」

「だったらもうちょっとだけでいいから如月君にもいてほしいなー」

「…」

 

刃はそっけなく友奈からシュークリームを受け取ると、部屋へ戻って勇者部とともに放課後を過ごした。数日後、東郷の退院の日時が決まり、その日に勇者部全員で彼女を迎えた。夏凜が正式に讃州中学に留まる許可を大赦から直接連絡をもらったのはその日の夕方だった。その後も平和な日々が続き、そして…夏休みになった。

 

 




原作のジンは仕事はできるし(士官学校時代生徒会長)、ツバキには優しいし、根は良いやつだと思うんだ。ただちょーっと病んでてブラコンなだけなんだ。


今回のゲストキャラはオリエンタルタウンの町医者、ライチ=フェイ=リン!いや、原作での彼女の扱いがちょっとかわいそうだったのでここではロイ(ロット=カーマイン。またの名はアラクネ)と仲良く病院で勤務するようにしました。


次回は旅館回!はっきり言おう、ギャグ回だと。それではまた
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