蒼の男は死神である   作:勝石

39 / 133
どうも勝石です。
ゆゆゆい二周年記念イベ後半戦に出てきたぐんちゃんは最高だった。いやホント大人っぽくて最高です。いつか彼女もここに出るかな。

さて今回は温泉回。とあるゲームのイベントをヒントにできてしまった話ですが、ちょっと短めのカオスになったかも。それではどうぞ


Rebel30.温泉脱出大作戦

「ふー、しかしいい湯だな」

「本当にそうだねー」

 

ラグナと刃は大浴場の端で風呂に浸かっていた。峡真が紹介するものだから少し不安だったが、確かに誰も他に入浴しておらず、今は自分と刃の二人しかいない。

 

 

「しかしあれだな。誰もいない分、ここの温泉も広く感じるな」

「沙耶だったら泳ぎだしたりするかもしれないね」

「…ジン。お前はこれからどうするんだ?」

「これからって?」

「あたりめーだろ?これからも勇者部に居続けてくれるのか?」

「…フッ。少なくとも、自分から離れるつもりはないさ」

「…そうか」

「なんだい兄さん?僕が兄さんから離れるとでも思ったのかい?」

「お前は毎回それだな…ま、大赦の方もお前を引き戻すつもりはねーってことか」

「今のところはね。例えそういってきたとしても行くつもりはないけど」

 

兄弟はそんな話をしながらゆっくりしていると突然温泉の向こうにある入口が開いた。自分たち以外に他の客がいないのに何事かと兄弟たちが訝しんでいると聞こえてはならない声が二人の鼓膜をぶん殴った。

 

「うわー、本当に広いねー!!」

「お~。これはまた立派な温泉ね~」

「友奈ちゃん、あっちに浸かろうか」

「うん!!」

「アンタたち!!あんまりはしゃぐんじゃないわよ!」

 

まさかの讃州中学勇者部の面々の声が聞こえてきた。いや聞こえてしまった。いるはずのない彼女たちに見つかるまいとラグナと刃は急いで岩の陰に身を隠した。

 

「ちょっと待て!!?なんであいつらがここにいるんだ!!?」

「何を考えているんだ奴らは!!今のこの時間は男子風呂のはずだぞ!!?」

 

女子の参入により、さっきまでリラックスしていたラグナと刃の身体は冷水をぶっかけられたような感覚に襲われた。二人の思考回路は今この窮地をいかに無傷で脱出できるかを考えるのにフル稼働している。とりあえず情報が足りないのでまずは彼女たちの位置を把握しなければならない。

 

「おいジン。ちょっとあいつらの様子を見てきてくれ…」

「了解…」

 

そう言って刃は岩陰から顔を少し出して彼女たちの様子を見る。数秒程すると彼は兄のもとへ戻ってきた。

 

「ど、どうだった?抜け出せそうか?」

「…兄さん。ことは僕たちが思った以上に深刻かもしれないよ」

「な、なんだよ」

「…どこを通っても誰かしらに見られる可能性が高いみたいだよ」

「最悪の状況ってことか…」

 

これにはラグナも頭を抱えた。出ようとすれば確実に誰かに見られることが判明した今、もはや自分たちがいる奥へ彼女たちが来るのも時間の問題だ。いっそ自分たちの存在を明かしてとっとと退散することも考え始めた。

 

「…出てきちまったら怒るだろうな」

「結城友奈と犬吠埼風の対応はまだマシかもしれんが、東郷美森に関しては自分以上に結城友奈を見てしまった時に何をしでかすかわからん。あの中だったらできれば一番見つかりたくない人物だ」

「カリンは間違いなくキレるだろうし、イツキは泣きそうだし、それを聞いたらフウも多分暴れるよな…」

「…自分たちから出るっていう案は一度保留にしよう、兄さん」

「ああ…」

 

次の策を考える2人だったが、更にそこへ追い討ちをかけるかのように別の声が聞こえてきた。

 

「はあ、今日はゆっくりできてよかったわ」

「レイチェルさん。こっちですよー」

「分かったからそう急かさないで頂戴。そろそろそっちに向かうわ」

 

