蒼の男は死神である   作:勝石

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どうも勝石です。

さーてやってきました、原作サービス回!なんか書いているうちにギャグじゃなくてほのぼのになったけど大丈夫。多分ギャグのフルアクセルは次回。それではどうぞ!

The wheel of fate is turning…


Rebel29.蒼海でのひと時

夏休みになり、讃州中学勇者部は各々の日常を送っていた。未だに最後のバーテックスらしき存在の情報はなく、至って平和な日々が続いていた。そんなある日、大赦から自分たちにこれまでの功労を評価して旅館を貸切で泊まれるように働いてくれたと言う知らせが来た。

 

現在彼女らは真夏の太陽の下、広い海を目指している。全員、事前に買ってきた水着を着用していた。青いタンキニを着た東郷の車いすを押していたピンクのビキニを着た友奈が一番乗りだ。

 

「海にー到ちゃーーく!!」

「あはは、友奈ちゃん、速いよー!!」

 

二人がついて少しあとに犬吠埼姉妹がついてくる。風は橙色のビキニ、樹は緑のワンピース型の水着を着ていた。二人はビーチに着くと一度パラソルの下で休んでいた。風は売店で買ったかき氷を食べている。

 

「ここで大将が落ち込んでたら部の指揮に関わるからね。楽しまなくちゃ」

[ホントは楽しいことが目的でしょ?]

「あは、バレた?」

[私も楽しい]

「それは良かったわ」

「風ーーー!!競泳しましょう!!体ならあったまったわ!!」

 

合流してきた夏凜が白のビキニを着ながら風に勝負を仕掛けてきた。そんな彼女の言葉に風はニヤリとしながら力強く答える。

 

「いいわよ。瀬戸の人魚と呼ばれたアタシの泳ぎ、見せてあげるわ!!」

「そう呼ばれてるの?」

[自称です]

「だよね」

 

そのまま二人は海に向かい、泳ぎだした。樹はまだ少しパラソルの下にいた。その後に男子二人がやってきた。ラグナは黒、刃は白いストライプがはいった青いハーフパンツ型の水着を着ていた。ラグナの右腕は黒い布で隠されている。

 

「イツキ。お前泳ぎに行かねーのか?」

[地面が熱くて]

「砂と接触する時間を最小限にしながら一気に駆け抜けて水に浸かれ、犬吠埼樹。そうすれば少しは熱さが軽減されるはずだ」

[分かりました!]

 

刃のアドバイスを聞いた樹は砂の熱を避けるのに大きく足踏みしながら海の方へ駆け抜けた。彼女が行くと刃がさっそくアップを始めた。

 

「さあ兄さぁん!!日差しの下でも存分に殺しあおうよ!!!」

「ここにきてもテメェ、ぶれねーな!!!ああ、いいよ!!来いよ!!!」

 

そのまま海パン姿のまま、男子二人はお互いの得物を手にじゃれあい(戦い)始めた。二人の変わらない様子をほのぼのと見ながら友奈はこれから海に入るであろう樹に話しかけた。

 

「樹ちゃん、これから海に入るの?」

 

樹は友奈の問いに対して頷いた。

 

「私たちもこれからだよ。今東郷さんのヘルパーさんを呼んだところなんだ」

「樹ちゃん、泳げるんだっけ?」

 

東郷の質問に対して樹は少しだけとジェスチャーを示した。

 

「優秀だね。勇者部の未来は安泰だわ」

 

それを聞いて照れ隠しなのか、謙遜なのか。樹は手を横に振っていた。そのときに友奈たちの周りでもう一人別の声がした。

 

「楽しそうにしていて何よりだわ」

「あ、レイチェルさん」

 

転移してきたレイチェルに友奈は応対した。どうも彼女の突然の登場は勇者部ではもう見慣れた出来事になってきたようだ。レイチェルは黒いワンピース型の水着と浮き輪を持ってきていた。お供のギィとナゴも一緒だ。

