蒼の男は死神である   作:勝石

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どうも勝石です。

前回のアンケートの結果、とうとうラグナがモテメガネの餌食となることが決定されました。投票してくださった方、ありがとうございます。

さて今回ですが、約束されたカオス回。原作無視、キャラ崩壊、何でもありのフルギャグ話です。ハザードレベル7.0は覚悟してください。

Are You Ready?それではどうぞ


Rebel.31 狂気再来

『う~ん…』

「二人とも災難だったね」

「もう。普段から知っている私たちだったからまだよかったけど今度は気を付けて欲しいわ」

「ハザマの野郎…覚えてやがれ…」

「この借りは…必ず返す…」

「どうやらこの二人は峡真さんに温泉が開いていると聞いて入ったようね」

[てことは私たちが入る前からいた?]

「まあそうでしょうね。この様子じゃあわざとってわけじゃないみたいだけど」

 

ラグナと刃の温泉での一連の騒動はのぼせていた二人を部屋に連れて帰ることで終わった。二人は勇者たちがいる部屋で横になっており、うちわを仰いでもらいながら体を冷やしていた。

 

そこへ先ほどまで風呂にいたレイチェルが部屋へ戻ってきた。熱で少し火照った顔が寝込んでいるラグナたちを見ると早速そっちの方へと向かった。

 

「さっきのお風呂で良い夢を見れたかしら、二人とも」

「うるせえよウサギ…こっちだって好きで入ったわけじゃねーんだ…」

「まあ。どうしてああなったのかについては検討がついているから今回は特別に許してあげるわ」

「…そうかよ。まあ、悪かったな。事故とはいえテメェらの風呂場を覗いちまって」

「良いのよ。大体貴方にそんなことをする度量がないことは知っているもの」

「あんだと…そいつはどういうことだ」

「女性の水着を見てもなーんにも感じない癖に、いざ入浴中と出くわすとうろたえだして普段は女に興味を示さないえいゆうさん共々慌てだすなんて。正に愚の骨頂といわなくてなんと呼べばいいのかしら、ラグナ?」

「言ってくれるじゃねーか…!!」

「ああラグナ君!そんな急に起きちゃだめだよ!また気分悪くなっちゃうよ?」

「…はあ」

 

友奈がラグナを宥めると夏凜が水分補給用のポ〇リを持ってきた。二人はそれを飲んで少し体調が良くなった。

 

「じゃあアンタたち。みんなが集まった旅館での夜にやること…どんな話をするかなんて…分かってるでしょうね?はい、夏凜」

「私!?えーっと、辛かった修行の体験談とか?」

「アンタ、どんな修行を…って如月を見れば大体想像できるか…」

「心外だな、犬吠埼風。僕の何をみれば何が分かるというんだ?」

「じゃあ、アンタの修行メニュー。ざっとで良いから言ってみなさい」

「基礎体力のためにランニングを2時間。素振り、腕立て伏せ、腹筋、各五千回。あとは人間を交えた戦闘訓練だ」

「最後がすべてを物語っているわよ…東郷、言ってやりなさい!!」

「我が国の素晴らしさとあり方について存分に語ることです」

「アンタもか…誰か他に意見ない?」

「はいはーい!」

「友奈、言っておやり」

「怪談話です!」

「違----う!!どうしてそうなるの!?」

[ラグナせんぱいブルブルしてます]

「だ、だだ、だ大丈夫だ、このくらい」

「ウフフ、そういえばそうだったわね…この手の話は嫌いだったわね、貴方は」

「う、うるせえ!!」

 

風が言う『話』について誰も見当がつかないようだった。風は最後に頼りになるマイシスターに意見を求めた。

 

「樹、言ってやりなさい!!」

[恋バナ?]

