蒼の男は死神である   作:勝石

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どうも勝石です。

先日ガチャを引いたら久しぶりに限定キャラの水着うたのんをゲットしたぜ。ただ我が勇者部に紫SSRはいないからできれば勇者部五周年記念の方が当たってほしかった。代わりに青勇者がまた増えたけど。

今日はみーちゃんこと藤森美都さんの誕生日ですね。おめでとうございます。

さて今回、二つの蒼が戦うことになります!!文字数が1万が超えちゃったけどどうぞ

The wheel of fate is turning...Rebel...1...Action!!!


Rebel45.激戦の果て

兄が壁の方へ向かうのを見届けてから刃は東郷の目線に合わせて話しかけた。

 

「東郷美森……いや、『鷲尾』」

「ヒグッ……へ?」

 

咽び泣いている途中で思いがけない、しかしやはりどこかで聞き覚えのあるような呼ばれ方に反応すると、東郷は刃の方へと顔を向けた。

 

「き…如月…くん…?」

「刃兄様?」

「……貴様はなんだ?」

『は……?』

 

突然訳の分からない質問をされて東郷とその様子を見ていた椿姫も茫然としていた。それでも刃は問答を続けた。

 

「貴様はなんだ…貴様はなんなんだ…貴様はなんなんだ…貴様はなんなんだ!」

「へっ!?」

「貴様は…自分が何者だと思っているのかと…聞いている!!」

「わ…私は…」

 

東郷は咄嗟に言われてすぐには答えられなかった。彼女は記憶が欠損していたこともあって、初めて目覚めたときから自身も周りも存在があやふやに感じてしまっていたのだ。それによって、不安を感じていた。

 

友奈という自身の心を支える強固な存在と信頼があったからこそ、東郷は明るくなることができた。友奈も東郷の存在によって何度も助けられてきた。お互いにとって、互いの存在は代えがたいものだった。だからこそ東郷はこれほどまでの凶行に及んだ。しかしそれだけではない。

 

「鷲尾…貴様は感じていたはずだ…園子から、三ノ輪から、そして聞いた話では兄さんから、かつての奴らの存在を!! そしてそこにいた自分の存在をも!!! でなければ初めて勇者部の前で兄さんと僕が殺し合ったときに他の部員同様、慌てたはずだ!!! 聞いた話では園子と再会した時も…貴様は泣き出したそうではないか!!!」

 

刃の言う通り、意味が理解できないだけで彼女には僅かに記録として残っている。『鷲尾須美』という少女としての記憶が。それは小学校の鷲尾須美を観測()て、中学校で何度もラグナか友奈かについて言い合った彼だからこそ理解できることだった。

 

椿姫が殆ど取り残されている中、東郷は身体を起こして二人は口論を続けた。休み時間や放課後の時間でラグナたちがいない時、二人はよくこうして議論しあっていた。東郷は涙を浮かべながらも刃に怒鳴った。

 

「…ええ、そうよ!! でも……感じたのは…ただ懐かしかったこと…悲しかったこと…それだけなの…!! あの時の涙の意味もどうしてそうすることが自然なことだと思ったのかも…私自身には分からないの!!!」

「だから諦めるのか!!? また失うならばいっそ自分の意志で手放すのか!!? そんな簡単に手放せるものなのか!!? 敵に…自ら敗北を認め…これ以上のものを失うというあるかも分からん未来を思って…貴様は…それでいいのか!!? 大事だと散々言っていた結城友奈と奴が生きるこの世界を壊して良いのか!!? いつも憎たらしいほど自慢するあれも虚言なのか!!!? 貴様にとって結城友奈は…『その程度の存在』だったのか!!!?」

 

刃のその言葉は東郷にとって聞き逃すことのできないものだった。

 