レイチェルの声を聞いてしまったラグナはますます取り乱してしまった。

 

「嘘だろ…ウサギまでいんのかよ」

「…兄さん。もしレイチェル=アルカードに見つかってしまったらどうなるんだい?」

「良くて一生揶揄いのネタに使われて、最悪の場合は…『おしおき』だな」

 

とうとう打つ手がなくなり始めた二人はどうしようかと考えている間に、呑気にも女子たちは会話を始めた。

 

「ああ極楽~」

「こうしていると、全身の疲れが消えていくようね」

「ていうかアンタはどうしてそんな遠くにいるのよ」

「なっ!?べ、別にいいでしょ!?そんなの!」

「ははーん」

「な、なによ」

「なーに、そんなに恥ずかしがらなくてもいいのよ夏凜ちゃーん。『女同士』の付き合いなのに何を照れる必要があるんだか?」

(すまねえフウ。ここに男子が二人いるんだ)

 

平和に入浴を楽しんでいる彼女たちに心底申し訳ないと心の中で謝罪するラグナ。刃はというと温泉の広さに乗じて泳ぎだした友奈を監視していた。万が一自分たちがいる場所についてしまったらそれこそ終わりである。

 

「でもここの温泉は広くて泳ぎやすいね~」

(頼むから止まれ。そしてそのまま引き返せ、結城友奈!!)

「だめよ友奈ちゃん。行儀が悪いわ」

「はーい」

(よくやった鷲尾!!今ほどお前に感謝したことはないぞ!!)

 

心の中で東郷が友奈を止めてくれたことに感謝する刃。無論そんなことに毛ほども気づいていない東郷は友奈の顔に湯を少し飛ばした後、犬吠埼姉妹の自分への視線を感じて彼女たちの方を見た。風は少し下卑た顔つきをしながら東郷に質問した。

 

「ど、どうしました?」

「いや~、一体どんなことをすればそんなにメガロポリスな感じのボディになれるのか、ちょっとだけでもコツとか教えていただければなと」

((ブッ!!!?))

「そ、それは…」

 

姉の風の問いに樹も気になるのか、強く頷いた。一方、遠くから聞こえてしまっている男たちはこの質問には少なからず動揺した。普段は戦いに明け暮れている二人だが、全く女子に興味がないというわけではない。

 

刃の場合は女性の上に兄という越えられない壁が存在するものの、小学4年生からの幼馴染である椿姫と一緒に遊んだり、小学生の頃から園子達と一緒にいるため、異性への興味自体はほんのわずかではあるが存在する。ラグナも単にそれまでの周囲の女性がどれも一口も二口もキャラの濃い女性ばかりだっただけで、恋愛をするなら女性の方が良いと考えている。当然女子への関心も少なからずある。ただ、できれば今は聞きたくなかった。

 

「ふ、普通に生活しているだけです」

「いや~、そんなご謙遜を~。他にもいろいろ努力してるんでしょ~?」

「そ、そうですね。私はお米が好きですから毎日ご飯を食べています」

「ごふっ!」

 

いざ有力な情報を聞けたと思ったら割と自分たちでも下手したらやってることだったことに犬吠埼姉妹は凹んでいた。そこへレイチェルが少し不機嫌そうにしながら話に割って入ってきた。

 

「あら風さん、樹さん。別にそんなものがあるからといって、女性の魅力は決まったりはしないわ」

「いや~、でもやっぱり憧れちゃうじゃないですか~」

「でもレイチェルさんも東郷さんもすごく肌もきれいだよね。私はそっちも羨ましいよ~」

「私だって、友奈ちゃんの肌がきれいだと思っているわ」

「東郷さんは髪もすっごくきれいな黒髪で車いすの後ろから見ていると本当に憧れちゃんだよねー」

「友奈ちゃんの少し短めの総髪(そうがみ)もとても愛くるしくて素敵よ」

「総髪って?」

「ポニーテールのことよ、風さん」

「レイチェルさんの金髪もとってもきれいですよ!いつもどうやって手入れをしているんですか?」

「ヴァルケンハインに任せているわ」

「あの優しそうなお爺ちゃん執事かー。確かにお手の物でしょうね」

「まあ結論としては風さん。女性の魅力は一つの事柄では決まらないということよ」

「そうよ!女の魅力はね、全体のバランスが大事なのよ!!胸とは関係ないのよ!!」

「いやなんでアンタそんな元気になるのよ」

「それには同意するわ、夏凜さん」

「確かに夏凜ちゃんも引き締まっていてかっこいいよね!どれどれ触らせて~」

「ちょっと、友奈!?急になにを!?ひゃん!?」

 

