蒼の男は死神である   作:勝石

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どうも勝石です。

ゆゆゆいの方のガチャが全く当たらん。何故だ。

さて今回は遂にラグナとハザマが激突する!!!そしてアレの正体も!?それではどうぞ

The wheel of fate is turning…Rebel…1…Action!!!


Rebel44.蒼対碧

「おい、ジン!!! あそこにいんのは!!!」

 

ラグナたちが壁の方へ急行している途中で二人の女子を発見した。一人は白い衣装に身を包み、もう一人は見慣れた勇者服に身を包んでいてボロボロになっていた。

 

「トウゴウ!!! しっかりしろ、トウゴウ!!!」

「椿姫!!? 何故お前までここにいる!!?」

「その声…刃兄様ですね!!」

 

椿姫が刃の声を聞いてこちらへ寄ってきた。彼女の姿を見たとき、ラグナと刃は驚愕した。彼女の方もラグナの姿を確認すると、一気に警戒心を高めた。

 

「その姿…まさか死神!!!? どうして刃兄様と…て貴方は」

「…そういや、一応顔を合わせたことがあったな…」

「ええ…花火大会以来ですね…」

「…つーかお前…それ、十六夜だな…無茶しやがって」

「な、なぜそれを!!?」

「…ウサギに聞いた」

「…今は時間が惜しい。その説明で納得してくれないか、椿姫?」

「…刃兄様がそう申し上げるならば」

 

複雑な心境なのか、椿姫はラグナに警戒する。だが彼らにとってそんなことを気にしている時間はない。刃が椿姫に一度運んでいる東郷を下すように指示した。よく見れば東郷の傷はかなりひどく、精霊たちもぐったりしているようだった。

 

「こいつは…ハザマの野郎がやったんだな…」

「そう考えて間違いないだろう…峡真に精霊の守りは通用しない。それに…あの蛇が結城友奈の伯父である以上、奴とも顔見知りであっても不思議ではない。そこに虚を突かれたな」

「あの…刃兄様…やはり彼女は…」

「ああ…神樹館小学校の鷲尾須美…そして今は東郷美森だ……おい、目を覚ませ」

 

刃はユキアネサの冷気を東郷に吹きかけると、東郷の意識が覚醒した。彼女が見渡すと、ラグナたちがいることに気付いた。

 

「そう……私…負けたのね…」

「……なあトウゴウ。あの壁の穴…やっぱ…」

「…ええ。私がやったの…」

「…その理由は?」

「……もう…嫌なのよ……みんなが…ボロボロに…なっていくのを見るのが……」

『それは私がイデア機関でなんとかできるようにしている「じゃあなんで武器があるのよ!!!」

 

九重が説明しようとする前に東郷が話を遮った。身体が治るかどうかよりも大きな問題がそこにはあったからだ。

 

「九重さん!! 貴女は知っていたのでしょう!! 外の世界の現状を!! そして知っていたからイデア機関に武装を施したのでしょ!!! 三ノ輪さんを騙して!!!」

『……そうだな。その通りだ。だがな、東郷美森。お前がやろうとしていることは解決ではないぞ。ただの破滅願望だ』

「でも!!!!」

『悪いが、私はお前の無理心中に付き合ってやるほど寛容ではない。言ったはずだ、私は自分が出来る限り最大限の努力をしていると。あのような怪物に敗北を喫して、世界を好き勝手に蹂躙されては亡くなった母様に合わせる顔などない…!!』

 

唇を噛みながら九重は東郷にそう言った。もちろん園子や銀は既にイデア機関の事情を知っている。だがそれ以外に東郷が言ったことも半分以上はあっていることもあり、九重は敢えて否定しなかったのだ。それでも東郷の慟哭が続いた。

 

「じゃあどうすればいいんですか!!!?どんなに身体が治せても満開システムがある限り、私たちの大事な思い出や大切な気持ちまでもが消えてしまうんですよ!!!そして私はッ……友奈ちゃんや…みんなのことも…『また』忘れてしまう…!!!!そんなことを…仕方がないなんて…私は割り切れない!!!!」

 

彼女の叫びにラグナはかける言葉を見つけられなかった。自分もかつて記憶喪失になったことがあり、訳も分からない状況の中へ放り込まれた気分だった。世界の可能性を取り戻す過程の中で自分に関する記憶を他者から奪い去ったこともある。それは家族も例外ではない。あの時のジン=キサラギの言葉はラグナにとっても辛いものだった。