 

「今日はラグナが泊まり込むなどというから気になって見に来たの。まさかこんな楽しそうなことをやっていたなんてね」

「混ざりたかったんですね…」

「でも宿泊費などはどうするんですか?」

「もう自分の分は払ってきたわ。城にいても退屈ですもの」

「行動が速いですねー」

「…それで、こんなに人が少ない海にまで来てあの頭に戦いしかない脳筋兄弟はいったい何をやっているのかしら?」

 

レイチェルが絶対零度の視線を未だにぶつかり合うラグナと刃に向けると、友奈が説明した。

 

「あの二人ならいつもみたいに遊んでますよ。楽しそうにしているからいいんじゃないですか?」

「…貴女たちの水着姿については?」

「特に何もありませんでしたよ?」

「ここにきてからずっとあの調子?」

(コクリ)

「…はあ。ちょっと失礼するわ。大砲発射」

 

勇者たちが笑いながらそう説明するのを見てどこか思うところがあったのか。眉をひそめたレイチェルはタイニー・ロベリアを一発打ち上げ、ちょうど兄弟たちの真上の位置にあるのを確認してから雷を落とした。

 

「『ソード・アイリス』」

「あばばばばば!!?」

「kうあjpdじ☆◎¥@!!?」

「え!?なんでいきなり攻撃したんですか!?」

「いいこと、友奈さん。馬鹿は直接言わないと分からない時があるの」

 

若干美味しそうな匂いを出しながら焦げたラグナと刃が倒れこんでいるとレイチェルが極黒スマイルを浮かべつつ彼らのもとへ足を運んだ。

 

「全く貴方たちは。ここまで来てそんなことをしているなんて。いっそ男をやめてはいかがかしら?」

「う、ウサギ…なんでテメェがここに」

「レイチェル=アルカード…よくも僕の兄さんとの殺しあいを邪魔してくれたな!」

「口を慎みなさい、愚鈍でどうしようもない愚者たち。先ほど来たばかりの私のことは大目に見たとして、勇者たちの水着を見て一言くらい何か言うことはなくて?それともその眼はヘドロで書かれた落書きかしら?」

 

レイチェルからの有無を言わせない口調に二人が怯んでしまった。なんで怒っているのかがさっぱり分からないが、どうも勇者たちと関係があるらしい。最初にラグナが口を開く。

 

「いや、なんでそんなこと言わなきゃいけねーんだ?あいつらだって嫌がるだろ?」

「そんなものよりもむしろ僕は兄さんの水着姿を見て今最高にハイな気分だ」

「少し調教が必要のようね…」

「おいやめろ!!ここで雷を落とすんじゃねー!!」

「だったらこんなところで時間を無駄にしてないで早くあの娘たちのところへ行きなさい」

「分かったよ…あとテメェもそこそこ決まってんじゃねーか」

「良いだろう…」

「フン…」

 

顔を背ける今のレイチェルに逆らうのは無理だと判断した二人は勇者たちのいる浜辺に向かった。

 

「えっと…ラグナ君、如月君。大丈夫だった?」

「まあな…」

「気にする必要はない」

「よかったね友奈ちゃん。本当は二人とも一緒に遊べたらって思ったでしょ?」

「うん!!」

「あ、あと…」

「どうしたの?」

 

なぜか顔を背ける男子二人の様子に女子たちは頭に疑問符を浮かんだような表情をしていると男たちはようやく言葉を発した。

 

「まあ、似合っているぞ。水着」

「悪くない…」

「二人ともありがとね!!」

「ありがとう、二人とも」

 

友奈と東郷はお礼を言い、樹は少し恥ずかしそうにしながらも嬉しそうにお辞儀していた。レイチェルも後から合流した。

 

「待たせたわね」

「これで全員集合だね!」

 