風呂場でのガールズトークが花開いている中、男子たちはいろいろと耐えていた。流石の死神と大橋の英雄にとっても女子たちのキャッキャウフフは荷が重すぎたようだ。

 

「クッ…なぜこんなことに!僕はただ兄さんと二人っきりで風呂に入りたかっただけなのに!」

「耐えろ…耐えるんだジン!心頭滅却すればこの程度大したことねーはずだ!」

 

聞いているとのぼせるのとは関係なく二人の顔が赤くなっていく。そんなときに友奈がふとした発言に彼らが注目することになった。

 

「でもちょうど『女子風呂の時間』でよかったね!峡真伯父さんには感謝だよ!」

「しかもほとんど貸し切りのような状態だからゆっくりできるのはまたありがたいわね」

「…そうね」

((はーざーまー!!!))

 

どうやら友奈たちは女子風呂であることを峡真から聞いてここへきてしまったようだ。つまり最初の彼の誘いは罠だった可能性がある。どこかで笑い転げながら二人の様子を見ているであろう緑の顔を思い浮かべながらラグナと刃は静かに怒りに震える。ここから出たら絶対にとっちめてやる。二人は固くそう誓った。ならばなおさら早く脱出しなければならないが活路がどうも見えない。

 

「クソッ!どうすりゃいいんだ!?」

「兄さん、僕に良い考えがある」

「お、なんだ?」

「ここの岩盤に穴を掘って脱出する!そうすれば見つからずに僕らは外へ行けるんだ!さあ、兄さん。ドリル貸して。なんか僕なら掘れそうな気がする」

「持ってねーよ!どこの世界にドリル持って風呂に入るやつがいるんだよ!?

「僕の魂にはいるんだよ、アニキ」

「アニキ!?お前熱さでおかしくなってんぞ!?つーか穴なんざ掘ったら水が入って結局見つかるじゃねーか!?」

「なら兄さんならどうするんだい?」

「窓を破壊して外へ逃げるとか」

「音で見つかるし、弁償させられちゃうよ!」

「仕方ねー、こうなったら」

 

そう言いながらラグナは水車の方を見る。

 

「あれを利用しよう」

「無理だって、兄さん!あれじゃ人間の重量は支えきれないよ!?」

「いや、あれを亜光速で回転させて時間を逆行してだな」

「それはもっと無理だよ、兄さん!」

「ッ!!誰!?そこにいるの!?」

「え!?どうしたの夏凜ちゃん!?」

「どうかしたの、夏凜?」

「あっちの方で物音が聞こえたのよ」

「まさか覗き!!?」

「痴漢だなんて…随分と不躾な人もいたものね」

((まずい、こっちに気付いた!!!))

 

自分たちが気づかない間には騒いでしまったのか、どうやら夏凜に気付かれてしまったようだ。ほとほと困り果てている二人だったが、ラグナがあることに気付いた。

 

「…おい、ジン!あれを見ろ!」

「兄さん、何かを見つけたのかい?」

「いや、今のあいつらの位置を見るんだ」

 

ラグナに言われて刃がそこへ目を向けると、女子たちは一ヶ所に集まって警戒していた。だがそれの意味を刃には理解できない。どう考えてもこのまま突っ切れば絶対にバレる。

 

「正気かい兄さん!?このまま歩いて出たらおしおきされるって言ったのは兄さんじゃないか!?」

「…誰が歩いていくっつたよ?」

「え?」

「いいかジン。あそこまで俺たちは潜水したまま出口まで泳ぎ出る。幸いここの温泉は入口付近までは湯が張ってあるし、柵で横からは見えねー。正面から見られなければ何とかなるはずだ!!」

