ぐんたかのあの一枚絵を見たときの私の感想はただ一つだ。
ふつくしい…
というわけで今回の話はわっしー以外の先代組対沙耶!!妹の心を救うのだ、ラグナ!!それではどうぞ
The wheel of fate is turning…Rebel…1…Action!!!
「いくぞ、この憑物野郎が!!!」
ラグナは蒼の魔道書を発動さ、目の前の沙耶と対峙する。もう本来ならボロボロの身体だが、それでも眼は死んでいない。強い意志を秘めたそれが自然と力になる。沙耶もそれを感じたのか、黄泉軍を増員させて向かい打った。
「どれだけ抗おうと、余の前では無力だ。往け、黄泉軍よ」
「ここは私に任せて~!!『開花紫槍・五月雨突き』!!!」
三人に襲い掛かる黄泉軍の群れを園子が15体の精霊の内、8体で迎撃に向かう。それぞれが大量の槍を射出して迫りくる亡者たちを撃ち落とした。
他の5体の精霊も彼女とともに弾幕から抜け出たものを払い、残った2体はバーテックスと戦っている樹の補助に回していた。
「くっ…!乃木の小娘が!」
「やるじゃねぇか、ソノコ!!」
「えへへ~、これでもブランクあるんだけどね~」
園子と沙耶の精霊たちによる激突は広範囲に広がっていてまるで宇宙戦争でもしているのかのような壮観だった。よく見ると前線で戦っている烏天狗が何かを必死にぶん回しながら周りの精霊に呼びかけているようだ。
〈貴様らァァァァ!!!園子様を必ず御守りするのだァ!!!〉
「ちょっと待て!!あのカラス野郎、テンションおかしいぞ!?」
「今日はやる気満々だね~、セバスチャン」
〈オラァ!!!〉
「何!?俺がおかしいの!?他のやつらがみんな槍なのにプラカードで悪霊どもをぶっ飛ばしてるアイツじゃなくて変だと思ってる俺がおかしいの!?」
「心配すんな、ラグナ。そのうち慣れるから…」
「遠い目しながらンなこと言っても説得力ねぇよ!?」
約一匹がおかしいことになっているが、彼が鼓舞したおかげか、士気が異様に高い園子側の精霊たちは黄泉軍の大群を相手に互角以上の戦いを繰り広げていた。先刻のラグナとは比べ物にならない勢いで精霊を消滅されていくこともあって、沙耶も殆どの黄泉軍を園子に集中させてしまった。それによって周りにも隙が生じ始めた。
「二人とも~、ここは私が押さえているからサッちゃんをお願いね~!」
「おう!!」「任せろ!!」
その言葉を聞いてラグナと銀は沙耶の方へ突撃した。彼らに気付いた沙耶は黄泉軍に園子を任せ、禍玉と夢重の盾を展開して二人を迎撃する体制に入った。
「うおらぁッ!!」
「でやぁッ!!」
「壊れろ!!」
二人がかりでも障壁を持つ沙耶に決定打を与えることは難しかった。それでもその守りにもヒビが入り始める。それを見逃さないラグナと銀は渾身の一撃をぶつけようとした。しかし沙耶も負けていない。
「夢重の剛!」
「ぬわっ!!」
「クッ!」
「其方らが二人で攻撃したところで結果は変わらぬぞ」
「そうでもないみたいだよ」
「何?」
「どうやらテメェは気づいてねーようだな。さっきからその障壁の力がどんどん弱くなってるぜ」
「…ソウルイーターか。確かにそれならば余の力を奪うことが出来るのも理解できよう。だが忘れていないか、綾月洛奈。そのドライブを使うということは、ただでさえか弱いこの娘の命を喰らいつくすのやも知れぬぞ?ククク…」
「蒼の力で直接身体に攻撃しなきゃまだ何とかなる!!このまま続けて、テメェのその力を食い尽くしてやらぁ!!行くぜ、ギン!!」
「その作戦、乗った!!!」
「愚かな…ここまでこれば、見るに堪えぬな」
「悪いけどそれでもやり遂げるんだよ!!勇者は根性ってね!!」
黒い瘴気を纏ったアラマサを振るうラグナと電子雲に包まれた紅の双斧を振るう銀。それに対して沙耶も禍玉で応戦する。沙耶が先ほど言ったことは正しい。確かにもし仮に沙耶がラグナの攻撃に対してわざと精霊による障壁を作らずに攻撃すればそれだけでも本来の沙耶が危ない。ラグナが自分に接近して来ることを確認すると受け身の体勢に入った。