「そんな訳ない…でも、大切な友達がこれ以上犠牲になるところを…もっと嫌よ!!」

「貴様がやろうとしていることは自分の…その大事な友達を捨てることだぞ!! 全てを無に帰すことに意味などない!! それこそあの世界を作った奴ら…天の神たちの思うつぼだ!! 奴らは人間を目障りな虫けらとしか思ってはいない!! そんな理不尽な連中に負けを認めるのか!!?」

「だったらどうするというの!!? みんなが犠牲になるところを黙って見過ごせというの!!? 私一人だったらまだ良かったわ!!! でも、みんなまでそんなことになったら「ふざけるな!!!!!」え!!?」

 

東郷の言葉を遮って刃が叫ぶと彼は続けて宣言した。

 

「貴様だけが犠牲になるだと? 貴様一人の犠牲で世界の均衡など保てるか。そもそも貴様が犠牲になればあの結城友奈も喚き出すぞ!!」

「それは…」

「そして始めに言おう…僕は…そのような犠牲(敗北)など『断じて』許さない!!! 世界のバランスを崩壊させる可能性のある兄さんを殺すのは僕だと決まっている以上、他の誰にも殺させなどしない!!!! それは同じようにこの世界の均衡を乱す悪、バーテックスも例外ではない!!!! それを理解したうえで僕を阻む障害は…誰であろうと、どれだけあろうと等しく滅してやる!!!! 兄さんを殺して良いのは…世界でただ一人…この僕だけだーーー!!!!!」

 

それを言い終えて刃は叫びすぎたせいか、何度も肩が上がるほど深呼吸を繰り返していた。そんな彼に東郷と椿姫は圧倒されていた。一度落ち着くと、刃は話をまた始めた。

 

「僕だって…兄さんと離れ離れになって、無力だった自分が嫌で訓練してきた…他のことなど考えていられなかった…今思えば周りにも心配を掛けさせてしまった…」

「あの頃の刃兄様は…本当にいつも心ここに在らずと、見ていて辛かったです。園子様が勇者候補の教官として推薦しなければ…どうなっていたことか…」

「…あれはお前の進言だったらしいな、椿姫。園子から聞いているぞ」

「すみません…ですが、あのような刃兄様はとても…」

 

椿姫は少し申し訳なさそうにそういったが、刃は責めなかった。

 

「謝るな。僕こそ…心配をかけてしまったな。済まなかった」

「いえ! 本当に…刃兄様が元気になられて良かったです」

「仲がとてもいいのね、貴方たちは」

「…養子に入ってから良く共に過ごした仲だからな」

 

仏頂面の刃と笑っている椿姫のやり取りを見て東郷は少しだけ心が落ち着いた。刃はその後に自身が気になったことがあった。

 

「……念のために聞くが、先ほど言っていたその犠牲になる友達とは…僕や兄さんのことにも該当するのか」

「そうよ…あの話を聞いたら…二人はきっと無理をして…死んで…そして満開の果てに私たちが貴方たちを忘れてしまったら…」

 

東郷がそれを悲しそうにいうと、刃は言い返した。

 

「死ぬだと? それは貴様が決めることではない。まして神樹でもない。僕の行く道は僕が決める。僕が死ぬかどうかもだ。世界の秩序は、世界の命運は、そこに生きる者たちの手で作るものだ。それを乱す存在は兄さんはもちろん、例え天の神だろうと神樹だろうと、僕の前に立つ以上は…倒す。それまでにくれてやる命など持ち合わせていない。兄さんだって同じことを言うはずだ」

「…とんでもないことを言い出す男ね。神だろうと容赦なく刃を向けるなんて罰当たりも良いところよ、如月君」

「それを今まさに神樹に向かってやろうとしたとんでもない女が吐く言葉とは思えんな、鷲尾。…後心配するな。貴様が思っている以上に僕らは貴様を観測()ている。そもそもどのような干渉を行ったところで貴様のような二言目に国防だ友奈ちゃんだと叫ぶような女を忘れることなど出来るものか」