「そうよ、恋の話よ…」

「…犬吠埼風、どうやら僕の耳の聞こえが悪くなったようだ…もう一度言ってくれ」

「だ、だから恋の話よ!何度も言わせないで!」

「で、では…この中で誰かに恋しているひとー?」

 

友奈がそう切り出しても誰も言い出すことはなかった。未知の敵と日頃から戦っている以上、恋愛をする機会の方が少ないのも仕方がないだろう。

 

「そもそもこの中で浮いた話がある人間なんていたのかしら?」

 

夏凜がついぽろっとその話題を言うと風は目を輝かせはじめ、他の勇者部女子部員はどこかウンザリした顔つきになった。刃、夏凜、ラグナ、そしてレイチェルはそれを見て何かを察してしまった。

 

「ウフフフフ…」

「ま、まさか。アンタ…」

「聞きたい?」

「まあ…少し興味があるわ」

「んじゃあ話してあげるわ!そう。あれは2年の時…アタシがチア部の助っ人をしたときのことよ。汗をほとばしらせ、長い髪を揺らして懸命に応援する姿を見ていてか、アタシに惚れたやつがいてさ…」

「なんと!?」

「あら、それは良かったじゃない」

「まあ、フウにも春があったてことだな」

「それで?どうなったというんだ」

「まぁ、デートしないかとかお茶でもしないか…とか?そんなことを言われたり?そりゃあ色々誘われちゃったもんよ!!」

「な、なるほどね。それで、どうなったの?付き合ったりしたの?」

「いえ、特に何も…」

「おい!!?結局どうしたかったんだよ、そいつ!?」

「そういえば先ほどから他の連中は随分と落ち着いているな」

[この話、10回目っス]

「それ以外に浮いた話がなかったのね…」

 

風のモテ話の微妙な顛末を聞いて何とも言えない気持ちになる二年生以降からの部員たちであった。レイチェルが風に話しかけた。

 

「ところで風さん。なぜ相手の殿方の誘いを断ったのかしら?」

「だってー、同年代の男子ってなんか子供っぽいじゃないですか?スマホでエッチな画像とか見たり」

「あら?そんなことをしていたの、ラグナ?」

「してねーよ!つーか持ってたらテメェにバレたときのリスクがでかすぎるんだよ!!」

「そ、そこまでなのね」

 

東郷がそんなことを言っているとレイチェルはさらに風に聞き込んだ。

 

「ねえ、風さん。貴方はどちらかというと恋に恋しているようね」

「う~ん、そうかもしれないわね。どこかにアタシも夢中になりそうないい男はいないかしら?」

「いるわよ、ここに」

「え?」

 

そう言ってレイチェルは神速の速さで隣のラグナの顔面に奇妙な物体を叩きつけ、物体は両脇にある針を彼のこめかみに刺しこんだ。物体はハート型のレンズをしたピンクのメガネ。以前との違いは針のついたテンプルの箇所に小さくⒶと記されていることだ。突然ものを眉間に叩きこまれたラグナは悶絶した。

 

「うがあああっ!!?何しやがるウサギ!!?」

「フフフ。とても似合っているわ、ラグナ」

「いつつ…つーか、なんだこれ!?外れね!?」

「ヴァルケンハイン」

「ここに。レイチェル様」

「これの説明をなさい」

「かしこまりました。それでは僭越ながらこのヴァルケンハインが先ほどレイチェル様が下等生物ザンネン=オトコ=ラグナにつけた品について解説させていただきます」

「誰が残念男だ!!」

 

夜中だというのに急遽登場したヴァルケンハインがメガネについて解説し始めた。

 

「このメガネはモテメガネA(アゲイン)と呼ばれる魔道具でございます。これをつけたものは行くところすべての異性にモテてモテて仕方なくなるのです。そのラブ魔力からは誰一人抗うことができません」

「それだけではないのでしょう、今回のものは」

「やはりレイチェル様には敵いませんな。左様でございます。今回のメガネはテンプルの先に着いた針が万が一剥がれないよう、テンプル全体が頭部にくっつくように加工が施されています。また、以前の銀さんの事故の反省からラブ魔力の範囲を狭め、その代わり近くにいるほど強力になっていく使用になっております」

「素晴らしいわ。これによってメガネがまるでラグナの顔に初めからついているようにも見える。正に」

『モテメガネは~顔の~一部~ですぅ~』

「ンなわけあるかーーー!!!」

「全く、これだから気の早い男は。ヴァルケンハイン。もう下がっていいわ。ありがとう」

「お褒めに預かり、光栄でございます」

 

レイチェルに言われてヴァルケンハインが転移で帰った後、ラグナは早速レイチェルに噛み付き始めた。

 