「うおおお!!!」
「何!?勇者の方が来た!?」
「掛かったな、『双斧焔王舞』!!!」
「…やってくれるではないか!」
「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃー!!!」
ラグナの背中から急襲してきた銀の連撃に沙耶も牛頭鬼と馬頭鬼でガードする。しかし、これこそが彼女たちの狙いだった。
「今だ、ラグナ!!」
「カーネージシザー!!!」
「ぐあっ!!?」
銀の掛け声に合わせてラグナは突進し、精霊バリアを展開した沙耶を吹き飛ばす。バリアで守られていた沙耶は無傷だったが、当然ソウルイーターによって彼女の精霊2体はダメージを受けていた。すぐにラグナは沙耶に追撃を仕掛ける。先ほどのフェイントが余程効いたのか、沙耶は精霊を出す構えに入る。予想通りラグナが横へ飛ぶと銀がそこから突っ込んできた。
「所詮は猿の考えた策よな…灯雷の矛!!」
「あぐっ!!」
沙耶がスライディングして銀の足元を攻撃し、そのまま彼女の背後に回る。なんとか体勢を立てなおす銀だったが、振り向くとそこには火球を放つ準備をしていた沙耶がいた。
「『
『銀!!後ろへ飛べ!!』
「了解!!」
九重の声に反応して銀が飛びのく。彼女がいた場所に沙耶の放った火球が着弾すると巨大な黒い火柱が立った。しかし沙耶も命中した手ごたえを感じなかったため、警戒し続けた。すぐに火柱から人影が出現して自分に向かってきた。ラグナだ。
「雫!!!」
沙耶はそれを見るやすぐに禍玉をラグナを包囲させ、ビームを打ち込もうとした。しかしラグナはそれに対して慌てたりなどしない。すぐにアラマサを大鎌に変え、一薙ぎで禍玉を全て破壊した。
「ブラッドサイズ!!!」
「ほう…あれを全て叩き落とすとはな。先ほどまでとは比べ物にもならぬ強さだ」
「っしゃ!!これでテメェのうざってーユニットはなくなったぜ!!!」
「その程度のことで勝った心算か?冗談も程ほどにせよ。あのようなもの、すぐに黄泉返るわ」
「ハッ!その割にゃあ顔色がちょっとわりーぞ!!うおらっ!!」
一応禍玉は再生して沙耶の元へ戻ったが、それでも今は完全にラグナと銀のペースだ。
広範囲での攻撃が出来る園子が黄泉軍を相手にしてくれているおかげで沙耶の中にいる精霊たちの多くは彼女を相手にしなければならなくなった。そのため、必然的にラグナと銀に当てられる戦力の数も少なくなってしまい、サポートも乏しくなった。
そんな展開の中、ラグナは彼女に飛び蹴りをしてきた。蒼の魔道書の影響が少ない足での攻撃に対して沙耶は掌底で迎え撃つ。
二人が互いの攻撃の激突で後ずさる。ラグナが銀と合流できないよう、沙耶は禍玉を飛ばして彼を引き寄せる。うまく彼を自身の間合いに入れたが、そこへラグナは左手で大剣に戻していたアラマサを切り上げた。
「インフェルノディバイダー!!!」
「ッ!?それは!?」
「こいつは右腕がまだ普通だった頃に使っていたからな!蒼の力なんざに頼らなくてもできらぁ!!」
「…クハハッ!それにしては剣の一撃が浅いと見えるぞ!そのような攻撃を何度しようと余には勝てぬ!」
舌打ちをするラグナだったがいよいよ沙耶も追い詰められ始めた。蒼の魔道書を使っているため、下手に精霊のバリアを張れば精霊自体の力も失われるだろう。それだけなら良かった。何せ黄泉軍の大群もいるし、自分も身体を盾にすればラグナは簡単に攻撃できなかったはずだ。仮に先ほどのような技があっても精霊たちの物量で捻じ伏せれば良かった。
しかし、その前提の殆どが覆された今、ラグナは攻撃のタイミングと手法にさえ気を付ければ沙耶を無力化する可能性が僅かにも見え始めた。ラグナと合流しようと銀は急行しようとした。
「よし、すぐにアタシも!!」
『待て、銀』