「貴方も大概よ。どこの世界に兄への愛情表現として殺し合いをする弟がいるの? 嫌でも覚えていそうだわ」

「フン…ならば覚えておけ。僕たちは決して貴様を…鷲尾須美も東郷美森も忘れない。僕たちが貴様を認識し続けている以上、貴様は決して一人などにはならない。それでも不安になるなら…結城友奈でも園子でも、嫌でないのなら僕にでも相談しろ。それくらいならば…耳を貸してやる」

「…こんな私でも…世界を壊そうとした私でも…友奈ちゃんを守る資格はあるの?」

「それこそ助けた後で本人に聞け。重要なのは今やつのために行動するか否かだ。勇者部五箇条、なせば大抵なんとかなるのではないのか?」

「…フフ…ハハハ」

 

それを真剣に言ってくれている刃に面食らったのか、東郷は少し笑ってしまった。偶然にも彼が発言した五箇条は自分が提案したものだったのだ。少し前の自分の言葉に今の自分が諭されようとしているなど五箇条を作った当時は思いもしなかっただろう。当然そんな事実を知らない刃は心外だと言わんばかりに食い付いた。

 

「おい、何がそんなにおかしい」

「だって…普段あれだけぶっきらぼうな貴方が五箇条を言うのは、なんというか、おかしくて」

「勘違いするな。それはただ、貴様にとってこのルールが理解しやすいだろうから言及しただけだ。貴様が騒ぎを起こせば僕に面倒事が回りそうだからな…」

「すみません。少し厳しい言い方なだけでちゃんと刃兄様なりに東郷さんのことを思って言っているんです」

「フフッ、大丈夫。分かっているわ」

 

フォローする椿姫と顔を背く刃を見ながら東郷は立ち上がって二人に謝罪を述べた。

 

「ごめんなさい…二人には、みんなには迷惑を掛けて…」

「気にしないでください。私も…何も知らなかったとはいえ、あの時は不躾なことを言ってしまいました」

「謝罪は後でいい。二人とも急ぐぞ。結城友奈を取り戻すためにな」

「そうね、早くしないと友奈ちゃんが何をされるか分からないわ!!」

「今頃兄さんは峡真と戦っているはずだ。兄さんが奴を引き付けている間にやつを救出するぞ」

「だけど如月君、彼の実力は本物よ。私たちがそのまま出てきたらあの男は恐らく防衛に徹してしまうわ。それでは友奈ちゃんを取り戻すことが難しくなってしまうし、綾月君も奴と一人で戦い続けるなんて危険よ」

 

東郷が指摘した通りではある。三人は峡真に先の戦いで惨敗を喫している。刃と東郷が友奈を救出しようとしている時にラグナ共々襲われれば自分たちはかなり不利な戦いを強いられるだろう。しかし刃はどこも心配している様子はなかった。

 

「それに関しては心配する必要はない。今の兄さんならばあの男に遅れは取らん。何せあの状態の沙耶を助けることが出来たからな」

「沙耶? 妹さんと何かあったのかしら?」

「…少し陸の方で一悶着あっただけだ」

 

刃がそういうと東郷が二人に号令を掛けた。

 

「それでは行きましょう、友奈ちゃんを助けに!!」

「了解しました!」

「ああ」

 

東郷の言葉に二人が頷くと彼らは急いで壁の上まで走って行った。

 

「そういえば椿姫ちゃんは如月君のことが好きみたいだけど、あんなことを聞いて大丈夫だったの?」

「刃兄様の兄上自慢は子供の頃からよく聞いていましたのでもう慣れました…」

 

苦笑いしながらも何だかんだ恋い慕う刃の背中を見ながらそう言う椿姫だった。

 

✳︎

 

「うおおぉぉぉ!!!」

「終わらせてやらぁぁぁぁ!!!」

 