「ったく。テメェ、いきなり何をしでかしたかと思ったら妙なもんを顔にくっつけやがって…面倒ごとしか呼べねーのか、テメェは!!」

「あら。私がしているのはこれからの貴方たちの人生を考えての行動よ?」

「俺たちの人生についてだぁ?これのどこがそうなんだよ!?」

「知っているかしらラグナ?彼女たちの強さの裏には愛が関係しているの」

「は?何言ってんだテメェ?」

「だから。勇者たちの強さの源は愛なの。友奈さんなら何気ない家族や友人。東郷さんなら友奈さん。犬吠埼姉妹ならお互い。夏凜さんなら以外にもこの勇者部という仲間。銀なら家族。園子なら友達、というようにね」

「…それが俺に何の関係があるんだよ?」

「愛の力を侮る貴方にも一つ、愛の偉大さを教えてあげようと思ったの」

「ッチ!!やっぱ面倒事じゃねーか!!もういい!!どっかいけ!!」

「いいの?私がいなくなったら困るのは貴方よ?」

「今俺が困っている理由はテメェなんだよ。今すぐ消えろ!!」

「いいわよ」

 

そうしてレイチェルは珍しく素直に引き下がった。普段の彼女の態度とは異なる様子に訝しむラグナを余所にレイチェルはなにかを待ち始めた。

 

「さあ…そろそろ来るわよ」

 

レイチェルがそういうとまず風が声を張り上げた。

 

「ら、ラグナ!アンタ今日は風呂の方とかで大変だったわね!そんなことしていて体とか洗う余裕とかあった!?」

「まあなかったな。俺たちが入ってちょっとぐらいしてからお前らが来たわけだし」

「そ、そうだったんだ~。でも流石に体をきれいにしないで寝るなんて女子力…まあアンタは男だけど、とにかく!人として清潔感がないというのはまずいでしょ?」

「そうだな。まあそれはジンもそうだが」

「だったらちょうどいいし、うちの部屋の浴室使いなさいよ!」

「あ、ああ」

 

なんだか様子がおかしい風を怪しみつつ、ラグナは浴室に向かおうとした。しかしその前に樹が彼を後ろから抱き着いて彼を押さえた。

 

「おわっ!?なんだいきなり…てイツキかよ。どうしたんだ、いきなり」

[先輩後ろ]

「後ろ?」

 

促されるがままにラグナが後ろへ振り向くとそこにはさっきまで着ていた浴衣を脱ぎ捨ててタオルを巻きながら仁王立ちしている風がいた。まさかの光景に仰天するラグナであった。

 

「何してんだテメェぇぇぇ!!?」

「いや、背中を流す必要があるでしょ?だからアタシがしてあげようかなと思ったわけで」

「ンなことしなくていいから服を着ろぉぉぉ!!」

「あ~ん。もう、恥ずかしがり屋なんだから~」

「言っとけ言っとけ!ったく、イツキがいなかったら大変なことになってたぜ…」

 

どうにか不祥事になりそうな事案を回避することが出来たラグナ。この部屋で勧められて風呂に入りなおしたらなにが起こるのか分かったものじゃない。急いで他の部員が集まっている場所へ戻った。しかし、それでも気になることがあった。

 

「…なあイツキ。いつまでしがみつくつもりなんだ?」

 

ラグナの後ろに抱き着いている樹は中々ラグナから離れない。そのせいでラグナは腰を下ろすことができないでいた。するとラグナは肩と腰の間あたりにモゾモゾする何かを感じた。実はラグナと樹の間にはかなりの身長差があり、樹の頭はちょうどその辺に位置していたのだ。つまり

 

「おいイツキ、テメェ!!どこに顔擦り付けてんだ!!?」

「ちょっと樹!!アンタそこで何してんのよ!!」

[ラグニウムの摂取です、夏凜さん]

「なっ…ラグニウム…ですって…!!?」

「いや、なんだラグニウムって!!?そんな物質聞いたことねえんだけど!!?」

[そりゃあ先輩にしかないし]

「その物質、危ねえ気がしてきた!!」

 