「どうしたんですか、九重さん?今アタシ、行かないと」
『いや、少し気になることがあってな。銀、イデア機関に異常はないか?』
「特にはありませんけど…て今それ聞きます?」
『ああ、先ほどからお前とラグナの奴から妙な波長が生じている。しかもこの波長…まさか…』
九重が何かを考えていると、ラグナと沙耶の戦いが徐々に拮抗し始めた。いくらラグナの技に有効なものがあるとはいえ、それでも時間が過ぎれば樹海にも悪影響が出る可能性があった。それに蒼の魔道書を使い続けることはラグナ自身にとってもかなりまずい。
「ちょっと九重さん!時間が掛かりそうならアタシ、先に行きますよ!」
『…そうか、そういうことか!!』
「何か分かったんですか!?」
『いいか、銀。よく聞け』
九重が神妙な口調で銀に自分の作戦を伝えた。
『今は待機しろ』
「そんなッ!?何言ってるんですか!!?ラグナに決め手がないのは九重さんだって知っているでしょ!!?」
『分かっている。だが今は動くな。その代わり…私が合図を送ったらすぐ沙耶に奇襲を仕掛けろ。いいな』
「でも!」
『ラグナ、お前もそれでいいな!』
九重はラグナにも通信を通して同意を求めた。
「ココノエ、その策は成功すんだろうな!?」
『…決まればな。そのためにも何とかそいつの気を引け』
「任せろ!!」
「…分かりました。信じてますよ」
少し心配しながら銀はラグナの戦いを見守った。
✳︎
「其方が余を相手に時間稼ぎか?塵どもがどのような策を弄するのか、見物だな」
「ハッ、言ってろ!つーか俺から目を離していて良いのかよ!?」
「そこまでに見て欲しいならば殺すまで見てやろう!」
ラグナと沙耶は激しくぶつかり合っていた。沙耶が今使える全ての精霊を自身に取り込んだことで二人の実力は拮抗している。迫りくるラグナに対して沙耶はけたぐりを入れた。少し怯んでしまったが大した攻撃ではない。
「ぐっ!」
「これで終わりだ…」
「何言ってやが…ッ!!」
「亡者たちよ、其奴を縛れ」
途端、ラグナの周囲にはどす黒い怨念が集まり、亡者たちが彼の身動きを止める。呪詛の拘束陣に捕らわれ、足も骸骨にしがみつかれて動けない彼に沙耶は腕で彼の腹を貫いた。
「『
「ぐああぁぁぁあッ!!!」
沙耶が腕を抜くとラグナの腹に開けられた穴からは血が吹き出た。あまりの激痛にラグナは堪らず叫び声をあげてしまう。ドクドクと血が出る中、ラグナは地に伏してしまった。沙耶はそんな彼を見下ろす。
「…よもやこれほどまでに手こずらせてくれるとはな。これが蒼の魔道書を持つ者の力だというのか」
「ガ…ハァ…ハァ…」
「だが…その結末も…あっさりとしたものだな…」
「ハァ…ハァ…は…ハハハ…」
「…何を笑っている?」
圧倒的に絶望的しかない状況の中、ラグナは笑っていた。その様子に沙耶は不快感を覚えたのか彼に冷たく問いかけた。それに対してラグナは答える。
「いや…な…テメェ、さっき言っただろ?そこにサヤはいねーってな」
「そうだ。あの娘の意識はこの身体にはおらぬ。其方がどれだけ「だったらよ」
ラグナは憎たらしい目つきで沙耶を見ながらそれを指摘した。
「何故テメェは…俺を殺さねー?さっきなんざ…絶好のチャンスだったろうが。言い訳なんざ出来ねーくらいのな」
「…何が言いたい?」
「今ので…確信した。その中にいるサヤはまだ死んでねー…テメェを追い出しさえすりゃ…あいつを助けられる!」
「ならばなんだというのだ?今其方はここで死ぬ。其方の死を見れば…この娘の心も完全に死ぬだろう」
「そいつは無理だ…テメェは俺を殺すことはぜってーに出来ねー…そこにサヤの魂があるなら…テメェが一方的に干渉するだけじゃねー…アイツもテメェの行動に干渉できるってことだ!!!」
「下らぬ妄言を申すでない!」
自身の精霊をラグナにぶつけながらも沙耶はそれまでとは打って変わって少し取り乱した声音で叫んだ。ラグナがいったことはすなわち精霊が人間に敗北しているも同然のことだからだ。そんなことなどあり得るはずがない。