何度武器がぶつかり合う音が聞こえたのかを数えられないほど、二人は戦っていた。峡真の後ろに蛇の意匠を持った方陣が展開されると、彼の周りに再び碧い場が展開される。何かされる前に攻撃せんとラグナは衝撃波を飛ばして彼を牽制した。

 

「デッドスパイク!!!」

「『蛇刃牙(じゃばき)』!!!」

 

峡真も負けじと碧い蛇のような波動を繰り出してデッドスパイクを打ち消す。しかしその後ろからラグナが殴り掛かって来た。峡真も瘴気を手に集束させて向かい打った。

 

「ガントレット!!!」

「『裂閃牙(れっせんが)』ぁ!!!」

「ハーデス!!!」

「『牙翔脚(がしょうきゃく)』!!!」

 

自身の追撃すら防がれるとラグナに相手の強烈な蹴りが叩きこまれた。峡真の足はラグナの腹に嫌な音を立てながら抉りこみ、彼を宙へ吹き飛ばす。そこへさらに峡真はウロボロスで彼を引きずり下ろし、ナイフと瘴気で吹き飛ばした。

 

「『冥蛇月光牙(めいじゃげっこうが)』ぁ!!!」

「ぐあッ!!」

 

吹き飛ばされていくラグナに峡真は再びウロボロスで捕えようとするが、ラグナは空中でそれをアラマサで切り払う。何とか体勢を立て直した彼はすぐさま攻勢に戻って一気に峡真へ接近した。

 

「カーネージシザー!!!」

「蛇翼崩天刃!!!」

 

剣が自分に直撃する寸前、峡真はキックでそれを弾き返した。しかしその後ラグナは咄嗟に身体を大きく捻ると瘴気を纏った大剣で峡真の足元を突き刺した。予想外の攻撃にたまらずダウンした峡真だったが、ラグナは彼の襟首を掴んで持ち上げる。

 

「『まだ終わりじゃねーぞ』、テルミ!!!」

「あんぎゃーーー!!?」

 

ラグナのストレートパンチが見事に峡真に決まったことで彼は吹き飛んだ。しかし自分が優勢であるのに対してラグナの顔は険しいままだった。

 

確かにイデア機関を銀から託されたおかげで蒼の魔道書の出力が以前よりも遥かに高くなったが、肝心の自分の肉体が力不足のため、峡真を戦闘不能に追い込むことが出来ずにいた。やはり未熟な中学生の肉体で碧の魔道書を持った峡真に単独で勝つのは難しいようだ。

 

「クソが…これでまだ互角かよ…グズグズしてられねーのに!!」

「ゴホッ…おいおいおいどういうこった…さっきまでボコられたクソガキが…俺様と互角だって…!!?」

 

峡真も大分ボロボロになったが、それでもまだ戦える状態ではあった。このままでは友奈の精錬が先に完了してしまう可能性がある。いまいち決め手の少ないラグナはどうしたものかと焦っていた。

 

「ほらほら…ラグナく~ん? 早くしないと~…みんなの大事なだ~いじな友奈ちゃんが本当に人間じゃあなくなっちまうよ~!!」

「黙りやがれ…この蛇野郎!!! とっととくたばれってんだ!!!」

「ヒャッハー!!! 動揺しちゃってるね~、ラグナ君!! でもざんね~ん!! ここでくたばんのはテメェの方だぁ!!!」

 

雄叫びを上げた峡真の周囲から何十本もの碧い蛇が出現し、それが何重も束ねられて出来た大蛇に変化した。大きさは東郷のときのものには劣るが蛇の数は8体と数は多い。もちろん本命の攻撃にはウロボロスがいる。

 

「ヒャーッハー!!! 見ろ見ろこの数!!! これでテメーもお陀仏だぁ!!!!」

「ふざけんな…誰がくたばるか!! 『ブラッドカインイデア』!!!」

 