樹も見事にラブ魔力に当てられており、しかもなんか正体不明の物質を自分の身体から取り込んでいるらしい。その正体を知っているらしい夏凜は樹をラグナから引き離し、ラグナに例の物質について説明し始めた。

 

「いい、ラグナ。ラグニウムっていうのはサプリ界でも都市伝説のような物質なのよ。なんでもこの世界のあらゆる事象に関与する根源らしくて、それを摂取するとどんなに小さくても可能性があるならどんなことでもできてしまうようになるらしいのよ!!」

「いや、それラグニウムどころかただの『蒼』!!!」

「ちなみにラグニウムが一番摂取しやすいのは口からと聞いているわ。だからその…お願い」

「よせ、カリン!!早まるな!!テメェこんな下らねーことでファーストキスを使うつもりか!!?後で後悔するからやめとけ!!なっ!!?」

「別に誰にでもこんなこと頼んだりしないわよ!!!」

「はいぃ!!?」

 

自分なりにやんわりと断ったつもりだが夏凜が大声でそれを拒否した。よく見れば彼女の顔は赤に染まっており、モジモジしていた。口を震わせながら夏凜は言葉を紡いだ。

 

「わ、私だって、その、す、好きな男でもないのにこんなこと頼んだりはしないわよ!アンタだから…アンタだからこんな恥ずかしいこと頼んでるのよ!!」

「…えーと?なんだって?」

「だから!!私は!!アンタのことが!!好きなのよ!!何度も言わせないで!!!」

「なんだとーーーーーーーー!!!!?」

「あり?なんか聞きなれない断末魔が聞こえたような気がするわね…」

 

偶然にも仕事で旅館にきていたから妹の様子を見に行こうとして妹の告白現場に遭遇してしまった『三好春信(みよし はるのぶ)』は絶叫した後に喀血しつつ意識を手放した。最も扉の向こうなので誰も気付かなかったが。夏凜の一世一代の告白を聞いてラグナはさらに慌てだした。

 

「いやいやいやいや、考え直せって!!」

「考えたわよ!!考えたうえで言ったのよ!!」

「悪いわね、夏凜!アタシだって譲るつもりはないわ!!」

「ふ、風!!アンタ邪魔するつもり!!?」

「そらそうよ!アタシだってね…ラグナのことが好きなんだから!!」

「…どうやらお互い退くつもりはないようね」

「まあね…て樹!?どこ掴んでってひぎゃーーー!!?」

 

風を後ろから樹が掴みかかると、風を持ち上げて海老ぞりになりながら地面に叩きつけた。要はジャーマンスープレックスを掛けたのだ。頭を回した風は布団の上で倒れていた。

 

「い、樹。アンタ…」

[ラグナせんぱいは私のものです!!]

「うぐっ…まさか最大の敵が身内にいたなんて…」

[愛の前では血の繋がりすら無力!!]

「テメェら、やめろ!!なんでこんなことしやがるんだ!?」

[『貴方を愛しているから(です)よ!!!』]

「えええ!!?」

 

もはや理解不能な争いに巻き込まれ、ラグナは体も心もボロボロになりそうになっていた。もう限界だったのか、この騒動の元凶の名を叫んだ。

 

「おい、ウサギ!!!テメェがやらかしたことだろ!!!どうにかしろ!!!」

「うふふふ。貴方が慌てふためく姿を見ているのは本当に楽しいわね、たらしのラグナ」

「ふざけんな!!とっととこいつの解除法を教えろ!!!」

「あら、もういいの?貴方のこれから先存在しないであろうモテ期がもう終わっちゃうわよ」

「知るかよ。別にモテて―訳じゃねーし!むしろうぜぇし!!」

「はあ…それは興ざめね…なら簡単よ。怒らせるの」

「怒らせるだぁ?なんでそうなるんだよ?」

「恋する乙女のエネルギーは絶大よ。ならそれと相反する力、すなわち怒りを起こさせる必要になるの」

「なら簡単だぜ!自慢って程じゃねーが人を怒らせんのは得意だ!!」

「あら、貴方でも難しい相手がいると思うわよ」

「は?誰だよ?」

「普段から怒らない友奈さんと樹さん」

「うっ…」

 

 