苦しみながらもなんとか立ち上がろうとするラグナに対して沙耶は手を挙げる。とどめを刺すためだ。
「去ね、綾月洛奈…………兄さま」
手を震わせながらも今まさに手刀を下ろそうとした。その時だった。
『いけ!!!』
「うおおおおおおおお!!!!!」
「しまった!!?」
後ろから襲来した銀が沙耶を後ろから羽交い絞めにした。なんとか彼女を沙耶は振り払おうとするが、中々銀は離さない。そこへ九重がラグナに向かって叫んだ。
『おいラグナ、銀!!今すぐイデア機関を蒼の魔道書と『接続』しろ!!!』
「イデア機関と…接続!?」
「なっ!?そいつが…魔導書の中になくても出来るのかよ…ココノエ!!」
『説明する時間はないがとにかく出来る!!早くしろ!!』
「ああ…!やるぞ!!」
「おう!!!」
すぐにラグナは沙耶の首筋近くに右手を近づけ、二人は同時に叫んだ。
『イデア
「ぐああぁぁぁぁぁぁ!!?」
右手から蒼い光が放たれるとラグナと銀の右腕から紅の糸のような光が生じた。同時に沙耶の身体から怨霊たちが右腕の方へと吸い込まれていった。すると同時に沙耶も苦しみだした。必死にもがくが力がどんどん弱まっていく彼女では銀とラグナを引き離すだけの力はない。ならばと園子と戦っていた黄泉軍を呼び戻そうとした。
「そっちには行かせないよ~!!!『咲花繚槍』!!!」
だが園子は引き返す怨霊たちを見る素早く花びらのような槍を召喚してラグナたちを包み、そこにいる全戦力を投じて黄泉軍たちを食い止めた。
「みんな~、ここで何としても止めるよ~!!!」
〈御意!!!〉
妨害のおかげで沙耶の元へ黄泉軍は来ない。ここからの決着はこの場にいる三人に委ねられた。ソウルイーターによってどんどん精霊が吸収されていくからか、ラグナの腹の傷も治っていく。力が抜けていくことを自覚した沙耶は少女とは思えない怨嗟の籠った声で叫んでいた。
「塵芥の分際で余の障害となるか、綾月洛奈!!!」
「わりぃな。テメェがサヤの身体で好き勝手してるってだけでも十分邪魔する理由になるんだよ、俺にとってはな!!!」
「ッ!何故だ!何故あの時、空にいる虫けらを見逃した!!?いることなど、知っていたというのに!!」
「言ったはずだぜ、サヤは生きてるってな。アイツはあの一瞬だけ、テメェに俺だけを
「ぐ……おのれ小娘ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
「サヤ、聞こえるか!!?俺はここにいるぞ!!!」
「沙耶、戻ってくるんだ!!お前が帰ってくるのを待っている奴らがいるんだぞ!!!」
「サッちゃん!!お願い、目を覚まして!!私はもう一度サッちゃんに会いたいよー!!!」
三人が沙耶に必死に語り掛けてくる。すると沙耶にも変化が現れ始めた。それまで血のように赤い瞳は徐々に本来の碧眼に戻り始め、声もかつてのものに近い状態へと戻っていった。
「おおおお…ぁ…ぁ…あ」
「おいサヤ!!俺が
「あ…あ…兄…さ…ま…」
「ラグナ、これって!!」
「助けて…兄さま!!」
「そうだ、兄ちゃんだ!!意識をしっかり持て、そこまで来りゃあもうすぐだ!!!」
涙を零しながら自分のことを沙耶が呼んだ。彼女から精霊を全て取り除くことが出来るのも時間の問題だ。
「俺の手を取れ、サヤぁぁぁぁ!!!!」
「はい、兄さま!!!!」
瞬間、三人は光りに包まれた。戦闘をしていた黄泉軍も次第と霧散していくことを園子が確認すると花びらを消失させる。中からはボロボロのラグナと銀、そしてラグナに抱えられた意識のない沙耶がいた。髪は美しい金髪に戻り、対峙したときのような威圧感もない。園子は二人に恐る恐る無事を聞いてきた。
「大丈夫…なの?」
「…おい、サヤ」
「………ぅにゅ」