こうしてレイチェルが加わり、友奈たちは海に向かった。友奈と樹は海に潜って押し花に使えそうな海草を探したり、ラグナと刃は風と夏凜に混ざって競泳を始めたり、レイチェルは浮き輪に乗ってナゴを日傘に変わってもらいながら東郷とゆっくりと時間を過ごしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うあああ!!また友奈にまけたーー!!」

「やったーー!!私の勝ちーー!!」

「すげーな、ユウナ。さっきから全勝じゃねーか」

「砂がね、ここまでなら取っていいよって語り掛けてくるの」

「どういうことよそれ!?」

「友奈ちゃんの棒倒しの腕は子どもたちとの砂遊びで鍛えられているから」

「ふーん。そんなこともしていたのね、この部」

 

レイチェルはラグナを面白おかしく見ながら少し笑っていた。

 

「ンだよウサギ。俺を見て」

「いえ、あのラグナが子どもたちと戯れているところを想像していたら…なんだか面白そうな光景ね」

「あぁ!?そりゃどういう意味だ、ウサギ!!」

「だって貴方が見知らない子どもと砂遊びや絵描きなんて体をあまり動かさない遊びを好んでやるなんて想像できないもの」

「…確かに砂場とか絵描きはあんまり出来ねーよ」

「まあ、大方球技かかけっこでもしているでしょう?」

[まさにその通りですよ。よくわかりましたね]

「一応、見てきてはいるつもりですもの」

「それにしても東郷のこのスキルはどこで培ったのよ?」

[高松城!!]

「本当によくできているな。ほぼ図鑑にあった通りじゃないか」

 

友奈たちが棒倒ししている隣で東郷は砂で高松城を製作していた。その完成度には他の勇者部部員は感嘆の声を上げる。ラグナは密かにレイチェルのもとへ近寄って耳打ちした。

 

(ウサギ。あれの実物をみたことがあるのか?)

(ええ、もちろん。美しい城だったわ。うちのアルカード城には敵わないけど)

(実際に見てきたやつとしてはどうよ?)

(とてもよくできているわ。細部まで丁寧に再現されて…まるで本物が小さくなって目の前にあるみたい)

(そこまでなのか…)

 

レイチェルですら東郷の作った高松城を高く評価していることを考えると、相当レベルの高い出来であることがラグナにも分かった。勇者たちが盛り上がっているとそこへ突然別の人物が登場した。

 

「レイチェル様。例のものをご用意いたしました」

 

ヴァルケンハインが持ってきたのはスイカだった。どうやらレイチェルが次にやろうと考えたのはスイカ割りのようだ。

 

「ご苦労だったわ、ヴァルケンハイン。貴方も参加するかしら?」

「いえいえ。私はレイチェル様の留守の際の城を御守りしております。レイチェル様こそ、勇者の皆様方と楽しいお時間をお過ごしください」

「分かったわ、いつもありがとう」

「それでは皆様。良い時間を」

 

そういってヴァルケンハインはアルカード城へ戻ろうとするが、彼を引き留める声が聞こえた。

 

「あ、あの!待ってください!」

「おや?どうかしましたかな…これは」

 

ヴァルケンハインが振り向いて友奈に気付くと彼としては珍しく少し驚いていた。何か不都合があったのかと思ったのかと思って少し不安そうな顔になったことに気付くとヴァルケンハインは応対した。

 

「いや申し訳ない。お嬢さんが少し『知り合い』に似ていたものでな。つい驚いてしまった」

「い、いえ。気にしなくても大丈夫ですよ!」

「それでは、この老人めになにか伝えたいことがありますかな?」

「はい!あの…」

「ヴァルケンハイン=R=ヘルシングと申します」

「ヴァルケンハインさんですね!讃州中学勇者部、結城友奈です!ヴァルケンハインさんは城に帰ったら何か予定はありますか?」

「城の掃除、家事、警護諸々ですな」

「そうだったんですね。お仕事、頑張ってください!!」

「はは、ありがとうございます」

「いえ、ヴァルケンハイン。少しお待ちなさい」

 