 

- なら兄さんの存在は僕が殺す!!兄さんはただの「ラグナ=ザ=ブラッドエッジ」として存在していればいい!!! -

 

ー 無茶苦茶で構わない!!僕が全力で兄さんの「願望(ゆめ)」を終わらせる!!! ー

 

(あの時も…アイツやサヤは今のトウゴウと同じだったのかもな…)

 

「死んだ方がずっとマシなのに!!!!死ぬことすらできないんですよ!!!私たち!!!!忘れたくない……もう、大切な人たちのことを…忘れたくないよぉ…!!!!」

「わ…東郷さん…」

 

そこまで言われて、しばらく誰も何も言い出せなかった。その後、刃は兄の脇に肘を当てた。

 

「なんだ、ジン…」

「…兄さんは先に行ってくれ。こいつ…鷲尾とは僕が話を付ける」

「…分かった。先に行ってるぜ」

 

それを聞いてラグナは友奈がいるであろう壁の上層部へ足を運んだ。

 

✳︎

 

長い道の果てにラグナは遂に壁の上に到着した。そこでは峡真が呑気に穴の方を見ていた。ラグナはそんな彼に容赦しなかった。

 

「カーネージシザー!!!」

「うおっとー!!危ないですねー!!」

 

彼を見るやすぐに十八番とも言うべき技で峡真に斬りかかるが、あっさり躱されてしまった。初撃で仕留められなかったことにラグナは思わず舌打ちをする。そんな彼に対して峡真は憎たらしい笑顔を浮かべながら彼を煽り始めた。

 

「おやおや、ラグナ君ですか?その様子では妹さんを倒してここまで来たようですね~?どうでした?久しぶりに会った妹さんとの殺し合いは?」

「……サヤが世話になったようだな、ハザマ」

 

本当ならば今にでも怒りが爆発しそうになっていたが、ラグナはぐっと堪えた。ここで奴に怒りのまま攻撃すれば奴のペースにはまってしまう。

 

「あれれ~? 随分と冷たいじゃないですか~。大事な妹さんのことなんてどうでもいいんですか?あ! そうですか~! 遠くにいる妹よりも目の前の女の方が大事ですか~? さてはその手で妹さんを殺しちゃったりしてます~?」

「浮かれてるところで悪いが…サヤならピンピンしてるぜ。誰も死んだりなんざしてねーよ、誰もな」

 

ラグナが峡真に特大の皮肉をぶつけると、彼の様子が変わった。帽子を取って髪を逆立った彼がラグナの方を見ると鬼の形相でラグナを睨みつけた。

 

「おいおいおいおいおいおい!!! なんだそのクッソつまんねーオチはよぉ!!! そこはテメー、憎しみと絶望の果てに殺してここまで来ましただろうがーーー!!!!」

「テメェの思い通りに行くなんて思ってんじゃねーぞ、このクソ野郎が!今度はユウナを返してもらうぜ! アイツはどこだ!!」

「俺様に命令してんじゃねーぞ、クソガキ!!! と、言いてーとこだけどよぉ。どうせ助けようにも無駄だからぁ?特別に教えてやるわぁ」

 

そう言って峡真は後ろを指した。ラグナがその方向を見ると目が丸くなった。そこにはどこ見覚えのある黒い球体があった。バーテックスもそれに興味を示して近づいたが、周辺に到達すると彼らは砂になっていった。彼の腕もその近くに寄ると疼きだす。彼が驚く様子を見て峡真は機嫌を直したのか、声高に自慢し始めた。

 

「いや~、傑作だろ? ここまでデケーもんなら人間一人入れるんだぜぇ?」

「まさか……こいつは…感覚は『あそこ』のとは違うが…でも、間違いねー…あれは『窯』なのか!!!?」

「窯……窯、ねぇ。言い得て妙だなぁ、ラグナ君。確かにこいつを使って今天津神をぶっ殺すための『剣』を造ってるからよぉ!!!」

「まさかユウナはその中に!!?」

「それ以外に何があんだよぉ!!!?」

 

それに気づくや否や、ラグナはすぐに大剣で峡真に切り掛かった。峡真もバタフライナイフを抜いて彼の攻撃を受け止めた。

 

「テメェ…今すぐ『精錬』を止めやがれ!!! アイツを解放しろ!!!」

「する訳ねーッだろうがぁ、子犬ちゃんよぉ!!!!」

 