ラグナが呼びかけると沙耶は瞼を少し動いてからゆっくそれを開ける。沙耶がラグナの顔を認識すると、彼に飛びついて抱きしめた。
「兄さま、兄さまぁ!!!やっと…やっと…!!!」
「ああ、久しぶりだ。ちょっと見ねーうちにでかくなったな、サヤ」
「うわーーーーーん!!!!兄ーーざーーま”--!!!!」
「おわっ、きたねっ!!?せめて鼻水は拭きやがれ!!」
「こらこら、そんなこと言うなってラグナ。やっと会えたのにそりゃあないだろ?」
「そうそう、サッちゃんのことをぎゅーーーっと抱きしめてあげないとダメだよ~」
「いや、ここではやらねーぞ!?テメェらの前ではやらねーぞ!!?」
「つまりやるんですな?」
「うるせーよ!!」
「ううーーー!!ひどい”でず、兄ざま”---!!!」
「サヤ!?…ったく…仕方ねえな…」
そうはいいつつもラグナは優しく抱きしめ、沙耶に話しかけた。
「おかえり、サヤ。また会えて、あの時の約束を果たせて、本当に良かった」
「はい…ただいま、兄さま!!」
「本当に…本当に良かったよ~」
「ああ…やっぱ家族は一緒のほうがいいな…」
園子は二人を見て涙ぐみ、銀も一安心した顔になっていた。少しして沙耶が彼女たちの方に気付いた。
「園子ちゃん、銀さん!みんなも来てくれたんだね!!」
「そうだぜ~、サッちゃん。また会えて嬉しいよ~」
「これで後は須美と友奈さんだな!」
「…そうだな。そしてそこには…ハザマもいる」
「…うん、そうだね。バーテックスもいるから油断はできないんよ~」
ラグナと園子は壁のある方をみる。東郷によって開けられた巨大な穴からは無数のバーテックスが入ってきていた。樹も園子の精霊と頑張っているが、このままではいずれ押し切られる。
「ソノコ、悪ぃがサヤとイツキ、フウを頼む。テメェとイツキならあの数のバーテックスも押さえられるはずだ。それに、ハザマの碧の魔道書は精霊バリアを貫いちまう。その身体で攻撃を受けちまったら、どうなるか分かんねぇ。野郎は俺とギンが追う」
「合点承知の助~。一匹も通さないから安心して~」
「頼もしいぜ、全く。じゃあギン、行くぞ…ギン?」
「ミノさん、どうしたの?」
二人は銀の方を見ると銀が少し申し訳ない顔をしながら謝ってきた。よく見ると腕はだらんと力なくぶら下がっている。
「ごめんラグナ。アタシは行けそうにないわ」
「おい、どうかしたのかよ!?」
「実はさ、さっきから右腕が全然動かないみたいなんだ」
「な、何言ってやがる!?そこにイデア機関が入ってるんだろ!?」
『そのイデア機関が無くなっているんだ』
「ココノエか!?どういうことだ!!?」
『いいか。よく聞けラグナ。銀の右腕にあったイデア機関は今、『お前の右腕』の中だ』
「…な」
九重から告げられた事実にラグナは信じられなかった。自分は銀に対して蒼の魔道書を使っていないはずだ。しかも以前の世界で『
「まさか…接続したときにか!!?」
『…恐らくな。実際、お前の蒼の魔道書と銀のイデア機関の相性は抜群に良かったみたいだからな』
「どういうこと、九重さん?」
『お前たち。ラグナが暴走したあの日、銀の勇者としての力が無くなったことは覚えているな』
「…ああ」
ラグナはそれを言われて複雑な思いでいた。九重はその時に起きたことを話した。
『あの時、ラグナの蒼の魔道書によって銀の力は吸収されてしまった。だが、どうやら完全には自分のものにはできなかったようだ』
「は?どういうことだよ?」
「ああ…私、なんか分かっちゃった」
「園子ちゃん?」
「ミノさんの力を取り込んでからちょっとしていきなり苦しみ出したんだよね~、ラッくん。以前にもレイチェンが蒼の魔道書が勇者とは相性が悪いって言ってたんだけど、もしかしてそれと関係があるのかな~?」
『そうだ。外的要因で叔母様…芹佳がいたことも大きいがな。平たく言うならラグナ。お前は銀の力を吸収したものの、ものにすることまで完全にはできなかったんだ』
「つまり勇者の力は?」