レイチェルがヴァルケンハインを呼び止めた。不思議に思った彼は主人の方へと向いた。

 

「どうかなさいましたか?レイチェル様?」

「今日は海で過ごしなさい。今の時間帯なら問題ないはずよ」

「ですがレイチェル様。それでは城は」

「その件は十兵衛に相談すれば問題ないわ。夜になったら帰るのは許可してあげるからせめて海に来ている間はいなさい」

「レイチェル様がそうおっしゃるならばそうしましょう」

「でも、さすがに邪魔をしちゃったら」

「お気になさるな。レイチェル様がここにいるようにと申し上げるなら私は異を唱えません。むしろ気を遣わせてしまいましたな」

「いいのよ。私も単純に彼女たちといるのが楽しいだけですもの。貴方が来てはならないなんてことなどなくて?」

「ははは。どうやらお嬢さん方はレイチェル様にすっかり気に入られたようですな」

 

そういってヴァルケンハインもスイカを所定の位置に置き、レイチェルが十兵衛から承諾の電話を貰うと勇者部によるスイカ割りが始まった。スイカを割る役に樹が抜擢された。目隠しをして周囲を探っている樹に東郷が指示を送る。

 

「敵位置、目標、二時の方向!!」

「樹ちゃんから見て右の方向だよー!」

「これがスイカ割りなのね…見てみるとなんとも単純な…って樹!!そこよそこ!!」

「貴様も夢中になっているではないか」

「うっ」

 

しばらく仲間の声を頼りにスイカの位置を探っていると樹は木刀を大きく振り上げる。

 

「アハハハ!なんなのその大げさな構え?」

「いやあれ、お前の真似だろ」

「え?アタシあんなん?」

「あんな感じね」

 

その後樹はそのまま木刀を一気に下した。見事に木刀はスイカに命中し、真っ二つになった。

 

「ほお、これは中々良い一撃が入りましたな」

「樹ちゃんは磨けば磨くほど立派な大和撫子になるわ。もっと磨かないとね」

「おお、よかったわね樹!アタシの次に女子力の高い東郷に褒められるなんてすごいわよ!」

[ありがとうございます]

「これからは私の技術や思想も伝えますね」

「それはほどほどにしておけ、東郷美森…」

 

こうして時間は過ぎていき、やがて夕方になった。宿に帰る支度をヴァルケンハインが手伝ってくれた。

 

「ありがとうございます。色々助けもらいました」

「構いませんぞ、風さん。これも執事の務めです」

「でも本当になんでもできるのは本当に頼もしいです。レイチェルさんが頼りにするのも納得ですね」

「お褒めいただき、ありがとうございます。東郷さん」

 

あと、とヴァルケンハインが少し勇者たちに注意を残した。

 

「くれぐれもレイチェル様の寝起きには気をつけるように。起きた時にはこれを差し上げてくだされ」

「分かりました!!」

 

友奈が手作りのスコーンを受け取った後、ヴァルケンハインは丸亀城へ帰って行き、友奈たちはレイチェルの転移で宿に戻り、夕食が準備された部屋へと戻った。帰っていった彼は何処か楽しいことがあったのか嬉しそうに微笑んでいた。ちなみに男子たちは隣の部屋に泊まっている。用意された食事はかなり豪勢なもので魚の活造りやカニまで用意されていた。

 

「見てみて!!カニカマじゃないよ!!本物のカニさんだよ!!」

「こ、これ。部屋を間違えたのかしら?」

[この部屋で間違いないよ]

「私たち、好待遇みたいですね」

「そりゃあここは大赦に関係している旅館だからね。そういう繋がりもあるでしょ」

「そういえばこの旅館に泊まる手配をしてくれたのって峡真伯父さんだったなー」

「峡真?それは誰のことかしら、友奈さん」

「私の伯父さんです!ちょっと変なところもあるけどいい人ですよ」

「あらそう」

「いやー、それにしても美味しそうねー…て、あ…」

「どうかしたのかしら?」

[友奈さんは味が分からないんです…]