これを見てラグナも右手を押さえながら叫んだ。蒼の魔道書を表す方陣が出現すると同時にイデア機関の出力を最大限までに上げたことで強化されたブラッドカインが発動された。大剣を鎌に変形させた彼からは黒き獣を彷彿させる赤黒い焔が溢れるように滲み出てきた。

 

「千魂冥洛ぅぅ!!!」

「ブラックオンスロートぉぉ!!!」

 

二人の戦いの余波で周囲の星屑たちどころか大型バーテックスすらも消し飛んでいく。二匹の怪物はその牙や爪で相手を引き裂かんと激しい殺し合いを繰り広げる。ラグナが七体の蛇を撃ち倒すと、両者の最後の一撃が放たれた。

 

「喰い千切れぇ!!アークエネミー、ウロボロス!!!」

「ナイトメアレイジ…ディストラクション!!!」

 

黒と碧の激突は巨大な爆発を発生させ、両者は後ろへ飛ばされた。先に立ち上がったのは峡真の方だった。ラグナも大剣を地面に突き立てて無理やり立ち上がる。両者は長い戦いの末に疲労困憊だった。

 

「いいぜぇ…この感じ…俺様が求めてたのは…この感じだよぉ…!!」

「テメェ…マジでしつけーな…まだ立てんのかよ…クソッ!!」

 

流石のラグナもそろそろ体力に限界が来始めていた。ここまで来るのに戦闘に次ぐ戦闘。風、峡真、沙耶、そして再び峡真ともう四連戦、しかもどれも死に物狂いで潜り抜いたものばかりだ。道中にバーテックスも蹴散らしながら走り続けており、まともな休憩をしていないことも大きく影響している。

 

(それでも…まだ諦めねえ!!ユウナをあそこから出すまでは!!!)

「どうしたぁ…早く来いよぉ、ラグナくーん…こんなんじゃあ、まだ足りねぇんだよ…つまんねーんだよぉ! だからよぉ…もっと俺様を憎め…もっと楽しませろやぁ!!!!」

「はぁ…はぁ…テメェ…ガキみてえにはしゃいでんじゃねーぞ…」

「ンあぁ?」

「確かに…テメェは…許さねえ…だが…今は…テメェなんざに構ってる時間はねーんだよ!! 退け…邪魔だ!!!」

「おいおい…つまんねーこと言ってんじゃねーよぉ〜。ハァ…ガーーーーーッカリだわぁ。だったらもういいや。死ね」

「勝手なこと抜かしてんじゃねー!! 今すぐぶっ飛ばしてやるから…掛かって来い、テルミ!!」

 

バタフライナイフを片手に何本か持つと峡真はウロボロスを再びラグナに向かわせた。蛇の突進をなんとかアラマサで防ぐことができたものの、弾かれた方向へ飛んだ峡真はそこからナイフを投げつける。

 

当然これをラグナは叩き落とす。しかしここで問題が発生した。ブラッドカインの効果が切れてしまった。そして峡真は大振りなラグナの攻撃に乗じて彼の懐に潜り込んだ。

 

「しまっ!!」

「終わりだ、綾月洛奈ぁ。『残影牙(ざんえいが)』!!!」

 

碧い瘴気を乗せた峡真の手はラグナの命を刈り取らんと迫りかかる。決まれば立つ力がなくなる。敗北は必至。そう悟ったラグナには全てがスローモーションに見えた。その時だった。

 

「おおおおおあああぁぁぁぁぁ!!!!」

 

攻撃を喰らう前に彼は目一杯アラマサを切り上げながら峡真共々飛び上がった。もう彼は間合いや相手の動きがどうとか考えることが出来ない。とにかく峡真よりも一分一秒一ナノ速く攻撃することしか頭になかった。だがそのおかげで彼の動きのキレも先ほどよりも格段に良くなっていた。

 

「インフェルノディバイダーーーーーー!!!!」

「オゴォォッ!!!?」

「オラ、砕けろッ!!!」

「うぐほッ!!!」

 