峡真は懐からウロボロスを出してラグナの腹を貫こうとしたが、ラグナは彼を蹴り飛ばして自分も後ろへ下がることで峡真の攻撃をすんでのところで回避した。

 

「テメェ…どうやってこいつを手に入れた!!! 四国に窯があるなんざ聞いたことねーぞ!!!」

「どうやってだぁ? そりゃあテメェらのおかげだよ、ラ~グナ君。テメェも感じているだろ? こいつの異常性ってやつをぉ? 他の奴とは一線を引いているこいつをよぉ…」

「…ッ!! 意味分かんねーこと言ってんじゃねー!!」

「ま、分かりやすく説明するためにも…俺様のこいつが…そしてテメーのそいつがどうやって誕生したのかを説明しねーとなぁ」

 

そいつとは恐らく魔道書のことだろう。ラグナが何も言い返さないこともあって峡真は話を続けた。

 

「むかーし、昔。西暦2015年。バーテックスが世界各地に襲来し、世界を破滅に追い込みました。しかーし!! その時に立ち上がったのは『乃木若葉(のぎ わかば)』を筆頭とした勇者と呼ばれる少女たちでした!! 彼女は必死に戦いましたが…それでも簡単には勝てない強敵も出現しました…そして最後には…人類は神樹が張った結界の中で蟻のように生きることになりましたー」

 

峡真は他人事のようにこの世界の大まかな歴史を話し始めた。そしてその後、峡真はその敵についてラグナに問いかけてきた。

 

「ところでよぉ、ラグナ君? この敵であるバーテックスがなんなのか…テメーは知ってるかぁ?」

「……天の神って連中の尖兵、だろ?」

「その通り!! じゃあもう一つ聞くぞ~、『御魂』ってのはなんだぁ?」

「バーテックスの(コア)だろ…それ以外に何がある…!!」

「おおおお、スゲーじゃんラグナ君!!! またまた大当たりだぁ!!! じゃあアレが何で出来てると思う?」

「知らねーよ!!! どうでもいいだろうが!!!」

「これが重要なんですわぁ、子犬ちゃ~ん。因みに正解は天津神共のエネルギーの塊だ」

(あの世界の「魔素」みてーなものか?)

「実はな、こいつを発見したのは綾月九江博士なんだよぉ」

『なんだと!!?』

 

峡真の話に九重が食いついてきた。彼女に気付いた峡真は汚い声を出し始めた。

 

「あれ? もしかして噂に聞いていた九重博士ぇ? いやぁ、俺様猫嫌いだから話したことがなくてよぉ」

『そんなことは良い!それより、母様が御魂を知っていただと!!? どういうことだ!!?』

「娘すら知らないってかぁ…まあいいぜ。バーテックスの存在が再び確認されてから実に30年。その間に一度も御魂が確認されないことがあると思うかぁ?」

「それは…ねえだろうな…」

「だろぉ? じつは偶に勇者たちの中でそれなりに強いガキどもがいてな。御魂が露わになるほどの手傷をバーテックスに与えることがあったんだと。まあ、まだ勇者システムその物がそれほど強力じゃなかったから倒せなかったんだけどな。記録された映像を見てあのクソ女はこう思ったんだろうよぉ。壁の外にバーテックスを構成する何かがあると」

 

それを指摘されて二人は九江がどのような行動をとったのかを察した。

 

『それで結界の外に出ていたのか…母様は!! 御魂を取るために!!』

「ちょうど術式もでき始めた頃だからな。いいテストにもなっただろうよ。そんで奴は無事に御魂を一つ回収することに成功した」

「なんで…ンなことを…」

『…そういうことか!!』

 

ラグナは何が何だか分からなかったが、九重はすぐに母が御魂をどう使ったのかが分かった。

 

『……アークエネミーの精錬に御魂を使ったのか…母様は!!』

「おい冗談だろ!!? 窯として使うにしてもどう使ったんだよ!!? あんな硬えもんに何を入れられんだよ!!?」

『母様が求めていたのは御魂の外の殻ではなく力の根源である中身だ。ちょうど術式を使える上にそれでもダメなら勇者に頼めば殻は壊せる。そうやって母様は取り出した中身をより大きく、使用に適した器に移した。後は神樹の精霊たちが定着された素材を精錬出来るよう、造ればいい』