「…見つかったら?」

「命の保障はねーよ…でもここにいてもあいつらが来る…」

「…分かったよ。作戦決行だ」

 

決意を胸に兄弟は脱出作戦を開始した。できる限り彼女たちから離れながら岩から岩へ移動し、あと一歩で浴場入口にまでたどり着いた。

 

「よし、ここまで来たら後は限界まで泳ぎ切るぞ!あともう少しの辛抱だ、ジン!」

「分かったよ、兄さん…」

「見せてやるよ…これが…俺たちのあがきだ!」

 

最後の戦いに挑んだ彼らはあらん限りの酸素を取り込んで潜水を開始した。視線の片隅に女子たちも見える気がするが、そんなことはこの際どうでもいい。今は命を大事にすることが優先だ。

 

(もうすぐだ…もうすぐで出口に着くぞ!)

 

入口に近づくほどどんどん床が水面に近くなっていくことが分かる。床に体が着きそうな深さになると二人は湯から顔を出した。ついに二人は成し遂げたのだ。

 

「やったぞジン…俺たちは生き残ったんだ!」

「こんなにも空気が美味しいと感じるなんて…夢にも思わなかったよ…」

「あとはだっしゅ」

 

しかし現実は非常である。ラグナと刃が浴場から退場しようとする前に体の大きいナゴがギィと一緒に浴場の中へ飛び込んできた。緊急事態に対応できなかった二人はあっさり体をさらわれてしまい、ちょうど少女たちがいる位置にまで飛んでしまった。

 

「ナゴ、飛び込みをするなんてはしたないわよ」

「すまないねー姫様。この子たちを見たらいてもたってもいられなかったんだよ」

「おかしいですね。私たち以外に宿泊客なんていなかったはずでは?」

「違うっスよ!こいつらっス!」

 

ギィがそういうとラグナと刃は湯舟から浮き上がってきた。二人は力なくプカプカと浮かんでおり、土左衛門のようになっていた。予想もしていなかった男子たちの存在に勇者部の面々はさきほど夏凜の感じた気配について考える。

 

「ま、まさか綾月君たちが覗いていたというの!?」

「さ、最低!!」

「フフフ、どうやらお仕置きが必要みたいね」

「あれ?待ってみんな、なんか二人の身体が赤いよ?」

『え?』

 

友奈が二人の身体の異変を指摘してから二人の様子をよく見ると二人の眼はグルグル眼になっており、顔を含めて体が茹蛸のようになっていた。

 

「うわーーーー!!?ラグナ君、如月君しっかりして!!?」

「ちょっ、二人とものぼせてるじゃない!?早く運び込むわよ!!東郷、夏凜、旅館の人を呼んで!!樹、友奈は運ぶの手伝って!!」

「はい!!」

「了解しました!!」

「分かったわ!!」

 

大慌てで二人を部屋へ連れて行った勇者部が去っていく中、レイチェルは一人考えごとをしていた。自分が知る限りラグナはスケベではないし、刃に至っては兄以外アウト・オブ・眼中であるため、こんなことを進んでやるとは思えない。そもそもラグナに関しては自分から覗きをやるような度胸などないはずだ。そうなると疑わしい人物は一人だ。

 

「…友奈さんにここの浴場が開いていることを教えたのは峡真という伯父だったそうよね」

 

峡真という男は自分たちが食事を終えたときに見ている。あの時はどうしてかレイチェルは彼を胡散臭いと感じていた。それでも友奈とは親しそうにしているから気のせいだと思い込んでいたが。

 

「…この状況もあの男が作ったものでしょうね」

「姫様、どうしたんだい?」

「…どうやら少し注意しなければならない男がいるみたいよ」

「やっぱりラグナのやつっスか!」

「いいえ。もっと…そうね。危険な男に対してよ」

 

峡真はいったい何を考えているのか。レイチェルにはまだ理解できなかった。




ハザマ大尉の残虐っぷりをここ最近書いていたせいかギャグの書き方が下手になったかも…

次回は夜の会話!というわけでここでアンケートです。前回だそうか迷った挙句、結局出さなかったのですが、なんかすっきりしないのでここで出します。明日までに先に一番票が多い方だけを書きます。それではまた
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。