空中でパンチと踵落としをお見舞いされ、峡真は地面に激突した。だがラグナの怒涛の攻撃は止まる気配を見せない。着地と共に起き上がって来る峡真をアラマサで叩き伏せ、身体を捻りながら回転させる。降り際にアラマサも鎌に変形させ、その一薙ぎで発生した瘴気の波は峡真を吹き飛ばす。

 

「『シードオブタルタロス』!!!」

「あだだだッ!!!」

 

宙へと巻き上げられた峡真だったが、更なる追い討ちが待っていた。ラグナは右腕にそれまでの比でない量の瘴気を纏わせ、巨大化した腕で峡真に掴みかかった。峡真は身体をベキベキ鳴らしながら握りしめられ、体力も凄まじい勢いで吸い取られていき、最後にラグナの変質した腕の先から大爆発が発生した。

 

「終わりだ、テルミ!!!闇に喰われろーーーー!!!!」

「うぐおあああぁぁぁ!!!!?」

 

地面に落下すると同時に峡真はとうとう力尽きた。自分の渾身の一撃の直撃を貰って地に伏した彼が起き上がって来ないことを確認すると、ラグナは満身創痍の身体を引き摺りながら窯の方へ向かっていく。少しした後に刃たちも駆けつけてきた。

 

「綾月君!!! 無事だったのね!!!」

「トウゴウか…ああ…テルミ…ハザマは倒したぜ。あそこにいる」

「そう…本当に…無事でよかったわ」

「すごい…本当に一人で倒してしまってる…」

「だから言っただろう鷲尾、椿姫。兄さんはあの男に遅れなど取らないと」

 

ラグナの無事を知って胸を一度撫で下ろす東郷だがその後ラグナに友奈の居場所を聞いてきた。

 

「ところで綾月君。友奈ちゃんはどこにいるの? どこにもいるようには見えないけど」

「…ユウナは、あの中だ」

 

ラグナが窯の方へ視線で示すと、残りの三人は目の前の黒い球体に圧倒されていた。この中に友奈がいる。それは分かったが、はてどうやって出したものか。

 

「この感覚…まさかこいつ…御魂なのかい、兄さん!?」

「ああ。峡真によるとこいつはこの前のごちゃ混ぜ野郎の御魂を使って造られたらしい。この中にユウナが閉じ込められているみたいだ」

「おのれ…なんて人なの…みんながあんなに頑張ったのに…!!」

「…御魂ならば封印の儀が出来るかもしれない。鷲尾、始めてくれ」

「…分かったわ」

 

東郷が早速封印の儀を開始した。すると窯は少し光った後に少しずつ開き始めたが、しばらく時間が経つと再び閉じ始めた。よく見たら窯の下で展開されている方陣に記された時間も減り具合が普段の数倍の速さで減少していた。どうやら勇者一人ではこの窯を封印するのは骨が折れそうだ。

 

「くっ…まだよ!!! こんなところで…終わってたまるものですか!!」

「せめてあと何人かがいれば!!」

「いや十分だ!! トウゴウ!! そいつを押さえろ!! 俺が何とか窯を『殺して』ユウナを取り出す!!」

「残念ながら…もう無理だと思うぜぇ?」

『なっ!!?』

 

その声に気付いて後ろを振り向くとそこには全身の切り傷から血が噴き出、吐血した後もある峡真が立っていた。彼の姿を確認したラグナと刃はすぐに武装を構えて儀式の途中である東郷と椿姫を守る形で陣取る。しかし向かいの峡真から出てきたのは狂喜を含んだ笑い声だけだった。

 