「ピンポンピンポ~ン、だ~いせ~いか~い!!! 因みにそのアイデアを思いつくまでのヒントは実家にあったようだぜぇ?」

「実家?」

『お前な…叔母様の神社だ』

「あそこか? でもあそこには御魂なんざ…おいまさか…!?」

「ま、そいつの経緯も話さねーとなぁ」

 

ラグナの焦る様子を無視して峡真はさらに解説を続けた。

 

「あのクソ女は初めに実家にあった蒼の魔道書を調べてたらしいぜぇ。そしてそいつを基に魔道書を自力で作り出した。結局は蒼の魔道書程の力はなかったから失敗作と断じられちまったけどよぉ」

『『紅の魔道書(バニングレッド)』のことか…そこまで知っていたとはな…』

「そうだ…だがそこで止まらなかったのがあのクソ女だ。あの後も野郎は各所で蒼の魔道書について調べたよ。そして…その真実にたどり着いた」

「真実…だと…」

「なぁ、ラグナく~ん」

 

峡真はニタニタ笑いながらラグナにある疑問を提示した。

 

「デカいバーテックスには色~んな奴がいるけどよぉ、連中は『十二星座』をモチーフにしたものしかいねーよなぁ? 他にも星座なんてたくさんあるのに何故こいつらだけなんだぁ? 不思議だよなぁ~?」

「知るかよ。それがどうしたってんだ!!」

「どうしたもこうしたもあるみてーなんだわ。実はな、上里家に隠された書物や『勇者御記(ゆうしゃぎょき)』には記されてたんだよぉ…十三種目のバーテックスがぁ!!!」

「だからなんだってんだよ!!!」

「せっかちなやつだなぁ…まあ黙って聞けよ。そのバーテックスの特徴はなぁ…他とは全く違うものだったらしいんだわ。なんでも『真っ黒』な身体をした…『多頭の大蛇』だったらしいぜぇ…」

「何!!!?」

 

その話を聞いてラグナはそれをすぐに別の物と連想した。自分の世界を破壊しつくした怪物、『黒き獣』とだ。疑問が増えたラグナは思わず峡真に問い詰めた。

 

「どういうことだ、それは!!! 『アレ』が『ここ』にもいるってのか!!!」

「アレ? ああ、その黒いバーテックスか? 今はいねーが、かつてはいたらしいぜぇ。最も、当時の勇者たちが辛勝の末に勝利したらしいがな」

勝った…あの『黒き獣』に…

「だが当時、そのバーテックスは今の瀬戸大橋近辺の壁を破壊して四国に甚大な被害を与えたらしい。結界内で倒したからなのか、そいつの骸が残ったんだわ。そしてそれが国津神共に回収され…加工され、役目を終えたときはある土地に封印された…」

「……おい…まさかそれが…」

「どうやらテメーでも理解したようだなぁ…そうだ…それが」

 

峡真はそう言い終えるとラグナの右腕を指さしながらそれを告げた。

 

「テメーのその右腕、蒼の魔道書(ブレイブルー)だよぉ」

「なん…だと…!!?」

 

ラグナは思わず自分の右腕をみやった。世界が違う以上、これも異なる形で存在していた可能性はあった。だがまさかこのような形で蒼の魔道書が誕生したとは思わなかった。

 

そして理解した。あの日、壁の外にでた瞬間に暴走した理由を。それが本当ならば蒼の魔道書が天の神の力に満ちた外の世界で過剰な反応を見せたことも合点がいく。力の源を取り戻した腕は自分ごとその黒いバーテックスになろうとしていたのだ。

 

「マジかよ…じゃあこいつも…御魂だってのか!!!?」

「正確にはプロトタイプだな…初めてだったから調整をミスったのか知らねーけど敵味方関係なく暴れたらしいぜぇ!! しかもその後はビビったのか、十二星座以外は使わなくなってやんの!!! ざまぁねぇなー、クソ天津神共ぉ!!! ヒャーッハー!!! チョーウケるぅ~」

 

敵である天の神の未熟さはもちろん、目の前のラグナが狼狽える様も相当笑いのツボを刺激したのか、峡真は爆笑していた。それに対して九重はむしろ疑問が晴れたようだった。

 

『そうか…道理であの時に封印の儀でお前を止めることが出来たわけだ。お前の右腕そのものは御魂だから儀式を行えばお前の動きを完全に止められる。後は御魂を破壊しないよう、加減すればいいだけだしな』

「じゃああの窯も御魂なのか!? でもあんなデケー窯を造れるほどの力がある御魂なんてどこに!?」

「忘れたのかぁ?この前倒したばかりだろうがよぉ?」

 