確かにレイチェルの挙げた二人はあまり怒る印象がない。ラグナがそのことに頭を抱えているといきなり左腕を引き寄せられた。腕は柔らかい何かに包まれており、どこかほんのり温かった。ギギギとラグナが腕の方へ顔を向けるとそこには自身の腕に抱き着く東郷がいた。

 

「とととトウゴウ!!?腕組むな、離せ!!当たってんぞ!!」

「当てているんです」

「うそーん!?」

 

東郷のメガロポリスに腕を包まれたラグナは必死に煩悩と戦い始めていた。二人は浴衣を着ている関係上、ラグナの左腕は素肌を晒しており、東郷も一応下にシャツは着ていたもののそれでも感触らしきものは誤魔化しきれなかった。しかも東郷は立てないため、必然的に布団の近くに座り込むことになった。

 

「な、なんだこいつ!!?全然振り切れねー!!?」

「綾月君、これでも私は足が動かない分、日頃から少し鍛えているの。腕力なら夏凜ちゃんにも負けないわ」

「いや、テメェどっちかというとユウナが好きで仕方がねーんだろ!!?いいのか、放っといて!?」

「友奈ちゃんも好きよ。でもそれ以上に綾月君のことを慕っているの。だから…今は添い遂げさせてください、貴方」

「貴方!!!?」

「今日は月が綺麗ですね」

「月どこだよ!!?ここからじゃ見えねーよ!!?」

 

あの東郷ですらラブ魔力に抗うことが出来なかったことに戦慄するラグナだったが、そのせいで勇者部最後の女子に気を配ることが出来なかった。トリの友奈はなんとラグナの胸の中へ飛び込んできた。

 

「ラ~グ~ナ~く~ん!!!」

「ゴフッ!!?ゆ、ユウナ…何しやがる…」

「ううん。なんというかラグナ君の温もりを感じたくて」

「意味わかんねんだけど!!?つーか何服を脱がそうとしてんだ!!!?」

「こうしてラグナ君の胸の中にいると安心するんだ~」

「答えになってねー!!」

「大好きだよ~、ラグナ君~」

「人の話を聞け―!!クソッ、テメェらいい加減離れ」

「いちゃダメ…なの?」

 

何とか友奈を引きはがそうとラグナは両腕の代わりに足などで彼女の身体をどかそうとした。それをやろうとした瞬間、友奈はこちらを今まで聞いたことのない、縋るような弱弱しい声でこっちの意見を聞いてきた。

 

自分の胸の中で少し涙目になりながら見上げ、小さく縮こまりながら甘える彼女のその姿はまさに兵器そのもので、それを見たラグナは一瞬ビクッとしてしまい、東郷にいたっては鼻から紅の噴水を出しながら幸せな顔で倒れた。その様子を見たレイチェルも驚きを隠せない。

 

「なんてこと…今のでモテメガネの魔力を振り切ったというの!!?」

「振り切れるもんなの!!?どんだけこいつユウナのことが好きなんだよ!!?」

「私…死んでもいいわ」

「テメェはもう黙ってくれ、頼む!!!」

 

変態はさておき、ラグナは困った。今友奈を突き飛ばすことは簡単だが正直あんな表情で迫られたら拒んだ自分が悪者になったような気分になりそうで嫌だった。そこへ風たちも合流してきた。

 

「ちょっと友奈!!何ラグナを独り占めしてるのよ!!」

「アンタのものでもないでしょ、風!!ラグナは私と人生のバディを組むんだから!!」

[せんぱいはわたさない!!]

「樹ちゃん、夏凜ちゃん、風先輩!!悪いけどラグナ君はぜーーったい離さないよ!!」

「だから纏わりつくんじゃねー!!!」

 

こうしてラグナは四方八方から勇者部女子部員から抱き寄せられ、唯一隣で倒れている東郷の周りには血の池ができていた。なお当の本人はイイ笑顔をしていたそうな。壮観の光景にレイチェルはラグナの方を見ていた。

 

「うふふ、いつ見ても本当にラグナは滑稽ねー。何度見ても飽きないわー」

「だったら引っ張るのはやめてくださいよ~、姫様~」

 