『銀のイデア機関が突然移乗動作など始めるものだから戦闘中に二人の右手をスキャンした。そしたら残滓としてではあるが、あれの存在を確認することが出来た。お前が近くにいたことでイデア機関と蒼の魔道書が同期を始めたんだろう。それが繋がりを生んで、イデア機関との接続を可能にした。そして接続を切ったときにラグナの蒼の魔道書に取り込まれたんだ』
九重の言葉を聞いてラグナ、銀、沙耶は驚いた。まさかそんなことがあの時に起きていたとは思わなかったのだろう。ラグナはやっぱり腑に落ちなかったのか、思わず拳を握りしめる。
「ふざけんなよ…そんなことって…あるかよ!!」
「…なあラグナ。まだあの時のこと、気にしてんのか?」
「……」
銀の問いにラグナは答えない。しかし、その顔はどこか辛そうだった。あまりの理不尽さに反吐が出てそうな顔つきだった。それに対して銀は彼の前に出て、
「フン!!!」
「いッてえ!!?」
顔を思いっきり引っ叩いた。ほぼ同年代の女子にまさかの平手打ちを喰らってちょっと悶絶した後、ラグナは銀に噛み付いてきた。
「何しやがんだ、テメェ!!?」
「ったく、いつまでくよくよしてんだよ。らしくねーぞ!」
「いや、おま」
「いいか、ラグナ!!こいつは一回しかいわねーからよく聞け!!」
仁王立ちしながらそれを言う銀の迫力にラグナはたじろぎ、園子と沙耶もポカーンとした様子で見守っていた。
「アタシは別にあのときのことは気にしてない!つーかここでへばりだしたらそれこそしばくぞ!!分かったか!!」
「ギン…」
「それに力があるかないかなんて関係ないっての。どんなアタシだったとしてもアタシはアタシだ!!それにさ…色々あったけど、それが巡り巡って沙耶を助けられる最高の一手になれたじゃん?」
「…はあ。それが言えるテメェはマジでスゲー奴だよ…お前の意志は分かった。ありがとな」
「気にすんなって。助けられてんのはお互い様だろ?」
「そうだったか?…ってああ。あれか、俺の右腕のときか」
「そうだよ。だからさ、ラグナ」
銀はそう言うとラグナの胸に左拳を押し当てる。
「胸を張れよ。お前にはこの三ノ輪銀様の力がついているんだぜ?」
「そいつを聞いたら…負ける気がしねーな」
「だろ?実際敵無しだって。だから…アタシの『
「任せろ、ギン!!」
二人は拳を打ち合わせながら不敵な笑顔を浮かべて目を合わせた後、敵のいる方へと目をやった。
「園子、沙耶ちゃんとその風さんに関してはアタシに任せてくれ」
「分かったよ~。じゃあ私は犬吠埼さんを助けに行くね~。でもミノさん、どうやって戦うの~?」
「アタシの足にも一応イデア機関はあるぞ?まあ、あんまり戦闘用とは言えないから後で槍一本貸してよ」
「はいは~い」
「兄さま!」
沙耶は少し不安げに兄を呼ぶが、ラグナは沙耶を諭した。
「大丈夫だ、沙耶。必ず戻ってくるから、待っていてくれ」
「…兄さま、ご武運を!!」
「ああ!」
沙耶は園子の精霊たちに抱えられると、ラグナたちは最後に別れを告げて自分たちの自分たちが向かうべき戦場へと足を踏み出した。
「そんじゃあ行ってくらぁ、またな」
「またね」
「じゃーね~」
「はい」
烏天狗がどんどんネタキャラっぽくなっちまった、どういうこった。
これで無事に沙耶を救出することに成功!!それぞれの戦いへ赴いていくラグナと勇者たちの反撃はここからだぜ!
さて次回は原作側の他の勇者たちの場面へ。それではまた
どれが見たい?
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友奈ズ対ラグナ
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ラグナ、精霊を得る
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九重と園子の愉快な実験