その言葉を聞いて、ラグナの背筋は凍り付いた。この窯は御魂で出来ている。そしてこの前の戦闘で一際大きく、通常のバーテックスとは異なるものがいた。そのバーテックスの御魂も又、規格外の大きさだった。

 

「嘘だろ…あのごちゃ混ぜ野郎の御魂を…使ったのか!!?」

「うおおおお!! そうそう、その顔!! そいつが見たかったんだぁ!! 正確にはアレを一度外の世界に解放して星屑共が集まったところに魔道書の力をぶつけて出来たって感じだけどなぁ!!」

「くそ…つーことは、碧の魔道書も!!」

「テメーらが戦った残りの三体から造ったんだよぉ!! いや~九江博士の魔道書やアークエネミーについての研究資料は本当に参考になったぜぇ!!! ヒャーッハッハッハッハー!!!」

「テメェ…!!」

 

ラグナが勇者たちのあの戦いを完全に利用した峡真に怒りをぶつけているとそれまで沈黙を貫いていたレイチェルが峡真に彼の情報源を聞き出そうとした。

 

『ところでそこの緑膿菌、どうやって九江の研究や検閲前のあの娘たちの御記の情報を掴んだのかしら? あれは大赦の中でもトップクラスの機密事項のはずよ?』

「誰だか覚えてねーけど俺様は緑膿菌じゃねー、殺すぞ!! ……書支部は四国中のあらゆる時代の資料を管理していてなぁ。それなりに真面目に働いて上のジジイ共の目を騙しつつ気を伺っていたわけ。そしたらあそこの情報を管理する権限までに就いたんだよぉ!」

『人を見る目がないのか!!! あの頭無しの老人共は!!!』

「それとあのクソ女だが…こっちは簡単だぁ。奴は研究のために御魂をまた取りに行くようだったからなぁ…」

 

九重が大赦上層部に悪態を吐いていたが、峡真が母についての話を始めてからはそちらに注意を向けた。

 

「あの野郎が壁の外まで来たところでちょっと奇襲をかけたんだよぉ!! そしてその後に壁の外から突き落してやったわぁ!!! あんときの奴の悔しそうなツラは絶景ったらねーぜぇ!!! 後は奴が消えた以上、研究データはぜ~んぶ書支部のデータバンクに記録される!!! 閲覧し放題だ、ヒャッハー!!!」

『貴様…貴様ぁぁぁぁぁぁ!!!!』

 

それを聞いて九重の怒りが爆発した。通信越しから彼女の怒りが伝わってくる。

 

『貴様は…貴様だけは絶対に許さん!!! 必ずその存在を塵一つ残さず抹消してくれる!!!!』

「出来るもんならやってみろよぉ!!! 樹海にも来れねークソ猫がぁ!!!」

 

二人の激しい罵り合いを展開している中、レイチェルはラグナに警告を告げた。

 

『時間がないわ、ラグナ!今の友奈さんは御魂に直接触れている状態よ!このままではあの娘の意志関係なく散華し続けてしまう!』

「……分かった。レイチェル、テメェはココノエを押さえてくれ。こいつは俺に任せろ…」

『…必ず勝ちなさい。『バーテックス』としてではなく』

「『人間』として、だろ? 心配すんな、ちゃんと分かってらぁ」

『……頼んだわよ、『ラグナ=ザ=ブラッドエッジ』』

 

それだけ言い残してレイチェルは通信を切った。ラグナは一呼吸入れた後、目の前に立つ峡真を睨む。しかし峡真は余裕の表情だった。

 

「ヒャーッハー!!! チョーくっせーやり取りしてやがんなぁ、ラグナ君!!! 俺様を倒すだぁ!!? どうやらさっきボロ雑巾みてーにされたことをもう忘れちまったみてーだなー!!!」

「……忘れてなんかねーよ。テメェはここで倒す。ココノエの、フウの、イツキの、カリンの、トウゴウの、ユウナの、そしてサヤの分…テメェを叩きのめしてやらぁ。テメェがツケた借りの分だけ、利子付きでな!そして…その窯も『殺して』、ユウナを助ける! 覚悟しろよハザマ…いや、『テルミ』!」

「うわ~、その名前、若い頃に付けたチョー痛え奴だから忘れたかったんだけどなぁ…イキガッてんじゃねーぞ、ゴミが。そんなに死にてーなら今殺してやるよぉ」

 