「そういうことね…」

 

少し気まずい雰囲気になる一行に対して友奈は料理の一つに手をつけ、それを食した。

 

「うーん、この刺身の歯ごたえとツルツルした喉越しがたまらないねー」

「友奈…」

「五感全てを使って味わおうとするなんて、友奈らしいわ」

[すごいです]

「もう…友奈ちゃん。いただきますが先でしょ?」

「あ、ごめんね。美味しそうだったからつい」

「ふふふ、ではそろそろ食事を始めましょうか?」

 

全員でいただきますといった後、それぞれ食事を始めた。皆大いに笑い、満足した様子だった。

 

「場所的に私がお母さんですからご飯のお代わりが欲しいときは言ってね」

「東郷が母親かー。厳しそうね」

「門限を破る子は柱に磔りつけます」

「ひいっ!?」

「まあまあ、お前。そこまでしなって」

「貴方が甘やかすから成績が落ちてきているんでしょ?」

「いや、アンタたち夫婦か」

「2人とも、本当に仲がいいのね」

「はい!私と東郷さんは一番の大親友ですから!!」

「ありがとう、友奈ちゃん」

 

仲の良さそうな2人を見てレイチェルはどこか懐かしそうに眺めている。そんな彼女に使い魔たちが寄ってヒソヒソ話しだした。

 

(なんだか『あの2人』を思い出すねー姫さま)

(ええ、古い記憶にある。温かい思い出よ)

(友奈って子は殆ど同じにしか見えない分、余計そう感じるっス)

(仕方がないわよ。だって彼女は『特別な子ども』だもの)

(でも姫さまとしてはあのラグナと同じ部屋にいたか「ムギュッ!?」

「ギィ、私はいつそんなことを言ったのかしら?」

「アンタも学習しないねー」

 

余計な一言を口走ってしまったギィはレイチェルによって床に押し付けられた。何事かと動揺する勇者部に対してレイチェルは何でもないと告げた。

 

「こうして見ると、レイチェルさんもかなり厳しそうですね…ラグナは上手くやってるのかしら?」

「基本的にはあの子が勝手に突っかかって私が適当に対応しているだけよ。まあ、流石に度がすぎると『調教(しつけ)』もやるけど」

「私、なんか今のレイチェルさんの『躾』が別の言葉に聞こえて怖いんだけど」

 

黒い笑顔を浮かべながら楽しそうにそう話すレイチェルに夏凜は寒気を感じた。流石は完成型勇者。危機感知能力もピカイチだ。レイチェルがそう話した後、風が左目を押さえながら苦悶の声を上げる。

 

「ぐああああ!!アタシの邪眼がさらなる生贄を求めている!!」

[おかわりだそうです]

「はいはい、まだいっぱいありますからね」

「でもいつかこういうのを日常でも食べられる身になりたいわねー…自分で稼ぐかいい男を見つけるか」

[前者はともかく、後者はちょっと不安かも]

「なんでよ!?」

「まあ。アンタの女子力って女子力(物理)みたいなところもあるし」

「そんなことないわよ!!女子力溢れまくりよ!!」

「私から言わせれば女子力云々は東郷とレイチェルさんを見習った方がいいと思うわよ」

 

そう彼女たちの方へ見る夏凜たち。実際二人の食事しているときの所作や食べる際の姿勢が非常に洗練されたものだった。

 

「うわー、二人とも綺麗ー」

[美しい!!]