「ヒヒヒ…ヒャーッハッハッハッハー!!! やるじゃねーかぁ、クソガキどもぉ!! 俺様をここまで…コケにしてくれるなんてよぉ!!」

「峡真…!! 貴様はどこまでも!!」

「しかしよぉ…精錬するのにここまで時間が掛かるたぁなぁ…俺様に手間取らせてんじゃねーよぉ、無駄にしぶとく抵抗しやがって…まだ絶望が足りてなかったのかぁ…それともまだ『勇者様』がいるっつうガキの夢物語を信じてたのかぁ?どっちにせよ、もうここまでだがなぁ…ヒャッハー!!!」

「お前…どこまで非道なの!!? 友奈ちゃんの純真さに付け込んで…そんなまるで道具か何かみたいに言って!!!」

「おお! 良く分かったじゃねーか…クソレズ女ぁ!! その通り…アレは友奈ちゃんなんかじゃねー…今から天津神共を、テメーがぶち殺そうとした神樹を、そして俺様と共にテメーらを絶望の淵に落とす『剣』!!! 『道具』なんだよぉ!!!」

 

親友がそのように表現されて東郷が悔し涙を浮かべながらも儀式を続ける。そんな彼女を愉快そうに見ながら峡真は話を続けた。

 

「奴は元々自分が攻撃されてもそこまで反応しねー鈍感女だったからなぁ…奴を絶望させるのにそれなりの苦労はしたぜぇ…」

「貴方…家族への情というものがないのですか!!?」

「黙れよゴミ処理部隊!! 話してんのは俺様だぁ!!」

「うっ…」

「転機はぁ…今から2年ちょっとくらい前だったかぁ…奴が勇者として最高の適性を持っているという結果が大赦から出た。調べるまでもねーだろうが鳥頭共、名前の時点で約束されてるようなものだからよぉ…」

 

さり気なく大赦についてキツイ言葉を吐く峡真は言葉を続けた。

 

「そして同じ時期にあるクソ女にも勇者適性を持っていることが判明したがぁ…そいつは残念なことに剣とかなり離れた場所に住んでいたぁ…だがそいつはこりゃまた都合の良いことによぉ…『養子』から元の家へ戻されたばかりだったらしいんだわぁ…」

「そんな奴がいたのか…」

「しかもカワイソーなことにそいつは『交通事故』で『足は動かねー』わ、『記憶喪失』だわで大変だったらしいぜぇ…だったらと俺様は上の連中に進言したのさ、うちのクソガキとなら精神状態も安定するようになって戦力にもなるぜってなぁ…テメーら自身が利用されることも知らずによぉ!!!! お人好しのあの剣だからぁ!とーぜん放っておけずに助けようとしてそこから仲良くなるだろうからなぁ!!! そうして出来た最高の友達がテメーを最悪の形で裏切ってぇ!!? しかもテメーの真ん前でおっ死んだらどうなるのかなぁ!!!? ヒャッハー!!!」

「そんな…そんなことって…!!!」

「いいよぉ、鷲尾ちゃ~ん。その顔だぁ!! この前の怒りに満ちた顔もさいっこうだったけど苦痛に歪んだその顔もまた良いねぇ!!! ヒャッハー!!! テメーは理解しちまったみてーだなぁ!!! そう…テメーという存在そのものが!!! あの剣を狂わせたんだよぉ!!!! おかげで俺様大助かりだぜぇ、あの道具の心を壊すのに何の苦労もしなくて済んだからなぁ!!!!」

 

峡真から出た話を聞いて、それに対して四人は鬼の形相で彼を睨み、動ける三人は今にも峡真に飛び掛かりそうだった。

 

「…貴様…今ここで滅多切りにしてくれる!!!」

「テルミ…今度こそ…その喧しい口が二度と開かねえようにしてやらぁ!!!」

「書支部の峡真殿…神樹様の名のもとに貴方を断罪します!!!」

「あれあれ~、ひょっとして俺様ピンチ~?あ、でもざんね~ん、時間切れ~」

「黙りやがれ!!!ブラッドさ」

 