峡真は両手を翳すと方陣を展開し、それを起動するためのコードを読み上げた。

 

「第666拘束機関開放。次元干渉虚数方陣! コードS・O・L!! 碧の魔道書(ブレイブルー)、起動!!!」

 

自身の魔道書の発動とともに碧い波動が発生すると峡真は大きな高笑いを上げる。それと直面しながらもラグナは自分の右腕を見る。あの大橋の戦いで自分は様々な人間に助けられた。そして勇者部のメンバーと出会ってからは色んなことがあったものの、もう一度仲間と過ごす楽しさを感じることが出来た。

 

勇者(あいつ)らはいつも…テメェの大事なもんのために頑張ってきた…)

 

ならば、ここでこの男に負けるわけには行かない。自分にとってもそれは大事なものなのだから。ラグナは意を決して右腕を自分の前に翳した。右腕の装置から蒼い光が発現した途端、普段より少し多い量の瘴気が集まりだした。

 

今彼は壁の外に近いの上に結界は今穴が開けられている。神樹のおかげでまだ結界内ではそれほど影響がまだ出ていないものの、このまま放置するのは危険だ。ラグナは遂に魔道書起動のトリガーを口にした。

 

「第666拘束機関開放…」

 

エネルギーが集まる中でラグナの脳裏に様々な人間の悲痛な顔がよぎった。あんな顔を二度とさせるわけにはいかない。そしてみんなの大切なものを笑いながら破壊するこの男を許すつもりもない。

 

「次元干渉虚数方陣展開…!」

 

蒼い方陣がラグナの周りで展開される。以前との違いが分からない峡真は小馬鹿にしたような口調で彼を嘲笑う。

 

「無駄だって言ってんだろ~? テメーはアホかぁ?」

 

そんな彼の挑発も、今のラグナには聞こえなかった。代わりには自分が交わしてきた多くの物たちの声だ。安心させてくれるものがあった。罵るものもあった。楽し気に話す声が聞こえた。泣いている声も聞こえた。この前聞いたばかりの声があった。長い間聞いていない声もあった。

 

ー ラグナ先輩! ー

ー ラッくん! -

ー 綾月君! -

ー ラグナ君! -

ー ラグナ! -

ー 兄さん! -

ー 兄さま! -

 

大切な人々の声に後押しされ、その者たちとの絆を胸に彼はそれを宣言した。

 

「『イデア機関(きかん)接続(せつぞく)』…!!」

「何!!?」

 

聞き覚えのない言葉に峡真は初めて動揺を見せた。ラグナの周りに別の光が生じ始めたからだ。白い花びらをまき散らす光も彼の右腕に集まっていた。それは多くの勇者が変身するときの発せられる光と同じものにも見えた。ラグナは目の前の状況が理解できていない峡真に向かって叫んだ。

 

「見せてやるよ…これが…『蒼』の力だ!!!!」

 

そしてラグナはこれまで長い間自身と共に戦った存在の名を叫んだ。

 

蒼の魔道書(ブレイブルー)起動!!!!」

 

蒼い波動が発生するのを見て、同時に峡真も碧い波動を発した。二つの波動がぶつかり合い、拮抗した。

 

「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

「ば、馬鹿な!!?」

 

ラグナの気合と根性が功を奏したのか、蒼は使用者である峡真ごと碧をいとも簡単に吹き飛ばした。巻き上げられた峡真にラグナは跳躍して追撃した。瘴気を纏った剣は何度も峡真にぶつけられ、最後にラグナは一気に急降下して彼を切り伏せた。

 

「ナイトメアエッジ!!!!」

「ぎょえーーー!!!!?」

 

地面に叩き伏せられた峡真とその元凶であるラグナの周りにはクレーターが出来たが、そんなことなどお構いなしにラグナはさらにダメ押しの一撃を加えて峡真を吹き飛ばした。

 

「沈みやがれ!!!!」

「ガハーッ!!?」

 

吹き飛ばされた峡真は全身の激痛にもがき苦しむ。そしてラグナは這いずり回る彼に向かって宣戦布告した。

 

「オラ、立てよ…本当の戦いはこっからだぜ…行くぞ、この『毒蛇野郎』が!!!!」




まさかの黒き獣がバーテックスの件。まあ、ゆゆゆだしね。こうなっちゃう。

さて次回はヤベーヤツ二人と魔道書組の戦いの続き!友奈を救えるか!?それではまた
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