「まあ、私もそこそこマナーにはうるさい方だけどねッ」

 

そういいながら夏凜は煮物に箸を突き刺して食べようとした。

 

「夏凜さん。それはマナー違反ではなくて?」

「あ」

「そういう細かい習慣は癖になるから気をつけなさい」

「レイチェルさんがこれだけ厳しいなら綾月君も相当所作について叩きこまれていますね」

「いいえ。あの子はそこまでよくはないわよ。元々型にはまったことが嫌いな子だからね。私から言わせれば所作に関してはえいゆうさんの方が上よ」

「流石十二宗家のお坊ちゃまね」

「そういえば如月家の人間だったわね…いつものアレで忘れそうになるけど」

「あはは…」

 

そうして女子たちは楽しいひと時を味わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのころ、ラグナたちは何をしていたのかというと食事を終えた後、下の階にあるレクリエーションルームで卓球に夢中だった。二人の試合は中々白熱したものになっている。11点を先取した方が勝ちの一本勝負の中、現在9-10でラグナが少し押されていた。刃がサーブを打ってから交わしたラリーの回数が軽く100回を超える中、刃が返した球にラグナは渾身の力を込める。

 

「喰らいやがれ、『デッドスパイクスマッシュ』!!!」

「甘いね兄さん!!『雪風返し』!!!」

「なんだとっ!!?」

 

渾身の一撃を刃に返され、そのまま点を取られた。今回の勝負は刃の勝ちだ。

 

「くっそ~、絶対決まったと思ったんだけどな~」

「まだまだだね、兄さん」

 

次に何をしようかを考えていると、二人の後ろから黒スーツの男が現れた。ラグナと刃はすぐさまその気配に気づいて後ろに振り向きながら警戒する。

 

「待ってくださいよー。私何もしてないじゃないですかー」

「黙れ、貴様の顔を見ていると無性に吐き気がするんだ」

「…何の用だ。ハザマ」

「せめて『峡真さん』と呼んで欲しいですねー。それよりも、いつも友奈さんたちがお世話になります、『ラグナ君』、『如月大尉』。今回の旅行は私が普段の感謝を込めて計画させていただきました」

「…そうかよ。で?テメェが言いてえのはそれだけか?」

「いえいえ。私、先ほどの2人の試合を堪能させてもらいましたが、とても良い試合でしたよ。手に汗が出てくる程でした」

「御託はいい。貴様の要件を簡潔に手短に話せ。そして失せろ」

「私への当たりが酷いですねー。ではそうしましょう。汗といえばお2人はもう大浴場に入られました?」

 

峡真の話した大浴場をラグナと刃は知らないと言っているかのようだ。峡真はさらに話を続けた。

 

「どうやらご存知でないようですねー。実はこの旅館、数人が一度に入れる大浴場が設置されているのですよ。どうです?試合で流した汗でベタベタになった体をお湯でサッパリしてきません?」

「…何も仕掛けてねーだろうな」

「とんでもございませんよ!ここの浴場は時間交代制ですが今は『男子風呂の時間』です。ゆっくり、入れますよ」

 

2人は一度大浴場の看板を確認しに行ってきた。確かに今は男子風呂の時間だ。

 

「…そうだな。そろそろ風呂に入られねーといけねーし、何よりこれ以上アイツと関わるのもごめんだ。俺は入るがジン、テメェはどうする?」

「僕も入るよ!兄さんとは洗いっこしたりとかしたいし!」

「…一応言うが、襲ったりしたらマジでぶっ飛ばすからな」

「やだなー兄さん。僕がいつそんなことしたんだい?」

「普段のテメェの行いを振り替えようか?ったく…」

 

そう言いつつも兄弟は仲良く大浴場への暖簾をくぐった。そんな2人をみながら峡真は悪戯っぽく笑っていた。

 

「それでは。どうぞごゆっくり、ラグナ君」




ま た お ま え か。
まあ、多分原作での彼の行いに比べれば幾分マシですけどね。

さて、今回のゲストキャラはまあ、以前にも出ていたけれど本格的に勇者たちと絡んだのは今回で初、レイチェル様に忠実な狼男執事、ヴァルケンハイン=R=ヘルシングです。癖の強いレイチェルですらデレる彼はやはり勇者部からも信頼されるだろう。

次回はギャグフルスロットルだぜ!!それではまた
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