しかしラグナが鎌で切り掛かる前に窯から光が漏れ出た。それに対してラグナの腕も疼きだす。窯から妙な気配を感じ始めたからだ。

 

「ぐっ!!?」

「兄さん、大丈夫!!?」

「やべー…おいジン!! 今すぐツバキを連れてこっから離れろ!!! まずいことになった!!」

 

彼の言葉の真意を理解する前に窯は儀式と関係なく、黄金の光を放ちながら完全に開いた。様子の変化に気付いて中学生四人が顔を向けると峡真は邪悪な笑いを発しながら新たに舞台に立つ彼女の紹介を始める。

 

「さあ…『御姿(みすかた)』という名の剣、『ムラクモ』の覚醒だ!!! この世界は嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘、『嘘』だらけだ!!!だから俺様が見せてやるよぉ…『絶望』って名の『真実』をなぁ!!!!!」

「ッ…!!」

「彼の須佐之男の御名に於いて命じる!! 起き上がれムラクモ!! いや、天を呪う『神殺(かみごろ)しの(つるぎ)』、『クサナギ』よ!!! 貴様のその刃で…全ての嘘を薙ぎ払ええええええ!!!!!」

 

峡真がそう叫ぶと窯から普段とも満開の時とも違う白装束に身を包んだ友奈が現れた。

 

全体的に丈が短めでマントの付いた巫女装束で後ろは桜を模した髪飾りでポニーテールを作っている。右手には通常の勇者服の時よりも大きい手甲がついている。そしてその紅い瞳は虚ろで兵器のそれに見えた。

 

「ゆ…ユウナ…」

「友奈ちゃん、分かる!!? 私よ、東郷美森よ!!」

 

ラグナたちは友奈の変貌に開いた口が納まらない。そんな中で呼びかける東郷の声にも反応を見せる様子がない。ただこちらを何とも思っていないようにじっと見る。そんな彼女に峡真は馴れ馴れしくも歩み寄ってその顎を撫でる。

 

「いや~、実に美しい剣だぁ。こんな至宝、滅多にお目にかかれねーぜぇ?」

「友奈ちゃんを汚い手で触らないで!!!」

「おい呼び方がちげーぞぉ、クソレズ女ぉ!!これは友奈ちゃんじゃなくてクサナ」

 

しかし峡真の言葉は最後まで続くことはなかった。ノーモーションで友奈が彼の腹に拳を抉りこませたからだ。成す術もなく吹き飛んだ峡真に友奈は跳躍して容赦のない追撃を与える。

 

「テメッ、道具の分際でーーーーーーー!!!!!」

 

友奈渾身のメテオスマッシュが見事に峡真に決まり、そのまま峡真は断末魔の叫びを上げながら壁から樹海の奥深くへと叩き落とされた。この高所から落下すればいくら峡真とて助かることはないだろう。しかも彼の身体にとって友奈の拳は弱点だ。それが精錬によって限りなく神に近い肉体となったため、当たるだけでほぼ必殺だろう。

 

ラグナたちが峡真を圧倒した彼女に戦慄していると、彼女はこちら、というより『神樹』を見つめながら言葉を紡ぎ始めた。

 

「…『対象』確認…対象の『破壊』を開始します」




まあこうなることは分かっていたけど、友奈ちゃんがクサナギ化。彼女の設定を見たときからこうしようとは考えてました(三人の似た顔。神殺し。全身散華からの御姿という名の精錬)。ちなみに服装はムラクモ装備前のμ12を基本にして髪型と武装は大満開友奈(こちらの方は髪が短い)です。

さて次回で50話目。ここまで来たんですね~…なのにまだ結城友奈の章が終わらない。後2、3話ほどで終わる予定だけど。しかしギャグも書きたいのでここでアンケートです。どれも基本はなゆいでキャラ崩壊前提です。

本編はクサナギとなって神樹を破壊しかねない友奈の救出!!それではまた
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