愉快そうにいうのに対してレイチェルの周りから若干黒いオーラが見え始め、ギィも何度も色んな方向へ引っ張られていた。四人の部員がしばらくラグナを取り合っていると、友奈は良いことを思いついたのか目がシイタケになった。

 

「待ってみんな!ラグナ君はもう疲れたと思うんだ!さすがに取り合うのはこの辺までにしようよ!」

「急に何を言い出してんのよ友奈!?そういって…独り占めするつもりじゃないでしょうね!?」

「違いますよ、ね?疲れたでしょ、ラグナ君?」

「テメェらバカ共のせいでな…」

「な、な、なに言ってんのよアンタ!アタシたちのおかげで癒されたなんて!」

「言ってねーよ…」

「取り敢えずもうラグナ君は疲れているし、触った感じだと体のあちこち凝ってる感じだったんですよ」

[だからなんです?]

「癒すのにマッサージしてあげようかなって」

「そんなことできんのかお前…」

「うん!!お父さんに習ったんだ!」

「まあ、あとでいいy」

「じゃあ結城友奈、行きます~」

「俺の意見は無視か!!?」

 

そういってラグナは勇者たちの布団の上でうつ伏せにさせられると、友奈のマッサージが始まった。初めはまだ力を入れていなかったが、その後に優しく撫でるように触れたり、グイグイ力を入れて凝りをほぐしたりと絶妙な力の緩急が行われていた。結果ラグナはどうなったかというと

 

「アッーーーーーーーー!!!!」

「よかった~。気持ちよさそうだね、ラグナ君!」

「プッ…フフフフ…!!!中々だらしない顔になっているわ、ラグナ!」

 

一仕事を終えたと云わんばかりの顔になっている友奈と目の前のラグナの様子に腹を抱えて笑いを堪えるレイチェルに対して、ラグナはピクピクしながら完全に蕩けきった顔をしていた。普段の力強い彼からはまず想像できない様子に他の勇者部は戦慄している。その隙に友奈は彼の左側に添い寝した。

 

「えへへ~♪」

「あー!!友奈ずるい!!私も!!」

「夏凜!どきなさい!!ラグナの傍に行くのはアタシよ!!」

[ちがうよ、わたしだよ!]

 

再びラグナと添い寝する場所の椅子取りゲームが始まった。だがそれもすぐに吹き荒れる冷気によって中断させられた。全員が異変の方へ顔を向くと、そこにはいつの間にか復活した刃が立っていた。

 

「じ、ジン!!?」

「どういうことだこれは…何故兄さんの周りに女がくっついているんだ…しかもこんなにたくさん!!!!」

「っておい!!テメェなんで目がハートマークになってんだ!!?」

「そういえばこれ…同性にも効いたわね…」

「兄さんから離れろ…この…障害どもがーーーー!!!」

「いけない!!」

「うわーーーー!!?」

 

ラブ魔力に当てられて暴走した刃がユキアネサを抜き放つとすぐさまレイチェルは転移で脱出し、その後に部屋から爆発音が聞こえた。しばらくしてから部屋に戻ると霜と焦げが広がりつつも勇者部のメンバーはみなラグナを囲む形で眠っていた。

 

レイチェルはラグナの傍に来ると、落ちていたモテメガネを拾い上げた。前回のときも大きな騒動を起こしてしまったこの魔道具なのだが、今回もやはり波乱を起こしてしまったようだ。

 

「本当に驚異的な力ね…ただある意味東郷さんの方に驚かされたけど」

 

レイチェルは手元のメガネを見る。そのとき、小さな疑問が生まれた。

 

「あれ、でもなぜ私には聞かなかったのかしら?」

 

そう思いながらレイチェルはメガネを顔に近づける。自分が仮に付けたらどうなるのだろう?そんなことも一瞬考えたが、すぐにその考えを振り払った。

 

「下らない。そんな愚かな選択を取るほど、落ちぶれたつもりはないわ」

 

そう言ってレイチェルはラグナの右側に寝そべって就寝した。




流石のなんだかんだ先生でも勇者部総動員には敵わなかったよ…

友奈のゴッドハンドは黒き獣すら撃沈させる代物だった。なんて恐ろしい子なんだ。(ンなアホな)

次回は早朝のやり取りから。それではまた
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